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QUALIAホームシアター構築記 [後編]■

~フルHDプロジェクタ「QUALIA 004」を導入する~


 新居の建設を機に、約18畳のリビングルームに11.2チャネルへと拡張可能なサラウンドシステムと120インチのフルHDフロントプロジェクションをベースとするホームシアターを構築した。前編では各AV機器を選んだ理由や、配置などを紹介したが、後編では、いよいよソニーのフルHDプロジェクタ「QUALIA 004」の購入記をお届けしよう。


■ QUALIAショップでのみ注文可能なQUALIA製品

QUALIA Tokyo

 QUALIA製品は、関東以北ならば東京銀座・ソニータワー内にあるQUALIAショップで注文を受け付けている。普通の量販店と異なり、コンシェルジュ(お上品な雰囲気の相談員)から詳細な説明を聞いたり、実際にQUALIA製品を視聴するには、事前の予約が必要だ。筆者は、QUALIA 004の購入をPDFのカタログと西川善司氏の後押し(突き落とし?)だけで決めてしまったチャレンジャーなのだが、とりあえず視聴と購入を兼ねてQUALIAショップに出向くことにして、電話で予約を取りつけた。翌日、いよいよQUALIAショップへと出動。QUALIA 004担当コンシェルジュのI氏とお会いした。

 QUALIA 004の視聴室は実に本格的な暗室となっており、スクリーンにはQUALIA 004の開発時に用いられたリファレンスモデル、スチュワート製の140インチスクリーンが設置されていた。また、ソニーのフラグシップAVアンプ「TA-DA9000ES」を中核とする7.1チャネルサラウンドシステムが形成されており、映像ソースとしてBSハイビジョン放送、DVDビデオ、ブルーレイディスクなどが用意されていた。つまり、手持ちのディスクを持ち込んで視聴することができるわけだが、筆者はスポーツジム帰りに手ぶらで出向いたので、ここでは各種デモが収録されたブルーレイディスクに加え、NHK BSハイビジョン放送やDVDを楽しんだ。

 QUALIA 004は、黒と赤の再現が特に優れているとのことで、これらをアピールする映像を多数見せてもらった。映像デモの中には若い白人女性がたびたび登場するのだが、この女性はまだ10代であるという。なぜかというと、20代以降の女性だと肌の衰えがもろに見えてしまうからだとか。NHK BSハイビジョン放送を見ていても、良いハイビジョンカメラと悪いハイビジョンカメラが区別できてしまうほどに解像度が高い。

 そして、最後にDVDを鑑賞させてもらったのだが、これは残念ながら見るに堪えなかった。視聴室では比較的画質が良いとされる「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」を見せてもらったのだが、字幕は見事にガクガク、本体の映像も過大なスケーリングのせいで輪郭がかなり甘く感じられる。再生したDVDプレーヤによっていくらか違うのかもしれないが、いずれにせよQUALIA 004の真価を発揮させるには映像ソースにも相当気をつけなければならないことを実感させられた。単刀直入に言えば、ハイビジョン映像ソース以外は絶対に映してはいかんということだ。幸いにも、筆者はDVDソフトを20枚くらいしか持っておらず、かえって都合がいい。DVDを見なければ済むからだ。

 一通り視聴を終えたところで、商品の購入契約である。QUALIA製品は、基本的に値引きというものが存在しない。また、先にお金を払わないと商品を作ってくれない(翌日の銀行振り込みを選択した)。さらに、QUALIA 004は素人では絶対に設置できないので、ソニー指定のインストーラに“別途料金”で設置作業を依頼する必要がある。オマケに、安価なプロジェクタが買えてしまいそうな交換ランプ(21万円)を約2,000時間ごとに購入しなければならない。身分不相応な人間がコーンズにフェラーリを買いに行くような心境に陥ったが、すでに後の祭りだ。


■ 合計50kgのプロジェクタを天吊りするための強固な天井補強

 というわけで、そそくさと契約を済ませ、インストーラのY氏と詳細を詰める作業に入った。住宅会社が支給した部屋の間取り図などを持参していたので、これらをもとにレンズの種類、天吊り金具などの詳細を決めてもらった。筆者の場合はプロジェクタからスクリーンまでの距離は約4,300mm、投影サイズは120インチ(16:9)なので、短焦点レンズを組み合わせる(本体にレンズの価格は含まれている)。天吊り金具のパイプは、天井の高さ(2,400mm)と映写面の上端位置に適したものをうまく選択する。

