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レグザのRGB Mini LEDは“向き”にもこだわる。「エンジニアの美意識と技術の高さに脱帽だ」

85V型のレグザ「85ZX1S」を堪能

今年の液晶テレビ、注目はレグザのRGB Mini LED

テレビの不思議の一つに、人はすぐその大きさに慣れてしまうということがある。自分の経験を振り返ってみても、そうだ。ブラウン管時代、32V型横長テレビを自宅のリビングルームに入れたときも、初日こそ「わっ!デカッ」と思ったが、2日で慣れた。1985年に37V型のブラウン管テレビが登場したときはその巨大さに衝撃を受け、こんな大画面テレビを買う人がほんとうにいるのだろうかと本気で心配したが、いま40V型前後の液晶テレビを見て、「デカい!」と言う人はいないだろう。

その後ぼくは50V型(画面の対角線の長さです)のプラズマテレビを、65V型の有機ELテレビを導入していったが、いつも「わっ!デカッ」と思ったのは初日だけ、すぐにその大きさに慣れ、映画や音楽ライヴなどを観るにつけ、もっと大きなテレビが欲しいなあと考えてしまうのだった。

そんな御同輩が多いのだろう、昨今75V型から100V型の超大画面テレビの売上げが好調と聞く。そんな超大画面で何を観るの? と思われる向きもあるかもしれないが、4K収録番組がガゼン増えている映像配信サービスで古今東西の名画を観るにつけ、やはりコレは大画面で観てこそ作品の力がわかるナと思うし、MLBやサッカーのワールドカップ中継なども引きの映像が多くなり、大画面で観てこそ楽しいと思えるようになってきているのである。

しかも4Kの高精細映像で、ノイズ処理の上手な大画面テレビであれば1~2H(画面高)前後の視距離で観てもまったく違和感がない。つまり12帖クラスのリビングルームの壁の一部をテレビのスペースにあてることができれば、85V型前後の大画面が導入可能ということになる。

そんな大型テレビ選びにおいて、“高画質なモデルを、手に届く価格で”と考えた時、2026年の注目技術は液晶テレビの“RGB Mini LED”。各社がこの新しい技術に挑んでいるが、その中でも注目したいのが、レグザのRGB Mini LEDだ。

レグザのRGB Mini LEDバックライト搭載、液晶テレビ「85ZX1S」

エリア駆動だけじゃない、レグザのRGB Mini LEDは“向き”にもこだわる

「ZX1S」の100V型「100ZX1S」、85V型「85ZX1S」

レグザから登場した85V型の超大画面液晶テレビ85ZX1Sをじっくり観る機会を得た。このZX1シリーズ、100V型、116V型もラインナップされていて、なんとこの85V型が最小モデル(!)ということになる。レグザの視聴室に置かれた85ZX1S、たしかにデカいが、これまたじっくりと映像を観ているうちに「やはりこの大きさじゃなきゃ……」と思うようになるのだろうか。

ZX1シリーズはバックライトにRGB3原色のMini LEDを用いたモデル。「レグザ史上もっとも色鮮やかな高画質を実現」したシリーズと謳われている。パネルは液晶分子を水平方向に駆動させるADSパネル。基本原理は一般的なIPSパネルと同等だが、視野角補正偏光フィルターが組み込まれているのが大きなポイントだ。ZX1シリーズのディスプレイ表面は光沢(グレア)のAR(Anti Reflection)コート・タイプである。

左が量子ドット×Mini LED、右がRGB Mini LED。これまでの液晶テレビで使われてきた「白色LED」や「青色LED」とは異なり、赤・緑・青色のLEDチップをバックライトに敷き詰め、映し出されるシーンの色に応じてRGB LEDを緻密に調光することで、高いコントラストと高純度な色彩表現を行なう
ZX1シリーズのディスプレイ表面は光沢(グレア)のAR(Anti Reflection)コート・タイプである
手をかざしても、ほとんど写り込みがない

本機のバックライトに採用されたRGB Mini LEDは、レグザのオリジナル技術によってRGBそれぞれのバックライトの向きが最適位置に調整されていて、3原色の光エネルギーのピークが峻烈に輝く。つまり、色の濁りがなく正確な色再現ができ、明るい画面が得られるわけだ。色度図上で、従来の単色LEDモデルにたいして115%の広色域化が果たされているという。

