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第261回:SonicStage CPの音質補正機能「DSEE」を検証
〜 高い補正効果。HE-AACエンコードもテスト 〜



「SonicStage CP 4.2」

 1カ月ほど前にリリースされた、「SonicStage CP」の新バージョン4.2。

 従来のSonicStage CPにHE-AACのエンコーダ/デコーダを追加したほか、MP3などで欠落した高音域を復活させて音質を向上させる「DSEE」という音質補正エンジンを搭載しているという。実際に、これらが使えるものなのかをチェックした。


■ 「SonicStage CP」に音質補正機能が追加

 SonicStage CPは従来のオーディオソフト「SonicStage」と「Connect Player」を統合して使い勝手などを向上させたもの。今回のアップデートでは、ソフトとしての機能はほとんどそのままだが、気になったのは、MP3などの音質補正機能「DSEE(Digital Sound Enhancement Engine)」が搭載されたことだ。

 前回取り上げた「Xmod」と「Vraison」といったUSB機材のほか、「gigabeat」や「D-snap Audio」などのポータブル機器、YAMAHAやPioneerのAVアンプに搭載された音質補正機能など、最近各社からこうした音質補正機能を搭載した機器が発売されているが、PCのソフトだけで音質補正ができるものは珍しい。以前、TDKがKENWOODのSupremeを搭載した「MP3 Audio Magic」シリーズを出していたが、それも絶版になってしまったようだ。

 そんな中、登場したSonicStage CP 4.2は、基本的にはウォークマンユーザーのためのソフト。ただし、Moraでのダウンロード&再生/管理ソフトでもあり、ウォークマンなどを持っていないユーザーでも単体のジュークボックスソフトとして活用できる。しかも、ウォークマン用のCODECであるATRAC 3/ATRAC 3 Plus/ATRAC Advanced Losslessはもちろん、MP3/WMA/AACに加えて、HE-AACも搭載したので、ユーザーはこれらを自由に選択し、CDからリッピング&エンコードできる。もちろん、これらのデータの再生用プレーヤーとしても活用可能だ。

DSEEを有効にするには、ボタンをオンにするだけのシンプル操作

 Windowsユーザーがもっとも標準的に使っているWindows Media Playerは、次のWindows Media Player 11となっても、MP3などの圧縮オーディオに対する音質補正機能は搭載されていないが、このSonicStage CP 4.2には、ソニー独自のDSEEを搭載しただけでもプレーヤーソフトとして魅力的だ。

 使い方はいたって簡単で、再生している際に、DSEEというボタンをオンにしてチェックを入れるだけ。これによって、音が少し変化する。ただし、ATRAC Advanced ロスレス、リニアPCM、HE-AACには作用しない。

 DSEEとは、SonicStage CPのヘルプを見ると「“DSEE”は、Digital Sound Enhancement Engineの略称で、ソニーが独自に開発した高音域補完技術です。圧縮音源に対して高音質化処理を施し、さらに圧縮で取り除かれた高音域を補完することで、オリジナル音源に近い自然で広がりのある音を再現します」とある。

 もう少し詳しい情報がないかとソニーのサイト内を検索したものの見つからない。

 仕方ないので、実際にいつものような実験をして、どのように波形が変化しているのかを確認してみた。ただし、今回はソフトということで、いつもとは方法が異なる。通常はいったんアナログで出力し、それをUA-1000を用いて24bit録音して解析していたが、今回はソフトによる音質補正ということで、もっと正確に測定することができそうだ。方法はTotal Recorderというソフトを使って、実際にオーディオインターフェイスへ信号が届く前にキャプチャしてしまうという手段。これならDSEEの演算結果を100%捕らえることができる。

 そのためちょっといつもと手順は異なるが、用意する素材はいつもと同様、サイン波、矩形波、音楽ファイル2つの計4つ。


■ 抜群の補正性能

 まずはサイン波から。DSEEをオフにしている状態に対してオンにすると、1kHz近辺ではほとんど変化はないが、15kHz以上に成分が加わっているのが確認できる。次に矩形波で、同様の比較をすると、オフだと16kHz以上が切れていたのに対してオンにすると、キッチリ表示される。

