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EDIROLから新たなFireWireオーディオインターフェイス「FA-66」が登場した。これは現在ベストセラーのオーディオインターフェイス「FA-101」と「UA-25」の2機種を足して2で割ったような新モデルだ。主にモバイルでの利用を想定して設計されたとのことだが、FA-101とどう違うのか、音質はどうなのかなど、気になる点は多い。詳しく検証した。
■ FA-101の弟分だが、スペックはいいとこ取り
1月に米国で開催されたNAMM SHOWで発表され、国内でも2月9日に正式に発表された「FA-66」。FA-101の弟分ともいえるFireWireのオーディオインターフェイスで、アナログが4 IN/4 OUT、デジタルが2 IN/2 OUTの計6 IN/6 OUTをサポートている。国内での発売は3月上旬であり、実売で38,000円前後だから、結構手ごろな製品である。まだ工場ラインでの生産がスタートしていないので、実機は数台しかないようだが、NAMM SHOWで展示していたモノを借りることができたのでいろいろとチェックしてみた。
実物を見ると、色はFA-101を踏襲するメタリックレッド。FA-101が1Uのハーフラックマウントサイズであったの対し、FA-66はそれよりも一回り小さいサイズだ。形状的には人気のUSBオーディオインターフェイスUA-25とそっくりな、オールアルミで頑丈なボディーを採用している。
ボディはFA-101よりも一回り小さい | 前面 | 背面 |
スペックと機能はFA-101とUA-25の「いいとこ取り」といった感じで、単なるFA-101の機能縮小版というわけではない。FA-101になくてFA-66にある機能を具体的にあげると、アナログ・リミッター回路がある。
オーディオ機器やギター、ベース、またマイクといったアナログ機材と接続してオーディオ信号を入力する際、よく問題になるのが突然の過入力。レコーディング中に、過入力が入ったら、すべてが台無しになるし、最悪の場合、機材が壊れる可能性もある。それに対し、FA-66はリアにあるリミッタースイッチをONにすることで、そうしたトラブルを回避することができる。回路的にはUA-25に搭載されたものと同等だが、非常に便利な機能だ。
■ よりスマートに接続できる端子部
もうひとつ、FA-101と違うのが端子類。FA-101は、フロントにXLRコンボジャックの2ch入力と光デジタル入出力があるほかは、すべてリアにTRSフォンジャックのバランスでの入出力が並び、計10 IN/10 OUTとなっていた。それに対し、FA-66は同じくフロントにXLRのコンボジャックの入力が2ch、リアに光デジタルの入出力と4chのTRSフォンでバランスの出力が4chあるが、もう1つの入力がリアに装備されたRCAのステレオ2ch。当然、RCAのほうが、TRSフォンのバランスに比較するとノイズなども入りやすいが、あえてRCAピンを採用したのは、FA-66をノートPCなどと持ち歩き、ライブなどで利用することを想定してのものだ。
最近はPCを用いたDJのライブパフォーマンスが流行っているが、こうした場面で利用する場合、CDプレーヤーなどのオーディオ機器と簡単に接続できることが求められる。FA-101でも付属のRCA/TRSフォンの変換コネクタを利用することで接続は可能だったが、やはり直接繋げるほうが便利ということから、このようになっているのだ。
なお、これらの端子について、「オヤッ?」と感じたのがメイン出力であるアナログの1/2chの出力レベル。FA-101では、レベル調整をする要素はとくになく、PC側でコントロールするだけになっていたが、FA-66ではフロントのヘッドフォン端子の上にあるボリュームと連動している。
ブロックダイアグラムを確認してみると確かに、ヘッドフォンと出力の1/2chの前にボリュームが設置されている。どちらが好きかはユーザーによって異なるところだろう。なお、このボリュームを最大にしたとき、+4dBuの出力になるように設定されており、途中にアンプが入っているわけではないため、これによってノイズが混入する心配はない。
そのほか細かな違いとしては、FA-101で用意されていた88.2kHzというサンプリングレートのモードがカットされ、44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzの4モードになったこと。各モードはリアのスイッチで切り替えて使う。なお、96kHzまでは同時に6IN/6OUTが利用できるが、S/PDIFの規格に192kHzが存在しないため、192kHz時は4 IN/4 OUTに制限される。
■ 直列接続でFA-101/FA-66の同時利用も可能
