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デノン、ダイナミック型対向配置「C820」や「C710」後継などハイレゾイヤフォン3機種

 ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのハイレゾ対応イヤフォン3機種を9月に発売する。価格はオープンプライス。発売時期と店頭予想価格は、「AH-C820」が22,000円前後で9月上旬、「AH-C720」が15,000円前後、「AH-C620R」が10,000円前後で、9月中旬発売となる。

AH-C820

 カラーバリエーションは、C820がブラックのみ。C720はシルバーとブラック、C620Rはホワイトとブラックを用意する。

 今年は、デノンが1966年に同社初のヘッドフォンを発表してから50周年。「バック・トゥ・ベーシック(原点回帰)」をテーマに、「これまでの技術を継承しながら、新しい製品に活かし、新たなトレンドも提案していく」製品を手がけていくと説明。その1つとして、今回の新しいイヤフォンが発表された。

 いずれのモデルも11.5mmのダイナミック型ドライバを搭載。最上位のC820のみ、2基のダイナミック型ユニットを対向配置した「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」を採用している。

AH-C820

 前述の「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」により、2倍の振動板面積を実現。「圧倒的な量感と超低域までのクリアネスを兼ね備えた、低音再生の常識を覆す特許取得の新方式」だという。

AH-C820
ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー

 ダイナミック型ユニットを2基搭載するイヤフォンは他社からも発売されており、向かい合うユニットを逆相で再生する製品もある。逆相方式についてデノンでは、「逆相でプッシュプル方式にすると、ドライバの背面からアウトプットをとる形になり、中高域の鮮度が低下するという難点がある。さらにプッシュプルでは振動面積はドライバ1基分にしかならないので、低音再生能力ではダブル・エアーコンプレッション・ドライバーの方が有利だと考えている」という。

上が通常のイヤフォンの内部模式図。下がダブル・エアーコンプレッション・ドライバー

 さらに、2つのドライバにはそれぞれ専用のケーブルをダイレクトに接続。「スピーカーのバイワイヤリング接続のようなイメージ」(デノン)で、純度の高いサウンドを実現するという「デュアル・ダイレクトケーブル」仕様となっている。線材にはOFCを、シースにはしなやかさと優れた耐久性を備えるメッシュ被覆を使っている。

 ドライバ前後の音圧を調整するために、ハウジングの前方と後方それぞれに1つのポートを設け、振動板の動きを最適化するアコースティック・オプティマイザーを搭載。

 筐体の素材は、アルミダイキャストとABS樹脂を組み合わせたハイブリッド構造。不要な振動を抑え、透明感の高いサウンドを実現するという。

 エルゴノミック・デザインを取り入れ、快適な装着感を追求。耳穴に合わせて選べる4サイズのシリコンイヤーピースを付属。コンプライのピースも付属する。

 磁気回路はネオジウムマグネット。インピーダンスは16Ω。感度は115dB/mW。再生周波数帯域は4Hz~40kHz。ケーブルはOFCで、長さは1.3m。入力プラグはステレオミニのストレート。

AH-C720

 AH-C720は、低音がパワフルなモデルとして人気を集めた「AH-C710」の後継モデル。音質的なアップグレードに加え、ケーブルのシースに優れたしなやかさと耐久性を備えたメッシュ被覆を採用している。

AH-C720

 ユニットは11.5mmのダイナミック型。重厚な低音からキレの良い高音まで、全体域で高解像度なサウンドを実現するという。ドライバの前後の音圧バランスを調整し、振動板の動きを最適化するアコースティック・オプティマイザーも導入している。

 筐体はアルミダイキャストとABS樹脂のハイブリッド構造で、不要な振動を抑えている。

AH-C720のシルバーモデル
AH-C720のシルバーモデル

 ケーブルの付け根を弾性素材で支えることで、ケーブルタッチノイズを軽減するラジアル・カスケード・ダンパーを採用。耳穴に合わせて選べる4サイズのシリコンイヤーピースを付属。コンプライのピースも付属する。