 また、その波形も、キチンと繰り返しになっているが、本来の非圧縮の波形と比較すると、やや各ピークがズレているようではある。これだけを見ると、YAMAHAのミュージックエンハンサーや日立マクセルのBit-Resolutionに似た雰囲気の結果になっている。

DSEEオフの状態のサイン波 DSEEをオンにした状態のサイン波

DSEEオフの状態の短形波 DSEEオンの状態 非圧縮の波形

 続いて音楽ファイルを再生した場合の効果を見てみよう。用意した素材は、携帯プレーヤーの音質補正機能の検証記事以降いつも使用している「リズム&ベース素材」と、「TINGARA」の「Jupiter」という曲の2種類で、フォーマットは非圧縮WAV(PCM)と、ビットレート128kbpsのmp3ファイル。

 使用前、使用後を比較してみると、ハッキリと16kHz以上が再現されているのがわかる。非圧縮時の分析結果と比較すると、違いはあるが、かなり近い形になっていることが確認できる。

リズム&ベース素材
BSEEオフ
【音声サンプル】(189KB)
BSEEオン
【音声サンプル】(2.09MB)
非圧縮
【音声サンプル】(2.02MB)

楽曲(Jupiter)
BSEEオフ
【音声サンプル】(939KB)
BSEEオン
【音声サンプル】(10.1MB)
非圧縮
【音声サンプル】(10MB)
楽曲データ提供:TINGARA

 実際聴いたDSEEの補正結果もかなりいい感じだ。PC+UA-1000という環境で再生させているということもあるが、これまで見てきたポータブルオーディオなどと比較して、最高といってもいいものだった。ただし、それでも原音から変質してしまった音色を元に戻せたわけではない。あくまでも全体の雰囲気がよくなるというだけであるので、その点については過度の期待は禁物だ。


■ HE-AACのエンコードもテスト

録音設定で「HE-AAC」を選択する

 せっかくなのでもうひとつ、HE-AACについての実験もした。HE-AACは携帯電話の「着うた」などでも利用されている高圧縮のフォーマット。48kbpsあたりでも、実用になるのが特徴。今回は、SonicStage CP 4.2で、このHE-AACへのエンコードおよび、デコードについても試してみた。

 これまでと同様、WAVなどのファイルを直接HE-AACへエンコードできるわけではなく、あくまでもCDからとなる。そこで、以前から圧縮時の実験に用いている3つの素材、1kHzのサイン波、スウィープ信号、楽曲ファイルのそれぞれをいったんCD-R(CDDA)にライティングしてから、SonicStage CPでエンコードしてみた。エンコードすると、「.3gp」の拡張子で保存される。当然、このファイルはそのままでは解析できないため、いったんSonicStage CPで再生するとともに、先ほどのTotal Recorderを用いてキャプチャ。それをWaveSpectraで解析するという手順を踏んだ。

 3つのファイルそれぞれの分析結果を観ると、48kbpsという非常に低ビットレートではあるものの、波形を見る限り、MP3の128kbpsくらいの音のように思える。スウィープ信号だけ、やや妙な波形になっているが、音をモニタしていると12kHzを超えたあたりから16kHzあたりまで、妙な雑音出て、このような波形になってしまうのだ。普通に楽曲を聴いていると気にはならないが、やはりMP3の128kbpsと比較すると、原音とはややニュアンスの違う音にエンコードされている。

 HE-AACでも16kHzあたりまで音が出ていることを考えると、MP3と同様にDSEEが適用できるようにバージョンアップを期待したいところだ。

HE-AACエンコード
1kHzサイン波 スウィープ信号 楽曲ファイル

圧縮率の高いHE-AACにおいて、DSEEは全く効果がなかった


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.walkman.sony.co.jp/sscp/index.html
□ダウンロード
http://www.sony.jp/support/pa_common/download/ss34_dl_01.html
□関連記事
【11月13日】ソニー、DSEE機能を追加した「SonicStage CP」の最新版
−圧縮音楽を補間再生。NW-S700F向けの各種改善も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061113/sony.htm
【2005年12月5日】ソニーのロスレス「ATRAC Advanced Lossless」
〜 特徴的な「ベース+差分」構成を検証 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051205/dal215.htm
【2005年11月21日】【DAL】ウォークマンA用ソフト「CONNECT Player」をテスト
〜 Losslessには対応せず。改良版に期待? 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051121/dal213.htm

(2006年12月4日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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