■ キャプチャカードの新シリーズ「MTVX2004」 PC用のテレビキャプチャカードのブームも、2003年には幾分落ち着いた。DVDレコーダの低価格化が進んだこともあり、PCベースのテレビ録画への注目度は以前ほど熱狂的なものではなくなっている。しかし、録画データの使い勝手や編集性の高さなど、「PCならでは」のメリットはまだまだ大きいのも事実。 また、2002年頃までは高画質を目指してまっしぐらという感じだったが、サーバー機能などのメディア配信機能や、DivXやWMVへのトランスコード機能などに移っている。さらに、昨年は価格の低価格化も進み、ハードウェアエンコーダ搭載のキャプチャカードが実売2万円を切るなど、価格競争も激化している。 そんな2004年、ハードウェアMPEGエンコーダ搭載のTVキャプチャカードの代名詞ともいえるカノープスの「MTVシリーズ」の終息が宣言され、新たに「MTVXシリーズ」として展開すると発表された。 その第1弾が今回テストする「MTVX2004」。製品の概要をひらたく言うと「MTV2000相当の機能をMTV1200HXの価格で実現するもの」(カノープス 中田第1開発部長)。MTVX2004の実売価格は2万円弱程度と、MTV2000の初登場時の価格が64,800円(実売5万円強)だったのを思い起こすと、隔世の感がある。
■ エンコードチップを一新 カード自体は、MTVシリーズの初代機「MTV1000」と比較するとかなり小型。MTVシリーズでは、初代から一貫してPanasonic製のMPEGエンコーダを採用していたが、MTVX2004では、Philips製の「SAA6752HS」に変更された。 テレビチューナは、MTV3000Wと同様のソニー製。また、NEC製のゴーストリデューサや3D Y/C分離回路、3Dノイズリダクションを備えている。なお、3D Y/Cと3DNRはMTV2000と同様に排他利用となっている。入出力端子は、アンテナ入力、S映像/コンポジット入力、アナログ音声入力、ライン出力を備えている。
■ 使い勝手の向上に努めたコントロールソフト
コントロールソフトは、アップデートされ「FEATHER2004」となった。基本インターフェイスや操作性は、従来のFEATHERを引き継いでおり、リモコンを模した操作画面から、直感的に操作できる。 変更された点は、ライブラリ機能の「MediaLibrary」。録画映像のサムネイル表示に対応し、録画映像が確認しやすくなった。もちろん従来どおりのリスト表示も可能となっている。さらにMediaLibrary上のコンテンツは、同社のホームサーバーソフト「HomeEdge」のライブラリと共用可能となったため、HomeEdgeでのコンテンツ管理も使い勝手が向上する。 プリセットの録画モードは、高画質(720×480ドット/8Mbps)/標準(720×480ドット/5Mbps)/標準2(4Mbps/480×480ドット)/長時間(3Mbps/352×480ドット)/簡易(2Mbps/352×240ドット)の5モードが用意され、5つまでのユーザー設定が保存できる。ユーザー設定では、MPEG-2の場合、キャプチャ解像度は720×480/480×480/352×480/352×240ドット、対応ビットレートは4~15Mbpsまで選択可能。また、新たにIフレームのみの場合、最大25MbpsのMPEGキャプチャにも対応した。
さらにFEATHER上でiEPGサイトを表示可能となり、全画面表示でEPG選択ができるようになった。番組表表示画面は[リモコン操作]と[マウス操作]が用意される。 リモコン操作は、別売のリモコン「CRM-1」で録画予約が行なえるモードで、十字キーとENTERボタンで予約番組を指定できる。ただし、番組を選択して確認することはできるが、録画モードの変更などは行なえず、録画モードや休止/スタンバイへの移行などの設定は、その時のFEATHERの基本設定を引き継ぐ形となる。 一方のマウス操作は、FEATHER上からEPGサイトがブラウズできる以外は通常のiEPG予約と変わらず、録画モードの変更や、電源状態の設定、X-Transcoderの利用の有無などが選択できる。別途IEなどのブラウザを立ち上げなくていいほか、EPGの一覧性も高く、使いやすい。また、初心者向けの録画/再生時の操作感の統一という意味でも好ましい改善と感じた。 リモコンでの操作が可能となったことで、より家電的方向に近づいたともいえるだろう。できればオプションのリモコン「CRM-1」より使いやすい、12キーのリモコンの発売をお願いしたいところだ。
■ エンコーダ変更で、25Mbpsキャプチャに対応
MTVシリーズから、さほど大きな更新のないMTVX2004だが、機能面での最大の変化といえるのが、Iフレームのみで、最高25MbpsまでのMPEG-2記録に対応したこと。 これは、エンコードチップがPhilips製の「SAA6752HS」に変更されたためで、同チップを採用しているSKnetのテレビキャプチャカード「MonsterTV PH-GTR」でも実現している。ただ、画質については、15Mbpsでのキャプチャ映像と比較して差があるのかと聞かれると、あまり変わらないような気もする。 フレーム単位での編集が容易などのメリットはあるが、地上波アナログ放送を録画する限り、画質的なメリットはさほど無い。単に画質の向上であったら、チューナの前段までで、工夫したほうが効果はあるように思える。25Mbpsキャプチャは、編集/再エンコード前提で、最高画質で録画しておきたいソース用という位置づけなのだろう。
また、付属のMPEGカット編集ソフト「MpegCraft LE」では、15Mbps以上のMPEG-2やリニアPCM音声の出力がサポート外となっているため、Iフレーム25Mbpsでキャプチャした映像の出力には別の編集ソフトが必要となる。 「MpegCraft LE」では、フレーム単位の編集が可能。ただし、フレーム編集の場合は編集部分のみの再エンコードが行なえず、全体の再エンコードとなる。GOP単位での編集の場合は、再エンコードなしの出力が可能だ。 なお、従来のMTVシリーズでは、MPEGCraftやDVStormシリーズのMPEG書き出しなどで、MTVのハードウェアエンコーダを利用できたが、MTVX2004ではそれらのソフトからエンコーダを利用することはできない。
ほかには、高画質化回路として、MTV2000などと同様に3次元YC分離回路や、デジタルノイズリダクションを装備。GRTも従来どおり10Tapsのもので、さほど地上アナログ放送の受信品質のよくない編集部では、非常に効果的に働いた。
また、HomeEdge用のネットワーク映像配信クライアント「HomeEdge Explorer for MpegCraft」や、MPEGファイルのマルチ/デマルチプレックスやビットレート変換を行なう「To MPEG Tool」なども付属する。 ■ なにより「安くなった」のが一番 機能的には大きな進歩は無いが、地道なソフトウェアの改善により、より家電的な操作感に近づきつつあり、正常な進化を遂げていると感じられる。 そしてもっとも重要なのは、今まで割高だったカノープスのキャプチャカードが他社製品とほぼ肩を並べる価格になったということだろう。機能的には既に申し分の無いところまで来ており、ここまで価格が安くなれば、ハイブリッドレコーダのユーザーなどでも、裏番組録画用などの特定用途向けのサブ機として購入してもいいだろう。 □カノープスのホームページ (2004年2月27日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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