ソニー、第1四半期は営業損失329億円も“想定以上”

-BRAVIAは売上減も損益改善。ゲームは不振


7月30日発表


 ソニーは30日、2009年度第1四半期業績を発表した。売上高は、前年比19.2%減の1兆5,999億円。営業損益は前年の734億円黒字から、マイナス257億円へと赤字転落。税引前損益は前年の629億円からマイナス329億円に、純損益は前年の350億円からマイナス371億円の赤字となった。

2009年度第1四半期の業績

 世界的な景気後退や円高により、営業損失を計上しているが、「5月に想定した数字よりかなりいい結果(大根田伸行 代表執行役 副社長 CFO)」とする。構造改革効果によるコスト削減が予定を上回って進捗したことなどから、持ち分法による投資損益(257億円のマイナス)や構造改革費用の影響を除いて調整した場合、今期の営業利益は233億円となる、としている。

 なお、ソニーは2009年4月1日の機構改革に伴い、業績報告におけるビジネス別セグメント区分を変更。従来、エレクトロニクス分野およびゲーム分野に含まれていた事業を再構成し、コンスーマプロダクツ&デバイス(CPD)分野と、ネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野、 B2B&ディスク製造分野を新設した。また、音楽分野も新設した。


大根田伸行 代表執行役 副社長 CFOセグメント変更について

 


■ BRAVIAは売上減も収益改善。シャープとの液晶合弁も正式契約

CPD分野の業績

 CPD分野には、テレビやデジタルイメージング、オーディオ・ビデオ、半導体などが含まれている。CPDの売上高は前年比27.3%減の7,734億円で、営業損失は20億円(前年同期は営業利益361億円)。

 円高や事業環境悪化、価格競争激化などにより、減収となった。特に液晶テレビの「BRAVIA」や、デジタルカメラ「サイバーショット」、ビデオカメラ「ハンディカム」などの製品が減収となったという。損益が悪化した製品はビデオカメラ、イメージセンサー、コンパクトデジタルカメラ。テレビ事業は、コスト削減により損益は改善している。

 同分野の製品別売上台数は、テレビが320万台、ビデオカメラが140万台、コンパクトデジタルカメラが500万台。

 テレビ事業は、台数こそ前年同期比で+3%、10万台増の320万台と増加傾向なものの、単価下落や為替の影響で、売上高は24%減少の2,437億円となった。ただし、部材コスト削減や固定費の削減により、損益は前年比で110億円改善し、80億円の損失となっている。

CPDの営業利益増減要因O

 なお、「エコポイント」施策の効果については、「日本のマーケットについては、液晶テレビは想定より上ブレしている。それなりの効果があったと思っている(大根田伸行 代表執行役 副社長 CFO)」とした。

 デジタルカメラとデジタルビデオカメラは、販売減に加え、為替変動、単価下落などで、売上が縮小。ビデオカメラでは、「HDへの移行は順調だが北米以外での減少が響いた(神戸司郎 広報センター長)」という。

 主要エレクトロニクス製品の2009年度売上見通しは、液晶テレビが1,500万台、ビデオカメラが530万台、コンパクトデジタルカメラが2,000万台、Blu-rayレコーダが70万台、BDプレーヤーが350万台、DVDプレーヤー900万台、PCが620万台と5月発表の見通しから変更なし。ただし、デジタルミュージックプレーヤーのみ40万台プラスの670万台に上方修正された。

 また、シャープとの大型液晶パネル/モジュールの生産/販売事業における合弁契約締結も発表。合弁会社のシャープディスプレイプロダクト(SDP)の12月29日時点での出資比率はソニー7.04%、シャープ92.96%。その後もソニーは、2011年4月までSDPへ段階的な追加出資を実施。最終的な出資比率をソニー34%、シャープ66%にする予定。

 大根田副社長は、「基本的に、ソニーのテレビ販売の伸びにあわせて出資し、最終的に34%まで持っていく」と説明。出資の意義については、「この先もテレビ市場は、年率10~12%は伸びていくと想定しており、S-LCD以外の柱は安定供給につながるとみている。(S-LCDとSDPの)2つとも大事な供給先である」と語った。

 なお、サムスンとの液晶製造合弁会社S-LCDに関する持ち分法による投資損益は、前年同期比44億円悪化し、18億円の損失となっている。

 


