【バックナンバーインデックス】



第150回:究極のUSB 1.1対応インターフェイスとなるか?
~ EDIROL「UA-25」を検証する ~



 先週Rolandから、また新たなUSBオーディオデバイス「UA-25」が発表された。USB 1.1と24bit/96kHzに対応し、最近ちょっと流行の堅牢な金属シャーシをデザインに取り入れたコンパクトタイプ。最大の特徴はUSBバス電源供給でありながらもファンタム電源に対応し、コンデンサマイクでのレコーディングも可能なことだ。

 ほかにも、サンプリンレートコンバータを通さないダイレクトなデジタルレコーディングに対応したり、リミッタを搭載するなど、考えられる機能は一通り盛り込んだ強力なモデル。まだ発売前ではあるが、試作機で使い勝手や音質性能などについて検証した。



■ 究極のUSB 1.1対応オーディオインターフェイス?

UA-25

 この製品の発表前、「USB 2.0対応でUA-1000の廉価版が登場するのか」と思っていたのだが、発表されたUA-25はUSB 1.1であり、第一印象ではちょっと残念だった。やはりUSB 1.1の場合、転送レートの問題で、24bit/96kHzの同時録音・再生ができないのは少々物足りない。

 この点ではUA-25も例外ではない。だが、実際に実物を見て、そのデザインの良さが気に入ったとともに、さまざまな工夫に感心した。USB 1.1対応のオーディオインターフェイスとしては、現在の1つの究極ともいえる製品に仕上がっており、EDIROLのUSBオーディオ製品の集大成となっている。

 簡単にスペックを並べると、以下のようになる。

  • 最高24bit/96kHzにまで対応
  • 2in/2outの設計でアナログとデジタル(オプティカル)端子を装備
  • アナログ入力はTRSフォン、キャノン端子の兼用でバランス対応
  • MIDI入出力を1系統装備
  • ファンタム電源対応でコンデンサマイクの利用が可能
  • ハイインピーダンス入力に対応
  • 非ASIOドライバでもダイレクトモニタリングに対応
  • USBバス電源駆動
 この内容を見て、アレ? と思った方もいるだろう。USBバス電源駆動ということ以外は、2001年10月に発売されている「UA-5」とほぼ同等のスペック。現状、UA-5は3万円強で販売されているが、UA-25が登場しても現行商品として残るとのこと。UA-25の実売は25,000円程度なので、UA-5のほうが上位機種という位置付けになる。実際、UA-5にはUA-25にはないコアキシャル(同軸)のデジタル端子を装備している。

 ただ、UA-5になくてUA-25にのみ搭載されているという機能が数多くあり、それがこのUA-25の大きな魅力といえそうだ。価格的には上位モデルだが、実質的にはUA-5の後継であるといってもいい。


■ 使える機能がいろいろ

ロー・ノイズ/ワイド・レンジ電源の概念図

 まずUA-25は、なんといってもUSBからの給電だけで動作し、ACアダプタが不要ということ。「USBバス電源供給なんて珍しくない」と思う方もいるかも知れないが、スタジオで利用可能な製品、つまりファンタム電源対応で+4dBu出力可能な製品としては、これが初だろう。本来は結構な電力が必要なので、USBバスからの電源では厳しそうだが、回路の省電力化によって実現しているという。

 また、この電源にも面白い工夫が施されている。普通のデバイスでは、USBから来た電源をコイルとコンデンサによる簡単なフィルターを通すだけでそのまま使っているが、UA-25ではこれを一旦遮断し、昇圧し、整流し直すことで、USBバスから乗ってくるノイズをカットしている。これをロー・ノイズ/ワイド・レンジ電源と呼ぶのだそうだが、このレンジというのは電圧のことを意味している。

 次に、実用的でなかなか面白いのがアナログのリミッターを搭載したということ。リアパネルには「LIMITER」というスイッチがあり、これをオン/オフするだけの単純なものなのだが、結構使える。オンにすると、過大な入力が来たときに、それを抑えてクリップするのを避けることができる。

