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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第343回:実用と非実用の挾間、昨今のCMOSカメラ事情
~ 動画カメラの新しい可能性を探る ~



■ 低価格CMOSカメラの行方

 CMOSと言えば最近ではすっかりハイエンドな撮像素子として生まれ変わった印象がある。しかし台湾メーカーあたりでは、廉価なCMOSセンサーを使ったMPEG-4記録のロープライス製品が元気だ。

 その多くは、三洋「Xacti」似の縦型タイプなのだが、中には用途を絞った面白い製品も存在する。今回はその中から、ハンファ・ジャパン株式会社が「DIGITAL COWBOY」シリーズで販売する3つのCMOSカメラをピックアップしてみた。

 DIGITAL COWBOYシリーズには「大陸志向」というブランドがあって、中国製のややイタ目の製品を販売している。基本的にはアキバでレアモノとして扱われるような類の製品だ。それだけにクオリティは期待できないが、用途を絞ったところが面白い。では早速試してみよう。


■ スパイカメラ!? 「DVR-SP」

 少年というのはなぜだかスパイグッズにあこがれる時期がある。あれはジェームズ・ボンドの影響なのだろうか。ライター型カメラとかカメラ型ライターとか、子供的にはどっちを持ってても怒られるのであるが、とにかく見た目と機能が全然違う→それはカモフラージュなのだ→そんな必要があるのはスパイであるという、よく考えれば何かが間違っている謎の三段論法が駄菓子屋エリアのみで成立するのである。

 駄菓子屋で売ってるのはもちろんおもちゃなので、本当に写ったりしないのだが、テクノロジーの進歩というのは目標があってこそ、初めてそちらの方向に進化するものである。DVR-SPは、そんな少年の心にフィットする製品である。

 サイズとしては100円ライターよりも少し小振りな程度で、胸ポケットに挿せるようクリップも付いている。このクリップの上の方に小さなレンズがあり、約60度の角度で動画が撮影できる。動画フォーマットはケータイ動画などでよく使われている3GPで、176×144ドット/15fpsサイズである。


製品パッケージは観音開きの紙箱 「DVR-SP」本体。サイズは小型のライター程度


カメラは裏面に付いている 小さな穴のようなレンズ

 底部にはUSBポート、上部にマイクがある。背面に丸いボタンがあり、録画開始はここを3秒以上押す。上の3つはステータスLEDで、左は充電中に赤く点灯、中央は電源ON時に青く点灯、右は録画時に緑に点滅する。録画の緑は発光が弱いので、日中の屋外では録画できているのかよく見えない。


上部にマイク USB端子は標準的なMiniタイプ


メディアはmicroSDカードを採用

 この場合どっちが表なのかよくわからないが、とりあえずレンズがあるほうが表だとすると、左側に電源スイッチ、右側にホールドスイッチがある。ポケットなどに挿していた場合、押されて録画が停止することもあるので、ホールドスイッチは必要だろう。

 同じ側にmicroSDカードスロットがある。対応容量は128MB~2GBで、1GBで約19時間の動画録画が可能。ただしバッテリは3時間充電で2時間動作である。箱には「インタビューレコーダ」と書いてあるが、確かにインタビューであれば、2時間記録できればまずまず及第点である。だが最初からインタビューだとわかっていれば、なにもカメラを隠すことはないと思うのだが、そこは思っていても言ってはいけないことなのであろう。

 実際の動画は、思ったよりもよく撮れる。インタビュー用途としては、詳細に写っているというよりも、誰がしゃべったかがわかればいい程度なので、これぐらいでも十分だろう。ただし想像通り、集音性能があまり良くない。静かな場所でマイクに口を近づけて明瞭にしゃべってもこの程度なので、街頭や展示会、工場内といったうるさい場所では、役に立たないだろう。

動画サンプル

ezsm1_1.3gp(2.59MB)

ezsm1_2.3gp(3.50MB)
動画サイズは小さいが、その分画質は悪く見えない 散歩中胸ポケットに付けて撮影
編集部注:動画サンプルの再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 本気でビジネス用途で使わなければ、長時間だらだらと撮影しても大して容量を消費するわけでもないので、面白い使い方ができるはずだ。

 ちょっと気になる点としては、長時間、例えば20分以上の連続撮影をした場合に、ファイルが壊れていることである。数回トライしたが、ファイルサイズが0だったり、ファイルが開けないなどの不具合があった。撮影を停止するときに、大きなサイズのファイルをうまく閉じられないのかもしれない。

 この手の製品では、個体差による不具合もあるだろう。初期不良の交換は1週間となっている。

□製品情報
http://www.digitalcowboy.jp/products/dvr-sp/index.html



■ トニーって誰? 赤外線カメラ「DVR-IR」

 これもCMOSを使った小型カメラではあるが、レンズの周囲に赤外線ライトを配置して、暗い場所での撮影ができるというものだ。パッケージには「こいつはもう手放せないね」というトニーのコメントが写真入りで載っており、自信のほどを伺わせる。で、トニーって誰?


