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第268回:Windows Vistaでオーディオ製品の動作を検証
~ ドライバインストールで不具合続出。メーカー対応に期待 ~



1月30日に発売になったMicrosoftの新OS「Windows Vista」

 ついに、というよりようやく、Microsoftの新OS「Windows Vista」が発売された。さすがに、深夜に店頭に並ぶようなことまではしなかったが、1月30日にはDSP版のUltimate Editionを購入した。さっそくインストールして、サウンド/オーディオ環境がどんなものなのか、DTM/デジタルレコーディング用としてすぐに使える、いろいろと試してみた。



■ オンボードのRealtek HD Audioドライバは、かなり怪しい動作

 今回Vistaをインストールしたのは自宅に置いてあるベアボーンPC、Shuttleの「SD32G2」と、仕事場に設置している同じくShuttleの「SD31P」の2台。CPUはそれぞれCore 2 Duo E6400(2.13GHz)と、Pentium D 820(2.8GHz)で、メモリはともに2GBを搭載している。

 オンボードのサウンド環境としてはSD32G2にはRealtekのHD Audioチップ、SD31Pにはクリエイティブメディアの「SoundBlaster Live! 24bit」を搭載。Vistaをインストールして動作を検証したのだが、RealtekのHD Audioのドライバインストールについては、トラブルの連続だった。

OS標準ドライバでは「ヘッドホン」しか表示されない

 当初聞いていたのはVistaは、RealtekのHD Audioドライバを標準サポートしているから、とくにドライバを用意する必要はないということだった。ところが、実際にインストールしてみると、なぜかヘッドフォン用のドライバしか表示されない。フロントにあるヘッドフォン端子からは音が出るものの、リア端子に接続したアナログスピーカーからは音が出ないのだ。Shuttleのサイトにも、Vista用のサウンドドライバなどは見当たらない。

 とりあえずこの状態で、ヘッドホンのプロパティを見てみると、Vistaの特徴として言われていた「音の明瞭化」というタブが見つかった。要はEQをうまく使って音を加工することで、ハッキリした音にしようというものだ。また「ヘッドホンによる立体音響化」というものがあり、ここではリバーブ効果の設定などができるようになっていた。


「ヘッドホン」プロパティ内には「音の明瞭化」タブが表示 リバーブ効果などの設定が可能な「立体音響化」設定も利用可能に

 このままでは使えないので、Realtekのサイトに行ってみると、HD AudioのVista用ドライバがあったので、これをインストールしてみた。今度はなんとかスピーカーからも音が出るようになったものの、SD32G2には搭載されていないデジタル入出力などもアクティブになっていて、どうもスッキリしない。

 この状態でスピーカーのプロパティを見てみると「音の明瞭化」タブはなくなり、「拡張」というタブになっている。ここには「環境」、「音声除去」、「ピッチシフト」、「イコライザ」、「バーチャルサラウンド」、「ラウドネス等化」というパラメータがある。

Realtekのサイトにあったドライバをインストールしたが、搭載していないはずのデジタル出力が「動作中」? 「音の明瞭化」タブはなくなり、「拡張」タブとなり、各種パラメータ調整が可能になった

ユーティリティソフトもドライバと一緒にインストール。「室内音響補正機能」などが利用できる

 よくわからない項目も多いが、環境というのは「浴室」、「講堂」、「競技場」……といった場所でのリバーブ効果を実現するもの、音声除去はセンターキャンセラーのようで、カラオケ化を実現するものだった。またラウドネス等化というのは、「人間の聴覚のしくみを利用して、認知される音量の差を補正するもの」だそうだ。

 さっそくWindows Media Player 11を使って再生してみた。だが、Vistaに対応するなどという前に、ハードウェアのそもそもの音質が、お話にもならないお粗末なもの。ちょっと音量を上げると「ブーン」というノイズが出てしまうほどだ。一応各エフェクトも試してみたが、元の音が悪いこともあって、効果もよくわからず使う気にもなれない状況。また、Realtekのドライバを入れると、ユーティリティもインストールされ、こちらでもいくつかの設定ができるようにはなっていた。



