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第101回:パイオニア最終世代PDPのポテンシャル
~ 最高画質プラズマ。パイオニア「KURO KRP-600M」 ~


KURO KRP-600M

 パイオニアは2008年3月、「プラズマが今期の新製品を持ってプラズマパネルの自社生産から撤退する」という衝撃の発表を行なった。

 民生向けプラズマテレビでは最も早くから製品化を実現してきたパイオニアの苦渋の決断はファンにとっても辛い。現在の薄型ディスプレイパネルの市場シェアにおいてプラズマは液晶の7分の1以下であり、プラズマ一本のパイオニアは本当に苦しかったのだろう。

 とはいえ、プラズマの画質において、パイオニアは常に、本当の意味での“パイオニア”(先駆者)であった。今回発売されたKRP-600Mは、その最後の世代の自社生産パネルを採用。10年以上の長きにわたったパイオニアのプラズマディスプレイ技術開発の集大成となる製品だ。

□関連記事
【3月7日】パイオニア、プラズマパネルの自社生産を終了へ
-今後は「松下から調達」。秋には液晶テレビ投入
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080307/pioneer.htm



■設置性チェック。テレビでなくディスプレイ

画面サイズは60V型。表示領域は横131.9cm、縦74.2cmの大画面。スタンドは別売

 まず最初に言っておこう。KRP-600Mはテレビ製品ではなくディスプレイモニタ製品になる。よってテレビチューナは実装されておらず、単体ではテレビの視聴は出来ない。民生向けにも販売されるので業務用モニタ製品というわけではないが、購入検討の際には「テレビではない」ことを留意しておく必要がある。感覚としてはプロジェクタ製品のような、ホームシアターシステムなどに組み合わせる映像表示機器というとらえ方がいいだろう。

 商品セットにはスピーカーも含まれていない。ただし、純正オプションとして「KRP-S02」(オープンプライス)が設定されている。KRP-S02を取り付けたときにはテレビ製品で言うところのサイドスピーカー状態になる。

 商品セットにはスタンドも同梱されていない。これは設置環境に合わせて適切な設置金具を選べるようにあえて同梱されていないのだ。ちなみに、パイオニアは、プラズマテレビ製品でもスタンドを同梱させていない。

 純正オプションとして設定されているKRP-600M用スタンドとしては、テーブルトップ型「KRP-TS01」(51,000円)、壁掛け設置金具「KRP-WM01」(42,000円)、AVラックとスタンドを一体化させたAVローボードラック「B-7000」(248,000円)がある。今回、「KRP-TS01」を使用した。組み立ては非常に簡単だが、しっかりしていた。なお、スイーベル機構はない。

 画面サイズが60V型ということもあって、かなり巨大だ。寸法的には1,465×64×876mm(幅×奥行き×高さ)。スピーカーのKRP-S02を取り付けると、左右に約+10cmずつせり出す。チューナを内蔵せずに接続端子も下出しとしたことで、厚みが64mmと薄い点は特記しておきたい。

専用スピーカー「KRP-S02」 額縁は左右で約7cm、上下で6.5cmとそれなりに太め チューナが搭載されていない分、平均的な薄型テレビよりも厚みは薄い

 なお、壁掛け設置金具KRP-WM01を組み合わせて取り付けた場合、壁からのせり出しはわずか89mm。KRP-600Mを壁掛け設置し、プロジェクタ使用時には電動巻き上げ型スクリーンがKRP-600Mの前に降りてくるような、ホームシアター構築も可能なはずだ。

 本体重量は49.9kg。今回の設置では成人男性2人で2階に階段を登って、何とか運搬したが、これまで運んだ映像機器の中で最も重かった。できれば3人で運びたいところだ。

 額縁は左右で約7cm、上下で6.5cmとそれなりに太め。高級感を演出するため額縁には光沢コーティングなされているため、相対する位置に窓や照明があると強く映り込む。しかし、表示面の映り込みはかなり低減されており、暗いシーンでも映像が表示されていれば、ほとんど映り込みは気にならない。これは立派だ。

 消費電力は487W。42V型液晶のシャープ「AQUOS LC-42GX5」(235W)の倍以上だが、KRP-600Mにはチューナ等が搭載されていないこともあり、42V型プラズマのパナソニック「TH-42PZ800」(492W)とほぼ同程度になっている。

 プラズマディスプレイというと気になるのが動作音だが、これはまずまずといったところ。皆無ではないが、意識しなければほとんど分からない。今回の評価では、視聴位置を1.5mと比較的近めとしたが、KRP-600Mとほぼ同位置に設置したPLAYSTATION 3(CECHB00)の冷却ファンの方の音の方が大きく聞こえたほどだった。なお、背面上部には対角12cmほどの電動ファンが4つ実装されているが、今回の視聴(室温26~28度前後)では回転することはなかった。

背面は放熱効果を最優先しているため網部分が多い 背面上部には4基の冷却ファン。あまり積極的には回転しない


■ 接続性チェック
  ~Sビデオ端子無し。PC入力は充実。HDMIは2系統

背面の接続端子パネル。端子は下向きに取り付けられているので設置後の抜き差しはやりにくい。側面に接続端子はない。

 接続端子は背面パネルにしかなく側面には無し。端子は下向きに取り付けられているので、ケーブル類を接続するときは下から上に向かって差し込むことになり、抜き差しは正直やりにくい。

