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Netflix独自映画「オクジャ/okja」29日配信。ポン監督「配信と映画は共存。日本アニメの影響も」
2017年6月23日 21:19
Netflixオリジナル映画として、6月29日から全世界に向けて配信される「オクジャ/okja」。その監督、共同脚本、プロデューサーであるポン・ジュノ氏と、主人公ミジャを演じた韓国の子役アン・ソヒョンさんが来日。ポン・ジュノ監督が、宮崎駿監督や押井守監督の作品から影響を受けた事などを語った。
「オクジャ/okja」とは
「オクジャ/okja」は、「グエムル 漢江の怪物」や「スノーピアサー」などを手掛けたポン・ジュノ監督と、ブラッド・ピットの製作会社プラン Bが組んで製作した、Netflixオリジナルの映画。
韓国の人里離れた山間の家で、“オクジャ”と呼ばれる巨大な動物を世話する少女ミジャ。彼女はオクジャを親友のように大切に思いながら、10年間のどかに暮らしていた。
しかしある日、ミランド一族が経営する多国籍企業ミランド・コーポレーションが、オクジャを利用するためにニューヨークへの輸送を計画。ミジャは友達を家に連れ戻したいというひたむきな想いだけで、無謀にもオクジャの救出作戦を決行する。
困難なミジャの旅は、オクジャを巡って争いを繰り広げる資本主義者やデモ活動家、そして消費者たちと出会うことで、複雑さを増していく……。
日本のアニメからも影響を受けた?
作品についてポン監督は、「美しい少女と、従順な大きな動物の愛の物語として、あくまでラブストーリーとして作りました。私にとって初めてのラブストーリーです。この動物と少女の愛を妨げる怖い世の中も映画に登場します」と説明。
アンさんは、演じたミジャという役について「ミジャにとってオクジャとは、記憶のない両親や妹のような存在で、もし連れていかれるとしたら助けない人がいるでしょうか。家族だから当然助けなければいけないという思いで、後先考えずにオクジャを助けるんだという気持ちで演じていました」という。
撮影時のエピソードとしては、「オクジャとミジャが渓谷で魚を食べるシーンで、オクジャが水に落ちるのですが、波の波動を作るために水鉄砲を使って撮影しました。普通の水鉄砲ですが、20回以上も撮影をしたので、どんな魚も死んでしまうなと思って、このシーンが記憶に残っています」とコメント。すると、ポン監督が日本語で「ほんと、すみません。監督が悪魔です」と続けた。
ポン監督はアンさんについて、「リラックスした雰囲気の中で映画作りをしたいと考えていました。今作はスケールの大きな作品で、一世一代の機会だからしっかりやらなければとか、ジェイク・ギレンホールやティルダ・スウィントンが出演するからといって意識させることはしたくなかった。だから色々な話をしながら撮影していたが、いざカメラが回ると、ものすごい集中力を発揮する女優でした」と評価した。
ポン監督によれば、この作品は日本のアニメからの影響も受けているという。「女の子版『未来少年コナン』だと思っています。大自然の中で生活しているところや、ずっと走っていて誰にも止められないところとか(笑)。しかし宮崎作品にだけ影響を受けているわけではありません。『ブタが都会にいく』というところはジョージ・ミラーの『ベイブ』に影響を受けていますし、NYのパレードのシーンは押井守監督の『イノセンス』のシーンを再現したいと思いました」とのこと。
アンさんは、今後、海外からの出演オファーがあったらどうするか? と聞かれると、「当然当然、海外の作品に参加したいと思っています。色々な人の人生を体験できるのが女優の仕事の素晴らしさだと思います。私は『君の名は。』や『ハウルの動く城』など日本のアニメ・漫画や音楽も大好きです。いまiPodの中には韓国の曲は一曲もなく、日本の曲ばかりです。歌手になるには歌の実力など心配な面もあるので、いつか『君の名は。』の三葉のような、声優のお仕事もしてみたいと思っています」と語った。
Netflix配信作は映画なのか?
この作品は、カンヌ映画祭のコンペティション部門にノミネートされ、劇場での上映有無や“映画の定義とは何か?”という議論にもなった。Netflixの「映画公開と同時に配信開始」という方針に対し、映画業界が反発。今後Netflix作品がカンヌに並ぶことが難しくなったとも報じられている。
ポン監督はこれについて、「私は映画の作り手として、映画の定義をすることには難しさを感じることがあります。映画を観る方法には様々な形があると思います。スクリーンで大勢で観るのは最も美しい形であると思います。ですがテクノロジーの発展によって、ホームシアターを備えた家のスクリーンで見ることも可能になりました。ストリーミングで観ることも一つのかたちではないかと思います」。
「60年代にもテレビが登場したことによって、映画は終わったと感じる人もいました。現在、テレビと映画は共存していますし、デジタルストリーミングも今後、平和的に共存すると思います。その規定については、映画産業に携わっている方が整理していくべきだと感じています」とコメント。
「ただ、Netflixには、大きな予算が与えられるのにも関わらず、100%創作の自由が与えられ、クリエイティブをコントロールできる環境があります。既存のスタジオではなかなか出来ないことであり、多くのクリエイターにとって魅力的なことは確かです。Netflixは劇場公開にも柔軟な対応をとっており、自分の作品を大きなスクリーンで上映したいという監督たちの渇望にも応えることができるのではないでしょうか」と、Netflixのコンテンツ制作体制を評価した。