ビクター、大口径ウッドコーン採用プレミアムコンポ

-「EX-A250」。バイアンプ駆動でDVDオーディオ対応


直販限定プレミアムモデル「EX-A250」

 日本ビクターは、ウッドコーンユニットを採用したオーディオシステムの直販限定プレミアムモデル「EX-A250」を10月下旬に発売する。価格はオープンプライス。ビクターダイレクトの限定商品となり、直販価格は199,800円。単品でも販売を行なう。

 スピーカーの「SX-WD250」、プリメインアンプ「RX-A250」、DVDオーディオ/ビデオプレーヤー「XV-A250」で構成するシステム。単品価格はスピーカーがペアで105,000円、プリメインが49,800円、プレーヤーが45,000円。プレーヤーにはUSB端子を備え、圧縮音楽ファイルの再生にも対応する。


左からプリメイン「RX-A250」、DVDオーディオ/ビデオプレーヤー「XV-A250」プリメインアンプ。シャンパンゴールドのカラーを採用しているDVDビデオ/オーディオプレーヤー

 最大の特徴は、スピーカーに新開発の、大口径ウッドコーンユニットを採用した事。2ウェイ2スピーカーのブックシェルフで、ウーファに14.5cm径の大型ウッドコーンウーファを搭載している。木の振動板が奏でる響きを豊かに広げる事を目的に開発されたという。

木製シートからウッドコーンに成型する工程

 ビクターが木製シートを独自の工法で成形した、コーン型の振動板を採用しているのは、木の特性が“響きの良さ”に繋がる、自然な減衰特性を持ち、伝搬速度と内部損失のバランスがアルミやポリプロピレン、紙パルプよりも“振動板の理想”に近いと考えているため。

 また、木には上下方向に木目(繊維)が入っているため、振動板上の伝搬速度が木目方向には早く、直交する方向では遅いという性質もある。このため、振動板上で定在波が出にくく、共振ポイントも現れないといった利点がある一方、伝搬速度の遅い横方向の音の広がりが不足するという問題点もあった。

 そこで、振動板の裏にチェリー材で作った羽のような異方性振動板を装着。横方向の伝播速度を物理的に上げ、ワイドな空間表現を実現したという。同時に、横方向とのバランスを整え、強度も向上させるために、縦方向にも細身の異方性振動板を搭載している。


スピーカーの「SX-WD250」。2ウェイ2スピーカーのブックシェルフ14.5cm径のウッドコーンウーファを新たに搭載。ユニット取り付けネジを従来(A150)の4本から8本に増加させ、よし強固に固定していているツイータは2cm口径。こちらもウッドドーム型
横から見たところ右にあるのが従来のハイエンド「EX-A150」のスピーカーに搭載されていた11cm径ユニットウーファを裏から見たところ。十字に異方性振動板が装着されている。上下の方が左右よりも細いことに注目

 ほかにも、磁気回路のボールピースにメープルの木片吸音材を取り付け、振動板の背後の音を吸収。重厚な低域と共に解像度も向上させたという。

大口径ウッドコーンユニットを採用したスピーカーの「SX-WD250」
オプションでスピーカースタンド「LS-EXA25」も10月下旬に発売

 磁気回路にはアルミショートリングと銅キャップを採用し、磁気ひずみを低減。ダンパーのコルゲーション形状を不均等にし、リニアリティの改善も図っている。

 ツイータは2cm口径のウッドドーム型で、磁気回路にはネオジウム・マグネットを採用。天然素材のシルクエッジとドーム裏側のスプルース木片吸音材により、音の純度と広がりを高めている。

 エンクロージャはバスレフ。内部の底板部には、3段7個構成の竹響板を扇状に配置。繊維方向に沿って音を拡散する効果があるほか、スプルース材とチェリー材の響棒を複雑に配置することで、ウーファとツイータの音の繋がりや広がりを高め、重心の低い低音再生も実現するという。

 スピーカーはネットワークを搭載しておらず、バイアンプ駆動に対応し、組み合わせるプリメイン「RX-A250」もバイアンプに対応。独自のデジタルアンプ「DEUS(デウス)」を採用し、出力はウーファ用に40W×2ch(4Ω)、ツイータ用に30W×2ch(4Ω)を持っている。クロスオーバー周波数は5.6kHz。2chアンプモードとして動作する場合は40W×2ch(4Ω)となる。

 スピーカーのインピーダンスはツイータ/ウーファ共に4Ω。再生周波数帯域は50Hz~50kHz。出力音圧レベルは86dB/W・m。外形寸法は198×303×326mm(幅×奥行き×高さ)。重量は7.4kg。14番線スピーカーコード(3m)が4本付属する。なお、オプションでスピーカースタンド「LS-EXA25」も10月下旬に14,800円で発売する。別売のものだが、予約キャンペーンとして10月13日~28日までの期間中に「EX-A250」を予約すると「LS-EXA25」とニッパーの置物(6号犬)がセットでプレゼントされる。


磁気回路のボールピースにメープルの木片吸音材を取り付け、振動板の背後の音を吸収させている磁気回路にはアルミショートリングと銅キャップを用いて、磁気ひずみを低減ツイータにも木片吸音材を使っており、こちらはスプルース材
左が新しいSX-WD250のエンクロージャ。右が従来のハイエンド「EX-A150」のエンクロージャSX-WD250の内部。底部に3段7個構成の竹響板を扇状に配置しているこちらはEX-A150の底部。WD250の方が竹響板が3層構造になり、数も増えている事がわかる
エンクロージャが大型化した事で、ツイータとウーファの配置距離が広がったため、音の繋がりが悪化したという。そこで、内部に複雑に響棒を配置。音の繋がりを向上させているスピーカーターミナル。バイアンプ接続に対応するこれはウーファに搭載されているダンパー。内側から外側に向けて山谷の高さを大きく、あえて不均等にしたものを採用。これにより、リニアリティが向上するという