 チューナなしということで、接続端子の充実を期待していたが、KRP-600Mの背面は意外にシンプルで一般的な薄型テレビ程度の端子しかない。入力系統は全部6系統だ。

 アナログビデオ入力はコンポジットビデオ端子が1系統、コンポーネントビデオ端子(RCA)が1系統。これがそれぞれ入力1、入力2として管理される。

 注意すべきはSビデオ端子もD端子がないという点だ。D端子はコンポーネントで代用できるが、S端子に変わるものはない。最近の映像機器であれば問題はないが、古めのゲーム機やS-VHSビデオデッキなどを接続しようとしている人にとっては問題になるだろう。

 PC入力はディスプレイモニタ製品らしく充実しており、アナログRGB入力用としてD-Sub15ピン端子、デジタルRGB入力用としてDVI-D端子が、それぞれ入力3、入力4として1系統ずつ備わっている。

 DVI入力はもちろんのこと、アナログRGB入力においても1,920×1,080ドットのドットバイドット表示が行なえた。筆者のテスト環境(NVIDIA GeForce GTX280)ではアナログRGB入力時には1,680×1,050ドットと誤認されたが「初期設定(入力)」メニューの[入力3(D-Sub15)]項目の「信号フォーマット」を手動で「1,920×1,080」としたら1,920×1,080ドットとしてドットバイドット表示できた。

デジタル系入力端子としてはDVI-Dと2系統のHDMIを装備

 また、PC入力はDVI-HDMI変換ケーブルを用いても1,920×1,080ドットでドットバイドット表示が行なえた。ただし、「初期設定(入力)」メニューでHDMI入力の「信号種別」を「PC」と明示設定しておく必要がある。

 デジタルビデオ入力としてはHDMI入力を2系統装備する。これが入力5、入力6として管理される。HDMIバージョンは1.3aで、Deep Colorにも対応、パイオニア製AV関連機器とのHDMIによる連動制御「KURO LINK」にも対応している。

 最近はテレビ製品でも3~4系統のHDMI端子を備えているのに、ディスプレイモニタ製品としての本機がHDMI 2系統しかないというのはもの足りない。

 今回の評価で分かったことでPLAYSTATION 3(PS3)ユーザーに促したい注意がある。

 PS3の映像はメインメニューやゲーム画面などは「信号種別」を「PC」設定としても映るが、市販のBlu-rayビデオソフトは「ビデオ」としないと映らない。「ビデオ」設定とするとPS3とちゃんと36ビットDeep Color接続出来るので「PC」設定にしておく意味はあまりない。PS3と接続する入力系統は「信号種別」を「ビデオ」設定としておこう。

「初期設定(入力)」メニュー PS3をHDMI接続する際は信号種別を「ビデオ」にしておこう 映像の色信号形式も明示設定できる

KRP-600Mの制御画面をWebブラウザ上に表示させたところ

 音声入力端子はアナログのステレオ入力が2系統ある。1系統はRCA、もう1系統はステレオミニだ。それぞれの音声入力は、「初期設定(入力)」メニューにて、入力1~6の任意の映像入力系統と対応づけられる。映像入力は6系統なので、このうちの2つの入力系統にしか音声を関連づけられない。

 なお、このアナログ音声入力をHDMI入力系統と関連づけた場合は、HDMI音声は無視されてアナログ音声が優先される。

 この他、リモート制御のためにRS-232C端子とLAN(100BASE-TX)端子を備えている。LAN端子接続したときはKRP-600MがWebサーバーとして機能し、Webブラウザ上でKRP-600Mを制御できる。ほぼリモコンと同じ制御が行なえるが、パラメータの一覧性や編集のしやすさは、PCからの方が格段に楽だ。

 実際に試してみたが、Internet Explorerのポップアップ機能を有効にしておかないとメニューが開かなかった。マニュアルにそうした注意も記載されていないのでユーザーは注意して欲しい。


■ 操作性チェック
   ~自照式の学習リモコンが付属

自照式発光ギミック付きの新・学習型リモコン。KURO LINK制御にも対応

 ずしりと重いリモコンはパイオニアのテレビシリーズとは異なった専用デザイン。

 テレビではなく、プラズマディスプレイモニタ製品と言うことで、暗い部屋で使うことを想定しているため、全ボタンが赤く発光する自照式となっている。これはなかなかに便利。

 ただ、画調切換操作(AV SELECTION)をはじめとしたいくつかのボタンは、ボタン上になんのプリントもない白ボタンであるため、せっかく光ってもなんの機能操作ボタンなのか分からない。略記でもアイコンでもいいから何かプリントして欲しかったところだ。

 また、実際に使ってみて感じたのはリモコンの反応範囲が狭いと言うこと。画面が大きいせいもあるが、明確に画面右下の赤外線受光部にリモコンを向けないと反応しない。これには改善の余地があると感じる。

 発光ボタンはリモコン最上段右。そして最上段左は電源ボタン。電源オンからHDMI入力の映像が実際に表示されるまでの所要時間は約7.0秒。

メインメニュー画面

 前述したように入力系統は全6系統。ディスプレイモニタ製品らしく、入力切換は[1]~[6]の数字キーで対応する入力系統にダイレクトに切り換えることが出来るようになっている。HDMI→コンポーネントビデオの切り替え所要時間は約3.0秒、コンポーネントビデオ→DVIでは約2.0秒と、最近の機種にしては切り替え速度はやや遅め。ただし、希望の入力系統にダイレクトに切り換えられるのでストレスは少ない。

