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デノン、現代的デザインで“うたた寝OK”なマニュアルレコードプレーヤー。USB録音も

 ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのアナログレコードプレーヤー2機種を8月中旬に発売する。「デザイン」シリーズの製品と位置づけられており、価格は、シンプルなプレーヤーの「DP-400」が58,000円、USBメモリへの録音機能を備えた「DP-450USB」が70,000円。

左がアナログレコードプレーヤー「DP-450USB」。右のデザインシリーズとのマッチングも重視している

 デノンは長年レコードプレーヤーを手がけ、継続してラインナップ。現行機種は10年以上支持されているロングセラーモデルとなっている。新モデルのDP-400/450USBは、「デノンサウンドをスタイリッシュかつコンパクトに」をテーマに開発されているデザインシリーズの新モデルとして開発。デザインシリーズの「PMA-60」や「DRA-100」などとの組み合わせを想定している。

デノン歴代の名機
USBメモリへの録音機能を省いた「DP-400」

 どちらもベルトドライブ方式。デノンがレコードプレーヤーの発売を開始した1970年代の設計思想に回帰し、スタティックバランスのS字型トーンアームを新製品用に開発。1971年に発売された名機「DP-5000」開発当時にリファレンスとされていたトーンアームの仕様を基に、OBの技術者達からもアドバイスを受け、有効長、オーバーハング、オフセット角などの要素を煮詰め、レコードの音溝をより正確にトレースする性能を追求した。

 ヘッドシェルはユニバーサルタイプで交換しやすく、MM型カートリッジを装備している。

 トーンアームが自動で動くフルオートマチックタイプではなく、針を落とすところは手動で行なう本格的なマニュアルタイプ。ユニークな機能としてレコードの再生が終了した際に、自動的にトーンアームをリフトアップし、ターンテーブルの回転を停止する機能を搭載した。

 これは、レコードを聴きながらうたた寝してしまった際に、ターンテーブルが回転し続け、カートリッジを痛める事がないように配慮したもの。再生音を検出し、同じ音(ノイズ)が何回か一致したら、再生が終わっていると判断、具体的には20秒弱でリフトアップ・回転停止する。

 ただし、レコードによってはうまく音がループしていると検出できない事もあるため、もう1つの対応策として、半径57.6mmを切ったら、再生が終了していると判断、一定時間経過後にリフトアップ・回転停止するようになっている。

 開発を担当した岡芹亮氏は、日本コロムビア時代に入社し、今年で37年。「入社当時アナログプレーヤーの製品開発しているところから入った。そんな経緯もあって、今回のモデルの担当になった」という。

開発を担当した岡芹亮氏

 CD時代が到来し、アナログプレーヤーの開発は少なくなっていくが、「歴史的にも技術的にも、そこまでの段階で(アナログレコードプレーヤーの)技術はかなり成熟していた。今回のモデル開発にあたっては、デノンは何をやっていたのか? という過去も視野に入れながら開発していった」という。

 ベースモデルの「DP-300F」に搭載しているオートマチック機能を省き、マニュアルタイプにこだわった理由は、オートマチック機構に必要なカムシャフトなど、様々な部品を省け、シンプルな構造にでき、部品を格納するスペースも不要になるため。「スピンドルのシャフトなども独立でき、筐体面ではアルミダイキャストのターンテーブルでモールドのキャビネットを抑えるような構造にもでき、堅牢性が高くガッチリした筐体にでき、回転の精度も上がる。プレーヤーとしての基本性能の向上に注力した」という。

 なお、再生終了時のリフトアップ・回転停止機能の追加について岡芹氏は、「(うたた寝してしまってずっと再生されていると)精神的にも、機器的にもよくないため、搭載にこだわった」とのこと。

 回転数は33- 1/3回転、45回転、78回転に対応。LP、EPだけでなく、SP盤も再生できる。

 トーンアームは伝統のS字型。ターンテーブルはアルミダイキャスト製。ターンテーブルの下に配置した速度センサーで、回転速度を常時モニター、正確な速度を保つようにモーターの動作を制御する。

 MMカートリッジ対応のフォノイコライザーも搭載。フォノ入力がないアンプやミニコンポに直接接続できる。イコライザをスイッチでOFFにする事もできる。フォノイコライザ音質向上のため、電源回路も見直し。ベースモデルのDP-300と比べ、供給する電圧は3倍になっている。低ノイズFETや、低ノイズタイプのバイポーラ入力オペアンプも使い、高音質化を追求した。

 ユニークな機能として、付属のダストカバーが着脱でき、スタンドとして縦置きが可能。レコードジャケットを立てかけて、ディスプレイできる。

付属のダストカバーがレコードジャケットのディスプレイスタンドになる

USBメモリへ録音できる「DP-450USB」

 DP-450USBは、前面にUSB端子を装備。USBメモリを接続し、レコードのサウンドをMP3(44.1kHz/192kbps)、または44.1kHz/16bitのWAVで録音できる。

USBメモリへ録音できる「DP-450USB」

 PC向けの音楽ファイルユーティリティソフトの「MusiCut for Denon」もデノンのWebサイトからダウンロード可能。トラック分割や、手動や曲間の無音部分での自動分割が可能。楽曲のデータを解析し、Gracenoteの音楽データベースから楽曲情報の取得が可能。

 外形寸法や重量、消費電力は2機種共通。サイズは、カバー無しで414×342×105mm(幅×奥行き×高さ)、重量はカバーも含めて5.6kg。消費電力は10W。

音を聴いてみる

 DP-400を、プリメインアンプ「PMA-800NE」と組み合わせて試聴。ソフトは、「坂本龍一/音楽図鑑」や「スティーリー・ダン/彩(Aja)」など。

 価格はリーズナブルだが、非常にカチッとした音が出るレコードプレーヤーだ。音圧豊かで、音の輪郭がシャープ。筐体の高い剛性も感じさせ、音がゆらいだり、不要に膨張する部分がなく、アナログらしい懐かしさがありながら、現代的なシャープさ、クリアさも兼ね備えている。

 組み合わせているプリメインのPMA-800NEは、開放的な音場のアンプだが、DP-400との組み合わせは非常にマッチしていると感じた。

プリメインアンプ「PMA-800NE」と組み合わせて試聴した