また、FA-101でのFireWire端子は6ピンのものが2つ装備されていたが、FA-66は6ピン1個と4ピン1個という組み合わせになった。6ピンでの接続であれば、PCからの電源供給で動作し、ACアダプタがいらないのは従来通りだ。ここで試しにFA-101とFA-66を以下のようにデイジーチェーンで直列に接続してみた。
[PC] | [FA-101] | [FA-66] | |||||
6ピン | 6ピン | ←---→ | 6ピン/ | 6ピン | ←---→ | 4ピン | 4ピン |
FA-101とFA-66をデイジーチェンで直列に接続した。SONAR4を用い、WDMドライバでの利用してみたところなんら問題なく双方を同時に使うことができた |
この際、当然FA-66はACアダプタが必要となるが、PCからは両方のデバイスを認識できる。試しにSONAR4を用い、WDMドライバでの利用してみたところなんら問題なく双方を同時に使うことができた。ただし、あくまでも別々のデバイスであるため、ASIOドライバ利用時は片方しか使うことはできない。
ところで、FA-66はFA-101と同様、Mac OS X環境で非常に便利に使うことができる。というのも、これらはMac OS X標準のドライバで認識し、Cora Audio Core MIDIで動作するからだ。
これまで多くのメーカーからFireWireのオーディオインターフェイスがリリースされているが、メーカーからのドライバが不要で、標準ドライバだけで動作するのは、現時点においてはEDIROLの2機種だけだ。
Mac OS X標準のドライバで認識する |
やはりFireWireケーブル1本だけで即利用できるというのはMacintoshユーザーにとって大きな魅力だろう。またPowerBookは6ピンのFireWire端子を装備しているので、ACアダプタが不要というのもポイント。多くのノートタイプのWindowsマシンではFireWire端子が搭載されていても4ピンがほとんどであるため、モバイル性という面では、Macintoshでの利用に軍配が上がりそうだ。
■ アナログオーディオ性能はFA-101とほぼ同じ
ここから例によって、入出力を直結しての音質チェックを行なった。入力はフロントのXLRコンボジャックとリアのRCAピンの2つがあるが、ここではバランス接続可能なフロントを使った。また、出力はどれでも同じだとは思うが、前出のボリューム付の1/2chは敬遠し、レベル調整のない3/4chを使ってみた。まず最初に行なったのが24bit/48kHzで直結し、非再生時にどれだけのノイズが載るかという実験。この結果はノイズの少ない非常にいいものとなった。まあ、多少は個体差などがあるのかもしれないが、以前行ったFA-101での実験よりもややいい結果となっている。
次に同じ接続環境で-6dBのサイン波を再生させたとき、フィードバックされる信号がどなるか実験した。これも高調波などが非常に少ないクリアな信号である。またスウィープ信号で行なった結果も、とてもフラット。いずれの結果もFA-101とほぼ同様であるため、アナログオーディオ性能という面では差はほとんどないと考えてよさそうだ。
ノイズレベル | 1kHzサイン波 | スウィープ信号 |
何も出力していない状態のものを録音 | サイン波を出力 | スウィープ信号を出力 |
※参考:FA-101の測定結果 |
これらの実験はすべて24bit/48kHzでの動作だが、FA-66は192kHzまで対応している。そうしたハイサンプリングレートでどうなるかを見るため、RMAAを使った実験も行なったので参考にしてほしい。結果はFA-101の時とほぼ同じになった。192kHz時でのIMDの成績がやや劣ること以外は、非常にいい性能を実現している。
48kHz | 96kHz | 192kHz |
こうした結果を踏まえると、FA-66はコストパフォーマンスが非常に高いモデルといえるだろう。今回の製品の様に、FireWireオーディオに力を注いできてるEDIROLだが、USB 2.0も捨てたわけではなく、じっくりと次の製品を出す機会をうかがっているようだ。
UA-1000のリリースからずいぶんと時間が経ってしまったが、どんな製品を投入するのか、そしてFA-101、FA-66とどんなすみ分けをするのかなど、次の一手に注目したい。
□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/FA-66.html
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(2005年2月21日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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