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QUALIAホームシアター構築記 [完結編]■

~HDMI対応ブルーレイの導入でQUALIAを高画質化~


後編執筆時のシアタールーム。一応の完成となったが、HDMIへの対応が課題として残されていた

 11月に前後編でお送りしたとおり、筆者は新居の建設を機に、約18畳のリビングルームに11.2チャネルへと拡張可能なサラウンドシステムと120インチのフルHDフロントプロジェクションをベースとするホームシアターを構築した。

 あれから、HDMIに対応したシャープのブルーレイレコーダ「BD-HD100」を購入。とりあえずホームシアターの完成と相成った。今回は、11月の前編、後編で書ききれなかった事項を取り上げ、ホームシアター構築記を締めくくりたい。


■ 身内から聞かれたいくつかの質問

 普段は筋繊維のタンパク質同化作用にしか興味を持たない筆者が、突然AVシステムに散財を始めたためか、多くの友人から“オマエ、気でも狂ったのか?”といわんばかりの目を向けられるようになった。また、同時にいくつかの質問をぶつけられたので、まずは主な質問に対する回答から記しておきたい。

 一番多かった質問は、“システム全体でいくらかかったのか?”というものだ。すでに前編でハードウェア構成を明らかにしているので、これに天井補強、CD管の配管、プロジェクタおよびスピーカー類の設置料金などをプラスすれば、大まかには計算できると思われる。

 しかし、筆者は計算していないので、総額がよくわかっていない。いや、正直なところ、総額を知ったらその場で卒倒しそうなので、計算しないでおくことに決めたのだ。支払いはすべてニコニコ現金払いなので、後腐れはない。そこだけが唯一の救いである。今回は、筆者を魅了する最新のテクノロジを“手に入れた”ことが重要なのであって、“いくらで入手したか”は目をつむっておくつもりだ。

 次に多かった質問は、“DVDを20枚しか持たないオマエが、完成したシアターでいったい何を見ているのか?”というものだ。その答えは、“BSデジタル放送、地上デジタル放送のライブ視聴に加え、デジタルWOWOWなどから録画したハイビジョン映画を中心に楽しんでいる”である。最近では、12月12日にデジタルWOWOWで放映された「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」を楽しんだ。既にDVD化されているが、ハイビジョン映像を見てしまうと、さすがにDVDを買う気にはなれない。これからは、ブルーレイディスクを駆使してハイビジョン映画をため込む作戦に出るつもりだ。

 JBLの好きな友人からは、“サラウンドスピーカーになぜBOSEを選んだのか?”という質問を浴びせられた。これは、“スピーカーを天吊りする際に最も天井への収まりがよかったから”と答えておきたい。JBLでも天吊りオプションが発売されており、サラウンド系をJBLで攻めることはもちろん可能だったが、同社のスピーカーはフロアへの直置きやスタンド上に配置する形態に向いており、天吊りにするといまいち収まりが悪く感じるのだ。

 筆者は、家族全員が集まるリビングルームにホームシアターを構築している。従って、リビングルームとしての機能性、美観を損なわないことが重要だと考えている。音質面ではベストではないかもしれないが、筆者が考えるリビングルーム像と照らし合わせた結果としてBOSEが最終的に残った。

QUALIA 004には、ハードウェアとして欠点らしい欠点が見つからない

 さらに、“QUALIA 004がすごいことは分かったが、欠点だって当然あるんだろ?”という質問もあった。正直なところ、QUALIA 004のハードウェア自体に欠点は見つかっていない。しかし、筆者個人の事情として“QUALIAユーザの最底辺層であることを知った”ことが問題だった。実は、ソニーのスタッフから他のQUALIA 004ユーザの一般的な傾向についてお話を伺ったのだが、はっきり言ってあまりの格差を知って悲しくなった。

 例えば、QUALIA 004ユーザの約3分の1は、エソテリックのユニバーサルプレーヤ「UX-1(125万円)」を所有しているという。“SD映像ソースのために何でそんな金をかけるんだ”といいたいところだが、そんなことはどうでもいいらしい。皆さん、とりあえずお金持ちである。

