ソニー第2四半期決算発表。「Samsungに商品力で負けた」

-通期は上方修正へ。PS3は320万台で2010年黒字化


大根田伸行 代表執行役 副社長 CFO

10月30日発表


 ソニーは30日、2009年度第2四半期業績を発表した。売上高は、前年比 19.8%減の1兆6,612億円。営業利益はマイナス326億円(前年はプラス110億円)、税引前利益はマイナス170億円(同プラス73億円)、純利益はマイナス263億円(同プラス208億円)で、前年比では大幅に損益悪化した。

 特に為替の影響が大きく、営業利益ベースで約770億のマイナス要因になった。今期の平均レートは1米ドル92.7円、1ユーロ132.2円。昨年度に対し、米ドルは15.1%、ユーロは21.3%の円高で、前年のレートを適用した場合の売上高は9%減。

 ただし、四半期の業績としては7月発表予測を大幅に上回ったため、通期の業績予測は上方修正している。売上高は当初予測通りの7兆3,000億円ながら、営業利益は500億円改善し、マイナス600億円。構造改革費用の200億円増額やソニーエリクソンの投資損失見通しを100億円増加したものの、通期の純利益も250億円改善のマイナス950億円と予測している。

2009年第2四半期連決算通期業績予測を上方修正

 


■ BRAVIAは販売台数も減少。低価格機種はEMSを活用

コンスーマプロダクツ&デバイス分野の業績

 テレビやデジタルイメージング、オーディオ・ビデオ、半導体などが含まれているコンスーマプロダクツ&デバイス(CPD)分野については、売上高が前年比36.5%減の7,999億円、営業利益は86.9%減の89億円。

 円高や価格競争激化などにより減収となった。BRAVIAやゲーム用システムLSI、サイバーショットなどが減収の大きな要因。損益が悪化した製品はゲーム向けシステムLSI、ハンディカム、バッテリなど。

 液晶テレビは台数は欧米を中心に減少。前年同期比でマイナス11%、40万台減の330万台となった。さらに為替の影響により売上高は同39%減の2,220億円に、営業損益は構造改革費用を除き30億円悪化して110億円の赤字となった。ただし、コスト構造の見直しにより、原価率は改善しているという。また、欧米では不調だったものの「日本、中国を含むアジア地域では堅調だった(神戸司郎 広報センター長)」としている。


CPDの営業利益増減要因

 デジタルカメラも、為替や価格下落、販売減などが響き減収となったが、費用改善効果により利益は前年比で増益。利益率も前年を上回った。ビデオカメラは為替や価格下落の影響で、減収減益となった。ただし、「HDR-CX500」などのヒット商品で想定以上に価格を維持できたため、利益率は前年並みとなったという。

 黒字化に向けてオペレーションの改善や在庫の最適化を進めるほか、「テレビについては、差異化要素が少ないものは外に出していく(EMSなどの活用)のが基本的な製品戦略。新興国などのマーケットはもう少し力を注いでいく。パネルについてもSamsungとのジョイントベンチャーのほか、シャープからも買え、台湾からの調達もある。最適なパネルの購入の仕方は引き続きちゃんとやっていきたい(大根田伸行 代表執行役 副社長 CFO)」とした。


 


■ PS3出荷は320万台。2010年度黒字化へ

NPSの業績概要

 ゲームやパソコン「VAIO」、ネットワーク対応ウォークマンなどが含まれるネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野は、売上高が前年比24.2%減の3,526億円、営業利益はマイナス588億円となっている。

 ゲームの売上高は前年同期比27%減の1,970億円。主に為替の影響とPS2ハードウェア/ソフトウェアの減少が響いた。営業損益も60億円悪化し、410億円の赤字になった。

 ゲームの出荷台数はPlayStation 3(PS3)が新モデルの発売により前年同期比80万台増の320万台に、PSPは同20万台減の300万台、PS2が同60万台減の190万台。円高の影響やソフトウェアの売上数量減により減収となった。

 PS3については、「今の段階で売上と原価の逆ザヤ比率が10数パーセントまで縮まっており、年内に一桁%になるだろう。来季のどこかではPS3の黒字転換ができる(大根田CFO)」とした。PlayStation Networkのアカウント数は1,100万を超えたという。

 VAIOは、新機種導入タイミング、為替の影響、単価下落などにより減収。台数ベースでも減少となったが、ネットブックの「VAIO W」がアジア全域で好調で、先日発売した「VAIO X」も好評のため、年末商戦に向けて拡販を続けるとしている。