■ Sound Blaster Live! 24bitはメーカー配布の最新ドライバで正常動作

 一方、SD31Pは、オンボードにクリエイティブメディアの「SoundBlaster Live! 24bit」を備えるというちょっと変わった構成。こちらもShuttleからはVista用のサウンドドライバは提供されていない。実はVista発売前に入手していたRTM版を使っていた際、クリエイティブメディアのサイトからダウンロードしたベータ版のドライバを入れてみたが、デバイスが認識されずうまくインストールできなかった。

 今回、改めて探してみると正規版が公開されており、こちらをインストールしたところ、あっさり動作した。Live!のプロパティを見てみると、「音の明瞭化」タブも「拡張」タブもないが「カスタム」タブというものがあり、「Digital Out Only」のチェックができるようになっていた。

ベータ版では、当方の環境ではインストールに失敗していたが…… 正式版では特に問題なくインストールに成功 Realtekのサウンド利用時に見かけた「音の明瞭化」/「拡張」タブはないが、「カスタム」タブが用意され、「Digital Output Only」の有無のみ設定可能

 機能的にはHD Audioのように“いろいろ”はないが、アナログ出力もRealtekのよりもだいぶまとも。またこちらはS/PDIFのデジタル出力も持っていたため、それで試した結果、非常にいい音質で鳴ってくれた。

 そこで、次にプレイヤーソフトの動作チェックをしてみた。当然、標準プレイヤーソフトである「Windows Media Player 11」は問題なく動作する。そのほか、iTunes、SonicStageも問題なくインストールでき、正常に動作した。

 特にiTunesは、Vistaと一部互換性に問題があるとのリリースもあったが、今回試した環境下では、iTunes Storeからのダウンロードも、iPodとのやりとりも問題なく利用できた。また、SonicStageのVista版は2月中旬にリリースというアナウンスがされてはいたが、現在のバージョンでも、今回試した環境では、とりあえず動作させることはできた。

Windows Media Player 11 iTunesも正常動作。iPodとの連携も問題なし SonicStage CPも現時点の最新バージョンでとりあえず問題なし

 結局「音の明瞭化」は試せなかったが、もう一つのVistaの新機能が、アプリケーションごとのミキサー機能だ。Windows 3.0MME(MultiMediaExtention)以降、Windows XPまで標準のMMEドライバを使っている限り、アプリケーション側で音量の制御ができない場合、アプリケーションごとの音量バランスをとることはできなかった。たとえば、エラー音やWindowsの起動音などが気になるからと音量を絞るとほかのWindows Media Playerなどの音量も同時に下がってしまい使いづらかった。

Vistaの新機能の1つ「アプリケーションごとのミキサー機能」では、再生に利用するアプリケーションが並び、個々に音量設定が行なえる

 しかし、Vistaは現在起動中でMMEドライバを使うアプリケーションがミキサーに表示され、エラー音などのシステム用も含め、それぞれの音量調整が可能となった。これはなかなか便利な機能だ。もっとも、MMEのシステム自体はXPからとくに進化したわけではないようなので、このミキサーが利用可能になったこと以外に新しさはないようだ。

 ちなみに、Windows Media Player、iTunes、SonicStageの3プレイヤーソフトのアプリケーション側の音量調整をしてみたところ、Windows Media PlayerとSonicStageはWindowsのアプリケーション用ミキサーと連動していたが、iTunesのみは別系統となっていた。



■ USBオーディオはRoland以外ほぼ壊滅。クリエイティブは英語版のみ提供に不満

 次に試してみたのが手元にある各種オーディオインターフェイスの動作。ローランドのUSB対応の「UA-101」、「UA-1000」、「UA-4FX」、FireWire対応の「FA-101」、「FA-66」、M-AudioのFireWire対応の「ProjectMix I/O」、PCI対応の「Audiophile2496」、クリエイティブメディアの「SoundBlaster X-Fi Elite Pro/Xtreme Gamer/Xtreme Gamer Fatal1ty Professional Series」、E-MUの「E-MU 1820m」、「E-MU 0404」、「E-MU 0404 USB」、オンキヨーの「SE-200PCI」などを試した。