 また、スクリーンサイズはスチュワートの150インチ以上が当たり前で、地下室に巨大な専用ルームを作っている人も結構いる。映像マニアの中には、かつて購入したソニーやバルコの三管プロジェクタが何台も床に転がっている人もいるそうだ。さらに、QUALIA 004を購入した人に同社のHDハンディカム「HDR-FX1(約40万円)」を勧めると、みんな喜んで買ってくれるという。筆者も“もれなく”勧められたが、丁重にお断りした……。真のQUALIAユーザになれるよう、稼げる男にならないとダメである。


■ ブルーレイ、DVD、HDDにマルチ対応したBD-HD100

 さて、本題に戻ろう。あれから、HDMIに対応したシャープのブルーレイレコーダ「BD-HD100」を購入した。ブルーレイ関連規格の策定状況などを鑑みると、現在購入するのはかなり微妙な時期にあたるのだが、DV-HRD200のHDDにため込まれた映像を外部に吐き出さないと新たな映像を録画できなくなってしまう。

 そこで、DV-HRD200と機能面、操作面で相性の良いBD-HD100を選択した。両者の間ではかなり柔軟に映像のムーブを行えるため、撮りだめた映像をアーカイブしていく用途にはもってこいだ。また、2台を組み合わせることで、表でライブ視聴しながら、裏で別の番組を録画したりといったダブルチューナー的な使い方も可能になる。

HDMIに対応したシャープ「BD-HD100」。天板がブルーレイロゴ付きの光沢仕上げになっており、なかなか高級感がある。ラックの中に納めるのがもったいないくらいだ

 もちろん、BD-HD100の購入に踏み切ったのはHDMIに対応した製品だからだ。まず、お詫びしておきたいのは、後編で映像のシャッキリ度が足りない責任をDV-HRD200に押しつけてしまったこと。実は、AVアンプとQUALIA 004だけに通電し、AVアンプの設定画面をスクリーンに表示させたところ、非常にうっすらとした縞模様が走っていることが判明した。この縞模様はごく特定の条件下でようやく認識できるレベルのものであり、普段の環境ではなかなか気付かなかった。

 実際、設置当日にソニーのスタッフからもインストーラの方からも指摘されなかった。それくらいうっすらとした縞模様なのだ。しかしながら、これが画面全体の画質劣化につながっていたことは間違いない。

 縞模様の問題とは別に、インストーラの方にソニーのBSハイビジョンチューナー「DST-TX1」も持ってきていただき、DV-HRD200自体に問題がないかどうかも念のためチェックする機会を設けた。この結果、両者の間で画質のレベルにまったくといっていいほど差がなかったどころか、むしろシャープのほうが色合いは筆者好みであった。つまり、DV-HRD200に非はまったくなかったということだ。そこで、シャープへの深謝も兼ねて、BD-HD100を早々に購入した次第である。これでシャープさんは筆者の罪を免じてくださるか。

 というわけで、AVアンプの映像セレクタか、10メートルのコンポーネント映像ケーブル、もしくは両方の組み合わせが悪影響を及ぼしていることが明らかになった。しかし、筆者の環境では解決しようのない部分だったりする。QUALIA 004とプラズマディスプレイの両方で見ることを考えると、ハイビジョン映像出力が1系統(D4端子)しか持たないDV-HRD200は、AVアンプに一度入力してあげる必要があるし、機器をプロジェクタの真下に設置できない都合上、コンポーネント映像ケーブルを短縮することも許されないのだ。


■ BD-HD100のHDMIを利用し、QUALIA 004の高画質化

 そんな筆者を救ってくれたのが、HDMIに対応したBD-HD100だった。HDMIを利用すれば、映像ソースからQUALIA 004までをフルデジタルで直結可能だ。これにより、映像の品質を大きく左右しそうなD/A変換(デジタル映像信号→D4/コンポーネント映像信号)を省略できる上、映像ソースとプロジェクタを結ぶ伝送路での信号劣化も防止できる。

 HDMIの場合、映像がどれくらいの品質で映るかというアナログ的な思想は通用しない。つまり、映像がちゃんと映るか、まったく映らないかの2通りのみだ。そして、この運命を決めるのがHDMIケーブルの品質と長さである。

