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クリスマス商戦を迎え、HD DVD/Blu-ray Discの新製品投入も本格化。東芝は第2世代HD DVDプレーヤー「HD-XA2/HF2」を12月中に発売、BD陣営からは、ソニー/松下のレコーダに加え、PLAYSTATION 3も登場した。 ソフトの発売やHDTVの普及など、いよいよ本格的な普及に向けた体制が整いつつある。国内市場の取り組みはもちろんだが、市場投入で先行したHD DVDは、最大の市場である北米での足場固めに余念がない。
HD DVDプロモーショングループでは、「The Look and Sound of Perfect」をキーワードに米国で大々的なキャンペーンを行なっている。 同キャンペーンの目玉といえるのが、18輪の大型トレーラーで全米の大都市を中心に巡回し、HD DVDをアピールする「Mobile Experience Tour」。9月に開催されたCEDIAを皮切りに、18輪の大型トレーラーで全米各地を周り、HD DVDをアピールしている。12月7~9日までは、シアトルで開催された。 会場となった、シアトルセンターはNBA「シアトル・スーパーソニックス」の本拠地「キー・アリーナ」や映画館、劇場、シアトルのシンボルともいえるタワー「スペースニードル」などが集まる総合公園。会場を取材した8日には、ソニックスの試合があるため、試合開始直前には多くの人が訪れていた。
トレーラーの中には、80型スクリーンや最新のHD DVDプレーヤーを用意したホームシアタールーム、HD DVD搭載のノートPC、Xbox 360とXbox 360 HD DVDプレーヤーなどを設置。HD DVDの高精細映像やインタラクティブ機能などをアピールしている。 こうしたイベントの開催により、既にHD DVDに興味を示している先進的なユーザーはもちろんのこと、今までHD DVDを知らなかった人やファミリー層などにも、HD DVDの高精細映像を訴求していく考えだ。また、このトレーラーは、大都市でのプロモーションイベントだけでなく、スタジオや小売り業界のミーティングなどにも登場し、HD DVDをアピールしているという。
■ プレーヤー1台につき27タイトルを販売。販売実績で支持拡大へ。
今回、Mobile Experience Tourでのデモに参加していたMicrosoft コンシューマメディアテクノロジーグループのケビン・コリンズ(Kevin Collins)氏に話を伺った。 コリンズ氏は、北米におけるHD DVDのスポークスマン的存在で、MicrosoftのHD DVD Evangelism担当ディレクターとして活動。現在北米で発売済みのHD DVD、全129タイトルを全て見ているという。 ソフトの充実はもちろん、米国では東芝の新プレーヤー「HD-A2(日本ではHD-XF2)」も発売開始されたほか、Xbox 360 HD DVDプレーヤーなど、安価かつ使い勝手の向上したプレーヤーが登場してきた。 コリンズ氏によれば、「Xbox 360 HD DVDプレーヤーについては、発売から2週間経過しているが、我々の予想を上回る売れ行きで、需要に応えるだけでも大変な状況。また、東芝のHD-A2も昨日(7日)から発売されたが、シアトルのBestBuyでは売り切れてしまった」という。 HD-A2については、「今度のプレーヤーのローディング時間がぐっと短くなっている。誰にでも扱いやすい製品になった」と、実際にディスクを入れて計測すると、18秒で再生がスタート。使いやすさの向上をアピールした。
また、プレーヤーとともに、ソフトの販売も好調という。「HD DVDプレーヤーの発売から1年も経たずに、129のタイトルが発売された。非常に大きな成果だと考えている。ニールセンの調査によれば、東芝のHD DVDプレーヤー購入者のHD DVDソフト購入枚数は27枚」として、多くのディスク販売に結びついていることがスタジオの支持、評価につながっている、と訴える。
Blu-rayとの比較においても、「HD-A2は499ドルで、BDのSamsungのプレーヤー(実売約799ドル)より遙かに安価。その分たくさんソフトを買った方がいいでしょう」と話し、こうした手頃な価格設定もスタジオの支持に繋がった一因という。 日本での採用例は無いが、片面が2層のHD DVD、もう片面が2層のDVDの両面ディスク「コンボディスク」も大きな訴求ポイント。「プレーヤーの発売直後に『Rumor has it(邦題:迷い婚 ~すべての迷える女性たちへ~)』のコンボディスクも出ている。リビングでHD DVD、寝室のテレビではDVD側を見るなどの応用ができる」と魅力をアピール。「家族にも使いやすさが理解され、HDTVを持っていない私の父にも、将来のために、とコンボディスクを薦められる」とアピールしている。 ・インタラクティブ性とネットワーク対応がHD DVDの利点 もちろん最大の訴求点は画質だ。