■ BDで変貌するDIGA DVDレコーダ時代のDIGAと言えば、比較的保守的というか、レイトマジョリティ傾向の製品だったように思う。しかし本格的にハイビジョン時代に入って「ビエラリンク」が受けたあたりから、急速にネットワーク系の機能を強化して、録画機の範疇にこだわらない多彩な機能を搭載するポータルマシンとして変貌した。 自社のハイビジョンカメラの取り込みは当然として、静止画機能、ドアホン録画機能などを搭載してきた。加えてこの秋モデルでは、DLNA、写真共有、アクトビラ対応など、これ1台で最新のデジタルAV環境を楽しめるようになっている。DIGAをいつまでもコンサバなマシンだと思っているのなら、そろそろ認識を改める時だ。 今回登場したブルーレイDIGAは3モデル。1TB HDDの「DMR-BW930」、500GBの「DMR-BW830」、320GBの「DMR-BW730」だ。今回はDMR-BW930(以下BW930)をお借りしている。 BW930は、単に大容量モデルというだけではない。高性能オペアンプ、音響用コンデンサ、オーディオ専用電源などを搭載した、特に音質を重視した設計となっている。すでに販売されており、店頭予想価格は28万円前後となっているが、ネットではすでに20万円を切るところも出てきた。 この秋、BDレコーダ市場は事実上PanasonicとSONYの頂上決戦となるだろう。9月はPanasonicの独走が続いてきたが、SONY機が今月末から来月にかけて発売開始となる。注目のフラッグシップBW930の実力を、早速試してみよう。
■ 薄型だがフラッグシップ
BW930は3モデルの中で特に音質重視のフラッグシップ機だが、見た目は下位モデルとあまり変わらない。特に厚みという面では、「プレーヤーか」と思わせるほどの薄さで、まさに次世代機のイメージを上手くキープしている。前面から見ると下部パネルの緩くカーブした部分が不思議なアクセントとなっており、ただシンプルなだけではない存在感を醸し出している。 表面から見えるボタンは電源とメディアイジェクトだけで、下部のパネル内にチャンネル、録画、停止といったボタン類がある。i.LINK、SDカード、USBの各ポートもここにある。前面にアナログの外部入力端子を無くしたのは、かなり思い切った設計だ。
BDドライブは、カートリッジが使えないタイプである。PanasonicはBD時代にもかなりカートリッジにこだわっていて、一時期は天板の開いたカートリッジメディアなども発売したが、HD DVDとの規格競争の課程でベアディスクに転換した。記録速度もBD-R 6倍速対応と、高速化している。ただし記録には、6倍速対応メディアが必要となる。 内蔵HDDは1TBで、地デジをDRモードで約127時間記録可能。システムLSIユニフィエ内蔵のAVCエンコーダも新しくなり、動きの少ない映像では精細感をアップ、動きの多い映像ではノイズ低減を実現した。画質モードも低ビットレート側が新設され、2層BDメディアに24時間記録を謳っている。またAVCRECでは1層メディアに2時間10分録画可能と、映画1本分ぐらいが記録できるのも魅力だ。なお各画質モードの解像度は、ソースの解像度どおりとなっている。
以前のAVC録画では、音声をドルビーデジタルに変換していたが、今回はAACのままとなっている。以前はこれが原因で高速ダビングが事実上できなかったわけだが、この改善点は大きい。 背面に回ってみよう。アナログの外部入力端子は2系統で、アナなログ出力は1系統。ハイエンドモデルの本機のみ、金メッキ端子を採用している。そのほかD4端子、音声光、音声同軸、HDMIは各1系統ずつと、シンプルだ。なおi.LINK端子は背面にも1系統ある。 リモコンも見ていこう。前モデルとはボタン数などに違いはないが、以前「再生ナビ」だったものが「録画一覧」に、「操作一覧」だったものが「スタート」に名称変更されている。意味は同じといえば同じだが、より象徴的にしたということだろう。
■ 細かなところに手を入れてきたGUI
