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Blu-ray版「風の谷のナウシカ」は7月14日発売

−7,140円。鈴木プロデューサーのコメントも


BD版ジャケット
(C)1984 二馬力・GH
※制作/トップクラフト

7月14日発売

標準価格:7,140円

 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンは、アニメ「風の谷のナウシカ」Blu-ray版の発売日と価格を発表した。発売日は7月14日、価格は7,140円。なお、映像特典や封入特典、音声仕様などの詳細は後日明らかにされる予定。

 本編BDのみ収録で、片面2層ディスクに約116分の本編を収録。フォーマットはMPEG-4 AVCを採用。ケースは特殊パッケージ仕様になるという。

タイトル 仕様 音声 品番 価格
風の谷のナウシカ 片面2層
本編約116分
MPEG-4 AVC
VWBS-1110 7,140円

※BD版収録の映像とは異なります
(C)1984 二馬力・GH ※制作/トップクラフト
 「風の谷のナウシカ」のBD化は、2月19日に日本テレビ系列「金曜ロードショー」で放送された「ナウシカ」の最後で発表され、その際は「2010年の夏BD化」とアナウンスされていた。

 なお、BD化にあたり、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから「『ナウシカ』は、まだ終わっていない」と題した、BD化への経緯などを含めた文章が寄せられている。以下に全文を掲載する。


「ナウシカ」は、まだ終わっていない
スタジオジブリ 鈴木敏夫プロデューサー
 「ナウシカ」をスクリーンで見た。26年ぶりの再会だ。そばには、宮さん(宮崎駿)がいた。試写室が暗くなると、緊張した。手に力が入り、汗ばんだ。そして、「ナウシカ」が始まった。いつも、映画を作り終わると、ぼくらは二度と見ないし、また、見たくない。でないと、次に行けない。しかし、今回は特別の事情があった。

 ディズニーから次のBDタイトルを決めて欲しいという要望が出たのは、「ポニョ」のBDの打ち上げの日で、去年の暮のことだった。「ポニョ」の次にどの作品をBDにするのか。それまで何も考えていなかったが、ぼくの答えは即答だった。「ナウシカ」にしませんか。その場に同席したジブリとディズニーの関係者の表情が凍った。みんなの考えていた案は「ラピュタ」で、「ナウシカ」は、BD化の“最後の作品”になると勝手に考えていたようだ。そして、そう答えると同時に、ぼくにはもうひとつの考えが浮かんでいた。

 「ナウシカ」の公開は1984年3月。当時の日本映画は実写も含めて、そのほとんどがネガから直接、プリントを焼いた。現在は、別のネガを作って焼くことが多いが、当時は、それが当たり前だった。その数、およそ100本。それだけ焼くと、公開時のモノとは別物の、特に色彩がまるで違うプリントが出来上がる。それを、いつの日か、公開時の綺麗なネガに復元してみたい。それは「ナウシカ」に関わったぼくとしては、長年の宿題だった。

 その日を境に、撮影部の奥井(敦)さんを中心に、どういう方針で「ナウシカ」の原板を作るのか。議論が始まった。しかし、奥井さんは、「ナウシカ」の制作には直接、関わっていない。何を基準に原板を作るのか。推測は出来るが肝心なところが分からない。なにしろ、デジタル技術は、何でもやってのける。中古のものを新品に変えるのだって朝飯前だ。そこで、出た結論は、監督である宮さんに決めてもらう、それしか無い。宮さんが会議に参加した。宮さんの意見は、単純明快だった。

 仕事が終わって帰宅すると、宮さんは、ディズニー・チャンネルをよく見る。そこで、放映されているのは、デジタル処理で“お色直し”した昔の作品群だった。冒涜ですよ。あれは。今回の話が持ち上がる前から、宮さんは、デジタル処理に関して、否定的な意見を吐いていた。過去の名作が、デジタル処理を施すことで、色にぎらつきのある、品のない作品になってしまっている。ああだったはずがない。あれは、作った人に対する冒涜ですよ。年数が経てば、作品が古ぼけて見えるのは当たり前。ぼくにしても、そうやって過去の名作を見てきた。それをいくら技術の進歩があったからといって、新品にしてしまう権利がだれにあるのか。それが宮さんの意見だった。

 それを整理すると、こうだった。基本は、公開時のものを尊重して欲しい。それ以上には綺麗にしない。プリントを焼く過程でついた傷は取る。色パカ(色の間違い)は、そのままにする等々。

 奥井さんは、宮さんの意見を尊重し、二カ月掛けて、忠実にデータ化に勤しんだ。フィルムの一コマ一コマをスキャニングして一コマごとにデータ化するという気が遠くなる作業だ。

 こうして、3月1日(月)、試写の日がやって来た。

 当時を知るスタッフは、ジブリにもうほとんどいない。見るのをいやがった宮さんをぼくが説得した。見るのは、本当に限られたスタッフだった。10分前に、試写室へ行くと、すでに宮さんが待ち構えていた。じつは、2〜3日前から、宮さんが、そわそわして落ち着きが無いことをぼくは知っていた。「ナウシカ」との再会を待つ宮さんは、明らかに興奮していた。

 上映が終わった。会議室にスタッフが集まり、宮さんの感想を待った。宮さんは、やっと重い口を開いた。古ぼけて見えたと、まず、感想を述べた。そして、こう話したのが印象的だった。鈴木さん、技術的に、ぼくらは、随分と遠くまで来てしまったんだね。

 話し合いの結果、この映像を基本としながら、少しだけ手直しすることになった。宮さんの注文は一つだった。必要な箇所に緑を少し増やして欲しい。

 一日経って、奥井さんが、僕の部屋にやって来た。宮崎さん、泣いていましたよね。あれは……。ぼくは、こう答えた。「ナウシカ」は、まだ終わっていない。ぼくも宮さんも、カットごとに、そのときに起きた出来事をすべて覚えている。そりゃあ、後悔もあるし、これでよかったということも含めて。


(2010年 3月 25日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎]