infoCommでは、ビジネスツールとしての大画面、そして映像鑑賞を目的とした大画面の双方を取り扱う、まさに本連載のタイトル「大画面マニア」にうってつけのコンベンションだ。
今回の大画面マニアでは、infoComm展示会場で見つけた注目の大画面製品を紹介する。
■ 三洋電機、世界初のリアルHDTV液晶プロジェクタ 三洋電機は世界初となる、リアルHDTV解像度1,920×1,080ドットのパネルを採用した液晶プロジェクタ「PLV-HD10」を発表した。 採用液晶パネルはアスペクト比16:9、パネルサイズ1.65インチの透過型高温ポリシリコン液晶。ランプはランニングコストの安いUHPランプを採用。これを最大4灯使用することで、最大輝度6,000ANSIルーメンの高輝度を実現した。2灯での運用も可能で、このときの最大輝度は半分となる。スタック投影にも対応しており、その際の最大輝度は約12,000ANSIルーメン。
光学系は色温度6,500Kを前提に設計しており、30bit色演算のデジタル回路を搭載、1080i映像を的確に1080pへとプログレッシブ化して表示する。レンズシフトは電動X-Y軸可変に対応。当然フォーカシングやズーム調整も電動だ。 その映像を見ての第一印象は、やはり「1080i映像に含まれる情報を余すことなく表示できている」というものだった。コントラスト比1,000:1というハイコントラスト性能も圧倒的で、薄明るいところで投写されている映像にもかかわらず、発色が非常に鮮烈であった。 発売は10月位を予定。価格は未定としながらも1,000万円前後からそれ以上が目安とのこと。業務用が前提の製品ではあるが、3管システムからの移行を考えているハイアマチュア層も視野に入れているという。担当者によれば、実際、会期中もそうしたハイアマチュア層からの問い合わせが非常に多いそうだ。
■ NEC、超短焦点のミラー投写プロジェクタをデモ 3月に発表のあった、非球面ミラーを使ったDLP単板式プロジェクタ「WT600」の量産モデルが初めて一般公開された。3月発表時からスペックに変更部分もあるので、改めて紹介する。 まず、映像エンジン部分は基本的な単板式DLPプロジェクタと変わらず、アスペクト比4:3、0.7インチサイズの1,024×768ドットDMDチップを1枚使用する。担当者が同社のデータプロジェクタLT240/260シリーズとほとんど同じと説明していたことから、画作りはそれらと似通ったものになっているようだ。 ランプは220W NSHランプを使用、ランプノーマルモード時で220W、エコモードで176W駆動となる。最大輝度はノーマルモードで1,500ANSIルーメン、エコモードで1,200ANSIルーメンと、一般的なフロントプロジェクタに比べて圧倒的に明るい。技術担当者によれば、これは光学的な投写レンズ内反射がほとんど起こらない、ミラー投写方式ならではのアドバンテージとのことだ。
この方式を液晶3板式で実現できないかという質問に対しては、「不可能ではないが単板式DLPが最もマッチしている」との返答。映像パネルに対して画像の打ち上げが大きくなるこの方式を3板式に適用すると、各パネルの映像を高精度で合成するための光学設計が難しくなるためだという。単板式DLPでは合成のための光学エンジンが不要なため、有利かつ、コストダウンにも結びつく。この方式は当面、単板式DLPを採用すると思われる。 コントラスト性能は3,000:1を達成。同価格帯の従来のフロントプロジェクタと比べると、群を抜いて高い。100インチ(4:3)の投写距離はわずか65cm。40インチ(4:3)ならば6cmと圧倒的な投写距離を実現する。これは冒頭で述べたように、投写レンズではなく非球面ミラーを使って映像を投写しているためだ。具体的には非球面ミラーが曲率のきつい大口径レンズの役割を果たしている。なお、この光学設計は富士写真光機と共同で行なわれたとのこと。
なお、100インチでは約2%の歪曲が出るとのことで、もっとも理想的な映像が出るのは画面サイズ60インチ前後だそうだ(型番の600もそこからきているのだとか)。 この超単焦点性能により、フロント投影でありながら、画面の前に立ってのプレゼンが行なえるという点、特別な設置金具棟を使わずとも画面の前に置いておくだけの常設ができるなどの利点が生まれるわけで、今後のデータプロジェクタの新流として期待されている。 第1世代の製品はデータ向けだが、いずれはホームシアターモデルの登場もあり得るという。担当者によれば「16:9パネルを使った方が鏡の面積を小さくでき、コスト的にも有利になるかもしれない」とのことだった。 米国の価格は6,995ドルで、8月からの発売を予定している。日本国内での価格と発売時期もほぼ同じとなる見込みだ。