 筆者は、品質を最重視するためにモンスターケーブルのHDMI400シリーズを選択したが、10メートルという長さはやはり心配の種だった。インストーラの方からは、ビクターのD-VHSデッキ「HM-DHX2」との組み合わせで10メートル以上の導入実績はあると聞いていたし、別方面からは伝送する映像信号が1080pでなければメタルベースで10メートルでも伝送できるという情報を得ていた。デジタルハイビジョン放送の規定によれば、現時点では走査線数が1080iないしは720pに限定されているので、筆者の環境で1080pの信号がHDMIケーブルを流れることは当面考えられない。このような経緯から、10メートル伝送にとりあえずチャレンジする気持ちになった。

 それでは機器類の接続を急ごう。DV-HRD200とBD-HD100の接続は次の通りとした。DV-HRD200は従来通りD4端子経由でAVアンプに一度入力し、主にプラズマディスプレイ用として使用する。もちろん、AVアンプからのコンポーネント映像出力を通じてQUALIA 004にも映し出せるようにしてある。そして、BD-HD100とDV-HRD200の間はi.LINKで接続し、DV-HRD200のHDDに録画しておいた映像をBD-HD100にも簡単にムーブできるようにしておく。BD-HD100のHDMI出力はQUALIA 004に直結する。こうすることで、QUALIA 004に最高品質の映像を送り込める。

モンスターケーブルのHDMI400-10M。10メートル仕様のHDMI-HDMIケーブルである。もともとはHM-DHX2のために用意した一品だが、ついにBD-HD100で使うことができた BD-HD100の背面。HDMI端子の追加を除けば、DV-HRD200と大きな違いはない。1点うれしかったのは、外付けのACアダプタ方式ではなくAC電源直結方式になったことだ

DV-HRD200とBD-HD100をラックに収めたところ。結局、映像ソースはすべてシャープで統一された。ラックの空きスペースはもうないので、当分は機器を追加する予定はない

 早速、HDMI経由でBD-HD100の映像をQUALIA 004で映し出してみたが、今度こそ“お見事”の一言。ドットひとつひとつがカッチリかつ安定的に表示されるようになり、画面全体のシャッキリ度が大きくアップした。もちろん、アナログ伝送時に見られていた縞模様も完全に消えている。結果として、QUALIAショップで見た映像にかなり近づいたと思う。これ以上の品質を出すには、スクリーンをソニーが指定したとおりのスチュワート製に変更したり、部屋の壁、天井、床をすべて真っ黒にするなど、かなり大がかりな作業が必要になるだろう。

 床面の反射は1.8m×4mのブラックカーペットを買って対処したが、リビングルームであるがゆえに常設はしていない。ましてや、その他の部分を片っ端から真っ黒にしたら家族からのブーイングが本当に止まなくなる。ということで、これにてホームシアターの完成としておきたい。


■ 仕事部屋にも5.1チャネルサラウンドを

 オマケとして、筆者の仕事部屋の5.1チャネルサラウンド環境についても簡単に紹介しておきたい。リビングルームのホームシアターを新調する際に、旧居で使用していたBOSEのスピーカーがかなり余った。そこで、筆者の仕事部屋にもサラウンド環境を作ってみようと思い立ったのだ。長年にわたりPCを自作していくと、いつの間にかPCパーツが余り、ケースを購入したらもう1台のPCができあがるなんてことがしばしばある。まさに、これと同じような状況が我が家のAVシステムでも発生したのだ。

 仕事部屋用として購入してきたAVアンプは、ヤマハのRX-SL80である。筋金入りのヤマハ派としては、やはりヤマハのAVアンプしか選択肢は存在しない。といって、仕事部屋に高価なAVアンプを購入しても意味がないので、あえて一番安いモデルを選択してみた。RX-SL80は、独自開発のPWMデジタルアンプ「Pulse Art」を採用しており、本体の高さも55.5mmと非常に薄い。これならば置き場所にも困らない。

 スピーカーは、フロントがBOSEの121 West Borough、センターが33WER、リアが111AD、サブーウーファーがヤマハのYST-SW500である。リアスピーカーだけは天井に吊り下げている。また、音楽、映像ソースは筆者の仕事マシン「IBM ThinkPad T42」である。映像を映し出すディスプレイは、ThinkPad T42の14.1インチ液晶ディスプレイ。仕事部屋に大きなディスプレイを置く気にはなれないので、ノートPCのディスプレイで十分だ。基本的に仕事しながらのBGM再生が中心となるが、とりあえず映像も楽しめるのでミニミニホームシアターといったところか。

