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大河原克行のデジタル家電 -最前線-
松下、シャープが北米で仕掛けるトレーラーキャンペーンとは



CES会場に展示されたパナソニック(奥)とシャープ(手前)のトレーラー

 2008 International CESの会場で、松下電器とシャープが意外な競演を行なっていた。

 それは、トレーラー対決。コンベンションセンターメイン入口そばのCentral Plazaに、PanasonicとSHARPのロゴが描かれた2台の大型トレーナーが、展示されていたのだ。

 両社のトレーラーには、大画面薄型テレビなどを搭載。これを全米の量販店店頭やイベント会場に持ち込み、そこでデモストレーションを行なうためのものだ。どちらも独自に巡回することから、2台が顔をあわせることは極めて稀なこと。CES会場では、その2台が向かい合うように展示されていた。



■ 日本国内でも各社が薄型テレビ訴求用のキャラバン隊を組織

日立が日本国内で展開している「Wooo UT」のプロモーショントレーラー

 日本でも松下電器が、地域専門店であるスーパープロショップを対象に店頭でイベントを実施するキャラバンカー「DreamCar」を約70台配備。日立製作所も、昨年12月から、全日本空輸(ANA)と共同でトラック「Wooo fly about with ANA」を用意。車内にWooo UTシリーズを展示して、今年3月までの期間限定としながらも、全国をキャラバンして、超薄型テレビを直接体験できるようにしている。

 松下電器の場合は、103インチや65インチのプラズマVIERAを搭載したものや、家電製品を対象にしたものなどをそれぞれ用意。DreamCarによる実演体験は50万世帯、催事実施店舗は延べ4,300店舗、催事実施回数は延べ3,200回に達しているという。

 とくに、大画面ブラズマテレビを搭載したDreamCarでキャラバンをおこなった店頭では、大画面テレビの購入比率が高くなり、販売店の売り上げも上昇しているという結果が出ている。

 松下電器によると、「2006年度には、市場全体の成長率は前年比2%増。DreamCarによる実演販促を行なった店舗では10%増の成長率を達成している」と、キャラバンの成果が高いことを証明する。

 また、2007年の実績として、業界平均では、37インチ以上の大画面テレビのうち、42インチ以上を購入する比率は40%であるのに対して、大画面テレビを搭載したDreamCarによる店頭で実演体験を行なった店舗では60%にまで比率が上昇しているという。

103型プラズマVIERAをアピールする「DreamCar」 「オール電化DreamCar」

 全米で松下電器、シャープが展開している大型トレーラーによるキャンペーンも、これと同じ狙いによるものだ。


■ パナソニックは、大型トレーラで大画面化を促進

 日本では、松下電器を見てもわかるように、地域専門店の駐車場に設置したり、細かい道にも入っていけるように、小回りが利く、4トントラックを利用しているが、さすがに米国の場合は規模がデカい。

 松下電器では、グローバル・プラズマ・ロードショウの名称で2007年春から、53フィート(約16m)のトレーラー1台と、28フィート(約8.5m)のトレーラーを3台用意。100万人以上の都市を中心に巡回。1月末までに延べ250日にのぼるイベントを実施することになる。

 バスケットボールや野球、フットボール、自動車のレース会場にも、トレーラーを持ち込み、体験会を随時実施しており、2月のスーパーボウルにも展示される予定だ。


パナソニックのトレーラー。天井にはアストロビジョンもついている

 全米の量販店の駐車場はかなりのスペースがあるので、トレーラーの大きさにはあまりこだわらなくていいというわけだ。これだけの大型トレーラーだと、小さな店がそのまま移動しているぐらいの感覚になっている。

 そして、北米でも日本同様に、トレーラーによる巡回によって、販売量の拡大や大画面化を促進したという実績があがっているという。

 パナソニックノースアメリカのパナソニック・コンシューマエレクトロニクス社の北島嗣郎社長は、「各都市において、きちっと理解して、説明してくれる店舗を対象に巡回している。実際に、キャラバンを行なった店頭では、大画面テレビの販売比率が上昇したり、レコーダやオーディオラックとのセット販売が増加している。また、当社製品の販売実績が前年比2倍に達したという店舗もある。トレーラーによる巡回キャンペーンは大きな成果をあげている」と語る。

 見込み客を集客し、実売につなげることができることから、ディーラーのモチベーションも上がり、平均的に前年比3割~4割増という販売実績になっているようだ。

パナソニックでは、103インチのプラズマテレビを車内に展示

 車内には、103インチのプラズマテレビを配置し、オーディオラック、BDレコーダ、PLAYSTATION 3をセットし、実際に体験してもらう形をとっている。さらに、ビデオカメラやデジカメ、パソコンなども展示しており、これも自由に体験できる。