 画調切り替えは、前述したように無地の[AV SELECTION]ボタンを押すことで順送り式に切り替えできる。切り替え所要時間は約1.0秒で、これまたあまり速くはない。

 画面アスペクト比は[SCREEN SIZE]ボタンで順送り式に変更可能。変更所要時間はほぼゼロ秒で操作した瞬間的に切り替わる。

 画面アスペクトモードはディスプレイモニタ製品と言うことで過剰なまでの充実ぶりだ。具体的には以下のようなモードが実装されていた。

ワイド1アスペクト比4:3の映像の外周を伸張してパネル全域に表示して擬似的なワイド表示を行なう
ワイド2アスペクト比4:3を均等に引き延ばしてパネル全域を使って表示する
フル入力映像のアスペクト比に無関係にパネル全域(16:9)を使って表示する
ドットバイドット入力映像の1ピクセルをディスプレイ側の1ピクセルに1対1に対応させて表示させる
ズーム4:3映像をアスペクト比を維持して最大表示する。左右に未表示領域ができる
シネマビスタサイズ(1.85:1)の映像をパネル全域に表示する
4:3アスペクト比4:3の映像をアスペクト比を維持して表示する。左右に未表示利用域が出る
フル14:94:3にスクイーズされたアスペクト比14:9映像を正常なアスペクト比に戻して表示する
シネマ14:9ビスタサイズ(1.85:1)の映像をアスペクト比14:9で表示する

 アスペクト比14:9関連のモードは英国の放送局やビデオプログラムで用いられることがあるモードで日本国内ユーザーにはほとんど無関係なモードとなりそうだが、海外ソフトを視聴する際には役立つこともあるかもしれない。

 さらに1080i、1080pの映像が入力されたときにだけ、特別なアスペクトモードが選択できる。

  • フル1:ドットバイドット表示よりもやや拡大率を上げてオーバースキャン表示
  • フル2:フル1よりもさらにやや拡大率を上げてのオーバースキャン表示

 「ドットバイドット」表示時に画面最外周にノイズや無意味なゴミが映る場合などには「フル1」「フル2」を利用してクリップアウト表示(オーバースキャン表示)しよう。とはいえ、余計なスケーリング処理が入らない分、ドットバイドット表示が最も高画質となるため、普段のフルHD映像視聴には「ドットバイドット」を用いるべきだ。

 KRP-600Mはテレビではないがかなり充実した2画面機能が搭載されており、その操作もリモコン上に専用キーを実装するなどして気合いが入っている。2画面機能の起動はリモコン上の[SPLIT]ボタンで一発起動できる。[SPLIT]ボタンを連続で押すことで順送り式にサイドバイサイド(2分割表示)、ピクチャーインピクチャー(親子画面)の表示モードが切り換えられる。

 [SUB INPUT]ボタンを押すことで、2分割表示時の右画面側、親子画面の子画面側の入力を順送り式に切り換えられるのもなかなかに便利。親子画面の子画面側の表示位置も[PiP SHIFT]ボタンで上下左右の隅に順送り式に位置を変更できる。[SWAP]ボタンを押せば左右、親子の関係を一発で入れ替え可能。

 通常表示状態で[FREEZE]ボタンを押すと、その時点での映像がキャプチャされて、そのキャプチャ画面がサイドバイサイド表示される機能も備わっている。

2画面表示機能が充実しているKRP-600M アナログRGBとDVIの両方で1,920×1,200ドットのデスクトップを2面作りサイドバイサイド表示すれば圧縮表示ながら3,840×1,200ドットのデスクトップの一括表示も可能
DVI(PC)とHDMI(PS3)はKRP-600M側の制約上、同時表示できないがPC側をアナログRGBにすれば、このようにPCとPS3の2画面表示もOK。写真は親子画面モード 同様に2分割表示

 テレビの2画面機能は使いこなすのにリモコンと格闘しなければならないことが多いが、KRP-600Mの場合は、かなり直感的かつ自由度が高く操作できて小気味よい。

 かなり充実した2画面機能をもつKRP-600Mではあるが、制約もある。

 まず、左右画面や親子画面の大小比率か変えられない。これは[SCREEN SIZE]ボタンを押して切り換えられるようにするのが直感的だと思うのだが、どうだろうか。

 そして2画面表示出来る組み合わせに関しても若干の制限がある。実際に使ってみたところ、DVIとHDMI、HDMI同士、アナログRGBとコンポーネントビデオといった組み合わせでは2画面表示が行なえなかった。それ以外の組み合わせはOKで、DVIとD-Sub 15ピンのPC 2画面同時表示機能も行なえた。また、マニュアルには記載されていないが、2画面表示時、十字キーの左右キーでどちらの音声をスピーカーから出力するかを選べるようになっていた。

 リモコン関係では最後にもう一つ、特記事項がある。さすが上級機のリモコン、学習機能が搭載されているのだ。

 [SELECT]ボタンを押すことで操作対象機器をMONITOR(KRP-600M)→STB→BDP(ブルーレイプレーヤー)→VCRと切り換えることができ、他メーカー製品でもメジャー機であればKRP-600Mのリモコンで操作ができてしまう。マニュアルに記載されているプリセットコードをあらかじめ登録することで、KRP-600Mのリモコン上の再生制御ボタン、テンキー、チャンネル操作ボタンを使って他のAV関連機器を直接操作できる。

