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第57回:やっと出たアイ・オー・データのHDDレコーダ
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■ アレはもう出ない?
アイ・オー・データ機器といえば、メモリやインターフェイスカードといった周辺機器メーカーとしてPCユーザーにはおなじみだが、ここ数年DVキャプチャやTV録画カードなど、ビデオ関係機器を強化してきた。その一環というか集大成というか、拡張カードではなくスタンドアローンで動く録画機を開発ということで、昨年9月のWORLD PC EXPO 2001の記事で話題となった。
昨年12月末にいよいよ発売か、ということで、編集部にもチラシ見本などが届けられ、当ElectricZooma!でも口を開けて待っていたのだが、これが待てど暮らせどブツが出てこない。年が明けてからも時々思い出したように編集部内で「そういえばアイ・オーのアレ、どーなってんでしょうねぇ」などと時たま噂にはなるものの、同系列の製品であるNEC「SmartVision Pro HD40」や日本デジタル家電の「ロクラク」などがどんどこ出てきてすっかり影が薄くなり、「もうアレは出ないのでは」、「出ないって方向でひとつ」という話でまとまりつつあった昨今、突然「やっぱ出る」ということになったのである。
お化けや発作が出るのは困るが、製品が出るのはいいことである。アレとはもちろん、アイ・オー・データの「Rec-On」だ。4月25日発売で、店頭予想価格は80GBモデルが8万円前後、40GBモデルが7万円前後ということらしい。当初の特徴であるHDD外付けというコンセプトそのままに、完成度が上がるまで発売を延期していたというRec-On、さっそくその実力を見てみよう。
■ コンパクトでスマートな外観
まずはハードウェア的な面から見ていこう。製品は、本体部分とHDD部分で構成される。HDDが40GBのものが「VR-HDA40」、80GBのものが「VR-HDA80」というモデルとなる。本体だけでHDDなし、という販売はない。
第一印象としては、本体とHDDユニットが別ということで、なんとなく煩わしさを感じた。しかし実際にセットアップしてみると、2つに分かれていることで逆にそれぞれのパーツのすっきりした印象が強調されて見える。デザイン的にもなかなかうまい作戦だ。
意外にすっきりした印象の「Rec-On」 | 本体とHDDの底面を樹脂製台座で連結する |
本体のサイズは、いわゆる外付けHDDユニットちょうど2つ分ぐらいで、なかなかコンパクト。前面や側面はアルミの質感をうまくつかったデザインで、綺麗に仕上がっている。ただ前面にIN・OUTコネクタがあるので、ここをフルに結線してしまうとちょっとごちゃごちゃした感じになるだろう。
背面には、RF入力端子、テレビに接続するためのMonitor Out、PCと接続するためのUSB1.1端子、ACアダプタ用電源コネクタがある。
本体背面端子類。2本のケーブルはHDDユニットの接続用 |
Rec-Onでは、本体から出ているi・CONNECT用と電源用のケーブルで1対1接続となる。簡単に繋がるのは結構だが、HDDだけ2台というわけにはいかないので、「増設できる」ではなく、「交換できる」というイメージが正しい。
別売のHDDユニットとしては、正式サポート品として40GBの「HDA-i40」と80GBの「HDA-i80」がある。同社にはさらに大容量のHDDシリーズもあるのだが、Rec-Onがそれらをサポートするかはまだアナウンスがないようだ。
本体とHDDユニットが別でも電源を別に取る必要はない | 左が「SOTO-3.5iU」、右が「HDA-i40」。USB端子以外の違いはない |
また同社にはPC上級者向けの「挑戦者」というブランドに、3.5インチ内蔵用IDE-HDDの外付けケース「SOTO-3.5iU」がある。外部コネクタ類は、USBコネクタがある点を除けば、純正HDDユニットと全く同じだ。これに編集部に転がっていたHDDを入れてみたところ、なんなく使用できた。もっと大容量のHDDを入れたり、安価に交換HDDがほしい人は、これを使う手もあるわけだ。しかし残念ながらこの「SOTO-3.5iU」、100個だけの限定生産で、すでに完売してしまっている。
挑戦者(箱と本体) |
■ 3種類の予約システム
