■ DTS/ドルデジデコーダ搭載で、低価格なワイヤレスヘッドフォンが欲しい 深夜でもDVDを見たい、CDを聞きたい、そんなシチュエーションは数多く存在すると思うが、問題になるのはその音量。「お隣さんに迷惑かけるわけにもいかないし、しようがないからヘッドフォンで聞くか……」という状況は、多くの人々が経験しているかと思う。
でもヘッドフォンでDVD見るとなんか疲れるような気がするし、寝転がって見ていたりするとコード巻きついたりと、何かと鬱陶しい。そうしたユーザー向けにコードレスヘッドフォンなるものが存在するわけだが、機能的に満足できそうな「パイオニア SE-DIR1000C」などは、約5万円とお高い。かといって、安い製品だとアナログ入力しかついていなかったりして、DVDっぽくなくてイマイチ。 DVD視聴をメインとするなら、デジタル入力と、DTS/ドルビーデジタルデコーダの対応が必須といったところだが、これを条件にすると低価格で満足いくような製品はなかった。そんな中発表された、東北パイオニアの「SE-DIR800C」は、かなり要求スペックに近いが、実売3万5,000円前後とまだ高め。それに、発売が10月なのでで、まだ発売されていない。 しかしこの状況を打破すべく、9月10日にソニーから発売された「MDR-DS3000」は、実売2万円ながら光デジタル入力を装備し、DTS/ドルビーデジタル/ドルビープロロジック IIデコーダを搭載。さらに、バーチャルサラウンド機能も装備するなど、お手軽深夜DVD視聴には、なかなかよさそうなスペックだ。 ■ デジタル入力をプロセッサ部に装備 MDR-DS3000は、赤外線伝送のコードレスヘッドフォンで、プロセッサ部の「DP-IF3000」と、ヘッドフォン部の「MDR-IF3000」から構成される。付属品はACアダプタ、専用ニッケル水素充電池「BP-HP550」(2本)、光デジタルケーブルなど。
「DP-IF3000」は充電スタンドを兼ねており、背面にACアダプタ端子、光デジタル入力と、アナログ音声入力を装備。筐体はプラスチック製で、前面にはデジタル/アナログの入力切替と、CINEMA/MUSICのエフェクトモード切替を搭載している。外形寸法は145×146×150mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約380g。 「MDR-IF3000」は、左ハウジング内に単4充電池2本を収納可能で、右ハウジング下端にボリュームコントローラを搭載している。ヘッドバンドは頭にかけると自動的に電源が入るフリーアジャストバンドを採用している。イヤーパッドの素材もざらついた質感のやや変わったもの。ヘッドフォンの重量は275g(電池含む)。付属電池利用時の電池持続時間はカタログ値で約20時間。 ヘッドバンドでの電源ON/OFFや、イヤーパッドの質感など、ヘッドフォンのつくりとしては、振動ヘッドフォン「MDR-IF540RK」とかなり似ている印象だ。
■ 伝送方式はアナログ赤外線。エフェクトはド派手 光デジタル入力を装備し、DTSやドルビーデジタル/ドルビープロロジック IIデコーダを搭載。さらに、DTS VIRTUALのロゴも取得している。また、前面のEFEECTボタンで、CINEMA/MUSICのモード切り替えも可能となっており、ソースに合わせたエフェクトが選択できる。 ヘッドバンドへで電源がON/OFFするため、頭にかぶるだけで電源が投入される。製品情報ページや取扱説明書に「デジタルサラウンドヘッドホンシステム」と記載してあるが、無線伝送方式はアナログ赤外線。デジタル伝送で2万円なら画期的だったと思うが、アナログだと価格相応といったところか。ちなみに、10月発売の「SE-DIR800C」は、デジタル赤外線伝送。価格は35,000円前後なので、やはりデジタル伝送だとこれくらい高くなるものなのだろうか。
まずはアナログ音声入力で、音楽CDを聴いてみる。アナログ伝送のためか、ややノイズが目立ち、ヘッドフォン側のボリュームを8以上に設定すると「シャー」というノイズがかなり気になる。 また、伝送範囲は、トランスミッタの上下左右 各45度、最長7mまでカバーしている。到達距離的には実用的だが、トランスミッタを正面に見て、体をひねるとノイズが発生するなど、到達距離内でもユーザーの動きによって時折ノイズが発生するのが若干気になった。 ノイズの問題を除けば、音質はワイヤレスヘッドフォンとしてはまずまずといったところ。全域をとおして情報量が不足する傾向はあるが、顕著な癖は無くバランスはいい。 続いて光デジタル入力でDVDビデオを視聴。エフェクトモードはOFFと、CINEMA/MUSICの2モードが用意されている。DTSはDTS VIRTUALのロゴを取得しているが、ドルビーデジタルのバーチャルサラウンドについては、特に何の記載もない。 実際にDVDを見てみると、かなりのサラウンド感が感じられる。例えばスパイダーマンのビル間を移動するシーンでもきちんと移動感がでており、後方を通過する音などもしっかり感じられる。センターチャンネルの定位こそ希薄なものの、なかなかよい感じだ。 サラウンドモードを使用してみると、特にCINEMAモードでは、かなり倍音成分の誇張の目立つ派手派手しい音となる。LFE成分は特に強調され、アクション映画などではかなり効果的だが、BGMも派手に誇張されるので、シーンによってはやや耳障りなこともあった。 対するMUSICモードは、幾分落ち着いたサラウンド感が楽しめるモードとなっている。EQを全域で持ち上げたような独特の音場感で、あまり音楽再生用というイメージではないが、全ての音がくっきり聞こえるようになるという印象だ。例えば、音楽DVDでCINEMAモードにすると派手な音場ながらボーカルがぼやけるような印象があるが、MUSICモードではボーカルがはっきり出てくるような違いが感じられる。 また、PCM入力やアナログ入力の際には、CINEMA/MUSICモードにすることで、ドルビープロロジック IIでの再生が行なえる。音楽CDなどのステレオソースで、プロロジック IIのMUSICモードで視聴すると、適度にバーチャル5.1ch化され、普段聞いているソースが違って聞こえてなかなか面白かった。 ■ DVD視聴メインのユーザー向け 大きな欠点はなく、低価格なワイヤレスヘッドフォンがほしいユーザーには、かなりいい選択肢といえそうだ。特にDVD視聴をメインとするユーザーであれば、満足できる製品だろう。 しかし、デジタル入力対応のワイヤレスヘッドフォンとしては確かに低価格な部類に入るが、実売で19、800円と、通常のヘッドフォンに比べればかなり高く、音楽再生をメインに考えると音質的にもやや物足りない。アナログ伝送のため仕方がないのかもしれないが、できればもう少しノイズの低減を図ってもらいたいところ。これ一本でホームシアターからオーディオまで全てのソースもこなすためにはやや力不足という印象は残る。 もっとも、本製品のターゲットとするのは、家庭内でリラックスしながらDVDなりCDを楽しむといったユーザーだろう。そうした期待には十分応えてくれる製品とはいえるだろう。 □ソニーのホームページ (2003年9月12日)
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