 磁気回路はネオジウムマグネット。インピーダンスは16Ω。感度は110dB/mW。再生周波数帯域は5Hz~40kHz。ケーブルはOFCで、長さは1.3m。入力プラグはステレオミニのストレート。

AH-C620R

 シリーズの末弟モデルと位置付けられているが、AH-C720と同じ11.5mmドライバを採用。コストパフォーマンスも追求したモデルとなる。また、iPhone/iPad/iPodに対応するマイク内蔵の3ボタンリモコンもケーブルに備えている。

AH-C620R

 ドライバの前後の音圧バランスを調整し、振動板の動きを最適化するアコースティック・オプティマイザーを導入。ケーブルの付け根を弾性素材で支え、タッチノイズを軽減するラジアル・カスケード・ダンパーも採用する。

左がホワイト、右がブラック
左がホワイト、右がブラック

 耳穴に合わせて選べる4サイズのシリコンイヤーピースを付属。コンプライのピースも付属する。

 磁気回路はネオジウムマグネット。インピーダンスは16Ω。感度は110dB/mW。再生周波数帯域は6Hz~40kHz。ケーブルはOFCで、長さは1.3m。入力プラグはステレオミニのストレート。

レコチョクとの発売記念キャンペーンも

 ディーアンドエムホールディングスの中川圭史取締役は、デノンの過去の名機を振り返りながら、ヘッドフォン50周年を迎える今年、「既存ファンの皆さんはもちろん、新しいお客様にもクオリティを楽しんでいただけるモデルを用意していく」とし、今後発売を予定しているハイエンドヘッドフォンや、Bluetoothイヤフォンの概要も明らかにした。これらについては別記事で紹介する。

ディーアンドエムホールディングスの取締役の中川圭史取締役
発表会場には過去の名機も展示された。写真は1967年発売の「SH-21」

 新イヤフォン3機種については、レコチョクと連携した発売キャンペーンも実施。C820/720/620Rの購入者に、もれなくレコチョクで好きなハイレゾ楽曲を無料でダウンロードできるクーポン「うたコード」をプレゼントする。コードの利用上限金額は540円。有効期限は2017年3月31日までで、製品のパッケージ内に同梱されるという。規定枚数に達した段階で配布は終了となる。

音を聴いてみる

 発表会場において、短時間だがサウンドをチェックした。プレーヤーは「AK380」を使っている。

 C820の特徴は、ダイナミック型を対向配置した「ダブル・エアーコンプレッション・ドライバー」だ。方式の説明を聞くと、かなり低音が豊富な、“重低音イヤフォン”を連想するが、装着して音を出すと、どこかに偏るのではなく、非常にバランスの良いサウンドが耳に入ってくる。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生すると、1分過ぎからのベースが非常に深く、凄みを感じさせるほど沈む。特筆すべきは、これだけ低く、重い低音が出ているのに、それが中高域まで影響を与えて、音がボワボワと不明瞭になったりしない事だ。不要な振動の軽減に向けた工夫や、ドライバ前後の音圧を調整するために、ハウジングの前方と後方それぞれに1つ設けたアコースティック・オプティマイザーが効いているようだ。

 ハイレゾを含む、高音質楽曲の情報量をシッカリ再生しながら、ロックなどの再生で低域のパワフルさも兼ね備えて欲しいというユーザーにマッチしそうだ。

 A720は、C820と比べて低域の量感や沈み込みは減るが、全体としてはバランスのとれた再生を可能にしている。中高域の抜けが良く、やや響きは硬質だが、シャープな描写を持ち味としている。

 A620Rも、中低域はA720とよく似ているが、A720のように、高域にキャラクターは感じず、低域から高域まで良いバランスを実現している。実売1万円前後のイヤフォンとしては音のクオリティは高く、コストパフォーマンスの良さが光るモデルだ。