 具体的な構成内容は、プラズマテレビが103インチ1台、58インチ1台、50インチ6台、42インチ1台。さらに液晶テレビ5台、ビデオカメラ3台、デジカメ10台、パソコン5台、DVDレコーダ3台、Blu-rayプレーヤー1台、IPカメラ3台となっている。

 トレーラーのなかは、ちょうどリビングのような雰囲気を演出しており、103インチのプラズマテレビが、違和感なく収まっている印象なのが不思議だ。ここで大画面を体験してもらい、購入に結びつけるというわけだ。

 「実際に体験していただくことが購入に直結する。2008年は、いよいよ北米でもVIERA Linkの訴求が始まる。トレーラーでも、ホームシアターの提案や、ビデオカメラ、デジカメなどを含めたセット提案を加速していきたい」と、北島社長は語る。


大画面プラズマテレビには、PLAYSTATION 3(左)やBDレコーダーを接続 家庭内でのハイビジョン化を訴求 設置するとこんな形に拡張する
そのほか、カーナビやパソコンなども展示


■ NASCARやメジャーリーグで「AQUOS」ブランドを訴えるシャープ

 一方、シャープは、「Sharp AQUOS Experience Tour」と題して、2007年9月からトレーラーを使った、巡回キャンペーンを開始している。

 全長53フィート(約16m)という大型トレーラーを、量販店やイベント会場の駐車場に設置して、販売促進イベントを繰り広げるというものになる。

シャープの大型トレーラー

シャープのトレーラーにはMLBのロゴが入る トレーラー内では、MLB関連グッズの展示も行われている

 9月にカリフォルニア州フォンタナで開催されたカーレース大会NASCARを皮切りに、メジャーリーグベースボール(MLB)のワールドシリーズゲームをはじめとするスポーツイベント会場など、全米をトレーラーでツアー。この1月までに延べ75カ所でのイベント開催を行なった。

 1月は、ラスベガスのCES会場で、10日まで展示されたあとは、ロスアンゼルスを経由して、アリゾナ州で開催予定のスーパーボウル会場でイベントを実施する。

 53フィートにおよぶトレーラーのなかには、32インチから65インチまでのAQUOSの最新商品を展示。また、AQUOSに搭載した技術や新機能を説明できるように配置。実際に、AQUOSの大画面でゲームなども体感することができる。

 また、トレーラーの側面には、メジャーリーグのロゴが描かれているが、これは、シャープが、2007年から、「OfficialHDTV of Major league Baseball」の契約を結んでいることによるもの。米国国民が注目するメジャーリーグにおいて、シーズン中およびポストシーズンを通じて、シャープのブランドが露出することになる。

 こうした取り組みは、シャープが取り組んでいる北米市場におけるAQUOSの認知度向上につながっている。

シャープのトレーラーの内部の様子。広々としている 65インチのAQUOSもなぜか小さく感じる 床にも液晶テレビが埋め込まれている
PS3で遊ぶこともできる 側面や車内には、Sharp AQUOS Experienceのロゴ

 また、シャープでは、販売促進策のひとつとして、AQUOS ADVANTAGEという制度を開始。すでに65,000人を超える会員を獲得している。

 AQUOS ADVANTAGEでは、会員を対象に、専用のフリーダイヤルを用意するとともに、時間延長サポート、訪問サービス、会員向けの特別なプロモーションなども用意している。今後は、ハイビジョン環境へのセットアップするためのチェックリストの提供、購入前の相談サポート、アドバイザーがウェブを通じて相談に乗るといったサービスも予定している。

 シャープの液晶テレビは、2007年度見込みで、前年比3倍もの販売台数が予定されている。北米において、シェア拡大に向けた取り組みが着実に成果につながっているといえそうだ。

□松下電器産業のホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□関連記事
【2007年12月10日】日立、薄型テレビ「Wooo UT」出陣式。12日より出荷
-ANAの「プレミアムクラス」と共同で全国巡回PR
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071210/hitachi.htm
【2007年9月21日】松下電器、103型PDPを搭載したキャラバンカー10台配備
-大型プラズマの拡販狙い、9月から導入開始
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070921/pana2.htm
【2006年12月11日】18輪大型トレーラーで「HD DVD」をアピール
-北米市場の販売実績で、支持拡大を目指す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061211/hddvd.htm
【リンク集】2008 International CESレポートリンク集
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/2008ces.htm

(2008年1月25日)


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき) 
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島(宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。

[Reported by 大河原克行]


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