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第293回:テレビを進化させるVAIO、「TP1」+「DT1」登場
〜 テレビサイドPCはここまで来た!? 〜


■ リビングPCの夢

 日本のPCメーカーは、家電も手がけるところが多い。PC専門メーカーがひしめく米国とはあきらかに違ったところで、早くからPCのリビング進出を試みてきた。だがこれまでの試みは、あまり成功したとは言えないだろう。やはりテレビとPCとは出自というか文化が違うため、なかなか上手くとけ込めなかった。

 そして技術的な問題もさることながら、リビングに置くには形も重要だ。いかにもパソコンパソコンしたものがあるというのも、取って付けたようで上手くない。過去VAIOでは、テレビと繋ぐということを前提に作られた「type X」、「typeX Living」というマシンが存在した。

 「type X」がホームサーバ、「typeX Living」がAV機器的なルックスを持っていたが、今月発売されるテレビサイドPC「TP1」は、既に多くのメディアでも報道されているとおり、斬新な円形ボディを採用した意欲作だ。店頭予想価格は約13万円と、Windows Vistaマシンとしてもなかなか魅力的な値段だ。

 また同時発売のデジタルチューナ「DT1」も同じサイズで、上に重ねられるようになっている。こちらはPC用の外付けデジタル放送チューナとしても、初の製品である。店頭予想価格は5万円。

 今回はこの両方をお借りしている。ソニーが提案するテレビとPCの新しい関係を、体験してみよう。ただしお借りしてあるのは試作機であるため、最終的な仕様とは違う場合もあることをあらかじめお断わりしておく。


■ 意外に違和感のない外観

円柱だが意外に置いてみれば邪魔にならない

 まずは「TP1」のほうから見ていこう。デザイン的なポイントは27cmの円柱だ。天板は光沢のあるオフホワイト、側面はマットな手触りの白となっている。継ぎ目の部分には電源ボタンやHDDアクセスランプ、ワイヤレスLANのステータスLEDがある。また起動時には継ぎ目全体が白く光るなど、演出面でもなかなか考えられている。

 PCとして気になるのは、中のマザーボードも丸いのかといったことだが、背面はかなり端子部分を格納するために大きくえぐれていることもあって、円形というわけではない。だが角をカットするために、部品配置などはかなり工夫されているようだ。

継ぎ目部分に電源ボタンとLEDがある マザーボードは角をカットして円柱に収めた

前面の端子群。カバーは半分ぐらい開けると自動で本体内に引き込まれる

 正面にはDVDドライブがあり、その下には円形の輪郭に沿ってスライドする端子カバーがある。これを開けると、USBやi.LINKの端子群、SDカードスロットとメモリースティックスロットがある。また無線LANのON/OFFスイッチもここにある。SONYロゴの下は、赤外線受光部だ。リモコン操作するとこの部分が赤く光るので、リモコンに対して反応しているかを確認できる。

 背面には磁石で簡単に着脱できる端子カバーがある。これを外すと、アナログ地上波のRF端子、ワイヤレスLANのアンテナ端子、USB端子などがある。一見通常のPCの背面のようだが、HDMI端子がある点が違っている。PCモニタ接続用にVGA端子もあるが、モニタとしてテレビに直結できるというのがポイントだ。HDMIとDVIの変換コネクタもあるので、プロジェクタやPCモニタへのデジタル接続も可能になっている。

背面カバーはマグネットで簡単に着脱可能 思い切った割り切りを感じる背面端子群 電源アダプタは結構大きめ

 キーボードも完全ワイヤレスのオリジナルモデルで、アームレスト部にはタッチパッドやマウスボタン、さらにはFeliCaポートもある。ノートタイプのVAIOのキーボードを取り外したような、なかなかコンパクトにまとまっている。キーボードだけでも欲しい感じだ。

 また本機にはリモコンも付属している。過去のVAIOにもリモコンは付属していたが、Windows Vistaになって「Windows Media Center」(以下WMC)をサポートしたため、センターにはWMC起動用のボタンがある。本機にはデジタルチューナはないが、別途DT1を使ったときにこのリモコンだけですべて操作ができるよう、デジタル放送で使用する4色ボタンも付けられている。