 たとえば、ベース音などを入力しているとき、通常は問題なくレコーディングできていても、あるところで強く音が来て、音が割れてしまうということはよくある。LIMITERスイッチをオンにしていれば、そうした入力でもクリップしたり、音がビビったりせず、ごく自然にレコーディングすることができる。リミッターの特性グラフについてはご存知な方も多いとは思うが、低いレベルではそのまま通すが、ある一定以上になったら音量を圧縮する仕組みになっている。

リアパネルにあるリミッタースイッチ(リンク先は背面全体の画像) 低いレベルではそのまま通すが、一定以上のレベルになると音量を圧縮する

サンプリングレートコンバータを省いたことで、外部からのデジタル信号を劣化なしに取り込める

 もう1つのうれしい機能が、デジタル入力にサンプリングレートコンバータを介さなくなったというもの。サンプリングレートコンバータが無くなったのだから、機能ダウンともいえるのだが、これにより外部からのデジタル信号を劣化なしに取り込めるようになった。これは、DIGITAL INというボタンを押すと有効になり、信号が来ていないときは、その横のLEDが点滅する。信号が来ると点灯するとともに、外部信号にロックし、完全な形での取り込みを可能とする。

 試しにUA-25を48kHzの動作として、外部から44.1kHzの信号を送ってみた。すると、この状態でもLEDは点灯するとともに、接続してあったヘッドフォンからは普通に音が聞こえてしまう。おやっ?、と思ったがその状態で録音すると、録音された音は明らかにおかしい。確かにサンプリングレートコンバートはされていないようだ。

 ただし、44.1kHzの信号でも録音はできてしまうので、クロックでのロックはされていないのかもしれない。またヘッドフォンへは入力した信号がそのまま出力されるため、動作サンプリングレートと異なっていてもモニターできるものと思われる。

 こうしたサンプリングレートを作り出すオーディオ・クロックにも、UA-25はこれまでになかった新しい技術を搭載している。それは、クロックを生成する際に高精度周波数カウンタ、高分解能周波数ジェネレータを採用し、それらをインテリジェントにコントロールすることで、クリアなサウンドと安定した動作を実現している。

 簡単にいえば、PCからUSB経由で送られてくるクロックを元に、UA-25が独自にクロックを生成し、高精度化、安定化させている。

 ただ、単純に考えると音質を上げるのであれば、PCからのクロックではなく、別途オーディオインターフェイス内部にクリスタルを搭載し、それで発振させればいいように思える。それに対して、Rolandの考えとしては、(以前そのアプローチをとった製品を出したことがあるが)PCとクロックを別に持つとPCとの連携が悪くなり、PC用のオーディオインターフェイスとしての機能・性能が悪くなったり、マシンによって動作しないものが出てくる可能性があるという。

 実際、他社のクリスタルを搭載したオーディオインターフェイスの場合、Macintoshで動作しなかったり、特定のマシンやOSで動作しないなどの問題も出ているようだ。そこで、そうした問題が発生しないようにPCからクロック供給は受けるけれど、クロックを安定させ、音質を向上させるために、今回のアプローチがとられたとのことだ。また、クリスタルを搭載しないことで、消費電力も抑えられるため、結果としてUSBバス電源供給も可能になっている。実際、UA-25ではWindows 98 SE/Me/2000/XP、そしてMac OS 9、10.2以上に対応。ドライバとしてもMME、WDM、ASIO、CoreAudioと一通り何でも対応している。


■ 音質をチェック

UA-25搭載の高音質化技術

 ロー・ノイズ/ワイド・レンジ電源の搭載と、高精度&インテリジェント同期テクノロジーの搭載で、音質についてはどうだろうか。

 いつもと同じ実験を行なってみた。オーディオの出力と入力を直結した上で、ノイズレベルや周波数特性などを見る実験だ。UA-25の場合、出力端子がTRSフォーンのバランス端子と、RCAピンのアンバランス端子が2つ出ているが、ここでは、当然TRSフォーンのバランス端子を利用することにする。こちらの出力は+4dBuのプロ用スペックのものとなっている。