ではメニュー回りを見てみよう。番組表はGガイドで、最大19局表示、絞り込みではジャンル別にハイライト表示するといった機能は前回と同じだ。 今回は、4色ボタンの機能が新しくなった。以前は青と赤が「前日」「翌日」だったのだが、今回は青を「日付選択」としてこの機能を一つにまとめ、赤は「簡単予約」に割り振られている。「簡単予約」は、特に予約ウィザード画面も出さずに番組表の中にマーキングするような感じで予約設定を行なう機能だ。画質モードは、前回予約したものと同じものが自動的に選ばれる。 黄色ボタンは、「チャンネル別表示」となった。一つの放送局で1週間+1日の8日分が一気に表示される。帯番組の把握やイレギュラーな特番が割り込んでいる状況が、一目で確認できるのは面白い。
番組表からの予約は、いったん番組詳細情報が表示され、さらにそこから「番組予約へ」をクリックして、サブウィンドウ上で動作を決めるといったスタイルになっている。一手間増えたと言えば増えたのだが、メタデータを積極的に見せる作りになったと言える。 同時録画は2系統で、AVC録画はそのうち1系統のみ。だがユーザーはそれを意識することはなく、予約が重なったときに気づくぐらいである。ただ予約後は、B-CASカードがないといけませんよといった注意書きが、毎回長々と表示されるのがうっとうしい。メニュー表示速度も全体的にもっさりしているのだが、この注意書きのせいで操作感にリズムが出ない。予約の重複などは注意書きはあった方がいいだろうが、なんの問題のない予約で毎回B-CASカードのことを思い出させるのはどうにかしたほうがいいだろう。
自動録画に関しては、新たに「新番組おまかせ録画」機能が付いた。ドラマとアニメのみだが、地上波とBS別々に録画設定ができる。これに該当する番組はDRモードで自動録画される。「予約確認」で設定内容を変更すれば、DRモード以外でも録画は可能だ。他社に比べればもう少し練り込みが必要なところではあるが、とりあえず連続で放送される番組の初回を見逃すというがっかり感が減るのは歓迎したい。 録画一覧では、選択した番組の文字が大きくなり、サムネイルも拡大される。また一拍おいてサムネイルでの動画撮影が始まり、内容が確認できる。また録画中の番組も、サムネイル上で追っかけ再生を行なうなど、細かいところまでよく練られている。さらに未視聴、新おまかせといったタブが充実して、録画済みの番組が探しやすい。
画質に関しては、今回AVCエンコーダが新しくなったこともあり、低ビットレートでも十分実用的となっている。HEモードぐらいまでは、絵が荒れるというよりも、「ちょっとフォーカスが甘いかな?」ぐらい感じで、テレビから数メートル離れて見たら気づかないかもしれない。HLモードは階調が多少目立ってくるが、メディアへの格納効率から考えたら、十分実用的な画質である。
■ チャプターが便利な編集機能 続いて編集・ダビング機能を見ていこう。DIGAでは以前から、開始点・終了点を指定する部分消去が可能である。今回も同じだが、同時録画された番組、つまり録画1と2の両方に自動でチャプターを付けてくれる「Wオートチャプター」を搭載した。
編集時にはチャプター点を視覚的に確認する方法はないが、「スキップ」ボタンで次のチャプターにジャンプすることができる。CMポイント以外の部分にチャプターが打たれるところもあるが、CMポイントを外すことはまずない。そのポイントもかなり正確で、CM入りで数フレーム戻す必要がある程度だ。編集の効率からすると、この「Wオートチャプター」はかなり重要なポイントだと言える。またダブル録画中であっても編集作業が可能など、地味ながら使い勝手がいい。 ダビングに関しては、ダビング10対応になったことで、かなり一発勝負的な部分から解放された。やり直しができるという点では安心できるが、同じようなメディアに複数枚コピーを作るという用途がほとんど存在しないため、ありがたみもそれなりである。SONY機はウォークマンへの書き出しなどでメリットを出しているが、ポータブル機器でこれといった動画再生機を持たないPanasonicは、そのあたりの戦略で苦戦しそうだ。 メディアのフォーマットは、前モデルでは番組予約から入って行なうというそれ絶対わかりませんから的仕様だったが、今回はBDとDVDの専用項目ができた。そこからDVDメディアのAVCHDフォーマットなどができる。また音声記録タイプなどを気にすることなく高速ダビングが可能だ。ここにきてようやくAVCRECも本領発揮というところである。
