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第206回:ついに登場したDSD対応の新「VAIO」【SSMS編】
~ DSDやマルチchをサポートした「2.0」の強化点 ~



 新型VAIOのオーディオ機能をレポートしてきた本シリーズだが、今回の3回目で最後。SonicStage Mastering Studio 2.0におけるPCMでのレコーディング、編集機能について取り上げる。

 前回はDSDでの機能について紹介したが、同じソフトであり、ユーザーインターフェイスも基本的にほぼ同じでありながら、起動する際にDSDモードであるか、PCMモードであるかを選択することで、まったく異なるソフトになる設計になっている。従来のSSMS 1.xと比較して、大きくバージョンアップしたSSMSの実力を検証した。



■ 2chと5.1chをスムーズに変換可能

 SonicStage Mastering Studioは、アナログ音源のデジタル化を主な目的としたソフトで、VAIOでのみ動作する。これの初期バージョンについては、以前詳しく紹介しているので割愛するが、何十万円もするプロのレコーディング、マスタリング用のエフェクトを搭載するなど、コンシューマ用製品としては「常軌を逸している」のではないかというほどの機能を持ったソフトとなっていた。

 今回新たに登場したSSMS 2.0と、従来のSSMS 1.xの最大の違いは前回紹介したDSD機能の搭載であるが、PCM機能に絞って比較しても、かなりの機能アップを図っている。オープニング画面のイメージは従来どおりで、「入力、録音/編集、出力」の3ステップ構成になっていること自体も変わらないが、さまざまな点で変化している。そのベースになるのが24bit/192kHzまでのフォーマットに対応したことと、マルチチャンネルへの対応だ。

 従来のSSMS 1.xではステレオ2chでのレコーディング、編集、再生となっていたが、SSMS 2.0では2chに加え、5.1chもサポートした。いわゆるマルチトラックレコーディングソフトではないので、多重録音をするためのものではなく、一発5.1ch録りをサポートするとともに、5.1chでの編集そして、出力までを2chのときと同じ感覚で利用できるようになった。

FA-101を接続したところ、問題なく利用できた

 VAIOの場合は、5.1ch出力をサポートしたモデルはあっても、5.1ch入力をサポートしたものはない。そのため別途入力用のデバイスが必要になる。

 もっとも、これらのデバイスに対してネイティブドライバで対応するというわけではなくASIOドライバ経由となっているので、裏を返せば基本的にはASIOデバイスであれば何でも利用可能。手元にUA-101がなかったので、同じEDIROLのFireWireデバイス「FA-101」をVAIOのi.LINK端子に接続して使ってみたところ、問題なく利用することができた。

 入力デバイスの選択は、ドライバの設定画面で行なうとともに、入力画面で、内蔵オーディオインターフェイスであるSound Realityのマイク入力を選ぶか、ライン入力を選ぶか、ASIOデバイスを選ぶかの設定があり、これで選択する。そして、録音/編集画面において、2chにするか5.1chにするかを設定する。

入力画面で、マイク入力、ライン入力、ASIOデバイスの中から選択する 録音/編集画面で、2ch/5.1chを選ぶ

5.1chを選び、録音ボタンをクリックすれば、5.1ch同時録音が可能に

 ここで、5.1chを選び、録音ボタンをクリックすれば、5.1chを同時に録音できる。もっとも、5.1chを同時に録音するというシチュエーションは、一般ユーザーにとってはあまり考えられないようにも思うが、とにかくSSMSはやってしまったのである。

 SSMSで面白いのは2chと5.1chをスムーズに変換できるということ。つまり、5.1chで録音したものを2chのスピーカーへミックスダウンして出力したり、2chのソースを5.1chサラウンドに広げて出力すること、さらには5.1chのままより音に広がりを出したり、さまざまなエフェクトをかけるなど、非常に自由度が高くなっている。



■ サラウンドエフェクトを強化

 出力段の部分を見ても、ちょっと変わった接続がされていることが確認できる。ここで、SSMS 2.0のミキサーのダイアグラムを見ていただきたい。このように、結線上も2chと5.1chの行き来がしやすくなっているほか、相互変換のためのエフェクトが新たにいろいろ追加された。

出力段の接続 SSMS 2.0のミキサーのダイアグラム

 具体的にあげると、まずはQSoundのエフェクト群。SSMSがWAVESやSony Oxfordなどのプロ用エフェクトを搭載してきたことと、コンシューマー用としても有名なQSoundにはややギャップを感じたが、ステレオ・サラウンド間の変換ユーティリティとして考えるとなかなか魅力的なエフェクトである。

 まずは5.1chのサラウンド感を保ったまま2chで鳴らすバーチャルサラウンド実現のためのQSurround Virtualizer。反対に2chの音に広がりをつけてサラウンド化するQMSSがある。さらに、QSurround 5.1は5.1chの音にさらに広がりをつけて、そのまま5.1chで出力するというエフェクトとなっている。

QSurround Virtualizer QMSS QSurround 5.1

WAVES S360 Surround Imager

 もちろん、このマニアックなSSMSだけに、サラウンド関連エフェクトはQSoundだけというわけではない。WAVESのサラウンドエフェクトの決定版「WAVES S360 Surround Imager」もプリインストールされている。これは5.1chサラウンドの音を非常に細かく調整して、音の広がりを完成させていくもので、やはりプロ御用達ツールのひとつである。



■ オリジナルのプラグインも追加

 一方、サラウンド関連においてはソニーオリジナルのプラグインも3つ追加されている。いずれもベーシックだが、必須の機能として提供されている。ひとつはその名もずばりの「Fader」、また2chを6chに割り振るための「Surround Panner」、そして6chを2chへミックスするための「Downmix」。普通こうした機能はレコーディングソフト側に搭載されそうなものだが、2chと5.1chを意識させずシームレスに扱っているSSMSとしては、ツールをエフェクトに持たせることにより、スッキリとした構成を保っているようである。