筆者はヤマハのトーンジェネレータ「MOTIF-RACK」の上にRX-SL80を置いている。筆者の家には、なにげにヤマハ製品が増殖しつつある 仕事部屋の5.1チャネル・ミニミニホームシアター。ほとんどは音楽を楽しむために使っているが、気分転換にマルチチャネルソースの映画を見ることもある

 PC側のサウンドユニットには、クリエイティブメディアのSound Blaster Extigyを使用している。2チャネルのPCM出力は、そのまま光デジタル音声ケーブルを通じてRX-SL80に送り込まれる。あとは、AVアンプ内部のHiFi-DSPやCinema-DSPを通じて臨場感あふれるオーディオを楽しめるといった流れだ。Sound Blaster Extigyは、ファームウェアおよびドライバのアップデートによって、ドルビーデジタルやdts信号を光デジタル音声出力へとパススルーできる(関連のFAQはこちら)。これで、5.1チャネルサラウンドの再生にも対応した。

 なお、筆者はThinkPad専用のドッキングステーション「ThinkPad Dock III」を使っているが、ThinkPad Dock IIIのUSBポートにSound Blaster Extigyを接続すると、ドルビーデジタルやdtsソースを再生時に音が途切れ途切れとなってしまう。原因はまったくもって不明だが、ThinkPad Dock IIIに搭載されたUSBハブが悪さをしているのではないかと勝手に推察している。いろいろと試行錯誤してみたが結局解決できなかったので、ThinkPad本体のUSBポートにSound Blaster Extigyを直結して使っている。


■ 最も大事なのは、最新テクノロジを手に入れた喜び

 最後に一言。すでにお気付きの方も多いと思われるが、本稿では前編、後編、完結編にわたり音質や画質といった感性的なことにはほとんど触れていない。筆者は映像、オーディオの専門家ではなく、突発的に高い買い物をしてみたくなった“しがないストレージ好きのジャーナリスト”である。その買い物が、コンピュータでもなく自動車でもなくAVシステムだったというだけのことだ。だから、あえて散財記にとどめることにした。本稿で至らなかった点については、“こいつ素人だし、仕方ねぇな”ということで軽く笑い飛ばしていただければと思う。

ついに完成したリビングルームのホームシアター。後編で掲載した風景とあまり代わりばえがないが、いちおうラックにBD-HD100が追加されている

 今回、筆者にとって最も重要だったのは、最新のAVシステムを支えるテクノロジに触れられた喜びである。最新の11.2チャネルサラウンドとはどういう構成をとり、具体的にどんな臨場感を醸し出すものなのか、フルHD解像度を持つプロジェクタに込められたテクノロジとはいったいどういうものなのか、そういうことを毎日肌身で感じ取れる環境を手に入れられたことが一番の収穫だと思っている。

 そして、しっかりとしたインフラさえ作ってしまえば、あとはここから学べることも必ずやあると信じている。何とも悠長なスタンスだが、コンピュータだって古くからそうやって学んできて現在がある。素人だから安価なシステムを導入しておけばよいという考え方ではなく、自らの向上心を半ば強引に引き出す意味でも“少し背伸びをした”システムを早い段階で手に入れておくべきであるというのが筆者の持論だ。筆者の場合、さすがに背伸びをしすぎた感もあるが、それは一世一代の散財ということでご愛敬である。

 というわけで、リビングルームと仕事部屋の両方にホームシアターが完成した。もう思い残すことは何もないので、あとはバッファーアンダーラン状態になってしまった銀行預金をペイオフいっぱいのレベルまで復活させるくらいの気合いで仕事を頑張るのみだ。そして、近い将来にまた魅惑的なテクノロジと巡り会えることを強く願っている。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200306/03-0610B/
□QUALIAのホームページ
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/QUALIA/
□関連記事
【11月17日】伊勢雅英のQUALIAホームシアター構築記 [後編]
~フルHDプロジェクタ「QUALIA 004」を導入する~
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-民生機初のキセノンランプも搭載、HDMI入力も国内初装備
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【2003年12月9日】2年ぶりにリニューアルしたフラッグシップAVアンプ
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031209/dspz9.htm

(2004年12月16日)

[Reported by 伊勢雅英]


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