Blu-rayを観ながらチャット。SPE「cinechat」を体験

-第1弾「天使と悪魔」。PC/携帯から入力も


cinechatのロゴマーク

10月28日発売

 

Blu-ray 天使と悪魔 スペシャル・エディション(2枚組)
 10月28日にBlu-ray/DVDが発売された「天使と悪魔」。ダン・ブラウンによる世界的ベストセラー小説を、監督ロン・ハワード/主演トム・ハンクスで映像化した「ダ・ヴィンチ・コード」のシリーズ第2弾であり、注目度の高いビッグタイトルだ。

 だが、発売されるBlu-rayには作品内容とは別に、もう1つの注目機能がある。BD-Liveのネットワーク機能を使い、本編映像を観賞しながら、同じように映画を楽しんでいる人と画面上でチャットができるソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)の新機能「cinechat」(シネチャット)に、国内BDソフトでは初めて対応しているのだ。

 “誰かのコメントを読みながら動画を鑑賞する”というスタイルですぐに思い浮かぶのは、ニコニコ動画だろう。動画の種類にもよるが、大勢の反応を読みながら観ると、1人で観賞している時よりも“面白い”と感じる事が多く、動画上での盛り上がりが、新しいコンテンツが生まれる土壌にもなるなど“動画の鑑賞スタイル”に大きな変革の可能性を提示したと言えるサービスだ。

 「天使と悪魔」で提供される「cinechat」は、そんなニコニコ動画的な楽しさを、BDの映画鑑賞中に体験できる機能と言える。SPEで実際に体験してみたのでレポートしてみたい。


□関連記事
【8月20日】「ダ・ヴィンチ・コード」の続編「天使と悪魔」BD/DVD化
-BD-Liveを使い、初の「画面上で感想チャット」が可能に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20090820_309466.html


■ 映画の登場人物からアバター選択

BDのパッケージを開けたところ。cinechatの説明書が同梱されている
 まず、「天使と悪魔」のBDケースを開くと、cinechatの説明が書かれた紙が封入されている。基本はこれを読みながら操作すればOKだが、「天使と悪魔」では特典メニュー内にcinechat機能の紹介動画も収録しており、これを再生するだけでも操作の流れは把握できる。

 機能を利用するためにはSPEのBD-Liveサイトでアカウント登録が必要。登録が完了したら、BD特典メニューから「cinechatスタート」を選び、前述のBD-Live IDとパスワードを入力。すると、画面に「開始する」、「参加する」、「フレンドリスト」という3つのボタンが現れる。


特典メニュー。左にcinechatを起動するボタン、右には解説ムービーが用意されている
(C)2009 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
解説ムービーを再生しているところcinechatを起動させ、BD-LiveのIDとパスワードを入力

 「開始する」は、チャットルームを自らが開設するボタンで、ルームのホストとなる。「参加する」は、他人がチャットルームに招待してくれた時のみ選択できるボタンで、他人がホストとして開いているルームに参加できる。

 「フレンドリスト」は、チャットしたい相手を検索・登録する機能で、検索はBD-Live ID、もしくはメールアドレスから行なえる。登録すると、フレンドに招待状が送られ、相手側が承諾するとフレンドリストに追加される。

 試しに「開始する」でホストになってみる。すると、画面上にラングドン教授など、「天使と悪魔」の登場人物達の顔写真が現れる。これはチャットで使うアバター画像で、10個の中から好きなものを選択できる。なお、cinechatのプログラムはBD-ROMに格納されており、用意されているアバター画像も作品によって異なる。対応ソフト第2弾としてSPEから11月20日に「ターミネーター4」が予定されており、当然そのアバターは「T4」の登場人物達となる。

アバター選択画面。映画の登場人物達の中から、好きな物が選べる
(C)2009 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
メインメニュー画面。「開始する」はホスト、「参加する」は他人のチャットルームへの参加ボタンだフレンドリストの画面。IDやメールアドレスから友人を検索/登録できる

ホストとしてチャットルームを開き、参加者を待っているところ
 アバター選択が終わると、フレンドリスト画面となり、リストに登録された人を招待したり、リスト登録を相手に申請することができる。ホストは「フレンドの参加を待つ」ページに移動し、相手がチャットへの参加を承諾してくれるのを待ち、参加者が揃ったところで「スタート」を押すと、いよいよチャットのスタートとなる。ちなみに最大参加人数は5人(ホスト1人+参加者4人)。

 最大の特徴は映画本編を見ながら、半透明のウインドウでチャットができること。ウインドウ位置や左右の上下に移動できるほか、ウインドウを右に配置し、本編を左上に縮小表示してウインドウと本編が重ならない表示も可能。最小化して下部にバーのみを表示する事もできる。


チャットウインドウを左側に配置したところ
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本編映像を縮小表示することもできる
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ウインドウを最小化して、画面下部に置いておくこともできる
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■ 日本語入力はPCや携帯から

 文字の入力方法は3通り用意されており、1つはチャットウインドウ下部にあるキーボードボタンを押すと表示される、スクリーンキーボード。これをリモコン操作で入力していくか、「PlayStation 3(R)」などのキーボード接続対応BDプレーヤーではキーボードも利用できる。ただし、現時点でスクリーンキーボードでの入力は英数入力のみサポートで、日本語入力には対応していない。