そのほか、ネットワーク系の機能としてはDLNA対応がある。ネットワーク設定にあるクライアント機のMACアドレスを再生許可指定することで、外部からの再生が可能だ。事前にMACアドレスを調べる必要があるのは若干面倒だが、バッファローのLinkTheater「LT-H90シリーズ」で確認したところ、サーバーのところに「ディーガ」と出てきた。 これまでこの手の機器との接続に関しては、Panasonicはかなり後手に回ってきたイメージがあるので、こういう画面にがっちり「ディーガ」と表示されるというのは、なんだか感慨深いものがある。クライアント機器は最大5つまで許可可能だ。 もう一つネットワーク機能として、アクトビラを紹介しておこう。 これまでアクトビラはテレビに搭載されてきたが、レコーダに搭載されるのは珍しい。レコーダはそろそろ、初期ハイビジョンテレビを拡張するためのアフターマーケット的要素を含み始めている。レコーダを買うだけでVODが楽しめるというのは、アクトビラ的にもマーケット拡大に有利である。 個人的にアクトビラでもっとも便利だと思っているのは、実はVODではなく「深夜の出前」である。自宅あるいは会社エリアでこの時間にどこならデリバリーしてくれるかが、わざわざ出前メニューのファイル束から探し出さなくても済むというのが、もっとも恩恵を受ける部分である。アクトビラの本質とは言えないが、案外情報革命とはこういう形の必須情報から定着して行くのかもしれない。
■ 総論 DVD全盛時代、PanasonicのDIGAシリーズを「あれ? ちょっといいんじゃない?」と思わせたのは、VHSとの3in1機がきっかけだったように思う。その後BD時代になって、最初から2層メディア対応だったり、Rec-PoTからのムーブか可能だったりと、やれることを全部最初から注ぎ込み、他社をリードしてきた。 そして今回のラインナップでは、エンコーダの性能をあげてAVCRECを本格的に実用レベルに引き上げ、BD-Liveやアクトビラにも対応、さらにDLNAにも対応した。録画機能に関しては、手薄だった自動録画機能にも着手した。デフォルトではDR記録するため、ユーザーが圧縮録画予約するときに邪魔にならない。 全体的に隙のない作りである。唯一ダビング10を利用したポータブル機への書き出しが未対応だが、そこがSONYとの分水嶺ということだろう。 画質に関しては、シャッキリ感を求めるならSONYの「BDZ-X100」、低ビットレート時の馴染みの良さを求めるならBW930といったところだろうか。本機には画質補正の設定はできるが、段階的ではなく入か切しかない。ユーザーが効果を把握するというよりも、入れると決めたらそれで終わりという割り切り方である。逆にその辺をこだわらないから、メニュー系統がすっきりしているということだろう。 オリンピックが終わって、テレビの需要は一段落した。秋から冬にかけては、ビデオカメラとレコーダのシーズンである。今年はCEATEC前に新製品が出そろったこともあり、すでに商戦はスタートしたと見ていいだろう。ただ、DVDレコーダでは低価格合戦になって各社とも疲弊したので、低価格路線は慎重に回避してくるだろう。 BDメディアなんて使わないよなー、という判断もあるだろうが、それとは別にテレビ映像の高品質化、ホームネットワーク系の充実と、BDレコーダは徹底的に使いこなすとかなり面白い機器になってきた。ある程度値の張る商品だが、次世代規格競争で見えなくなっていた大事な部分に、各社とも立ち戻りつつあるのかもしれない。
□松下電器産業のホームページ (2008年9月17日)
[Reported by 小寺信良]
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