キーボードも本体に合わせたオリジナル 段差のないタッチパッドを採用 TP1付属リモコン。中央にスタートボタンを配置した

 ではそのDT1も見てみよう。半径は同じく27cmで、厚みはTP1の半分ほどだ。デザインテイストはほとんど同じで、天板と側面の継ぎ目には電源ボタンや各種ステータスLEDが仕込まれている。

 背面も同じくマグネット式の端子カバーがあり、これを外すと端子類が現われる。基本的にはデジタルチューナなので、地上波とBS/110度CS用RF端子があり、映像出力はD3、S-Video、コンポジット端子。ただ番組表などが表示できるのはD端子のみで、そのほかの端子はビデオ録画用である。音声出力はRCA2系統、光デジタル端子がある。ただDT1がユニークなのは、ネットワーク端子が付いていることだ。

同じ半径で厚み半分のDT1 継ぎ目部のデザインも同じ
マグネット式背面カバーを採用 映像出力はD3端子がメイン

 PC側に視聴ソフト「VAIO Digital TV」をインストールすることで、PCからチューナをコントロールできるほか、ネットワーク経由で映像の視聴もPC上で行なうことができる。すなわちこれも先週のVAIO Extention Lineの一つで、相手PCがVAIOでなくても使えるというのがポイントだ。

 TP1を使用しない、あるいはチューナ単体での動作用として、こちらにもリモコンが付属している。デザインはTP1のリモコンに近いが、ボタン類は基本的なデジタルテレビのリモコンと同様だ。

DT1付属のリモコン 電源アダプタはモバイルノートPC用と程度のサイズ



■ WMCを大幅にフィーチャー

解像度設定にはテレビに対する知識が必要

 HDMI端子があれば、PCをテレビに直結できるというのはわかる。だがテレビ側には様々な画面サイズモードがあり、それとPC側の解像度を合わせる必要がある。デジタル放送対応テレビは、たとえパネル自体が1,366×768ドットのものであっても、基本的には1,920×1,080ピクセルを表示できる能力がある。

 だがそれとは別にテレビではブラウン管時代からの慣習で、画面を一回り大きくズームして表示する「オーバースキャン」という考え方があり、デフォルトではほとんどこの表示になっている。画面サイズ設定でなんらかのズームがかかった状態だと、メニューバーなどが隠れてしまう。

 フルスキャンまたはアンダースキャンといったフル解像度表示ができるテレビであれば、TP1の画面解像度も1,920×1,080ピクセルピクセルで使用できる。またフルスキャンモードがないテレビに接続しても問題がないよう、TP1には1,680×1,050ピクセルや1,776×1,000ピクセルといった、フルHDより若干狭めの解像度も用意されている。おそらくほとんどのテレビに対して、問題なく表示できるだろう。

 ただし多くのテレビでは、これらの高解像度はインターレースを前提とした入力設計が成されている。もちろんTP1側も1080i前提の出力をしているが、細かい横線や文字にフリッカーがかかったような表示となる。普通にパソコンとして使うには辛いだろう。

 解像度を1,280×720ピクセル、いわゆる720p相当に変更すれば、フリッカブルな表示ではなくなるが、その代わり表示領域が狭くなる。いわゆるD5対応、1080p対応のテレビであれば、高解像度かつフリッカーフリーな表示ができるハズだ。

 TP1はWindows Vista対応パソコンとしてスペックが気になる部分も多いが、今回はテレビ機能に絞って見ていくことにしよう。まずTP1本体でできる、アナログ放送周りだ。

 従来のVAIOは、独自10フィートGUIのDo VAIOを備えていたが、そのあたりはすべてWMCのGUIを利用することとなった。従来からの名残としては、リモコンの「VAIO」ボタンを押すことで画面上部に現われる「VAIOリモコンランチャー」だろう。

 リモコンのスタートボタンを押すとWMCが起動するのは当たり前だが、VAIOリモコンランチャーの「アナログテレビ」を選ぶと、WMCのテレビ視聴機能が直接起動する。WMCを起動してテレビ、と選択するより手間がない。