 その解決策として、スクリーンキーボード横に表示されているQRコードを携帯電話で読み取り、専用ページにアクセスすると、携帯電話からチャット入力ができる画面にアクセスできる。操作方法は前述の通りで、ID・パスワードの入力や、アバター選択、チャットルーム選択などを経て参加可能だ。

スクリーンキーボード。日本語入力には対応していないが、QRコードが用意されている
(C)2009 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
コードを携帯電話で読み取ると、チャット入力用の専用ページにアクセスできる専用ページでログインし、日本語を打ち込んでいるところ

日本語入力でのチャットイメージ
(C)2009 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
 さらに、PC用の専用サイトも用意されている。cinechat上の文字入力オプションボタンを押すと、自動的に登録済みメールアドレスに向け、専用サイトのアドレスや入力方法がメールで配信される。PCでそのメールを受け取り、指示に従ってチャットに参加するという流れで、もちろんiPhoneなどのPDAでも同ページから入力可能だ。

 こうして入力されるチャットは、随時本編にオーバーレイ表示されたチャットウインドウに表示される。タイムラグもほとんど無く、参加までできれば後はスムーズな会話が可能だ。BDプレーヤー/レコーダ単体で日本語入力ができないのは不便だが、スクリーンキーボードが本編映像を覆い隠さないという点では、PCや携帯電話からの入力の方が便利と言えそう。また、スクリーンキーボードをリモコンで操作するより、携帯電話入力の方が遥かに速く文字入力ができるという人も多いだろう。


PCに送付された、チャットへの参加方法が書かれたメールPCのブラウザでcinechatにログインする場面

 「PCや携帯電話を用意するなら、そのメッセンジャーやメールでコミュニケーションをとったほうが早いのでは?」とも思えるが、やはり本編映像と同じ場所にチャットが表示されるという効果は大きく、視線移動の少なさもあり、あくまで映像が主体で、それについて会話するというコミュニケーションが成り立ちやすいと言える。

 また、cinechatならではの面白い機能として、映像の同期機能がある。これはホストが再生している位置に参加者の再生位置が自動的に合わせられるというもの。例えばホストのAさんと、友人のBさんが鑑賞チャットをしながら1時間経過した時に、新たにCさんが参加すると、Aさんが再生している1時間の位置から、Cさんの本編映像が再生される。現在会話されているシーンの映像がすぐに観られるため、会話にも参加しやすくなるというわけだ。

ホームエンタテインメント セールス・マーケティング本部 マーケティング部カタロググループの吉川絵美さんホームエンタテインメント パブリシティ担当稲見敦さん
 また、今後対応タイトルが増えると、別の作品のチャットルームに参加する事もシステム的に可能だという。例えばAさんとBさんが「天使と悪魔」を観ながらチャットをしている所に、「ターミネーター4」を観ているCさんが参加。「天使と悪魔が終わったらターミネーター4を一緒に観ない?」と誘う……といった使い方も可能になるという。

 第1弾「天使と悪魔」、第2弾「ターミネーター4」と、対応ソフトが続くcinechat。SPEホームエンタテインメント セールス・マーケティング本部 マーケティング部カタロググループの吉川絵美さんは、「高画質/高音質だけでない、BDならではの機能として積極的にアピールしていきたい。今後も大きなタイトルのBDには、cinechatを搭載していきたい」という。



■ ハードルはあるが、期待度の高い機能

 SPEではこれまでも、「MIB(メン・イン・ブラック)」や「007カジノ・ロワイヤル」での対戦ゲーム機能や、「スターシップ・トゥルーパーズ3」の特典で実現した、デジカメで撮影した画像を本編映像にはめ込んで、“自分が映画に出演できる”機能など、BDのネットワークやインタラクティブ機能を活用する様々な提案を行なっている。今回のcinechatは、他者と一緒に鑑賞することで、“映画本編を観る楽しみ”を増加させるという面で、セルソフトの特典としては革新的な機能と言えるだろう。

 しかし、cinechatで同じ映画を楽しむためには、ネットワーク接続されたBD-Live対応のプレーヤー/レコーダを持ち、参加者全員が同じ作品のBDソフトを持ち、なおかつ同じ時間に鑑賞しなければならないというハードルがある。メールアドレスやIDを知っている友人を誘うというクローズドなシステムでは、その全てをクリアするのは容易ではない。

 システムとしては非常に面白く、“BDでの映画鑑賞”の楽しさのバリエーションを大きく広げる可能性を秘めている。それゆえ、今後は“現在同じ映画を観ている人”が参加できるオープンなチャットルームの開設や、同じ時間でなくてもその映画を観た人の書き込みが確認できるログ表示機能、本体での日本語入力対応など、さらなる機能アップに期待したいところだ。

【2008年6月25日】【BD】第250回:日本初のBD-Live対応ソフトを体験
マルチプレイゲームができる「メン・イン・ブラック」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080625/buyd250.htm
【2008年9月22日】「スターシップ・トゥルーパーズ」3作品がBlu-ray BOX化
-SPE発売。BD-Liveでユーザーが戦闘に参加
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080922/spe.htm
【2008年11月12日】「スターシップ・トゥルーパーズ3」のパワードスーツが編集部に襲来
-7,000セット限定のDVD版に付属。ジオラマ写真も公開
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081112/spe.htm

(2009年 10月 30日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]