4隅にアンカーボルトを埋め込む強固な天井補強。中央からは映像(コンポーネント映像、HDMI)、LAN(カテゴリー6 UTP)、電源ケーブルを引き出している。ケーブル類は天吊り金具のパイプを通って隠蔽される仕組みだ

 次に、プロジェクタを配置するための天井補強に関する説明があった。QUALIA 004は、三管プロジェクタを彷彿させるほどに大きく、そして重い。サイズは新聞一面ほどの大きさ(597mm×745mm×201mm/幅×奥行き×高さ)があり、重さは50kg(本体が40kg、天吊り金具が10kg)にも達する。当然、一般的な天井補強では間に合わず、4隅(一辺254mm)に太いアンカーボルトを埋め込むという本格的な天井補強が必要になる。もはや筆者の知識レベルを超えた作業なので、補強工事の技術的なやり取りはY氏と住宅会社の間で直接やってもらうことで合意した。

 設置は新居の引き渡し後の最も早い日曜日(11月7日)に行なわれた。当日は、QUALIAコンシェルジュのI氏、インストーラのY氏グループの合計3名が我が家に来訪し、設置作業を開始。その作業は大がかりなもので、3人がかりでQUALIA 004を取り付けている光景は、もはや業務用エアコンの取り付けにも匹敵する。

3人がかりで慎重にQUALIA 004を取り付けているところ(左)と、設置後の状況(右)。こんなにデカくて重い商品は、やっぱり素人の手に負えない。余談だが、インストーラの方によれば、最近では三管プロジェクタの取り外し依頼が増えているという

レーザー光線をガイドに利用した便利な機械でスクリーン配置のための正確な水平、垂直位置をとっているところ。さすがはプロの仕事だ。さしずめ筆者のような素人ならば、メジャーを片手に悪戦苦闘しているところだろう

 今回取り付けたスクリーンは、シアターハウスのブラックマスク付き電動スクリーン「DR2657BM」である。スクリーンの価格は10万円以下の庶民派プライス。実をいうと、このスクリーンを購入したのは、まだ数十万円クラスのプロジェクタを検討していた夏前の時期である。当時、平行していろいろなメーカの製品を検討していたが、シアターハウスの対応の良さと製品の高いコストパフォーマンスに強く惹かれ、数十万円台のプロジェクタと価格的なバランスのとれた同社のスクリーンをフライングで購入しておいたのだ。

 先述のとおり、QUALIAショップではスチュワート製の高級スクリーンを強く推奨しており、QUALIAショップはQUALIA 004とDR2657BMの相性を少し心配していた。しかし、シアターハウスの吉村明高社長によれば「QUALIA 004で投影しているユーザーはまだいませんが、弊社の製品がQUALIA 004と相性問題を引き起こす理由は基本的に考えられません。また、弊社の製品がリーズナブルな価格で提供されているのは、製品を直販するB to Cのビジネスモデルを採用しているからです」と説明する。こうなったら、とにかく映してみるしかない。願わくば、筆者がQUALIA 004ユーザとしてシアターハウス製品の人柱になってみよう。


■ HM-DHX2でD-VHSに映像をムーブし、HDMI経由で再生するつもりが……

取り付けを完了したQUALIA 004。ケーブル類も完全に隠蔽され、非常に美しい。心の底からやっぱり購入して良かったと思えるカッコよさだ

 QUALIA 004の取り付けが完了したところで、早速BSハイビジョン放送の映像を映し出してみた。映像ソースは、シャープのハイビジョン対応DVD/HDDレコーダ「DV-HRD200」である。DV-HRD200にはコンポーネント映像出力やHDMI端子がないので、DV-HRD200からDSP-Z9にD端子でいったん映像を入力し、DSP-Z9のコンポーネント映像出力(ケーブルはオーディオテクニカに特注したAT6V47の10メートルケーブル)でQUALIA 004と接続している。D端子-3RCAケーブルでQUALIA 004に直結する方法も考えられるが、プラズマディスプレイでも鑑賞するケースを想定し、いったんDSP-Z9に映像を入れてあげる必要があったのだ。

 さて、肝心の画質だが、QUALIAショップの映像デモほどではないが、筆者的には“まずまずのレベルかな”といったところ。一方、さまざまな事例を目にしているI氏、Y氏には、もっとシビアに“今一歩、映像がシャッキリしない”という評価をいただいた。その理由としては、DV-HRD200の映像処理/出力段に問題があること、DSP-Z9を間にかましていること、コンポーネント映像ケーブルが10メートルと長いことなどが考えられる。他のQUALIAユーザからいろいろ聞いたところでは、シャープの内蔵チューナを使用して良い映像が出ない事例が多々あるそうなので、DV-HRD200に問題を抱えている可能性が高い。