■ PSP/PS3とも不調でゲームの損失は340億円に

NPS分野の業績

 ゲームやパソコン「VAIO」、ネットワーク対応ウォークマンなどが含まれるNPS分野は、売上高が前年比37.4%減の2,468億円で、営業損失が397億円(前年同期は46億円の利益)。「デジタルミュージックプレーヤーが増収だが、ゲーム、VAIOの売上が減少した(神戸広報センター長)」とする。

 ゲームの売上高は、前年同期比48%減の1,110億円。PSPやPLAYSTATION 3(PS3)のソフトウェア、ハードウェアともに減少、為替の影響も大きいという。ゲーム事業の損益は前年比で400億円悪化し、340億円の赤字になった。

 売上台数は、PS3が110万台(前年同期160万台)、PSPは130万台(同370万台)となった。前年はPSPでビックタイトルがあり、今期は大きく落ち込んだという。ただし、「第2四半期以降に強力なタイトルを予定している。年末年始に向けてはずみをつけて、通期見通しの達成を目指す(神戸広報センター長)」とした。

 2009年度の売上見通しは、PS3が1,300万台、PSPが1,500万台、PS2が500万台。PLAYSTATION Networkのアカウント数は2,600万を超えたという。VAIOは、高価格帯市場縮小や低価格化などで売上が減少し、収益悪化した。

 今期のゲーム事業の不調については、「昨年はかなり大きなソフトタイトルがあったが、今年は時期的には秋以降になる。今はソフトの牽引がなく、それに引きずられている(大根田副社長)」とした。

 なお、「PSP go」発表による買い控えについては、「PSP goが原因で販売が落ちたとは思わない。PSPと併売し、お客さんにどちらかを選んでいただくというもの(大根田副社長)」と説明。PS3の値下げについては、「ノーコメント」とした。

 


■ 想定以上の四半期決算も通期予測は修正せず。ソニエリへの支援も

 放送/業務用機器やディスク製造など、B2B&ディスク製造分野の売上高は、前年同期比28.4%減少の991億円。営業損失は124億円。世界的景気後退による放送/業務機器の売り上げ減とともに、ディスク製造事業において、ゲーム向け販売数量が減少したことが要因としている。

 映画分野では、売上高が前年比6.5%増の1,700億円、営業利益は18億円で、前年の83億円の損失から黒字化した。映画では「ターミネーター4」や「天使と悪魔」などが収益貢献した。

 音楽分野は売上高1,088億円、営業利益54億円。ボブ・ディラン の「トゥゲザー・スルー・ライフ」、Dave Matthews Bandの「Big Whiskey and the GrooGrux King」などが売上に貢献したという。金融分野は売上高が前年比24.3%増の2,276億円、営業利益が57.7%増の482億円。

映画分野の業績音楽分野の業績
ソニー・エリクソンの業績

 持ち分法適用子会社の、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、売上高が前年比で40%減少の16億8,400万ユーロ、純損失が2億1,900万ユーロ。ソニーの持ち分法による投資損失として145億円を計上した。

 業績が悪化しているソニー・エリクソンへの財務支援について、大根田副社長は「何らかの金融支援は必要だろう。出資か貸付か、第三者の銀行からローンするのか。形としてどうするかは、エリクソンと相談している。必要な資金については、両親会社で支援していくスタンスは変わらない」と言及。時期についても、「今期中にはある程度の資金を調達しなければいけないだろうと思っている」と語った。


2009年度の通期業績予測

 2009年度の通期業績予想については、5月14日発表から変更はなく、売上高が7兆3,000億円、営業損失1,100億円、税引前損失1,400億円、純損失1,200億円を想定。

 第1四半期の業績は、“CPD分野の業績が想定を上回った”、“為替が想定に比べ円安になった”、“日本の株式市場が上昇した”などの影響から、「5月の想定から1,000億円程度改善した(大根田副社長)」というが、上方修正は行なわないという。

 その理由については、「テレビやデジタルカメラは、比較的前期末の在庫が少なかった。セルインの段階では、予想以上の値下げはしないで済んでいるので、想定以上にいい形になっているが、今後は続かないだろう。また、液晶パネルの調達コストも、第1四半期は安く手に入れられたが、32型や40型は既に上がり始めている。それ以上にわからないのは市況の変化。そういう観点から、慎重に見ざるを得ない」とした。

  第2四半期以降の前提為替レートは、1米ドルが93円前後、1ユーロが130円前後(5月時点の前提レートは1ドル95円前後、1ユーロ125円前後)。


(2009年 7月 30日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]