100ZX1Sを第三者評価機関に持ち込み、「輝度」「色域」「カラーボリューム」「コントラスト」を実際に計測したところ、ピーク輝度は4,000nits近くにまで達し、カラーボリュームに関しては、広色域LEDモデル比で約1,700倍もの非常に広範囲な色空間を描写できていることがわかったという
左がRGB Mini LEDの「85ZX1S」、右が量子ドット×Mini LEDモデル「85Z970R」。左のRGB機は、色が飽和せずに深紅を描写できているが、右は明部が飽和し朱色のようなバラになっている

また、この85ZX1Sはコントラスト性能の向上を目指し、RGB個別にバックライトを2万弱のエリアで独立駆動を行なっている。これにより不要な色の漏れ光を少なくでき、明部の色ヌケと暗部の黒浮きを抑えたという。

85ZX1S(左)と、同型サイズのRGB Mini LEDバックライトシステム
RGB Mini LEDバックライトシステム
昨年発売された116V型「116ZX1R」のRGB Mini LEDチップ。サイズに注目
こちらが'26年モデルで採用されているRGB Mini LEDチップ。人差し指とRGB Mini LEDチップの大きさを比べると、非常に小さい

そして、このハイコントラスト性能と鮮やかな色再現を最大化するのが「レグザエンジンZRα」である。この映像信号処理回路によって実現する「AIシーン高画質PRO」機能は、ネット動画やテレビ放送、HDMI入力映像に対して、それがどんなシーンなのかをAIが判別。例えば、夜景のような自発光中心のシーンを判別すると、RGB Mini LEDのポテンシャルを活かして光の鮮やかさを強調したり、人物の肌色や衣装の質感をリアルに再現したりときめ細かな制御を行なっている。

AIシーン高画質PROの例。「ライブ」と判断すると、照明やレーザー光の眩さを再現し、ハレーションを抑えてリアルなライブ映像に
「夜景」と判断すると、小さな光のきらめきや引き締まった黒を再現
「花火/星空」と判断すると、花火や星空の輝きを再現。ノイズを抑えた高画質になる

画質だけじゃない、ZX1Sはサウンドも一味違う

近年のレグザの高級機は、画質のみならず音の良さに驚かされることが多いが、85ZX1Sののサウンド・システムの充実ぶりもすごい。画面下部に2ウェイのL/Rスピーカー、2基のセンタースピーカー、画面両サイドに2ウェイスピーカー、画面上部に2ウェイスピーカー、背面のウーファーと合わせて全部で22基のスピーカーをぐるりと配置。また、背面のウーファーは密閉箱タイプを2基ジョイントし、不要振動をキャンセルする仕組みが採られている。

85ZX1Sに搭載しているスピーカーユニットと、その配置
ウーファーを密閉したエンクロージャーに入れると共に、不要な振動をキャンセルするためのユニットも搭載。重低音が濁らないようにしている

マルチバンドイコライザーは従来の5バンドから20バンドに拡張されており、やろうと思えばより緻密な音質調整が可能だ。

マルチバンドイコライザーは従来の5バンドから20バンドに拡張

それからぼくが興味深く感じたのはラウドネスコントロール機能。ボリュウム位置30以下に設定すると、小音量時に聴きづらくなる低音と高音を自動的にブーストしてくれるのである。また、好みに応じてそのブースト具合を細かく調整することもできる。

ラウドネス補正も可能

加えて特筆しておきたいのは、本機のeARC/ARC対応HDMI端子のPCM出力が192kHz信号に対応したこと。これまではダウンサンプリングされていた192kHz信号がダイレクトに出力できるようになったわけである。音にこだわってAVアンプとの連携でホームシアターを実践されている方にとってこれは朗報だろう。

4系統のHDMI入力は、すべてHDMI 2.1に対応。さらに、eARC/ARC対応HDMI端子のPCM出力が192kHz信号に対応した

レグザのRGB Mini LED、エンジニアの美意識と技術の高さに脱帽だ

視聴室を全暗にし、UHDブルーレイ『マリアンヌ』を“映画プロ”モードで観た。第2次世界大戦下、モロッコのカサブランカで出会う男(ブラッド・ピット)と女(マリオン・コティヤール)。その夜のシーンをじっくり精査したが、驚かされたのはその漆黒の再現だ。

