LoiLo、子供にも使いやすい教育向け動画編集ソフト

-NHKが監修した「ロイロ エデュケーション」


2月22日発売

標準価格:「パッケージ版」14,700円
       「アカデミック版」9,870円
       「41台ライセンス」262,500円


 LoiLoは、教育機関向けの動画編集ソフト「ロイロ エデュケーション」を2月22日より発売。2月9日より予約を受け付ける。価格は下表の通りで、直販サイトで販売されるほか、人材・ICT事業などを手掛けるNTT Comチェオも販売を担当する。なお、店頭販売は予定されていない。9日より体験版の無料配布も開始している。対応OSはWindows XP/Vista/7(32bit/64bit対応)。

製品価格
ロイロ エデュケーション パッケージ版14,700円
ロイロ エデュケーション アカデミック版9,870円
ロイロ エデュケーション ライセンス版
(別途インストールCDが必要)
7,140円
ロイロ エデュケーション インストールCD2,100円
ロイロ エデュケーション 41台ライセンス
(インストールCD含む)
262,500円

 直感的なインターフェイスとGPUを使った高速処理を特徴とする同社の動画編集ソフトを、学校の授業などで使えるようにカスタマイズしたバージョン。NHK教育テレビの番組制作などを行なっているNHKエデュケーショナルが監修しており、2009年~2010年のNHKワークショップで使用され、改良を重ねて製品化された。

パッケージ製品の特徴取締役COOの杉山竜太郎氏(左)と、代表取締役でありメインプログラマーである弟の杉山浩二氏(右)がデモを行なった

 特徴は、色分けされた操作画面で子供にも分かりやすくしたことや、素材ファイルの一括管理などで教師の負担を軽減する工夫がなされていることなど。授業以外にも、教師が学校行事の映像やプレゼンテーション資料などを作成するといった用途も想定している。

 操作画面上の動画/静止画サムネイルや音楽ファイルをタイムラインにドラッグ&ドロップして並べることで編集が可能。素材の選択画面の背景が、動画はブルー、静止画はイエロー、音楽はピンクと色分けされており、タイムラインの各トラックも同系色にしたことで、素材を入れる場所を分かりやすくしている。

 複数のレイヤーを使うときは、上段に置いたファイルが上のレイヤーで表示されるため、どの映像や静止画を表示するかが分かりやすくなっている。テキスト/スタンプの貼り付けや、手書きなどの追加も可能。明るさ/色の変更や、ぼかし、モノクロ、モザイクといったエフェクトも用意している。

 クリップやテキストなどを重ねると自動でプレビュー再生が行なわれるため、結果を確認するという手間を省いた。また、クリップをマウスオーバーするとプレビューする機能も備える。そのほか、Windows 7(Home Premium以上)のマルチタッチ操作にも対応し、タッチパネル対応ディスプレイで操作できる。

 操作画面はすべてひらがな/カタカナで表記。また、操作手順を案内するチュートリアルも用意し、操作を5分で覚えられるとしている。

素材選択画面タイムライン表示も色分けされている再生画面。早送りなどのボタンも色分けされており、教師が指示しやすい
タッチ操作にも対応するスタンプや、手書き文字などのエフェクトも用意している

GPU支援による高速処理もアピール

 学校向けのため、ハイスペックでないPCでも動作するという点も特徴。SD動画の場合、CPUはPentium4 2GHz以上を推奨するが、Atom 1.6GHz以上でも動作するとしている。HD動画の場合はCore2 Duo 2GHz以上。メモリは2GB以上。AVCHDやHDV/DVのほか、デジカメや携帯電話などで撮影したファイルの入力にも対応する。

 GPU支援による高速処理に対応、HD動画では、H.264動画再生支援機能の付いたNVIDIA Geforce 8000シリーズ以降(8800GTX、8300を除く)や、ATI RadeonHD2000シリーズ以降(2900を除く)、Intel G45以降。SD動画の場合、PixelShader2.0以上に対応したビデオカードに対応する。

 そのほか、子供たちが使用するPCに対し、作品の長さや解像度、保存フォルダなどを先生が一括して制御できる集中管理ツールを用意。限られた授業の時間で、目的を持って作業しやすいという。

 この管理ツールでは、タイムラインの長さを15秒や30秒といったCMサイズや、1/3/5分で指定可能。なお、「制限なし」の設定もできる。解像度は、640×480/640×360/1,280×720/1,920×1,080ドットから選択できる。動画に使用する素材は、教師用のPCにあるフォルダから、指定したフォルダのみを子供のPCから閲覧させるように設定可能。これらの設定はXMLファイルで保存し、子供側のPCでそのXMLを読み込むことで反映される。

 また、「ファイル名をつけて保存」を自動で行なうため、ログイン時に自分の名前を入力するという方法を採用。子供の名前がそのまま保存ファイル名となる。同姓同名の子供がいる場合にも、自動でファイルに連番がつけられ、上書きを防ぐという。

 そのほか、教師向けの機能として、PowerPointのファイルをロイロ エデュケーションにドラッグ&ドロップすると、自動で各スライドをPNG画像に変換され、プレゼンテーション動画を簡単に作成できるという。また、NHKが無償公開している「NHKクリエイティブ・ライブラリー」でビデオクリップや音楽などの素材をダウンロードできるブラウザも用意している。

教師用の「集中管理ツール」で、タイムラインの長さや解像度などを一括して指定できる「NHKクリエイティブ・ライブラリー」から動画クリップなどをダウンロード可能

 同ソフトのみでDVDライティングは行なえないが、WindowsムービーメーカーでのDVD作成を想定したMPEG-2ファイルでの書き出しが可能。そのほか、携帯電話(3gp、3g2)や、PSP、iPod、iPhone、AppleTV、PS3(mp4)向けのファイル出力や、 カメラ用として、AVCHD(MTS)、HDV(M2T)、DV(AVI)の各形式の出力に対応する。なお、コンシューマ向けのSuper LoiLoScopeなどとは異なり、YouTubeやニコニコ動画へのアップロード機能は備えていない。

 入力対応ファイルは、動画がMP4、MPEG、WMV、M2TS、MTS、M2T、TS、MOD、TOD、MOV(H.264のみ)、AVI、FLVなど。静止画がJPEG、PNG、GIF、BMP、TIFF、アニメーションGIF、TGA、音声はWAV、MP3、AAC(m4a)、WMA。出力形式は、動画がWMV、MP4、MPEG-2、F4V、3GP、AVI。静止画がJPEG、PNG。

書き出し用のファイル形式選択画面DVDのほか、iPhoneやPSPなど各種デバイス向けのファイル書き出しも可能


■ 「子供が想像力で遊び出す動画編集ソフト」

 「ロイロ エデュケーション」を監修したNHKエデュケーショナルは、「おかあさんといっしょ」や、「高校講座」、「きょうの料理」、「すイエんサー」など、教育テレビの番組を、NHKの委託により制作するNHK子会社。前述の「NHKクリエイティブ・ライブラリー」は、同社がNHKから委託を受けている事業で、NHKが権利を持つ短時間の動画クリップを2009年10月から一般公開している。こうした活動のPRを兼ねて行なっているワークショップにおいて、LoiLoのソフトが採用され、改良を重ねて今回の製品が生まれたという。

ロイロ取締役COOの杉山竜太郎氏

 こうした経緯から、ロイロの杉山竜太郎氏は、「最初から教育市場への参入を意識して開発した製品ではなかった」と話す。しかし、ワークショップで子供たちが作った映像を見て、「大人が作るよりいいものができた。(テレビなどで)受け身に慣れた子供たちに対し、自分の思いを発信する表現力をつけてもらうことができるんじゃないか」と考えるようになったという。

 また、「先生方でも、『子供たちが発想して表現する力を育てたい』という声は多く、こうした話を聞いていくうちに、必要なソフトだと感じた」とした。

 実際に複数の学校での活用も始められており、小学生が修学旅行のビデオを使って観光地のCM風の映像を作るという授業や、中学生の卒業ビデオアルバム制作などに使われた。子供たちが触ると、大人より操作の飲み込みが早いということもあり、分からないことを子供同士で教え合う姿も見られたという。こういったことから、杉山氏は「子供が想像力で遊び出す動画編集ソフト」としている。

 だが、学校でビデオ動画編集を行なうという教育は、先進的な教師を除いては行なわれていないのが実情。これに対し杉山氏は「ほとんどの学校にはデジカメがあり、修学旅行や行事で使われている。これまでは、(LoiLoのように)感覚的に使えるツールが無かったので、撮り貯めた映像は先生がDVDにするなどして配っていたが、それを子供たちがまとめられるようになる」と今後の普及へ意欲を見せた。



(2010年 2月 9日)

[AV Watch編集部 中林暁]