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大河原克行のデジタル家電 -最前線-
オリンピック開幕1週間前、パナソニックの直前施策
-パナソニックマーケティング本部・西口本部長に聞く




パナソニックマーケティング本部・西口史郎本部長

 いよいよ北京オリンピックの開幕まで、あと1週間となった。

 なかでも、オリンピックの公式スポンサーである松下電器産業は、オリンピック商戦において、唯一、「オリンピック」のキーワードを使った販促活動が可能なAV機器メーカーであり、その強みを前面に打ち出した販売展開を加速している。

 「アテネの時もそうだったように、オリンピック商戦は、開幕1週間前がピークを迎える。ここでパナソニックの強みを改めて打ち出す」と語る松下電器産業パナソニックマーケティング本部・西口史郎本部長に、開幕直前の取り組み、そして、ポストオリンピック商戦への取り組みを聞いた。



■ プラズマは46型、液晶は37型が好調

 松下電器が発表した2008年度第1四半期の薄型テレビの販売実績は、プラズマテレビが前年同期比53%増の122万台、液晶テレビが同30%増の99万台。薄型テレビ全体では、32%増の221万台。オリンピック商戦が本格化するのにあわせて、販売台数は増加傾向にあり、5月は前年同月比28%増、6月は同54%増と、高い成長率となっている。

4月に発売された「VIERA」12モデル

 「アテネオリンピックの時が、薄型化、デジタル化をキーワードに、テレビの販売が増加したのに対して、今回の北京オリンピックでは、大画面化、フルハイビジョン化、リンク機能がポイントになっている」と、西口本部長は語る。大画面化の観点では、市場全体で約4割が37インチ以上になると見られており、松下電器では、「45インチ以上では、前年同期比2倍以上も成長率になっている」という。

 また、フルハイビジョン比率は松下電器の場合、6月実績で81%を占めた。「40インチ以上の領域では8割以上、50インチ以上ではほぼ100%がフルハイビジョンになっている」と西口本部長は語る。

 特筆できるのが、プラズマテレビの新たなサイズとして投入した46インチ。液晶テレビのラインアップとして新たに追加した37インチが好調なことだ。

 「46インチのプラズマテレビは、当社の出荷構成比の10%弱を占めるところにまで拡大し、読み通りの実績となっている。また、37インチの液晶テレビは、フルハイビジョンであることが評価を得て、このクラスにおける市場での存在感を高めている」という。

46型プラズマの「TH-46PZ800」 37型液晶の「TH-37LZ85」

 5月半ばを起点にしたオリンピック需要の立ち上がりは順調だ。「成長の描き方はアテネの時と同じ。5月には、一時的に需要が横ばいとなったが、オリンピックカーブともいえる成長曲線を描いている」。

 松下電器における薄型テレビの販売実績も、5月半ば以降、右肩あがりで推移している。例年ならば、ボーナス商戦が終わった段階で需要は減少に転じ、「ニッパチ」と言われるように、2月と並んで8月は需要が底になる時期だ。だが、「オリンピックカーブ」と表現されるように、8月に入っても需要は落ち込まず、むしろ、オリンピック開幕直前まで需要は成長曲線を描くことになる。

 「7月24日に地上アナログ放送の停波までが残り3年となり、アナログ放送で、画面にアナログの表示が開始されたことも、テレビの買い換え需要を後押しすることにつながっている。オリンピック開幕1週間前には、デジタルAV機器の需要がピークとなることから、この1週間は販売店との連携を強化することで、地デジへの買い換え訴求を含め、パナソニック商品の増販につなげたい」とする。



■ 選手の活躍次第で変化する需要

 さらに、「開幕後も日本人選手の活躍次第で、需要は継続する。日本人選手の活用に期待したい」とも語る。

公式スポンサーである松下電器産業は、オリンピック商戦で唯一、「オリンピック」のキーワードを使った販促活動が可能なAV機器メーカーだ

 実際、アテネオリンピックでは、柔道で金メダルラッシュが続き、そのハイライトシーンが何度も繰り返し、テレビで放映された。こうした映像の繰り返しの放映が、大画面で、しかもハイビジョン映像によって、オリンピックの感動のシーンを視聴したいという需要の創出につながった。

 今回の北京オリンピックでは、柔道、水泳といった、日本人選手のメダル獲得が期待される競技が前半に用意されている。そこでメダルラッシュが続けば、薄型テレビの売れ行きにもプラスの影響を及ぼすことになるだろう。

 また、松下電器では、オリンピック競技の番組中に、これまでにも放映してきたVIERAによる「パワーアスリート画質」、Blu-ray DIGAによる「感動まる録り」のテレビコマーシャルをスポットで放映するのに加え、オリンピック開催期間中向けに作成した新たなテレビコマーシャルも用意。「開催期間中、アテネオリンピック時を越える、過去最大規模でのテレビコマーシャルを放映する計画」だという。