 さらに、[EDIT/LEARN]ボタンを押す事で、他のAV関連機器のリモコンのボタン操作の赤外線信号をKRP-600Mのリモコンの任意のキーに登録することもできる。実際に他社製のテレビ、プロジェクタのリモコンの電源オン/オフコマンドをKRP-600Mのリモコンに学習させてみたが、ちゃんと電源オン/オフ操作が行なえた。エアコンのリモコンを学習させてみたが、これは駄目だった。

「HD AVコンバーター」設定。これを「する」に設定すると入力切換がほとんど機能しなくなってしまうので注意されたい

 本機はパイオニア製品で、HDMIを使ってシステム連動できるKURO LINK機能にも対応する。KURO LINKにまつわる操作はリモコン上の[KURO LINK]ボタンを押すことで専用メニューが一発で呼び出せるようになっている。録画制御からサウンドシステムの切り替えなどもKRP-600M側のリモコンから行なえる。KURO LINK関連で注意したいのは「HD AVコンバーター」の設定。ここを「する」として有効にしておくとKURO LINK連動設定させたHDMI入力の映像しか表示できなくなってしまう。

 ユーザー自身が柔軟な画質設定が可能というのも、KRP-M600の特徴。リビング、標準、映画などの映像モードに加え、新たにユーザーに自由なカスタマイズを促す「ディレクターモード」も追加している。

 画質の調整項目は「コントラスト」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色あい」、「シャープネス」といった基本画調パラメータの他、「色温度」「ガンマ」が用意されている。色温度はプリセットとして「低」、「中低」、「中」、「高中」、「高」の5段階が用意されており、さらに手動で各RGBのオフセットとゲインを調整できる。まるでプロジェクタ並みの調整自由度だ。

 「プロ設定」項目については、これまでの映像機器製品では見たこともないほどの設定項目数で、上級ユーザーやマニアにとってはまさに調整メニューの“満漢全席”といった風情だ。これについては、後述のインプレッションを参照して欲しい。

 ユーザーメモリはPDP-5000EXと同じ方式。「ダイナミック」と「リビング」を除いた、全てのプリセット画調モードと、「標準」画調で初期化された「AVメモリー」に対して行なった調整結果は保持される仕組みとなっている。各プリセット画調モードは入力系統ごとに別管理となっているので、たとえばHDMI入力で「標準」画調モードを調整してもコンポーネントビデオ入力の「標準」画調モードにはなんの影響もない。また、調整結果は「画質の調整」メニューの「初期状態に戻す」を実行することで工場出荷状態に戻すことができる。

 調整機能で遊んでいて便利だったのは、調整前と調整後の状態を[★]ボタンを押すたびにトグルスイッチ的に切り換えて確認できるところ。

 パラメータをスライダー操作していると、その調整結果が段階的に変化するので人間の視覚では変化がわかりにくく、つい大げさに調整してしまうことが多々ある。この機能があれば、調整状態を維持したまま、調整前の状態と交互に瞬間的に呼び出して比較しながら見られるのだ。この操作系は素晴らしく使いやすいので、他のメーカーの映像機器にも採用して欲しい。

画質の調整 画面の調整 音質の調整
省エネの設定 その他の設定 初期設定(コントロール)



■画質チェック
 ~液晶の100倍のハイコントラスト画質がもたらす新境地

 KRP-600Mは昨年モデルのPDP-5010HD/PDP-6010HDから一世代新しくなった最新パネルを採用している。このパネルは、パイオニアの自社生産としては最後のパネルとなるものだ。

 プラズマパネルは各画素が微細な蛍光灯に喩えられる。画素内でプラズマ放電させ、この時に発生した紫外線が蛍光体を励起して発光する。画素が自ら光る、自発光方式であり、これがプラズマパネルの利点であった。しかし、その構造ゆえに画素の微細化が困難で、たとえ微細化したとしても画素開口率が低下することで輝度が下がり、表示映像が暗くなる。高出力なバックライトを組み合わせれば容易に輝度が稼げる液晶とは裏腹に、プラズマは自発光の長所が仇となって、フルHD解像度パネルの投入が液晶に対して約2年も遅れた。

 だが、パイオニアは「高純度クリスタル層」(クリスタル・エミッシブ・レイヤー)の技術革新によってブレークスルーを果たす。画素セル内の表示面内側に形成させた薄膜層である高純度クリスタル層は、プラズマ放電に励起されて自らが電子を放出する特性があることから、画素セル内の放電速度を従来比の3倍にも高速化。これにより、発光効率が向上し、画素の高精細化をしても必要十分な輝度が得られるようになった。

予備放電を大幅に抑制

 さらに放電速度の高速化は副次的に黒表示時の「予備放電」を抑制することをも可能とし、暗部の沈み込みや暗色の再現性向上も実現した。

 この「予備放電」とは、簡単に言えば次の放電のための“助走的”な放電のこと。「火種」と喩えられるように、次の放電を高速に行なうためのものだ。「プラズマは自発光で黒のときは光らない」と説明されるが、実際にはこの予備放電が起こっているので、これが黒画素をうっすらと輝かせてしまう。これがコントラストを下げていた。