 結論からいうと、ローランドのUSBオーディオインターフェイス以外はほぼ壊滅状態。近日中に対応というメーカーもいくつかあったが、現状ではまったく使えない。クリエイティブメディアの「X-Fiシリーズ」はベータ版ドライバがリリースされているというアナウンスがあったが、日本語サイトでは、「SoundBlaster X-Fi Xtreme Audio」のみドライバが提供されており、その他のX-Fiシリーズについては、まだ日本語ベータ版はリリースされていなかった。なお、英語版では、これらドライバも提供されているが、今回は検証していない。

 一方、ローランドのUA-101/UA-4FX用ドライバをインストールしてみたところ、これらはまったく問題なく使うことができた。UA-101のドライバ設定のミキサーも使えるし、レイテンシの設定もできる。

UA-101/UA-4FXは、いずれも正常に動作 ドライバ設定内のミキサーも利用できる レイテンシ設定の調整も可能

 ドライバの動作状況を見るため「SONAR 6」をインストールして、WDMドライバ、ASIOドライバ、MMEドライバのそれぞれをチェックしたところ、いずれも正常に使うことができた。ちなみにMMEドライバを選択したときのみは、前述のアプリケーションのミキサーに表示されたが、カーネルストリーミング対応のWDMドライバ、ASIOドライバを選択したときには、当然のことながらこのミキサーに表示されなかった。

各ドライバも正常に動作 MMEドライバ選択時は、OS標準のミキサー側にも表示される



■ 波形編集ソフトなどのアプリケーションは、ほぼ問題なし

 続いて波形編集ソフトの「Sound Forge 8.0」をインストール。こちらも問題なく使うことができ、ドライバをMME、ASIOと切り替えてみたが動作に問題はなかった。その後、再度SONARを起動し、SoundForgeにバンドルされているDirectXのプラグインを使ってみたところ、これも問題なく動作する。当然DXiプラグインも動作するので、ソフトウェア的な環境は従来と変わっていない模様だ。

SoundForge 8.0は正常に動作 MME/ASIOドライバを切り替えて試したが、特に問題なく利用可能 DirectXプラグインなども順調に利用できた

 そのほか、「Cubase 4」もインストールしてみた。こちらは4.00というバージョンの場合、そのままではバージョンチェックに引っかかってインストールできないが、Steinberg TechnologiesのサイトからVista用のインストーラをダウンロードすればインストールできる。実際起動させれば、XPと同様に動作。ASIOドライバも動くし、VSTエフェクトもVSTインストゥルメントも使える。

 こうした点からもアプリケーション側は大きな問題もなく動いてくれるようだ。

 以上のことをまとめてみると、アプリケーションの動作やDirectX/DXi、VST/VSTiといたプラグイン環境はXPとほぼ何も変わらず、そのまま使うことができるが、現状の最大の問題点はドライバ類の供給状況だ。

 おそらくあと1カ月もすれば、多くの製品向けにVista用ドライバが供給されると思うが、現状はほぼ壊滅状況。サウンド関連を使うのであれば、今あせってVistaを入手するよりも、もうしばらく待って、自分の必要なドライバがリリースされたことを確認してから使うしかないだろう。

Cubase 4では、旧バージョン(4.00)のままでは、バージョンチェックでエラーが出るためインストールできない。「XP SP1以降」のOSのはずなのに…… Vista対応バージョンなら問題なくインストールして利用できる。使い勝手はXP上と同等だ VSTエフェクトやVSTインストゥルメントも問題なく利用できる


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/ja/jp/default.aspx
□Windows Vistaのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/windowsvista/
□関連記事
【AV関連Windows Vista対応状況リンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/vista.htm
【2006年4月10日】【DAL】「Boot Camp」のMac miniでDTM製品を動作検証
~ Intel HD Audioに準拠。32bit/192kHzに対応~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060410/dal231.htm

(2007年2月5日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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