~ 最も高音質な配信サービスは? ~ |
iTMS | Mora | OnGen |
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このコーナーでも、iTMSが日本でスタートするよりだいぶ前の第147回で、MoraおよびExcite Music Storeでの音質比較に加え、Sonic StageとWindows Media Playerを使ってCDからリッピングした音とも比較した。この際はバイナリレベルでの一致はなかったものの、いずれもほぼ同じ結果になった。今回は、そのとき実験結果も踏まえつつ、iTMSのデータを追加して検証していくことにしよう。
第147回での実験当時は、各配信サービスでダウンロードデータをCDに焼くということが許可されていなかったため、各ソフトで再生した音をTotal Recorderというソフトを使って直接キャプチャしていた。そのためひとつ気になったのが、この音楽CDに焼くという過程で音質劣化が生じる可能性がないか、ということ。厳しいDRMが施されている中で、PCのクラッシュなどでデータ消失を回避する方法として音楽CDへ焼いておくという手段を利用する人も少なくないが、もしここで音質劣化が生じているとしたら、ちょっと悔しい。
そこで最初の実験としては、各サイトからダウンロードした曲をPCで再生させた音をTotal Recoderでキャプチャした音と、いったん音楽CDに焼いてからリッピングした音に違いが出るのかを試してみることにした。しかし、最初につまずいたのが、iTunesの再生音をTotal Recorderできれいにキャプチャできないということ。Total Recoder経由で再生させると音がブチブチと途切れてまともな音にならないのだ。
QuickTimeの設定で「セーフモード(WaveOutのみ)」にチェックを入れるときれいにキャプチャできる |
この問題は、最新版のTotal Recoderをインストールしても解決しなかったが、いろいろと調べてみたところ、iTunesはMMEドライバではなくDirectSoundを直接アクセスするためにこのような現象が起こっているようだ。そこで、iTunesのオーディオ部分をつかさどるエンジンであるQuickTimeの設定で、「セーフモード(WaveOutのみ)」にチェックを入れることでMMEドライバから音が出てきれいにキャプチャできることを発見した。また原音を正確にキャプチャするには、iTunes側の音量レベルを最大にしておく必要があることも確認した。
iTunesでは、音楽CD化する時点での劣化はない模様 |
では、MoraとSonicStageでの組み合わせではどうなのか? これも同様に実験した結果、やはり完全に一致した。しかし、問題が出たのがOnGenで購入し、Windows Media Playerで再生した音とWMPから音楽CD化したものをリッピングした結果で、まったく一致しない
Moraのファイルも一致 | Ongenでは全く異なる結果に |
レベル-6dBにピークが来ており、オリジナルの音量半分に |
試しに波形編集ソフトを使って、リッピングしたファイルを開いてみると、すぐに問題がわかった。レベル-6dBにピークが来ており、オリジナルの音量の半分になっている。
これで極端に高域が欠けるということはないだろうが、音質が劣化することは間違いない。そこで、WMPの設定を見てみると問題を発見。書き込むドライブのプロパティで品質のタブを開くと「書き込むときに、音量調整を適用する」というところにデフォルトでチェックが入っていたのだ。つまり、勝手にノーマライズしてしまい、しかも-6dBに揃うようになっている。普通はチェックをはずしておいたほうがいいだろう。その後、再度実験してみたところ、今度はバイナリレベルでほぼ一致した。
WMPのプロパティでは「書き込むときに、音量調整を適用する」にチェックが入っていた | チェックをはずしたところ、バイナリレベルでほぼ一致 |
これで、準備が整ったのでHere I amで、オリジナルCDからのリッピング結果および3サイトからダウンロードした結果を比較した。先ほどのAsylums in Jerusalemの場合とは少し傾向が異なるが、やはり違いが出ていることは確かだ。
CDからのリッピング結果 |
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iTunesでAACの128kbpsにエンコードした結果 |
さらに、iTunesでAACの128kbpsでエンコードした結果も見てみた。これをiTMSから購入した曲データと比較した感じではそっくりだ。ただ、試しにバイナリ比較した結果では同じにはならなかった。
アップルによると、「業務用のエンコーダというものは存在しないので、プロもiTunesと同じものを使っている」とのことなので、もしかして一致するのではと思ったのだが……。とはいえ、今回試したのは最新のiTunes 6.0だったので、エンコーダのエンジンそのものが違うせいかもしれない。またHere I amの場合、AAC用にオリジナルマスタリングしていた可能性もあるので、そのせいなのかもしれない。
ちなみに、第147回の実験で扱った宇多田ヒカルのColorsという曲は先ほどのAsylums in Jerusalemと同様に東芝EMIなので、試しに傾向に似たものがあるのかを調べてみた。しかし、これもやはり違う結果となってしまった。邦楽と洋楽ということで、洋楽側の作業を海外で行なっていた可能性もあるし、担当者が違ったのかもしれないが、結局、ユーザー側からは判断がつくものではなさそうである。
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□iTunes Music Storeのホームページ
http://www.apple.com/jp/itunes/store/
□Moraのホームページ
http://www.mora.jp/
□Ongenのホームページ
http://www.ongen.net/
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(2005年10月31日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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