 プラズマパネルは、フルHDパネルでは画素開口率の低下で液晶ほどの高輝度が稼げない。そのため、プラズマパネルでハイコントラストを得るためには黒側の輝度を下げていく方法しかなかったのだ。黒側の輝度を下げる、直接的な方策が、「予備放電を小さくすること」だ。

 2006年に高純度クリスタル層ベースの最初のフルHDプラズマパネルを採用したディスプレイモニタがPDP-5000EXとして発売されてから、ハイコントラスト性能向上のために予備放電の抑制への取り組みが行なわれてきた。昨年モデルのPDP-5010HD/PDP-6010HDは、予備放電をその前年のPDP-5000EXの約1/5に低下させ、暗所コントラスト2万:1を実現させた。

 今年のKRP-600Mは、昨年モデルPDP-5010HD/PDP-6010HDのさらに1/5に低下させることに成功したという。パイオニアは、KRP-600Mのコントラスト値を公開していないが、計算上はコントラスト比10万:1を実現できていることになる。これは平均的な液晶テレビのコントラスト値の100倍に相当する驚くべき値だ。

 実際に、その映像を今回評価してみたが、まさにブランド名「KURO」の名に恥じないほど黒が黒い。

 部屋を暗室状態にして、黒と白のテストパターンを表示させると、黒が完全に部屋の暗さに沈み込んでしまっているという状況。市販されている製品では、プロジェクタも含めて、ここまでの黒を出せている映像機器を見たことがない。

 そして、明らかに昨年モデルよりも黒が一層と黒い。

 今回使用したのは60V型モデルだったこともあり、画素開口率が大きいためか、絶対輝度も前回評価したPDP-5010HDよりは明るく感じられる。蛍光灯照明下でも、液晶と並べなければ「暗い」という印象は持たないはずだ。

 映像中のハイライト部にも鋭い光量が感じられ、ハイダイナミックレンジな映像表現が出来ている。屋外の表現でも、陽光のきらめきにリアリティが感じられるほど明部にもパワーが感じられる。

 とはいえ、映画鑑賞などの真剣に映像を見るときには日中ならばカーテンを引きたいし、夜ならば暗室に近い環境で見たい。逆にそうしないと、環境光に埋もれて、KRP-600Mでしか見られない漆黒付近の暗部表現のうまみを楽しめない。

60V型ということもあって画素開口率については液晶と比較してもほとんど変わらず。画素の分離感もほとんど無く、面表現にも粒状感は感じない

 階調表現能力はどうか。これも凄い。時間積分式階調表現となるプラズマとは思えないほどのアナログ感を実現している。二色混合グラデーション、白黒グラデーションを表示しても疑似輪郭はほぼ皆無。それこそ無段階の階調表現が行なえている。視聴距離50cm未満に近寄ってみると、二色混合グラデーションの中間色付近や、白黒グラデーションの暗部付近で、プラズマパネル特有の高周波の時間方向のざわついたノイズが知覚できるが、1m以上離れた通常の視聴では全く違和感がない。

 RGBの各単色の漆黒までのグラデーションを表示してみると、かなりの暗部にも色味が感じられる。たとえば赤ならば、赤20%、黒80%くらいのほとんど黒付近の色にかすかな赤味が感じられるのだ。他社プラズマパネルならば予備放電による黒浮きが、そして液晶パネルならば液晶画素で遮りきれなかった黒浮きが、漆黒付近の色味を上回ってしまうため、暗部は一律して薄いグレーのようになってしまうのだが、KRP-600Mでは、漆黒付近の暗色までを的確に表現できている。これも、現状、KRP-600Mだけが出せる色(映像表現)であり、ユーザーのオーナーシップをかき立てる要素だ。

 発色や色再現性はディスプレイモニタということからか、あまり派手さはなく、原信号を過不足なく再現しようとしている意図を感じる。

 純色の発色は「プロ設定」で設定できる広色域モードである「1」設定がいい。広色域モードでは純色の赤が非常に鋭くなり、プラズマの赤特有の朱色っぽさが抜け落ち鮮烈になる。広色域モードでは、悪く言えば地味なKRP-600Mの色味が濃い口になるので、一度は活用してもらいたい機能だ。筆者はこれで常用したいとすら感じる。

【広色域モード】【標準モード】
広色域モード時は、青のダイナミックレンジが広い
広色域モードでは、純度の高いリアルな赤に
広色域モードで、緑が深く出る
広色域モード時では、空の青さと木々の緑に深みがある

 話を戻すと赤だけでなく緑や青もいい。緑は黄色っぽさのない、伸びのある緑になっていて草木の表現がリアルに見える。青は深みがあり、安価なテレビで見られるような最明部以外の青がすぐ暗く落ち込むこともなく、広いダイナミックレンジが取れている。

 人肌表現も良好だ。肌色もいやな黄色味はなく、ハイライト側の白に振られた肌色にも、褐色に近い陰の肌色にも繊細な血の気を感じる。広色域時には微妙な肌の色ディテールが見えてくるので、顔のアップには情報量も多い。暗色の表現力が増したおかげで、他競合機よりも、髪の毛、瞳などのリアリティが感じられる。

