ミニレビュー
視野拡大の「XREAL One Pro」をテスト。実は上位版ではなく“選択肢拡大”
2025年7月18日 08:00
XREALが発売する新製品「XREAL One Pro」が届いたので、レビューをお届けする。
同社はグラス型の「空間ディスプレイ」を多数作っており、今年のメイン製品は「XREAL One」だ。筆者もレビューを掲載している。
XREAL One Proは、XREAL Oneの兄弟製品であり、光学系を大きく変更して視野角を広げたものだ。価格は84,980円。
その価値がどこにあるのかをチェックしていきたい。
デザインはそのままに光学系を変更
デザインだけを見ると、XREAL One ProとXREAL Oneの間には大きな差がない。なにも言われずに見れば、「同じような感じ」と思うだろう。付属品にも大きな違いはなく、操作系も同じ。ケーブルの接続方法も同じだ。
実際には、ディスプレイからの光を目に届ける光学系が全く違う。XREAL Oneまで、同社はハーフミラーに近い「バードバス」と呼ばれる構造を採用してきたが、さらに改良を加えた「X Prism」に変更された。
そのため、メガネ部の厚みがかなり減り、光学系の形状が大きく変化した。視力補正用のインサートレンズも変更になっている。X Prismにかなり近い位置に来るためか、端には小さなゴム足があり、接触を防ぐ構造になっている。
X Prismの構造上、サイズによって瞳孔間距離(IPD)が変わる。MサイズはIPDが57~66mm、Lサイズは66~75mmなので、間違って購入しないように注意しよう。
XREAL OneのインサートレンズをXREAL One Proに付けることも「できなくはない」が、光学系から目までの距離が変化し、見え方も変わってしまうので推奨しない。XREAL One Proを購入する人は、専用のインサートレンズを用意しよう。
なお、光学系パーツの重量が減った、という説明があるが、機器自体の重量は減っているわけではない。計量したところ、XREAL Oneが88.5g、XREAL One Proが90.7gだった。かけてみて差がわかるような重さではないのだが、若干重くなっているというのが実情だ。
7度だが「体感が大きく違う」画角、周囲の光も入りづらく
では、画質はどういう影響があるのか?
まず変わるのは「画角」だ。
XREAL Oneは約50度だったが、XREAL One Proでは57度になる。
Meta Quest 3が110度、Apple Vision Proが約90度で、それらに比べればまだ狭い。しかし、サングラス型ディスプレイタイプの製品は40度から50度がほとんどで、そこから7度広くなる。
これは見た目の印象をそのまま映像にしづらいので、伝えるのがなかなか難しい。
特にXREAL Oneシリーズは、3DoFによって「空間に画面を固定する」ことができる。この環境は自然だが、「見えている映像の大きさ」はデバイスの視野の広さとイコールではない。
まずは空間固定の機能をオフにして、「デバイスの解像度で」映画を見た。すると、画面が一回り大きくなったように感じる。確かにこれはインパクトが大きい。
空間固定機能をオンにしてPCのディスプレイとし使ってみると、「首を動かさなくても見える範囲が広がる」。
これを数字で理解してもらうため、あるテストを行なった。
XREAL Oneでは、空間に固定する画面が「何m先に何インチで見えるか」を設定できる。これはあくまでXREALが指定したもので、体感上のズレはある。例えば「3m先に110インチ」に指定したからといって実際にその通りかというとズレがある、というのが筆者の見解だが、「ある指針でどんな大きさに見えるのか」という指針であることに変わりはない。
そこで、「16:9のPC画面」を表示し、「3m先という設定で、首を動かさなくても全体が見える最大の大きさ」がいくつになるかを測った。
すると、XREAL Oneは「3m先で108インチ」だったのに対し、XREAL Oneでは「3m先で128インチ」にまで広がった。視野拡大の成果は明確だ。
もう1つのメリットが、「外からの映り込みが目立たなくなる」ことだ。
XREAL Oneをはじめとして、バードバス光学系を使ったデバイスでは、どうしても「下からの光の映り込み」が目立った。明るいところで使っていると、自分のお腹あたりの光が見えることすらあるくらいだ。
一方で、XREAL One ProのX Prismでは、映り込みがほとんどなくなった。
以下の写真は、スマホのライトを当ててみた時の状況である。
XREAL Oneは明確な照り返しが輝点として現れるのに対し、XREAL One Proは現れない。
これも大きな進化だ。
視野の代償として「解像感」「明るさ」が落ちる
だが、トレードオフもある。
1つは「輝度が落ち、発色のビビッドさが弱くなること」。視野が広がるということは、小さなディスプレイからの光を拡散するということでもある。結果として、シースルー時の透明度は低くなる。
以下は、XREAL OneとXREAL One Proの画質比較だ。XREAL One Proの方が暗めで色温度も下がっている。実際の映像ではここまで顕著に感じられないが、「暗くなったな」と感じたのは間違いない。
次に、解像感が下がること。これも、小さなディスプレイを広い視野に広げるがゆえのトレードオフだ。XREAL One Proだけを見ていたら気がつかないが、両方見ると、XREAL Oneの方が「解像感が高い」と感じる。ただし、その差はそこまで大きくない、というのが筆者の印象だ。
最後は「エッジの色収差と上下方向の歪み」だ。
どちらの製品もエッジには色収差(多少の色割れ)が見られるのだが、XREAL One Proの方が大きく感じられる。そして、樽型の歪みもあり、特に上下方向のエッジで顕著だ。
以下は、PCの画面を表示した上で、視野を上にずらし、PC画面中央にエッジが出るようにして撮影したものだ。XREAL Oneに比べ、XREAL One Proの歪みは大きい。
上位モデルではなく「兄弟機種」、価格も含めて好みの選択を
とはいえ、これらはまさに「トレードオフ」だ。「あえて挙げれば気になる」ことだが、視野の拡大によるメリットを重視する人もいるだろう。
XREAL One ProとXREAL Oneを、冒頭で“兄弟製品”と書いた。「Pro」という名前とは裏腹に、実際には上位モデルではない。解像感や発色を重視するのか、視野が広い方を重視するのかという違いにすぎない。
おそらくは、視野が広いことをプラスと考える人の方が多いだろう。50度から57度というのは小さな変化ではない。
一方で、XREAL Oneは69,980円、XREAL One Proは84,980円と価格がけっこう違う。先日はXREAL Oneが15%オフになるセールもあった。
だから、視野よりも価格を重視する発想も十分アリだ。
さらに迷わせてしまいそうだが、そのくらい「好みで選んでいい」。そういう選択肢が用意されたことが最も大きな変化なのだ。