 これによって、オリンピック開催期間中も、オリンピックと連動させた形で、パナソニック商品の購買へと結びつけようという考えだ。

販売店で大きくアピールされているVIERAの「パワーアスリート画質」 Blu-ray DIGAのコーナーでは「感動まる録り」

 一方、Blu-ray Discレコーダの売れ行きも右肩あがりだ。同社によると、レコーダ販売台数のうち35%をBDが占めており、6月にはBDレコーダ市場において、同社が約4割のシェアを獲得。トップシェアになったという。

 「BDレコーダは依然として品薄状態が続いており、販売店、購入者にはご迷惑をおかけしている。主要部品を内製化しているため、競合他社に比べて、旺盛な需要に対するキャッチアップは4月以降から可能となり、増産体制を敷けたのは早い方だったが、それでも完全には需要に追いつかないほど販売は好調」だとしている。品物が潤沢に供給できていれば、5割のシェアを獲得できた可能性もあったというほどだ。

 「4倍録りやビエラにリンク機能による使い勝手などが、販売好調の要因。また、市場調査では、BDレコーダにおける先進性、洗練性では、他社を大きく引き離し、パナソニックが第1位の評価を受けている。こうしたパナソニックブランドに対する高い評価や信頼性の高さも、BDレコーダの販売にプラスになっている」と西口本部長は語る。

薄型テレビ、BDレコーダ、ラックシアターのセット販売が増加している

 さらに、フルハイビジョン薄型テレビ、BDレコーダ、ラックシアターが新たな「三種の神器」として、セット販売が増加している点も大きな要素だ。

 「量販店におけるセット販売に加えて、地域販売店であるスーパープロショップでも、約2,000店舗でリンク展示を行なっており、これがBDレコーダ、ラックシアターの増販につながっている。大きな手応えを感じている」という。

 このように、オリンピック開幕直前までの販売は、パナソニックにとっては読み通りの動きになっており、「いまの段階では合格点」と西口本部長も太鼓判を押す。

 今後は、開幕一週間前、そして、オリンピック期間中の販売増にどうつなげるかが焦点となろう。



■ オリンピック後に向けた準備

 一方で、8月中旬以降のポストオリンピック商戦の動きはどうなるのだろうか。西口本部長はそこでも強気の姿勢を崩さない。

 「アテネオリンピックのケースを見ても、年末商戦は例年と同じように11月下旬から一気に立ち上がる。年末に向けて、引き続き、フルハイビジョン、大画面、リンク機能を訴求していく」とする。

 現時点では、まだ具体的な施策については言及しないが、西口本部長は、「きれいな映像を楽しみたいという機運が高まるだろう。フルハイビジョンがより重要なキーワードとなり、これに同期させるように商品戦略を考えたい」とする。

 VIERAとBDレコーダ、ラックシアターとの組み合わせで、パナソニックが打ち出すハリウッド画質の強みを生かし、映画を楽しむといった提案にもフォーカスする考えだ。

 また、10月28日には、アナログ停波まであと999日となり、いよいよ1,000日を切ることになる。政府としても、それにあわせた、地デジカウントダウンを開始する予定で、薄型テレビの買い換え促進に対する機運も高まると見られる。

 さらに、松下電器の場合は、10月1日付けでのパナソニックへの社名変更、ブランドの一本化に向けて、積極的な訴求を図ることになる。自ずとブランドの露出が高まることになり、これもパナソニックブランド商品の売れ行きに追い風になると見ている。

 業界の予測によると、2008年のテレビの国内販売台数は、1,000万台の大台を突破すると見られている。これは、約50年に渡るテレビの歴史のなかで、1996年と2000年に1,000万台を越えて以来、3度目のものとなる。

また、Blu-rayへのシフトが一気に加速し、2008年には、BDレコーダがレコーダ市場の57%を占めるとの予測も出ている。デジタルAV機器市場は、北京オリンピック後も引き続き旺盛な需要が見込まれる。

 パナソニックでは、ポストオリンピックに向けた準備にもすでに余念がないようだ。


□松下電器産業のホームページ
http://www.panasonic.co.jp/index3.html
□VIERAのホームページ
http://panasonic.jp/viera/index2.html
□DIGAのホームページ
http://diga.jp/
□関連記事
【3月6日】松下、「パワーアスリート画質」フルHD PDP/液晶VIERA
-北京五輪に向け、新世代PDPや32型倍速液晶など
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【2007年12月13日】【CE】「ビエラにリンク」の“に”の意味とは?
~ リンクマーケティングを進める松下電器の年末商戦 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071213/ce20.htm
【2006年6月1日【CE】松下が50型以下にフルHDは不要と断言する理由
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060601/ce08.htm

(2008年8月1日)


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき) 
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島(宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。

[Reported by 大河原克行]


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