 画質とは別な「映像の見え方」にも言及しておこう。

 あまり一般には取りざたされないプラズマパネルの弱点に、画素のフォーカスがややぼやけて見えるというのがある。これは一般的なプラズマパネルでは表示面側が多層構造になっていて厚みがあるためだ。プラズマは視野角が広いというが、斜めから見たときにはこの表示面側の厚みのせいで画素がぼけて見える。正面から見たときでも、大画面プラズマを比較的近場で見ると、視線が斜めになる画面端にこのボケが気になることがある。パイオニアのプラズマパネルの場合は、表示面側のガラス基板にほぼ直接的にカラーフィルターを適用しており、発光する画素と表示面側ガラスが近いためにこの問題が起きない。

 KRP-600Mもこのパイオニア・プラズマの特有のフォーカスがしっかりしたくっきりした見え方になっており、特にドットバイドット表示時のPCの映像やゲーム画面の映像はクリアで美しい。シャープネスを強調したのとはまた違った本当の意味での高解像感が味わえた。

 「見え方」関連ではもう一つ、画素形状についても触れておこう。フルHDプラズマ画素は開口率が低いことから画素の仕切が太いといわれることもあったが、KRP-600Mの画素はかなり近寄ってみても、それほどの分離感はない。1mも離れてみれば単色の面表現であっても画素粒状感もほとんど感じない。

【プリセットの画調モード】
 1,920×1,080ドットのJPEG画像をPLAYSTATION 3からHDMI出力して表示した。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、表示画像の部分を800×450ドットにリサイズした。
 
●リビング

 映像パターンからコンテンツ種別を自動判別して画調モードを選択し、なおかつ、正面右下部の照度センサーが、その時点での視聴環境を自動認識して、輝度、階調、コントラストを自動調整する。ちょうど本連載でも取り扱った東芝REGZAの46ZH500に搭載されていた「おまかせ」画調モードによく似た機能だ。

 ビデオレコーダ内の多様なコンテンツをカジュアルに楽しむ入力系統の設定はこれにしておけばいいだろう。

 
●標準

 最もナチュラルな画調モードで、階調バランスも発色も技巧的なところがない。

 モード名の割には、色温度は「中低」というやや低めに設定されており、一般的なテレビ製品と比較すると白はやや純白よりも赤め。しかし、一般的なテレビ製品の「シネマ」ほど赤くはない。ここが気になるユーザーは「中」としてもいいだろう。こうすることで白はだいぶ純白に近くなる。

 人肌も自然な色合いでハイライトの白さと血色の暖かさのバランスも良好。

 
●ダイナミック

 モード名の割には暗部階調のリニアリティは維持されていて、変にコントラスト偏重主義な画調に陥っていない。コントラストを稼ぐのではなく、中明部に多くの輝度パワーを割くことで映像の全体輝度を上げるような調整になっているようだ。

 白は若干青みを持つが許容範囲。彩度は強めだが人肌もなかなか自然。

 モード名とは裏腹に実用度は高い。明るい部屋でバラエティを見る際、またはCG映画やアニメを見る際に活用するといいだろう。

 
●映画

 最暗部付近を若干持ち上げて、若干最明部の輝度を下げて、一度に視覚される映像情報量を上げようという意図が感じられるモード。輝度ダイナミックレンジが狭まるため、映像のコントラスト感はやや低め。

 色温度は低く設定され「標準」よりも白が赤っぽくなるが、人肌は柔らかい感じの白さを帯びて見える。

 シャープネスが過度に下げられてしまう調整が入っているため、解像感は低下する。あまり常用したいとは思わない。

 
●ディレクター

 色温度の低さ、シャープネスの低さといった傾向は「映画」とよく似ているが、コントラスト感はこちらの方が高い。全体的には、やはり「映画」とよく似た画調。

 「画質の調整」メニューの「プロ設定」階層下の高画質機能は全てデフォルトでオフ設定になっており、ユーザー調整を行なう際のベースとするモードだ。

 
●スポーツ

 いわばもう一つの「ダイナミック」モードといった風情で、色温度は高めで白が青く、発色の彩度も強い。「ダイナミック」との違いは階調表現のところで、「スポーツ」の方が暗部を強めに持ち上げている。よって「ダイナミック」よりも暗部階調付近の情報量は多くなる。ただし、その分コントラストは下がる。

 これを使うくらいならば「ダイナミック」を使えばいいだろう。

 
●ゲーム

 輝度ダイナミックレンジを下げた「ダイナミック」モードといった感じ。

 この画調を選択したときのみ、「プロ設定」メニューにて、「ゲームモード」関連の表示特性設定を変更できる。

 その名の通り、ゲームプレイ時専用画調モードだ。

 
 


【各種高画質化機能のインプレッション】

プロ設定

 「プロ設定」調整項目のうち、主なものについて解説とインプレッション、活用ガイドをまとめておく。

●ピュアシネマ

 毎秒24コマの映画コンテンツの表示方法を設定するのがこのオプションで、「しない」「標準」「スムース」「アドバンス」が選択できる。

 「しない」はピュアシネマ機能をオフ。「標準」では通常の3-2プルダウン処理して60fps化して表示する。画面全体が動くシーンではカクカククという具合に不均等なリズムのカクツキ感が起こることがある。

 「アドバンス」はパイオニア製プラズマ特有の表示モードで、プラズマパネルを毎秒72コマの描画レートモードにして、毎秒24コマ映像の1コマを3回表示することで各コマを均等時間だけ表示する。