薄暗いカサブランカの街を移動し、アパートの屋上で語り合う二人。全暗環境で観ても、黒がしっかりと沈み、暗部階調をしっかりと描写するのである。しかも、その暗部が緑に転んだり、赤っぽくなることなく、適正なホワイトバランスを維持していることがわかる。RGB個別にバックライトをきめ細かくエリア駆動したメリットを強く実感させられるシーンだ。

「暗室環境下では黒が浮く」というこれまでの液晶テレビの常識を覆す、すばらしい表現力というほかない。加えてマリオン・コティヤールの艶やかな肌、オレンジ色の照明の美しさ、女性が着る上着のバラの刺繍の、紅色の深さにもうっとりさせられる。この赤の表現力の豊かさは、RGB Mini LEDバックライトを的確に制御しているからこそだろう。画質担当エンジニアの美意識と技術の高さに脱帽だ。

それから、映像が映し出される前には「わっ!デカッ」と思った85V型大画面だが、画面から1.5メートル(約1.5H)ほど離れてこの映画を観ているうちに家庭用テレビという軛(くびき)を逃れて、何か新しい映画観賞用大画面に対峙しているような気分になる。

ぼくはふだん暗室環境の中で110V型・スクリーンにJVCのD-ILAプロジェクターの映像を投射して映画を楽しんでいる。劇場と同じスタイルで観る映画はとても楽しいが、HDRで制作された作品のほんとうの醍醐味を得られているかというと、それは心許ない。プロジェクターではどうしてもHDRで仕上げられた作品の峻烈な光や明部階調を表現しきれないからである。そう考えると、HDRの魅力が実感できる超大画面直視型ディスプレイこそが、これからの時代の趣味の映画観賞用表示装置の本命なのかもしれないと思う。85V型のレグザZX1Sを観ながらそんなことを考えたのである。

では、Dolby Atmos収録の米国盤UHDブルーレイ『Michael』を再生してみよう。マイケル・ジャクソンが初めてムーンウォークを披露した「モータウン25周年記念コンサート」のステージ場面。「ビリー・ジーン」を歌い踊るマイケルに拍手をおくり、熱狂していくオーディエンスを捉えるのだが、コレがほんとうにテレビの音かと思わせる臨場感が味わえるのである。マイケルのヴォーカルもじつに生々しい。

ジャクソン5が初めて録音に臨むロスアンジェルスのスタジオ。モータウンの総帥ベリー・ゴーディ・ジュニアがマイケルのヴォーカルのすばらしさに息をのむシーンを観たが、マイケルの父親とベリー・ゴーディの台詞のやりとりなど、とても聞きやすい。1.5Hの距離では声が下から聞こえる違和感はあるが、トップスピーカーの音量を上げることで台詞をリフトアップすることが可能だ。

いずれにしても、本機のサウンド・システムの実力をもってすれば、台詞が画面下から聞こえる凡百のサウンドバーなどもういらないと断言したくなる。本機のヘッドフォン出力にサブウーファーをつないだほうが、断然迫力のある音が実現できるだろう。

RGB Mini LED搭載レグザ、どれを選ぶ?

レグザのRGB Mini LEDを搭載したシリーズは、ZX1R/ZX1Sと、ZX2S、ZX3Sだ。いずれも「レグザエンジンZRα」を採用し、「AIシーン高画質PRO」も利用できるなど、共通点は多い。一方で、パネルの表面仕上げや、エリア分割数、スピーカーなどに違いがある。主な違いは、以下の表の通りだ。

ZX1SとZX2Sの最大の違いは、エリアコントロールの分割数。先述したように85型のZX1Sは2万弱分割で、ZX2Sは数千分割だ。

また、画面サイズのバリエーションが多く、価格も抑えられたZX3SとZX1Sの違いは大きく3つ。(1)ZX3Sには、ZX1S(100V型は除く)/ZX2Sに搭載されている広視野角ワイドアングルシートが入っていない。(2)画面処理がハーフグレア(ZX1S/ZX2SはグレアのARコート)。(3)エリアコントロールの分割数がZX2S同様に数千分割となる。

つまり最高画質の超大画面を求めるならZX1S、75V型、65V型でハイクォリティを追求したいならZX2S、コストパフォーマンスを求めるならZX3Sということになるだろう。

オーバーオールの性能向上を果たしたレグザの85V型大画面85ZX1S。自室に入るかどうかを真剣に検討し始めた自分がいる。

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。