 B2B&ディスク製造事業は、売上高が前年同期比19.6%減の1,246億円、営業利益がマイナス24億円となった。放送業務機器の世界的な市場低迷や、円高、ディスク製造単価の下落などが影響した。放送業務用の事業環境は厳しいが、事業構造の改善や新興国の販売拡大、デジタルシネマ向けプロジェクタのビジネス拡大などに取り組む計画。

 映画分野では、売上高が前年比30%減の1,364億円、営業利益はマイナス64億円。減収の要因は「前年同期は『ハンコック』がヒットしたが、今期はそれに匹敵する作品が無かった(神戸広報センター長)」としている。また、DVDソフト市場の低迷継続なども減収要因。

 音楽分野では、SMEをソニー100%子会社化したことで大幅に売上増となっており、売上高は前年比146.9%増の1,245億円、営業利益は692.2%増の86億円となった。前年度にSMEを100%連結していたと仮定すると、売上高は3%減、営業損益では121億円の改善になるという。

 マイケル・ジャクソンのカタログタイトルの売上増などで損益改善。一方、パッケージメディア音楽市場縮小などにより、減収になったとしている。ヒット作品 はマイケル・ジャクソンのカタログ作品や、ホイットニー・ヒューストンの「アイ・ルック・トゥー・ユー」、キングス・オブ・レオンの「オンリー・バイ・ ザ・ナイト」、日本では加藤ミリヤ「Ring」など。

映画分野の業績概要音楽分野の業績概要

 金融ビジネスでは前年比100.7%増の2,021億円、営業利益328億円。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、売上高が前年比42%減の16億1,900万ユーロ、純利益はマイナス1億6,500万ユーロ。今期におけるソニーの持分法による投資損失は109億円。

 


■ 「Samsungに商品力で負けた」。春モデル前倒しで対抗

 大根田伸行 代表執行役 副社長 CFOは、今後の年末商戦について「決して楽観していない。昨年は上回るだろうが、価格下落も厳しい。慎重に見ざるを得ない」と言及。具体的な施策としては「春商戦モデルをどこまで前倒しできるか。テレビはSamsungのLEDバックライト搭載テレビなどにやられまして、我々も反省している。今期中に対抗モデルを出さなければいけない」と語った。

 テレビやゲームの黒字化については、「テレビ、ゲームとも来年度は黒字化したい。11月の経営方針説明会でもう少しを来期以降のビジネスを詳しく説明したいと思っている。いずれにしてもテレビ、ゲームとも早期の黒字化を目指す」とした。

 また、日本円換算で約3,000億円の営業利益というSamsungの決算発表との比較においては、「詳しくは11月の経営方針説明会で説明するが、Samsungの強みの一つはパネルを持っていること。第8世代など最新のラインではなく、昔のラインは償却が進んでおり、それらを有利に使えている。これはグループとして有利なところでしょう。あとはウォン安で、30%ぐらいドルに対して弱くなっている、というのも彼らにとって有利な点」と言及。

 大根田CFOは続けて、「ただ基本的に負けたのは『商品力』」と明言した。「これは認めざるを得ない。『マーケティング力』といってもいいかもしれないが、LEDバックライトを使った液晶テレビは技術力はわれわれのほうが早かったし、持っています。ただ、ソニーはこれをハイエンドなモデルに適用したが、Samsungは量販帯に広げて打ち出してきた。この辺の戦略で差をつけられた。あとはオペレーション、サプライチェーンなど学ぶところはあるだろうが、まずは商品力で次の春モデルで追いつこうというのが、まずやらなければいけないことだ。その先の3D、次のデバイスまでに何とか差を縮めていきたい」とSamsungとの差を分析した。

 また、ソニーが2004年に参入したものの2007年に撤退したe-bookリーダーについても、「欧米では最近うまくいっているが、日本では携帯で文字を読む文化が強いとか、出版業界の違いなどがあるので、e-bookのアベイラビリティのタイミングや版権の問題があり、アメリカほどのスピードでは発展しなかった。ただ、周りがe-book化していけば、日本でもまた再上陸というのはあるだろう。タイミングと導入場所という点で失敗があった」と言及した。

 単価下落については、「ほとんどのカテゴリで続くだろう。今期の初めは20%の下落で落ち着くとしていたが、やはり24~25%になってしまった。来季も同じような傾向で、横ばいにはならないだろう。また、機種にもよるが低価格化の傾向が強い。ハイエンドというよりローエンドが増えて、特にPCやカムコーダで安い価格帯のものが増えてきており、全体の単価下落を加速させている。しばらくは下落傾向は続く」とした。下半期の前提為替レートは、1米ドルが90円前後、1ユーロが130円前後。


(2009年 10月 30日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]