 「スムース」は液晶の倍速駆動に使われている技術と同種のもので、映像のフレームとフレームの間の中間フレームを算術合成して作り出して間に表示するもの。

 この技術は生成した中間フレームの精度が低いと、映像に不用意な振動を与えたりして、画質を低下させるリスクがある。今回も「デジャヴ」(BD)のチャプター14(1:43:40~)で確認してみたが、PDP-5010HDの評価時と同じく、画面の一部が強くぶれる弊害が確認された。また、効いていないときと効き始めたときの切り替わりが唐突で映像を見ていて違和感がある。筆者としては普段の常用は「アドバンス」を推す。


●インテリジェントシステム

 映像フレームをリアルタイム解析してそのフレームに最適な輝度、コントラスト、シャープネスまでを制御する。KRP-600MではPDP-5010HDのときよりも設定モードが増えている。

 「モード1」は緑や青を記憶色に動的に振る設定、「モード2」は色温度(ホワイトバランス)を動的に調整する。「しない」はオフ設定。

 実際に活用してみたが、あまり、嫌らしく効いてくるものではなく、特に違和感は感じられず。逆に言えば普段はオフにしておいてもいいだろう。


●DREコントラスト

 表示映像の平均輝度からリアルタイムに最適な階調バランスを算出してガンマカーブをリアルタイム調整する機能で「しない/強い、中、弱い」の設定が選べる。

 強くかければかけるほど、中間階調を持ち上げて暗部を沈み込ませる調整が入るようになる。ネイティブコントラストが高いKRP-600Mでは余計なお世話でしかない。「しない」設定でいいだろう。


●黒伸張

 暗部を意図的に沈み込ませてコントラストを稼ぐ機能で、「する」「しない」の設定が選べる。この機能もネイティブコントラスト比が高いKRP-600Mでは無用の長物。「しない」設定でいいだろう。


●ACL(Automatic Contrast Limitter)

 表示映像の平均輝度からその映像に最適なコントラスト特性に動的に調整する機能で「する」「しない」の設定が選べる。

 プロジェクタでおなじみのダイナミックコントラスト機能に相当するもの。暗室で見ている限りは使う必要性はない。


●エンハンサーモード

 表示映像をリアルタイム解析して、ディテール描写部分(高周波成分)を選択式にシャープネス強調する機能。「1ハード/2ナチュラル/3ソフト」の3段階が選べる。

 「2ナチュラル」が標準設定で「1ハード」がシャープネス強調、「3ソフト」がシャープネスを低減させてディテール部分をぼやかせる。

 SD映像の擬似的な解像環境下には「1ハード」、しっとり画質が好きならば「3ソフト」がいい。ただ、標準設定の「2ナチュラル」で、なんの不満もない。


●CTI(Color Transient Improvement)

 色の滲みだしを低減させ、色境界を鮮明にするフィルタ機能。「する」「しない」の設定が選択できる。

 コンポジットビデオ入力向けの機能で、PC映像やHDMI映像などのデジタルソースで活用するとディテールが甘くなって逆効果だ。


●色域

 色域モードを、広色域の「1」と、標準色域の「2」が選択できる。

 広色域設定では赤に鋭さが増し、全体的に記憶色再現志向なテレビライクな色合いになる。広色域モードの方が色ダイナミックレンジは広くなり、映像の情報量は増える。

 人肌には若干赤みが強調されるが嫌みではない。個人的には広色域モードで常用してもよいと思う。


●3DNR(3D Digital Noise Reduction)

 フレーム相関適応型ノイズ低減機能。複数フレームを解析して(3D処理)、ノイズと思われる箇所に平滑化フィルタを適用する。「しない/強い/中/弱い」の設定が行なえる。

 古めのビデオソースの画面でよく知覚される"ざわざわ"としたノイズは、これを適用することで、映像が落ち着いて見やすくできるが、高解像度なデジタルコンテンツに適用するとディテールが甘くなり逆効果。

 デジタルコンテンツ視聴主体となるはずのKRP-600Mでは「しない」設定でいい。


●フィールドNR

 色の滲みだしを低減し色境界を鮮明にする効果のあるフィルタ機能で、「しない/強い/中/弱い」の設定が行なえる。

 そのフレーム内の映像のノイズを低減してくれるが、ディテールが甘くなる弊害もある。デジタルソース視聴においては「しない」設定を奨励。


●ブロックNR

 低ビットレートのMPEG系の映像で目立ちやすい、矩形状のモザイクのようなエリアシング(ブロックノイズ)を低減する機能で「する/しない」の設定が行なえる。

 「する」設定でも効きは控えめで、ディテールがぼけたりする弊害もない。常用してもいいが、あまり恩恵を実感することはないかもしれない。


●モスキートNR

 同じく低ビットレートMPEG映像で目立ちやすい、輪郭や境界付近で見える湯気のような「モスキートノイズ」を低減する機能で、「する/しない」の設定が行なえる。

 これも「する」設定にしても効き目は弱め。Blu-ray視聴が中心ならば「しない」設定でいいだろう。


●3DYC分離

 コンポジットビデオ入力端子からの映像専用の調整項目。輝度(Y)と色(C)が混合伝送されているこの端子からの映像の表示に際し、時間軸方向のフレーム相関情報に配慮して高品位にYとCの分離処理を行なう。結果として映像のディテール部分でのちらつきが低減される。

 「しない/弱/中/強」の四段階設定が行なえるが、この機能に関しては「弱」設定でも比較的強く効き、効果も大きい。コンポジットビデオ端子の映像ソースを見るときにはデフォルトの「中」設定のままで常用していいだろう。


●IP変換

 インターレース映像のプログレッシブ化処理にまつわる設定で、動き重視の「1モーション」、標準設定の「2スタンダード」、静止画重視の「3スチル」が選べる。

 主に映像全体、あるいは一部が横方向に動いたときのコーミングの出方を調整するもので、デフォルトの「2スタンダード」で不満はなし。


●ドライブモード

 パネルの駆動モードを切り換える。プラズマ画素の時間積分式の階調生成のさせ方を切り換えられるものだと思われる。設定は「1」の標準設定、「2」の動き重視、「3」の階調重視から選択できるが、大きく変わるものではない。

 ゲームプレイなどにおいて、色割れを知覚したり、違和感を感じたら標準設定の「1」から別のモードに切り換えてみるといいだろう。


●ゲームモード

ゲームプレイ時は「操作性優先」に

 画調モードを「ゲーム」としたときに限って調整できる設定項目で、映像表示を画質重視で行う「画質優先」か、表示遅延低減重視で行なう「操作性優先」かを選べる。

 最近、取りざたされるようになってきた、ゲームモニタとして使用したときの表示遅延問題についてKRP-600Mも対応してきた格好だ。

 シューティングゲーム、音楽ゲームや格闘ゲームなど操作と表示のタイムラグがシビアにゲーム結果に影響するゲームプレイ時には「操作性優先」設定にしておきたい。


●ブルーオンリーモード

 調整用のテストパターンなどを用いて、KRP-600Mの出色の出力バランスを合わせる場合に活用するモード。「する」設定にすると、映像の青プレーンだけが表示されるようになる。



■ まとめ
 ~最高画質のプラズマ

 今回の視聴テストでは「紀元前1万年」の北米版BDを視聴したが、暗いシーンでも奥行き感が強く感じられたのが印象的だった。一般的な薄型テレビでは、ほとんど「黒浮き」の薄グレーに消失してしまいそうな暗部の色味が克明に描き出されているため、暗がりにも情報量が多いのだ。

 KRP-600Mで初めて映画を見るときは、暗い部屋で暗めな映画を見て、これまでの薄型テレビの画質とは異次元の暗部表現の情報量の多さに感動しよう。筆者もそうだが、慣れは恐ろしいもので、KRP-600Mを見慣れてしまうと、その感動も薄れてきてしまう。最初見たときの感動を最大限で得るためにも「暗い部屋で暗い映画の視聴」は購入時、初期に実践して欲しい。

 他社の薄型テレビのデバイスの改善が緩やかなのに対し、パイオニアの2006年以降のプラズマパネルの画質の進化は、非常に急激で、今回のKRP-600Mで、その進化が止まるかもしれないというのは実に悲しい出来事である。パイオニアの自社パネル生産は終わるが、パナソニックに協力し、開発を進めていくと言われているので、こうした先進技術の数々はぜひ未来に継承していただきたいものだ。

 映像エンジン部に関しては、中間フレーム補間技術のエラーの多さやその制御の荒削りぶりなどを見る限り、同世代の他社競合製品と比較するとやや見劣りする。そうはいっても、そうした機能は全てオフにして活用するのがKRP-600Mの使い方だろう。そうした小手先のテクニックに頼らなくても、KRP-600Mは、プラズマパネルデバイスそのもののポテンシャルの高さとその品質の高い駆動技術のおかげで、現存するプラズマパネルの中でも最高画質を実現できている。

 KRP-600Mは、「テレビからチューナーを省いた製品」、という捉え方よりも「自発光デバイスのプロジェクタ」という認識が正しい。

 この後、50V型も出る予定とのことだが、ピーク輝度は50V型の方が低くなると予想される。買うならばこの60V型のKRP-600Mだろう。

 現在のKRP-600Mの実勢市場価格は80~85万円。ディスプレイモニタとしては高価だが、誰も見たことがない暗部色表現能力と液晶の100倍相当のハイコントラスト映像をものにできると考えれば、検討の価値はある。

□パイオニアのホームページ
http://pioneer.jp/
□ニュースリリース
http://pioneer.jp/press/2008/0610-1.html
□製品情報
http://pioneer.jp/pdp/kuro-monitor/
□関連記事
【6月10日】パイオニア、60型フルHDプラズマディスプレイ「KURO」
-黒輝度を従来比で1/5に低減。実売85万円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080610/pioneer.htm
【4月24日】パイオニアと松下電器がPDP事業について包括提携
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080424/piopana1.htm
【2007年9月13日】【大マ】コントラスト20,000:1の超黒表現の世界
~ “KURO”の実力は? 「パイオニア PDP-5010HD」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070913/dg86.htm
【2007年8月2日】パイオニア、“圧倒的な黒表現”の新プラズマ「KURO」
-50/60型フルHD。「価格競争から脱却、感動を伝える」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070802/pioneer1.htm

(2008年8月8日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司 大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、去年からはBDのコレクションを開始したようだ。次世代DVD一本化を喜ぶユーザーの1人。ブログはこちら

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