モンスターケーブルのHDMI400-10M。10メートル仕様のHDMI-HDMIケーブルである。HM-DHX2のために用意した一品だが、執筆時点ではまだ使えず仕舞いである

 そんな問題も解決できるようにと、実はHDMIを搭載したビクターのD-VHSデッキ「HM-DHX2」をあらかじめ注文しておいた。HDMIケーブルには、モンスターケーブルの「HDMI400-10M」を用意し、万全を期している。基本的にDV-HRD200に録画されている映像データは、最高レベル(HDモード)の録画品質に設定すれば放送電波に乗って届くMPEGストリームそのものになるため、これをi.LINK経由でHM-DHX2にムーブすることで、デコード以降の過程をビクター側に肩代わりさせられる。また、HDMIを使用してQUALIA 004にダイレクトに映像を送出できるため、最高レベルの画質を達成できる。ハイビジョン放送をライブで見る場合には使えない手だが、しっかり鑑賞したいものは必ず録画するし、D-VHSにムーブしてアーカイブするので都合がいい。

 …………と、期待を最大限にふくらましていたわけだが、HM-DHX2が突発的に生産休止状態に陥ってしまい、QUALIA 004の設置日までに到着してくれなかった。ビクターは販売店側にその理由をいっさい伏せているようだが、とりあえず11月末から生産が再開される見込みだという。で、そんなこんなしているうちに、シャープからHDMIをサポートした世界初のブルーレイ/DVD/HDD混載レコーダ「BD-HD100」が発表されてしまった。もともとテープ嫌いの筆者なので、HDMIを使えるなら当然ブルーレイを選択したい気持ちになっている。とりあえず、D-VHSの導入は中止しよう。まだBD-HD100に決めたわけではないが、近い将来に何らかのHDMI対応ブルーレイレコーダを購入した暁には続編として皆様にまたご報告できたらと思う。

【11月18日追記】(編集部)
 「HM-DHX2」の出荷状況について日本ビクター株式会社より、「生産休止しているわけではなく、需要に生産が追いついていない状況」との連絡があり、以下の説明がありました。
 「HM-DHX2は、昨今のハイビジョン人気を背景に、多くのお客様からご注文を戴き、バックオーダーを抱えております。バックオーダー解消に向け順次供給中ですが、本日現在まだ品薄状態です。ご理解頂きたくお願い致します」。

ついに完成した我が家のホームシアター。手軽にテレビを見るときにはプラズマディスプレイで、映画やライブを本気で見るときには部屋を暗室状態にしてプロジェクタで鑑賞する

 なお、スクリーンとの相性についてだが、I氏、Y氏からも率直な意見をお聞きしたところ、QUALIA 004との相性はなかなか良いとのこと。もともとスチュワート製品を推奨していた、いわば高級スクリーン指向のお二人が高級色眼鏡を付けて判定したのだから、本当に相性が良いのだろう。筆者の人柱戦略はとりあえず成功だったようだ。

 というわけで、無事完成した我が家の本格ホームシアター。投下した資本もサラウンド級に膨れあがってしまったが、かなり満足のいくシステムができあがった。もちろん、システム全体のバランスを考えると、プロジェクタだけが突出しており、その他が追いついていないのも事実。とはいえ、これ以上のパワーアップには資本の回復が何よりも先決。当面は、現在のシステム環境で映画や音楽を存分に楽しみつつ、また貯金がバッファーアンダーラン状態を脱したら、QUALIA 004の性能を最大限に引き出すハイビジョン映像ソース探しや音回りのさらなるアップグレードを検討したい。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200306/03-0610B/
□QUALIAのホームページ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/QUALIA/
□関連記事
【11月11日】伊勢雅英のQUALIAホームシアター構築記 [前編]
~11.2chに拡張可能なシアターを構築する~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041111/theater1.htm
【2003年6月10日】ソニー、世界初のフルHDパネルを採用したホームプロジェクタ
-民生機初のキセノンランプも搭載、HDMI入力も国内初装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030610/sony2.htm
【2003年12月9日】2年ぶりにリニューアルしたフラッグシップAVアンプ
伊勢雅英のヤマハ「DSP-Z9」購入記
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031209/dspz9.htm

(2004年11月17日)

[Reported by 伊勢雅英]


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