「The Fast & The Furious: Tokyo Drift(邦題:ワイルド・スピード×3)」の、車の光沢感はDVDでは体験できない。'42年の『Casablanca(カサブランカ)』では、ハンフリー・ボガードのネクタイの細部まで確認できる」と、HD画質の魅力を語る。 また、Blu-rayとの比較で必ず言及される容量(2層でHD DVD 30GB/Blu-ray Disc 50GB)については、「HD DVDではVC-1、MPEG-4 AVCなどの圧縮技術を採用している。『King Kong』が3時間を越える映画にもかかわらず、画質については最高の評価を得ている。この事実が容量が十分であることを証明している」とし、「音声についてもHD DVDではロスレス圧縮技術のTrueHDを積極的に使っている。BDでは非圧縮のリニアPCMのため、4.5Mbpsもの帯域を使っているが、TrueHDを使えば1.5Mbpsに納まり、圧縮によるロスのない音声を提供できる」と、最高品質の画質/音質をアピールした。 さらにHD DVDの特徴として掲げるのが、HDiによるPinPなどのインタラクティブ機能、そしてネットワーク対応だ。 例えば、「(HD DVD/Blu-rayの両フォーマットで発売されている)『M:i:III』では、HD DVDではPinPが入っているが、Blu-rayでは入っていない。現時点でBDでは、監督のコメントやストーリーボードを楽しめるディスクは無い」と、インタラクティブ機能の違いをアピールする。 また、HD DVDでは全てのプレーヤーでネットワーク機能の対応が必須となっている。現時点では、まだネットワーク機能を活かしたディスクは存在しないが、コリンズ氏はフォーマット拡張の重要なポイントとして説明する。 「スタジオの要求をまとめたDVDフォーラムの『AH-010』では、81ものシナリオを用意している。我々はスタジオの意向を実現するために作業を進めている」。 具体的には、プレーヤーのフラッシュメモリ領域に最新の予告編映像をダウンロード。ディスクの予告編の映像を変更し、その予告編があたかもディスクに最初から入っていたかのように、呼び出して再生する。または字幕の追加ダウンロードや、ネットからのストリーム音声と映像の同期などの、さまざまな応用を検討しているようだ。 ネットワーク機能にかけるコンテンツホルダの期待は高く、「全てのプレーヤーでサポートしている」ことが、HD DVDの大きな特徴になっているという。コリンズ氏もお気に入りのインタラクティブ機能として、「TokyoDrift」のお気に入りシーンを集めたブックマーク機能を披露し、「将来的には、このお気に入りをネットを介して共有、監督のお気に入りなどを公開するなどの応用もできるのでは」と期待のほどを語った。 もちろん、HD DVDについて不安が無いわけでもない。現時点ではハードウェアメーカーが、実質東芝だけだ。しかし、コリンズ氏は「HD DVDはDVDフォーラムの定める標準規格。DVDフォーラムに参加しているメーカーであれば、各社製品化ができる」とし、「Microsoftでも、HDiを半導体メーカーのチップセットに移植するなどの作業を進めている。それらの取り組みにより、手軽に安価なプレーヤーを実現することも可能になるだろう。多くの家電メーカーと作業を進めている」とパートナーの拡大の見通しについて語った。 ・販売店の扱いスペースも拡大へ
量販店を覗いてみると、日本でのHD DVDやBlu-rayコーナーと比較して、扱いが大きく、発売直後の「Miami Vice」など、売り切れディスクも見受けられた。コリンズ氏の話からは、こうした、販売実績が自信につながっていることが伺えた。 最後に北米で発売中の129本だけでなく、日本や欧州のディスクもチェックしているというコリンズ氏のお気に入りディスクを聞いてみた。 「映画は好みが分かれるから……」と言いながらも、「『VAN Helsing』や『V for VENDETTA』のすばらしい黒レベル表現、画はもちろん音もすごい『The Phantom of the Opera』。子供と見るのであれば『The Polar Express』。画質もすばらしい。『The Dukes of Hazzard』のインタラクティブ機能は面白い」と止めどなく、ディスク紹介が続いた。 中でも、フォーマットの魅力を知るための3タイトルという点では、「King Kong」、「The Fast & The Furious: Tokyo Drift」、「BATMAN BEGINS」がお勧めという。HDTVの普及を受けて、北米での盛り上がりが始まっているHD DVD。「ビデオパッケージソフト」としての支持の高さを武器に、消費者/業界の指示を固めていく考えだ。 □HD DVDプロモーショングループのホームページ ( 2006年12月11日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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