プリメインアンプ「RX-A250」

 アンプには、デジタル化や圧縮時に失われた音楽情報を再生成し、音質を改善するという独自の「K2テクノロジー」を、最適にチューニングして搭載。FM/AMチューナも内蔵する。さらに別売のiPod用ドッキングステーション「AC-RS5」(直販9,800円)を接続するための端子も装備する。なお、iPodとの接続はアナログ。

 音声入力端子はアナログステレオ(RCA)×2、アナログステレオ(ステレオミニ)×1、光デジタル×2。出力端子はアナログステレオ(RCA)×1、ステレオミニのヘッドフォン×1、サブウーファプリアウト×1。シンクロ端子も2系統備えている。消費電力は35W。外形寸法は282×289×96mm(幅×奥行き×高さ)。重量は3.6kg。リモコンが付属する。

 プレーヤーはDVDビデオやDVDオーディオ、音楽CD、DVD-R/RW、CD-R/RWなどの再生にも対応。MP3/WMA/WAVを記録したディスクの再生に対応するほか、JPEG静止画、MPEG-1/2の動画ファイル再生も可能。CPRMにも対応しており、デジタル放送を録画したDVDも再生できる。

 ドライブメカは筐体中央に配置。トレイには高剛性ハニカム構造リブを採用するほか、トレイ上面にはスエード塗装を施し、不要な振動を低減している。

 USB端子も備えており、USBメモリに保存したMP3/WMA/WAV/JPEG、MPEG-1/2の再生も可能。また、CDからUSBにMP3 128kbpsでの録音も行なえる。

 出力端子はHDMI、コンポジット、アナログ音声(RCA)を各1系統、光デジタル音声を2系統装備。シンクロ端子も2系統用意する。消費電力は11W。外形寸法は282×260×96mm(幅×奥行き×高さ)。重量は3kg。

 なお、プレーヤーとアンプに共通する特長として、筐体に、剛性を高めて振動を吸収するためのサイドウッドボードを搭載。厚さは15mmで、インテリア性にも寄与するという。

 さらに、不要な振動を抑えるためにボトムシャーシにアークベースを設置。インシュレータは3点支持タイプで、真鍮削り出しのものを使っている。



■ 音を聴いてみる

ビクタースタジオ内で試聴を行なった
 ウーファが大口径になり、エンクロージャも大型化した事から、従来の「EX-A150」と比べて真っ先に感じるのは中低域の厚みや量感の増加だ。アコースティックベースの独奏など、ウッドコーンならではの極めて解像度の高いサウンドのまま、芯のある低域がズシンを下まで伸びる。さらに、ベースの筐体で増幅された中域が押し寄せるような迫力も増した。

 小型ブックシェルフがバスレフで低域をなんとか稼いでいるという雰囲気はまったく無く、量感と解像度が両立しているため、14.5cm径よりもっと大きなウーファを搭載しているかのように錯覚してしまう。極めて質の良い中低域は、大型なフロアスピーカーのような“余裕”や“懐の深さ”を感じさせるもので、これまで小型が多く、どちらかというと中高域の美しさが印象に残るウッドコーンスピーカーの認識を改めさせてくれる。

 中高域のクリアさ、抜けの良さ、付帯音の少なさはウッドコーンならではのもので、トランジェントの良いサウンドに磨きがかかった。雑味の無さと、音場の見通しの良さはこれまでのウッドコーンシステムの中でも随一で、バイアンプ駆動も大きく寄与していると言えるだろう。


 なお、音決めにはビクタースタジオのエンジニアも協力したとのことで、クラシックやJAZZ、ポップスなど、各分野の音楽を手掛ける専門家が、自身が作り上げ、音を知り尽くしたソースを再生。その感想を、開発担当のホーム・エンタテインメント事業部 パーソナルAV統括部 技術部 開発グループ シニアエンジニアリングスペシャリストの今村智氏にフィードバックし、完成度に磨きをかけたという。

 ビクターエンタテインメントのソフト技術部長でビクタースタジオ長の高田英男氏によれば、エンジニアがスタジオに、自身が気に入っている機材を持ち込んで、音質やバランスなどの最終確認を行なう事が多く、その際にウッドコーンスピーカーを使用するエンジニアも多いという。

 高田氏も今回のEX-A250の音決めに参加しており、発表会では自身が録音したというピアノトリオの楽曲をEX-A250で再生するデモも実施。ピアノの左手やシンバルのハイハットなどを、小さく演奏する静かなシーンでも、音の動きが明確にわかる解像度の高さが印象的で、「録音時の感覚が蘇ってくるほどリアルなサウンド」(高田氏)という。

ホーム・エンタテインメント事業部 パーソナルAV統括部 国内営業部 営業グループ長の安富稔氏ホーム・エンタテインメント事業部 パーソナルAV統括部 技術部 開発グループ シニアエンジニアリングスペシャリストの今村智氏ビクターエンタテインメントのソフト技術部長でビクタースタジオ長の高田英男氏



(2010年 10月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]