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■ Optoma、HD2 DMDパネルを採用した低価格ホームシアター機 Optomaは本連載の第16回で取りあげた「CineShow H56」の後継機にあたる「CineShow H76」を発表した。 DMD素子にはアスペクト比16:9、パネル解像度1,280×720ドット、0.79インチの振れ角12度のHD2 DMDチップを採用。 ランプはH56よりも高出力なタイプとなり、250W駆動のUHPランプを使用する。なおエコモードではこれを200W駆動する。標準250W駆動ではランプ寿命は2,000時間、エコモードでは3,000時間と長寿命なのも本機の特長だ。公称輝度は1,000ANSIルーメンで、コントラストは2,000:1。このあたりの基本仕様はH56と変わらない。
筐体デザインがH56、H50から一新されたこともトピックで、本体重量はH5x系の2.9kgに対し6.8kgと2倍以上に増量され、ボディサイズはH56の277×84×226mm(幅×奥行き×高さ)に対し、430×135×305mm(同)とだいぶ大きくなった。その代わり、動作時の静音性は向上しており、H5x系の32dBに対し28dBとなっている。また、エコモードではさらに静かになり、25dBにまで抑えられる。 光学調整系はレンズシフト、ズーム、フォーカスが全て電動仕様でリモコンからの調整が可能。接続端子は新され、H56のように「データプロジェクタの仕様そのまま」という感じではなく、ホームシアターに合わせた端子を取りそろえている。具体的には、DVI-I、BNC(アナログRGB/コンポーネント兼用)、コンポーネントビデオ、コンポジットビデオ、Sビデオを各1系統ずつ持っている。特にコンポーネントビデオを変換アダプタなしで使えるようになったのは大きい。 価格は、これだけの機能とスペックを持つ機種としてはかなり安価となる予定。現状の標準価格は5,995ドルとしているものの、店頭予想価格はもっと下がる可能性もあるとのこと。担当者も「720pリアル解像度のDLPプロジェクタのプライスリーダーを目指す」と鼻息が荒かった。発売は7月を予定。
■ inFocus、世界最軽量の“ポケットに入る”DLPプロジェクタ プロジェクタメーカーとして北米最大手のinFocusは、世界最軽量のDLP単板式プロジェクタ「LP120」を発表した。 重量はこれまで最軽量だったプラスビジョン「V-1100」よりも100g軽い0.9kg。本体サイズは248×94×52mm(幅×奥行き×高さ)で、若干V-1100よりも大きく、世界最小はうたえていない。 しかし、数値以上に小さく見えるのはなぜか。それは写真を見てもらえば一目瞭然。ボディがこれまでのプロジェクタデザインの常識を打ち破る、奥行きをばっさりと切り落としたようなバー(棒)状デザインになっているためだ。それこそ、スーツやコートなどの大きめのポケットに入れることも不可能ではないのだ。
ブースでは、B5ファイルサイズノートPCの実機とLP120本体をA4ファイルサイズノートPC用のバッグに入れられることをアピール。これまでどんなに小さなプロジェクタも持ち運びに2つのバッグが必要だったのが、「LP120ならばバッグ1つで済む」という主張をしているわけだ。
気になるスペックだが、意外にも、普通の単板式DLPデータプロジェクタと変わらず、「このボディだから」という妥協点は一切なし。パネルは2世代目の振れ角12度の0.7インチ、1,024×768ドットDMDチップを採用。120W UHPランプを使用し、最大輝度は1100ANSIルーメンを達成。コントラスト性能も実に2,000:1を実現している。 小さいながらも設置調整機能は一通りそろっているのも立派。台形補正は上下±7.5度にまで対応、光学1.2倍ズームレンズも搭載している。映像入力端子はM1-DA、Sビデオを搭載し、コンポジットはSビデオ端子から変換コード経由で接続可能。M1-DA端子はアナログ/デジタルRGBのほか、コンポーネントビデオ入力も変換ケーブルで対応できる。
価格はスタンダードモデルが2,799ドル、ボディカラーが選択できる限定版が2,899ドル、Coach製のバッグ付きの特別版が3,299ドルとなっている。いずれも7月発売予定だ。日本国内の発売は未定。ただし、OEM提供により他社ブランドで発売される可能性はあるようだ。
□製品情報(英文)
□infoCommのホームページ (2003年6月6日) [Reported by トライゼット西川善司]
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