製品パッケージ。箱の蓋は磁石で止まっている どこから突っ込んでいいのか迷う文章

 本体はケータイぐらいのサイズだが、カメラ部が異様に出っ張っている。周囲に6つの赤外線ライトがあり、レンズ真下は赤色レーザーが出て照準が決められるようになっている。モニタがないので、こうやって向きを確認するしかないわけである。


カメラ部が大きく出っ張った作り 背面にはクリップも付けられる

 ボタン類は左右側面に分かれており、電源ボタンのほか、録画の開始と停止、赤外線のON/OFF、レーザーのON/OFFボタンなどがある。充電はUSB 2.0経由で行なう。バッテリ部は一応開くが、充電式バッテリはケータイのようにソケットが見えているわけではなく、おそらく分解しないと交換は難しいのではないかと思われる。それなら何のために開くのか、謎である。

 底部のUSB端子は特殊形状で、専用ケーブルでないと充電できない。メモリーはSDカードで、128MB~2GBが使用できる。連続使用時間は、最大3時間。


蓋は開くがバッテリは交換できそうにない USB端子は特殊形状

 撮影できる動画は、MotionJPEGのAVIで、解像度は320×240ドット、フレームレートは13.9fpsとある。ものすごく中途半端なフレーム数だ。連続撮影時は60分ごとに1ファイルとなり、メモリーカードの容量が一杯になったら古いファイルから上書きされてゆく。赤外線撮影時はモノクロだが、それしかできないわけではなく、明るい場所では普通のカラー撮影が可能である。

 試しに夜間撮影してみたが、屋外では赤外線の照射範囲が狭いため、ほとんど何も写らない。仕様としては赤外線到達距離は3mとあるが、ちゃんと写る距離としては1m程度だろう。

動画サンプル

ezsm2_1.mov(1.24MB)

ezsm2_2.mov(1.15MB)
屋外ではほとんど何も写らない 室内の近距離ならば、なんとか撮影が可能
編集部注:動画サンプルの再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 明るいところでは赤外線ライトが光っているのはほとんどわからないが、暗い場所では割と目立つ。夜行性の動物撮影や監視カメラとしては、割とバレバレだと思う。またモニタがないので、あまり離れて撮れない割にはどんな画角で撮れているかがさっぱりわからない。

 ある意味いい具合に腰の砕けた製品である。

□製品情報
http://www.digitalcowboy.jp/products/dvr-ir/index.html



■ 実は普通に実用的? ドライブレコーダ「DVR-ED」

 最後の製品は、ドライブレコーダ「DVR-ED」である。機能的にはマイクがなく映像のみしか撮れないCMOSカメラだが、車のダッシュボードに固定するためのスタンドが付属するほか、シガージャックから電源を撮るためのケーブルが付属している。


製品パッケージ。書いてあることが一番まとも カメラ本体。レンズ上部にあるのが赤色レーザー


背面。操作ボタン類はすべて側面にある シガージャック用電源コネクタが付属

 電源は単4電池3本を本体に格納することができ、エンジンを止めた場合はこちらに切り替わるなど、意外に良くできている。録画中に突然電源供給が切れるとファイルが破損するので、電池は必ず入れたほうがいい。本体には電源ボタン、録画/再生ボタン、レーザーボタンがあるのみだ。レーザーがあるのは、カメラの向きを確認するためである。


乾電池はバックアップ電源の役割も果たす 車載スタンドに取り付けたところ


動画サンプル

ezsm3.mov(10.5MB)
それほど広角ではないが、意外にちゃんと撮れている
編集部注:動画サンプルの再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 また上部には、映像出力もある。カーナビの外部入力に接続すれば、撮影後の映像を見ることもできる。残念ながら録画中のスルー出力は出ないようだ。

 メモリーは128MB~2GBのSDカード対応で、50分ごとにファイルを区切り、メモリが一杯になった場合は古いファイルから消されてゆく。撮影される動画はMotionJPEGのAVIで、320×240ドット/13.9fpsであるから、赤外線カメラDVR-IRと同じ製造メーカーなのかもしれない。

 試しに夕方から夜にかけて走行してみたところ、暗い場所ではヘッドライトの照射範囲に限られるものの、夜でも結構普通に対応できているのには驚いた。レンズの視野角は横120度、縦60度とあるが、それほど広角というわけではない。

 画質はそれほど高くなく、車のナンバープレートなどは車間が1mぐらいにならないと判別できない程度だが、簡易的な車載カメラとしてはなかなか面白い。ドライブの記録などにちょっと使うと、話のネタになるだろう。

□製品情報
http://www.digitalcowboy.jp/products/dvr-ed/index.html



■ 総論

 全体的にどのカメラもモニタすら持たないため、手持ちでアングルを決めるといったことができない。その代わりに、いったん撮り始めたら撮りっぱなし、何が写るかはお楽しみ的なおもしろさがある。

 また昨今はメモリーカードの価格下落により、大容量メモリが格安で手に入る。ネットで調べたところ、ノーブランド品は2GBで1,000円強である。

 これらのメモリを突っ込んで、日常のある時間を記録し続けるというのも、ムービーカメラというものの一つの方向性ではないだろうか。日常を面白く見せるアプリケーションがあれば、デジカメとはまた違った価値観を産むのではないかと思う。

 現状の難点と言えば、価格であろう。現在はオンラインショップのみでの販売だが、DVR-SP、DVR-IRの14,800円は高すぎる。車載のDVR-EDは9,800円は妥当と言えば妥当だが、まあ全体的に値頃感としては半額ぐらいではないだろうか。

 CMOSカメラは、本物のビデオカメラの代わりとしてのものではなく、全く違った目的としてのカムコーダとして活路を開けるのではないかと思う。そしてそれをやれるのは、高額商品が得意な日本ではなく、中国や台湾のような国だけだろう。

□DIGITAL COWBOYのホームページ
http://www.digitalcowboy.jp/
□関連記事
【1月10日】DIGITAL COWBOY、メモリカード記録の小型ビデオカメラ
-100円ライターサイズや、暗視カメラなど3製品
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080110/dc.htm

(2008年1月30日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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