 この状態でリモコンのスタートボタンを押すと、WMCのメイン画面がオーバーレイするので、各種機能を使うことができるわけだ。今後Windows Vistaの普及に伴ってこのGUIも見慣れたものになるだろうが、一応軽く見ておこう。

リモコンから起動できる「VAIOリモコンランチャー」 Windows Vista搭載WMCのメインメニュー

 全体的には上下でメディアの切り替え、左右がそのメディアに対してのコントロールといった具合に、機能が十字に配置されており、一度覚えてしまうと簡単だ。番組ガイドはiEPGによる表組みで、時間軸が横方向のため、番組名が読みやすい。

 予約で特徴的なのは、シリーズ予約である。これは毎週録画と機能的には近いが、放送時間が違う再放送なども予約される。レコーダではこの手の機能が搭載されるまでずいぶん時間がかかったわけだが、最初からあっさり搭載されているあたりに、PCのパワーを感じる。

WMCで提供される時刻別番組表 シリーズ予約は曜日や時間が異なる再放送も予約する

録画番組をカテゴライズする「Emotional Player」

 TP1の番組録画で面白いのは、再生機能だ。VAIOオリジナルの再生ソフト「Emotional Player」が面白い機能を提供してくれる。レコーダでもCMカット機能を搭載したものはいくつかあるが、Emotional PlayerはCMと番組を分けてくれるだけでなく、CMだけを集めて一覧することができる。

 またCMも、メタデータをインターネットから引っ張ってきて、使用された音楽や企業サイトといった情報を付けてくれる。これまでCMカットする方向で動いてきたレコーダだが、逆にCMだけを集めて情報ソースにするという考え方は、日本では珍しい流れだ。

CMも細かく分類 CMの詳細情報もわかる

番組内のテロップを自動解析して一覧で表示

 また録画番組データを画像解析して、テロップがある部分を一覧で見せてくれる機能もある。ニュース番組などは、興味のある話題だけを効率的に見ることができる。また興味のあるニュースが複数の報道機関でどのように放送されたかを、素早く調べることができる。

 これまで動画の内容検索ができるものは商品化されてこなかったが、Emotional Playerがその最初と言っても良さそうだ。この画像解析には、1時間番組で5分ほどかかる。だが通常はタスクが忙しくない時間帯にバックグラウンド処理されるため、ユーザーは特に意識することなく利用することができる。


■ ネット越しに見るハイビジョン

VAIO Digital TVのトップメニュー

 ではもう一つのDT1を試してみよう。VAIO以外のPCでも動作するのだが、今回はDT1のホストマシンとしてTP1を利用することにした。したがってDT1に入力されたデジタル放送をわざわざネットワーク経由でWindows Vista上で表示させ、それをHDMI出力してデジタル放送対応テレビで見るという、壮大なテクノロジーの無駄遣い的セッティングになってしまったが、現実にはもう少し頭のいい使い方になることだろう。例えばデジタルチューナが入りそうにない、ノートPCで利用するといった使い方だ。

 さてDT1でデジタル放送を視聴するには、VAIO Digital TVを起動する。TP1ではVAIOリモコンランチャーから起動できるため、なんとなくインテグレートされた感じだが、過去の製品と同じようにアナログとは完全別アプリであるということには違いない。

 このあたりは結局WMCが日本のデジタル放送に対応できなかったということなのだが、問題をややこしくしているのがコピーワンスであることは間違いない。何せ世界中で日本しかこんなことをやってないのだから、致し方ないだろう。

 さて、VAIO Digital TVのトップ画面にはTV、ビデオ、録画予約などのボタン類が並ぶ。TVを選択すると、デジタル放送がフル画面で表示される。マウス操作を行なうとテレビ画面がやや縮小され、右側にチャンネルや十字キーなど、リモコン画面を模したGUIが表示される。

マウス操作では画面横にリモコン風GUIが表示される

 またTP1を使っている場合は、TP1でのリモコンでも操作できる。この場合は、GUIを出さずテレビ全画面のままで各種の操作が可能だ。付属のリモコンは、DT1を直接テレビに接続している場合に使用する。

 映像のネットワーク伝送だが、デジタル放送のビットレートは、16Mbps〜24Mbpsと言われている。有線LAN接続であれば今どきこれぐらいのビットレートなら十分対応できるが、無線LANを利用したいと思うと、微妙に厳しい数値だ。