Fader Surround Panner Downmix

 SSMS 1.xのときからもWAVESのS1 Stereo Imager、Renaissance Bass、L1 Ultramaximizerに加え、Sony Oxford EQが搭載されていたが、この一連のエフェクトもさらに追加された。そのひとつはこれまでオプション扱いだったSony Oxford Multichannel 5 Band EQ + Filter。

 メディアインテグレーションが扱っているProTools用のプラグインとはユーザーインターフェイスは異なるが基本的には同じ。各パラメータがツマミではなく、フェーダー形式になっているので、マウスでの操作はしやすくなっている。また、同じくSony OxfordのInflatorというエフェクトも、サラウンド対応に拡張された。これは聴感上の音圧を上げながらも温かみを付加するというエフェクト。L1 Ultramaximizerと似た役割ながらも、違った音作りが可能となる。

Sony Oxford Multichannel 5 Band EQ + Filter Sony OxfordのInflatorというエフェクトも追加

 そして、もうひとつ追加されたのがSony Oxford Restorer。これのみはレコーディング時に即利用することも可能になっているのだが、原音を損なわずにノイズ成分を除去するというノイズリダクション・プラグインだ。これを利用することで、手持ちのアナログ素材をしっかりとデジタル化できる。試しに以前、使ったことのあるサンプルを用いて、このRestorerの実力はどれほどのものなのか実験してみた。

Sony Oxford Restorer レコーディング時に即利用可能

 このパラメータを見てもわかるとおり、ヒスノイズ、ハムノイズ、クラックルノイズのそれぞれに対応できるようになっており、それぞれが独立している。まずヒスノイズで試したところ、ノイズリダクションを強めると、ややキュルキュルした音が入るようになる。いろいろ試したところ35%程度のかけ具合がちょうどいい感じだったが、まだノイズ感は残る。

 次にハムノイズを試したところ、50Hzに設定すると、確かに低音部は取れるのだが、ハムノイズとして乗ったザラザラした感じの高域の音はまったく取り除かれずに残ってしまう。ヒスノイズ除去である程度取れるかと思ったが、音質が変化してしまうばかりで、ノイズはあまり取れなかったので、併用にはあまり効果はなさそうだった。

 一方、クラックルノイズはリダクションレベルを100%に設定するのがいい感じで、原音をほとんど損なうことなく、かなり取り除くことができた。こうした結果を見ても、これが完璧なノイズリダクションとはいえないが、SSMSではサードパーティのVSTプラグイン、DirectXプラグインも利用可能なので、これらと組み合わせて使うことで、より真価を発揮できそうだ。


【サンプル音声】(MP3)
ヒスノイズ ハムノイズ クラックルノイズ
sample1.mp3
(472KB)
sample2.mp3
(471KB)
sample3.mp3
(472KB)
ノイズリダクションを強めると、キュルキュルした音が入る 高域のザラザラ感が残る リダクションレベルを100%に設定すると、原音をほとんど損なわずに除去できる



■ 「DV-RA1000」アップデータの配布予定も

 先日、パシフィコ横浜で開催されたA&Vフェスタ2005では、SuperAudioCDの展示ルームで、VAIOとTASCAMのDV-RA1000を並べての参考出品がされていた。これはDV-RA1000に記録されているDSDレコーディングされたデータ(DSDIFFファイル)をVAIO側でインポートしたり再生できるという機能。

A&Vフェスタ2005で展示されたDSDレコーディング対応のVAIO(左)と、TASCAMのDV-RA1000(右)

 DV-RA1000はUSBでPCと接続でき、接続するとPCからは外付けドライブとして見えるが、ここにあるDSDIFFファイルを読めるようになる。また、DSDファイル(DSF/DSDIFF)再生のためのDirectShowフィルタも開発されており、それを利用することで、Windows Media Playerでもそのまま再生できるようになる。まだ、参考出品という段階であり、アップデータの提供時期は未定ということだ。

 また、DSDIFFのエクスポートについても尋ねたところ、未定とのこと。民生機がDV-RA1000しかない現状においては、限られた用途でしか活用できないが、今後のDSD普及のための地固めは進んでいるようである。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報(VAIO typeR)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-RC70/
□製品情報(VAIO typeH)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-H71S/
□製品情報(VAIO typeV)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/VGC-VA200DS/
□関連記事
【9月12日】【DAL】ついに登場したDSD対応の新「VAIO」【レコーディング編】
~ シンプルで高音質。自由度は発展途上 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050912/dal205.htm
【9月5日】【DAL】ついに登場したDSD対応の新「VAIO」【ハード編】
~ 自社開発チップ「Sound Reality」で高音質化 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050905/dal204.htm
【8月30日】ソニー、「VAIO」で民生用PCで世界初のDSD録音/再生対応
-「Sound Reality」を搭載。WAV/DSD変換機能も搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050830/sony1.htm
【8月29日】ティアック、CDのPCMをDSDに変換するSACDトランスポート
-DSD/PCM対応DACと組み合わせて再生。各126万円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050829/teac.htm
【6月20日】【DAL】189,000円のDSD対応レコーダ
~ 「DV-RA1000」でDSD録音は浸透するか? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050620/dal195.htm
【5月9日】【DAL】ASIO 2.1がSACDのフォーマット「DSD」に対応
~ 対応チップ搭載VAIOで、DSDという選択肢を提供 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050509/dal189.htm
【4月7日】Steinberg、DSD入出力に対応した「ASIO 2.1」を発表
-音楽製作機器でのDSDフォーマットの普及へ促進へ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050407/stein.htm

(2005年9月26日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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