Rec-On内部のソフトウェアは、シンプルで必要最小限といった感じだ。トップメニューには4つのサブメニューがあるが、このうち「プログラム再生」以外のメニューはリモコンにダイレクトにアクセスできるボタンがあるので、わざわざトップメニューから入っていく必要はない。
設定項目としては、別途CSなどのチューナからのビデオ信号をキャッチして自動的に録画をスタートさせる「シンクロ録画」、おなじみの「タイムシフト」、前回ストップしたところからのファイル再生を実現する「レジューム」といったものがある。
Rec-Onのトップメニュー。ここからすべての機能にアクセスできる | 機能設定画面。基本的な設定がまとめられている |
予約システムは、本体のみでは日時とチャンネル、画質を設定するシンプルなもの。リモコン操作による簡単なものだ。別途USBでPCと接続することでiEPGでの予約、さらに一歩進めて携帯電話からの予約が可能になる。
予約設定は良くも悪くもシンプル |
iEPGによる予約は、「ONTV Japan」の番組表から録画したい番組をクリックして[iEPG録画]ボタンをクリックすると、自動的に「Rec-On予約ウィザード」が起動する。日時やチャンネルなどはすでに入力された状態になっているので、内容を確認しながら進んでいく。
この予約情報はUSBを通じてRec-On本体に転送されるわけだが、iEPGで得られた番組名や内容情報などはRec-On本体には格納されない。従って本体側では、単純に日時とチャンネルだけの情報しかわからなくなってしまうのは残念だ。
iEPGでの予約には「ONTV Japan」を利用する | ウィザードで必要な変更をしながら予約をセットする |
もう1つの予約システム、ケータイやWEBを使う予約には、付属の「reserMail」というソフトをPCに常駐させておく。もちろんRec-OnとPCはUSBでずーっと接続しておく必要がある。さらにこのシステムを利用するには、WEB上にあるテレビ番組ガイド、「iTV」を利用することになる。
基本的な仕組みはこうだ。出先からケータイならiモードかJ-Sky、PCならWEBブラウザで専用ページにアクセスする。ここはユーザーを特定するために会員制となっており、IDとパスワードを使ってここにログインする。番組表から予約したい番組を指定すると、その情報がreserMailサーバ内に保存される。
一方でRec-Onに接続したPCに常駐している「reserMail」は、一定時間(デフォルトでは30分)ごとに「iTV」にアクセスし、予約情報があればダウンロードして、Rec-Onに予約情報を転送する、という仕組みだ。専用メールサーバを利用した予約システムと考えればいいだろう。このサービスは月額の会員料金などはないが、ケータイからの利用は通信料がかかる。
reserMailによる予約設定完了画面。同様の内容をメールでも確認できる |
難点をあげるならば、iEPGにしろreserMailにしろ、PC側から予約はできるものの、現在の予約状況を確認したり修正したりはできないという点だ。非常に一方通行な作りになっており、あくまでも予約の補助ツールといった使い方にならざるを得ない。
■ 画質と使い勝手
録画した番組は、リストメニューで選択する。一応先頭画像のサムネイルが出るが、予約録画の場合先頭は大抵はCM部分だったりするので、どんな番組だったかは再生してみないとまったくわからない。このあたりは機能的にスタンドアローンのHDDレコーダではよくあるレベルなのだが、メニュー画面がまるでDOSプログラムのように素っ気ないので、なんだか機能が低いような印象を受ける。もう少し見せ方を工夫したほうがよかっただろう。
録画された番組を管理するリストメニュー |
筆者の見たところでは、中間のSPモードでも、ブロックノイズはほとんど目立たない。ただし輪郭がちょっとにじむので、文字などはちょっと見づらくなる。しかし6Mbpsにしては、まずまず良好な画質である。
一方長時間用のLPモードでは、ブロックノイズはかなり多めで、輪郭も甘く、文字はかなり読みづらい。これはざっと内容を確認する程度だと考えた方がいい。
高画質のHQモードでは、さすがに画質はいい。全体的に薄くモスキートノイズを感じるが、カメラの早い動きにも十分追従する。文字なども読みやすく、多くの人は満足できるだろう。
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MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい |
再生機能として2倍速再生があるのはいいのだが、再生音のピッチもそのまま上がってしまうので、音声は聞きづらい。早送り代わりに使うのがいいところで、いわゆる「時短プレイ」としては有効とは言えない。
