パナソニック、最終赤字決算も上期見通しを上方修正
-年間1,550万台のテレビ出荷に向けての進捗は順調
パナソニック株式会社は、2009年度第1四半期連結決算を発表した。売上高は前年比26%減の1兆5,955億円、営業損益は前年同期の1,096億円の黒字からマイナス202億円の赤字に転落。税引前損益は前年同期の1193億円の黒字からマイナス518億円の赤字に、当期純損益は730億円の黒字から、マイナス530億円の赤字となった。
為替の影響を除く売り上げ減は4,590億円となっており、そのうち、B to Bが7割を占める3,300億円の減少、B to Cが1,260億円の減少となっている。
2009年度第1四半期連結決算概要 | 商品別の売上高分析 |
第2四半期の営業利益で黒字転換を見込む |
第1四半期の業績は、期初計画に比べて売上高で400億円増、営業利益で698億円増、税引前利益で850億円増、当期純利益で750億円増になっているという。これにより、2009年度上期の修正見通しは、売上高が5月公表値に比べて400億円増となる3兆3,000億円、営業損益は850億円増となるマイナス200億円の赤字、税引前損益は1,050億円増のマイナス900億円の赤字、当期純損益は950億円増のマイナス1,000億円の最終赤字とした。
営業利益にはおいては、実質販売増で60億円、為替の影響で120億円、固定費削減などで670億円の改善を見込む。また税引前利益では営業利益の増加で850億円、構造改革費用の減少で60億円、株式評価損・金融収支の良化などで140億円の改善を予定している。
2009年度上期の修正見通し | 上期営業利益良化の主な要因の一覧 | 上期税引前利益良化の主な要因の一覧 |
「上期の上方修正は、価格競争は引き続き厳しいが、電子部品の市況回復、景気対策施策の効果、為替の良化、材料費をはじめとする固定費の削減などが影響している。だが、下期は不透明な状況にあり、年間の見通しは変えない。通期計画達成の確度は高まったが、来年度の最終黒字化に向けて取り組んでいく」とした。
なお、第1四半期の設備投資は1,143億円となり、生産設備の稼働延期などの効果もあり、期初見通しの1,700億円から557億円の削減効果があったという。薄型テレビの設備投資額は629億円、半導体は55億円となった。
■ セグメント別の業績
2009年度第1四半期のセグメント別の業績は、デジタルAVCネットワークの売上高が、前年同期比26%減の7,733億円、営業損益が前年同期の550億円の黒字から、マイナス136億円の赤字となった。
デジタルAVCネットワークの主要ドメイン別では、AVCネットワークス社の売上高が31%減の3,668億円、営業損益が346億円の赤字。パナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高が14%増の1,020億円、営業利益が48%減の78億円となった。
テレビの販売金額は、前年同期比19%減の1,984億円。そのうち、プラズマテレビが17%減の1,234億円、液晶テレビが22%減の750億円となった。テレビ事業は赤字となっており、「2009年度通期計画でも赤字が残る計画となっており、黒字化は2010年度以降になる。大きな影響は為替によるもの。高インチ化、フルHD化の推進によって収益性の高い商品へのシフト、限界利益率を高めるためのイタコナ活動を通じた材料費のコストダウン、拡売費の削減、固定費および間接部門の削減などによる収益改善を進める」(上野山取締役)とした。
出荷台数は、パネルの外販分を含めて33%増の294万台となり、「1,550万台の通期計画に向けて、期初見通し通りに進捗している」とした。第1四半期のプラズマテレビは16%増の141万台、液晶テレビは54%増の153万台。
デジタルAVCネットワークの業績 | AVCネットワークスとパナソニックモバイルコミュニケーションズの概況 | 各地域における薄型テレビの販売動向 |
日本ではエコポイント制度の効果もあり、前年同期比4%増の655億円となったが、海外が27%減の1,329億円となった。だが、2008年度第4四半期に比べると、日本国内で65%増、海外でも33%増、グローバルでも42%増となっている。「北米では、販路拡大の成果があり順調。だが、欧州はユーロ安の影響のほか、ロシア市場の低迷が影響した」としている。
また、「プラズマテレビ市場は年間1,400万台の市場規模と見込まれており、その半分の市場を取る。2008年度は4割の占有率であったが、他社が減っている分、十分いけると考えている。液晶テレビは、北米が大きく伸ばしており、第1四半期の伸び率は3倍。中南米では2倍、アジアでも2倍となっている。新興国はブラウン管からの置き換えもあり、液晶テレビを伸ばせるチャンスがある」などとした。
デジタルカメラは、26%減の479億円。日本では19%減の88億円、海外では28%減の391億円となったが、これも2008年度第4四半期に比べると、日本国内で66%増、海外でも55%増、グローバルでも57%増になっているとした。「世界的な需要低迷、価格下落の影響を受けたが、日本ではFX40、TZ7が好調。また、欧州における占有率が向上している」という。
BD・DVDレコーダは3%減の307億円、そのうち、BDレコーダおよびBDプレーヤーは78%増の228億円。ビデオムービーは33%減の165億円となった。
アプライアンスの売上高は17%減の2,939億円、営業利益が36%減の203億円。デバイスの売上高は31%減の2,296億円、営業損益が前年同期の195億円の黒字からマイナス115億円の赤字に転落。電工・パナホームは売上高が17%減の3,577億円、営業利益が105億円の黒字から、マイナス78億円の赤字に転落。その他事業の売上高は29%減の2,047億円、営業損益は139億円の黒字からマイナス9億円の赤字となった。
アプライアンスの売上高 | デバイス | 電工・パナホーム |
■ 「巣ごもり商品が売れている」
なお、2009年度第1四半期の地域別売上高は、日本が18%減の8,588億円、米州が23%減の2,036億円、欧州が29%減の1,671億円、中国が30%減の1,738億円、アジアが16%減の1922億円となった。
「BRICs+V (ブラジル、ロシア、インド、中国、ベトナム)市場においては、前年同期比19%減。だが、計画通りに推移している。インドは3.7倍、ベトナムは2倍の売上高となっているが、ロシアが経済環境の悪化により前年同期比50%減の、ブラジルも20%減となっているのが影響した」という。
日本におけるエコポイントの影響については、「6月までの実績は、薄型テレビが12%増、エアコンが2%増、冷蔵庫が32%増となっている。冷蔵庫は作れば売れるという状況にあり、400リットル以上が売れている。だが、エアコンは7月に入って天候の影響もあり悪化している」としたほか、「珍現象ともいえるのが巣ごもり商品が売れている点。小物の電子レンジ、炊飯器、ホームベーカリーのほか、マッサージチェアが好調」などとした。
白物主要3商品の販売動向 | 地域別販売概況 |
また、同社が今後の重点課題のひとつとして取り組むボリュームゾーン展開については、「将来の成長を考えた場合、いままで当社が入っていなかった分野に入ることが必要。ボリュームゾーン商品は、新興国の中間層をターゲットとしたものであり、値段、機能などの観点から地域に密着した商品となる。だが、そのままでは収益を高めることが難しい。ボリュームゾーン商品については、ドメインごとに提案を行なっている段階であり、日本の高品質体質でやるのではなく、現地による商品化、企画、生産、材料調達を進める。ホームアプライアンスの例をあげればエアコンにおいて、組立工程を半分にしたりといった取り組みを行なっている」とした。
一方、三洋電機の子会社に向けた取り組みについては、「現在6カ国で手続きが完了しており、残り5カ国で進めている。9月末までに終える方向で最善を尽くしている」とした。
(2009年 8月 3日)
[ Reported by 大河原克行]