 そこでDT1は、解像度を下げてビットレートを12Mbpsに落とすHRモードを備えている。もともとハイビジョン放送は1,920×1,080ピクセルだが、横の解像度を1,440ピクセルにして、さらにソニーオリジナルチップでトランスビットレートを行なう。この程度のビットレートであれば、11g、11aで十分飛ばせるだろう。

 実際の画質は、さすがに半分近くビットレートを削るだけあって、オリジナルの滑らかさはなく、若干ざらついた映像になる。またシーンによってはブロックノイズも感じるが、それよりもワイヤレスで視聴できることのベネフィットが勝る。もちろんこのモードで録画すれば、DRモード録画よりも半分のファイルサイズで済む。HDD容量が少ないノートPCでも、現実的な運用が可能だろう。

DT1の画質モード
モードビットレート解像度
DRテレビ24Mbps CBR1,920×1,080
DR録画24Mbps VBR1,920×1,080〜480×480
HR12Mbps CBR1,440×1,080
SR8Mbps CBR720×480
LR4Mbps CBR720×480

 番組予約は、EPGを使った番組表と、iEPGを使ったWEBブラウザ上の番組表の2通りが使用できる。EPGのほうは10フィートGUIなので、離れた場所からのリモコン操作に向いている。時刻別7行表示のほか、チャンネル別表示にも切り替えできる。テレビ王国のほうは、まだDT1向けのサービスが開始されていないため試せなかったが、従来のVAIOで行なっていたのと同様の手順で予約できると思われる。

EPGを使った番組表から予約可能 テレビ王国のiEPGも使うことができる予定



■ 総論

 Windows XP MCEが発売された時は、日本のPCユーザーもメーカーもあまり注目しなかったわけだが、こうしてメインOSに組み込まれてVAIOに乗ってしまうと、案外悪くないなと思える。もちろんリリース当時のMCEからずいぶん改良された結果なのだが、ようやく米国が日本のAVパソコン的発想に追いついてきたということであろう。

 さて先行する日本では、さらにリビング戦略を進めていくわけだが、TP1のやり方はかつてのtype Xのように大上段に構えたわけでもなく、割とすんなり入っていきそうな気がする。それは家庭内に入っていくというよりも、テレビとPCが別々のモニタになってるのが無駄、という発想をする人がまず手を出しそうな感じだ。

 アナログ放送が11年に停波してしまうのは残念だが、「Emotional Player」に組み込まれた番組解析は、久々に将来性のある技術を見た気がする。今後の映像はメタデータが重要になっていくわけだが、画像解析はメタデータの自動生成へと繋がっていく技術だ。現在はまだデジタル放送に対しては対応できていないが、基本的には時間が解決してくれる問題だろう。今後の発展に期待したい。

 DT1は、PC接続可能な外付けデジタルチューナとして、注目度は高い。形としてはTP1と組み合わせる感じだが、汎用PCでも利用できるのは、大きなアドバンテージだろう。もちろん今すぐにPCと組み合わせなくても、これまでのアナログテレビ用として購入し、将来的にPC利用に備えるという使い方もある。

 PCと組み合わせたときに、ワイヤレスでも接続できるようビットレートを下げたモードがあるのは、よく考えられている。将来的にはもっと高速な11nが普及するのかもしれないが、現状の解としてはアリだろう。

 コピーワンスの見直し、ホームネットワークのあり方など、今後テレビとPCの新しい関係が求められていく。その中でTP1とDT1の果たす役割は小さくない。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200701/07-0116B/
□製品情報(VGF-DT1)
http://www.ecat.sony.co.jp/vaio/acc/acc.cfm?PD=26654
□製品情報(VGX-TP1)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/TP1/
□関連記事
【1月17日】VAIO新展開。PC録画対応地デジチューナなどをチェック
−ネットワークを活かした新PCソリューション
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070117/sony.htm
【1月16日】ソニー、Ethernet録画対応PC用デジタルチューナ
−トランスコーダ内蔵でHD映像を圧縮。丸形新PCも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070116/sony1.htm

(2007年1月31日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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