 このバランス出力をフロントのバランス入力へ直結した。アナログ入力レベルはフロントのSENSで調整するが、出力側で-6dBのサイン波を出力しながら、入力が同じ-6dBになるように調整したところ、ほぼ真ん中でそうなるように設計されているようだった。ただし、左右で若干バランスに違いが出ているのはちょっと気になったが、今回使ったのが量産前の試作品であるため、細かな調整が終わっていなかったのかもしれない。

 この実験では、入力と出力を同時に使うため、残念ながら24bit/96kHzでの実験はできない。これまでも24bit/48kHzでの実験を基本として行ってきたので、同様のことを行なったわけだが、結果は以下の通りである。また、RMAAを用いて24bit/48kHzおよび24bit/44.1kHzで行なった結果も掲載する。

何も出力していない状態のものを録音 サイン波を出力 スウィープ信号を出力
UA-25の測定結果

24bit/44.1kHz 24bit/48kHz

 結果を見ると、ノイズレベルも悪くないし、サイン波の特性もまずまず。またスウィープ信号もほぼフラットな結果となっている。ただし、これは今まで見てきたオーディオインターフェイスと比較して、最高レベルといえるものではなかった。たとえば、同社のFA-101やUA-1000などよりは下回っている。

 ただ、実売25,000円ということを考えれば、十分いい結果であり、何よりその手軽さと使い勝手の良さはFA-101やUA-1000を超える。確かにFA-101もFireWireのバス電源供給であるが、ノートPC搭載の4ピンのFireWire端子では電源供給できないので、外で使う場合はACアダプタが必須となる。それに対し、UA-25なら問題なくUSBから電源供給が行なわれる。

何も出力していない状態のものを録音 サイン波を出力 スウィープ信号を出力
【参考】FA-101の測定結果

何も出力していない状態のものを録音 サイン波を出力 スウィープ信号を出力
【参考】UA-1000の測定結果

 以上、UA-25について見てきたがいかがだっただろうか。とにかくコンパクトでカッコよく、バス電源供給で動作してコンデンサマイクまで使えるというのは、外でこうした機材を使いたい人にとって、非常にうれしいスペックだ。

 また、このUA-25はソニーのVAIOに搭載されているマスタリングソフト「SonicStage Mastring Studio」での推奨機器2号として、UA-5に続き認定されたので、VAIOユーザーにとっても安心して使える機材でもある。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-25.html
□関連記事
【6月14日】ローランド、24/96対応USBオーディオインターフェイス
-USBバスパワードで動作し、リミッターも搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040614/roland.htm
【5月10日】【DAL】24bit/192kHz 6in/6out対応のRoland「FA-101」を検証
~ Mac OS X標準ドライバ対応のFireWireインターフェイス ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040510/dal144.htm
【4月26日】ローランド、FireWireオーディオインターフェイスを28日に発売
-Mac OS Xの標準ドライバで24bit/192kHzに対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040426/roland.htm
【2月16日】【DAL】Rolandグループが新製品を発表
~ 24bit/192kHz対応低価格FireWireインターフェイスなど ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040216/dal133.htm
【1月16日】ローランド、FireWireオーディオインターフェイス
-24bit/192kHz対応。24bit/96kHzの10ch同時録再可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040116/roland.htm
【2003年7月14日】【DAL】ついに登場したUSB 2.0オーディオインターフェイス ローランド「UA-1000」をテスト
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030714/dal108.htm
【2003年9月22日】【DAL】USB 2.0対応Audioインターフェイス「UA-1000」
~ 開発者に聞いたUSB 2.0採用のわけ ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030922/dal116.htm


(2004年6月21日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.