また再生時の早送りは、ボタンを押すごとに8倍、16倍、120倍、360倍とステップアップする。しかしさすがに360倍速はちょっと余分だったろう。なんせ1時間が10秒で過ぎるので、あっと思ったときにはもう録画の最後まで来てしまっている。
本体の動作音は、やはりコンパクトなだけにファンの排気音やHDDのシーク音などはそれなりにするが、うるさいほどではない。また、予約待機中はスタンバイにしておけるので、常時音がするわけではない。
■ 総論
パソコンに機能依存するテレビ録画機器というのは、いろいろな製品が出ていて今やできて当たり前のようになってきている。しかしこれはこれでマシンパワーを食うものだし、毎日毎日安定して動作させるのもなかなか面倒なもの。録画機能をPCの外に出したいと思っている方も多いことだろう。
Rec-Onは、パソコン周辺機器として置いてじゃまにならないサイズだし、HDDユニットはいろいろ潰しが利いて面白そうだ。ケータイで予約しようとするとPCと常時繋いでいなければならないが、その辺を使わなければスタンドアローンで動くので、自宅はノートパソコンだけ、という人でもプライベートな録画機器として活用できる。
もっと割り切って、iEPG予約も使わない、PCと連携しないというのであれば、思い切ってリビングのTV周辺においても面白いだろう。すべての操作はリモコンで可能なので、パソコンが苦手な家族でも運用は難しくない。そういう意味では、パソコンのマニアから一般人まで、いろんなユーザーレベルに合わせられる製品だと言える。
Rec-Onと同じような製品コンセプトを持つものとして、どうしても日本デジタル家電の「ロクラク」と比較したくなるのは人情だ。ソフトウェアの作り込みとしては、ロクラクのほうが機能は豊富である。また本体にも操作ボタンがあり、リモコンが見つからないときでも操作ができる。しかしロクラクは製品自体はしっかりしているものの、残念ながら販路がソフマップ系列かダイレクトショップしかなく、また出荷量も少ないので、買いたいのにモノがないという、いわゆる「機会損失」が起こりやすい。
一方アイ・オー・データの製品ならば、パソコン系ショップならまず扱うだろうし、出荷量も需要に対して十分確保できるだろう。欲を言えばストリート価格であと1~2万安いと買いやすいといいのだが、セパレートにしたことでコストがかさむのだとしたら、ちょっと痛し痒しである。しかしまあ、手頃な録画機が欲しいという人にはちょうどいいサイズだ。
家電の手堅さと、潰しのきくPC周辺機器の中間のような録画デバイス、こういうものをうまいこと作れるのは、まさにアイ・オー・データのような会社なのであろう。
□アイ・オー・データのホームページ
http://www.iodata.co.jp/
□製品情報
http://www.iodata.co.jp/products/video_rec/index.htm
□関連記事
【4月18日】セパレート型HDDユニット採用のHDDビデオレコーダー「Rec-On」が発売(AKIBA)
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20020427/etc_recon.html
【4月18日】アイ・オー、世界初のセパレート型HDDレコーダ「Rec-On」
―USBでパソコンへの取り込みが可能、EPGにも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020418/iodata1.htm
【2月20日】ElectricZooma! 第48回:おやぁなにげに最強ですかぁ!?
~一見怪しい49,800円の「ロクラク」はスゴイぞ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020220/zooma48.htm
【2001年9月20日】WORLD PC EXPO 2001会場レポート
~映像記録編:サムスン、アイ・オーがHDDレコーダを参考出品~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010920/wpe1.htm
(2002年5月1日)
= 小寺信良 = | テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。 |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp