日立、超解像搭載3Dテレビを2010年度中に発売

-独自方式採用のLED液晶テレビを今秋発売


HITACHI IR Day

6月9日開催


 日立製作所は9日、「HITACHI IR Day」を開催し、同社の事業部門ごとの事業戦略について発表した。午前9時30分から午後5時30分までの一日をかけて、報道関係者に証券アナリストなどを対象に実施したもので、同社がこうした形で事業説明を行なうのは初めてのこと。

 そのなかで、コンシューマ事業に関しては、日立製作所コンシューマ業務本部長兼日立コンシューマエレクトロニクス社長の渡邊修徳氏と、日立アプライアンスの石津尚澄社長が説明。渡邊氏は、2010年度内に3Dテレビを発売する計画などを明らかにした。

 2012年度のコンシューマ事業の経営目標は、売上高が9,300億円、海外売上高比率が50%、営業利益率が2.3%。映像・コンポーネントが3,180億円、薄型テレビが620億円、白物家電・環境新分野が2,500億円、空調が3,000億円とした。

 薄型テレビ事業に関しては、「安定的な黒字の確保を実現する」(渡邊氏)とし、国内事業に関しては、国内に開発リソースを集中させるとともに、調達品の活用によるラインアップの拡大と固定費削減に取り組むほか、海外事業は再編し、自社生産から調達化の促進、販路の重点化を図る。

 薄型テレビの売上高は、2009年度を100とした場合に、2012年度には55にまで引き下げるものの黒字化を優先する。

コンシューマ事業に関しては、日立製作所コンシューマ業務本部長兼日立コンシューマエレクトロニクス社長の渡邊修徳氏(左)と、日立アプライアンスの石津尚澄社長(右)が説明した

 これまで同社では、2009年度にプラズマパネルの自社生産から撤退し、外部調達にしたほか、欧米向けのテレビ自社製品も外部調達へシフト。テレビの生産については、チェコ、メキシコの拠点を閉鎖したほか、中国の拠点における液晶プロジェクタの世界生産拠点化、日立プラズマディスプレイズの宮崎工場を、昭和シェル石油の100%出資子会社のソーラーフロンティアに売却するなどの拠点の再編を実施。また、今後は、中国向けのテレビの自社生産を中止、調達の方向で検討を開始している。

 これにより、薄型テレビの海外売上高指数は、2007年度を100とした場合、2009年度実績は26に減少。一方、国内売上高は113へと拡大している。

 同社では国内市場においては、外部からの調達を含めて、大型録画機能なしモデルや、小型録画有りモデルを追加することで、薄型テレビの総需要における日立製品のカバー率を2009年の38%から、2012年には98%まで高めるほか、市場シェアに関しても、2009年の6.0%から、2010年度には6.7%とし、これを、2012年には7.5%にまで高めるとした。

 なお、2009年度の国内薄型テレビ市場は1,590万台、2010年度は1,600万台の規模と想定しているが、2012年度は地デジ完全移行後の影響もあり、700万台規模に減少するとみている。

 また、重点開発項目として、画質、省エネ、ネット対応、録画対応の観点から、それぞれ「省エネおよび高画質の徹底追及」、「IPホームネットワーク」、「使い勝手の向上」を挙げた。

 省エネおよび高画質の徹底追及では、超解像技術、高画質3D技術、新方式LEDバックライト液晶に取り組むほか、「IPホームネットワーク」、「使い勝手の向上」では、Wooonet+DLNAの提案、よそ見検出やジェスチャーモーションによる高度ユーザーインターフェイス、HDD+iVDRの提案を加速する。

 3Dテレビに関しては、超解像技術を活用した製品として、2010年度中に発売する計画であるほか、独自の新方式を採用したLEDバックライト液晶テレビは、今年秋をめどに製品化する。なお、技術的な詳細については触れなかった。

 さらに、薄型テレビの省エネ、環境技術を応用することで、ホームネットワークによる機器の接続、データセキュリティ管理、機器の省電力化などのほか、電力制御および情報ネットワークによるシステム構築、知識化情報処理への展開、エネルギーマネジメント、LEDの強化などに展開し、環境配慮型生活インフラ事業にも展開を図るという。

 一方で、映像・コンポーネント事業に関しては、日立コンシューマエレクトロニクスにおける事業の軸と位置づけ、2011年度には、液晶プロジェクタではワールドワイドで16%のシェアを獲得し、世界ナンバーワンを目指すほか、光ストレージ事業においては、2010年度の世界シェア35%を獲得して、グローバルシェア1位の維持と収益拡大に取り組むとした。

 液晶プロジェクタは、高機能機では超短距離投写、軽量化、ネットワークといった日立が得意する技術を生かすことで、2012年度までに年平均成長率70%増を計画するが、普及機については、低価格モデルの開発と販路拡大を進めるものの年平均成長率は7%減とし、高機能機による成長戦略とする。

 日立コンシューマエレクトロニクスは、2010年度に黒字化させ、2012年度には売上高3,800億円、営業利益率1.8%を目指す。

 渡邊氏は、コンシューマ事業の経営基本戦略として、「薄型テレビの安定的黒字化の実現」のほか、「映像技術から創生した映像・コンポーネント事業による収益拡大」、「白物家電の海外事業拡大、環境新分野の拡大」、「空調事業におけるグローバル事業のさらなる拡大」を掲げた。

 また、日立アプライアンスの石津尚澄社長は、白物家電事業、空調事業に関しては、「新たな成長に向けた戦略加速の時期」と位置づけ、「LEDおよび太陽光発電による環境新分野に向けた取り組みの加速」、「国内に次ぐ、第2、第3の海外家電マーケットの開拓」、「グローバル空調事業のさらなる拡大」に取り組む姿勢を示した。


(2010年 6月 10日)

[Reported by 大河原克行]