ニコン、裸眼3Dフォトフレームを貸出す新ネットサービス

-写真3D変換などの「my Picturetown 3D」。1,995円/月


 ニコンは26日、裸眼3D対応のデジタルフォトフレームのレンタルと、3D動画/静止画コンテンツ配信、2D静止画の3D変換サービスなどを組み合わせた会員サービス「my Picturetown 3D」を発表。同日より申し込みを受け付け、12月上旬よりサービスを開始する。

 料金は月額1,995円(または年額会員費19,950円)で、2GBのストレージが利用可能。それ以上の容量を利用できるゴールドアカウント会員(20GBごとに350円/月)の料金プランも用意する。なお、フォトフレーム単体での販売は行なわない。

 利用可能なサービスは主に4種類で、3D対応デジタルフォトフレーム「NF-300i」の貸出しと、「my Picturetown」上での2D→3D静止画変換、「my Picturetown」上での3D静止画の表示/共有、3D動画/静止画コンテンツの配信。

レンタルされる裸眼3Dフォトフレーム「NF-300i」

 フォトフレーム「NF-300i」は7.2型で、レンチキュラ―方式の裸眼3D表示が可能。3D/2Dの表示解像度は800×600ドット。水平方向に2倍の密度の画素を配置し、2D表示時は2画素ずつ同じ画像を表示、3D時は左右の目に見せる画像を分けて表示することで、3Dでも解像度が減らないようにしている。輝度は400cd/m2。推奨する3D視認距離は約1m。再生対応フォーマットは動画がMPEG-4 AVC/H.264、静止画がJPEG/MPO、音楽がAAC/MP3。Ethernetと無線LAN(IEEE 802.11b/g)。4GBメモリを内蔵。USB端子も備えるが、基本的にはWebにアップロードした写真や、配信サービスからダウンロードした写真/動画を閲覧することを想定する。

 OSはAndroid 2.1を搭載。カレンダーや天気、RSSリーダーなどの機能を備えるほか、簡易Webブラウジングも可能となっている。なお、Flashの表示には対応しない。将来的には、SDKの配布などでユーザーが対応アプリを開発できる環境も用意する予定だという。

 本体にステレオスピーカーを内蔵。電源はACアダプタを使用する。外形寸法は約176×50×156㎜(幅×奥行き×高さ)、重量は約600g。リモコンが付属する。


トップ画面3D動画再生画面レンチキュラー方式の3D表示を採用する
天面の操作ボタン部側面端子部付属のリモコン

 静止画の2D→3D変換サービスは、ユーザーが撮影したJPEG静止画を「my Picturetown 3D」で申し込むことで、MPO形式の3D静止画に変換されるというもの。月3枚までの変換料金が月額利用料に含まれており、4枚目以降は1枚300円で変換を受け付ける。変換を依頼する静止画の解像度は1,920×1,080ドット以上を推奨。変換は2D静止画に疑似的に奥行きの値(Z値)を付加するもので、基本的に自動で行なうため、早ければ数分で完了するが、人の手での修正が必要だと判断された場合は数時間に及ぶ可能性もあるという。

 変換された3D静止画は「my Picturetown 3D」で他のユーザーと共有でき、「NF-300i」上で3D表示が可能。なお、解約した場合はフォトフレームを返還しなければならないが、アップロードされた静止画は残り、MPO形式の静止画ファイルとしてダウンロードも可能。なお、本体から動画/静止画をファイルとして取り出すことはできない。

 そのほか「my Picturetown 3D」では、「Nikon 3D Gallery」というサービスで、3D静止画や3Dショート動画の配信も行なう。配信される動画ファイルは720×480ドットのMPEG-4 AVC/H.264。コンテンツの数などの詳細は明らかにしていない。サービス開始から2011年2月末までの限定で、写真家集団「マグナム・フォト」のスペシャルコンテンツ「TOKYO」が期間限定で閲覧可能となる。

サービス概要と料金フォトフレームの主な特徴フォトフレームの仕様


■ ネットの活用で3Dコンテンツ普及へ

ニコン映像カンパニー プロジェクトリーダーの大槻正氏。ソニーでのAIBO開発などで知られる

 ニコンでは'07年より静止画共有の会員サイト「myPicturetown」を展開。2010年9月にサービスをリニューアルし、フォトムービー機能などの新サービスを追加。iPhoneや携帯電話、シャープAQUOSでも閲覧可能となっており、会員数は100万人を超えるという。

 ニコンの映像カンパニー プロジェクトリーダーの大槻正氏は、「myPicturetownのシステムを活用して、保存してある写真を3Dで何とか見られないかと研究を進めてきた。そこで、インターネットを活用して、写真を3Dに変換し、配信するビジネスが成り立つのでは、と考え、フォトフレームを開発。さらに、3D静止画などのコンテンツをインターネットで配信しようと考えた」と経緯を説明した。

 大槻氏は「なぜインターネットを活用して3D対応サービスを始めるかというと、現在、3Dコンテンツがあまり多く存在していないため。自分で撮影した静止画や動画は、3Dには変換できないのが実情」と指摘。Androidを採用したことについては「将来的に、いろんなアプリケーションがフォトフレームに搭載できる可能性を秘めている」とした。

 フォトフレームを単体で発売しない理由については「Androidを含め、拡張性のあるシステムを考えているため、インターネットにつなぐ環境が必要になる。myPicturetown会員であれば、“インターネットにつながらない”という問題が生じにくいと考えているため」と説明した。

「コンセプター」の坂井直樹氏も期待を寄せた

 引き続き、様々な企業のヒット製品に「コンセプター」として関わる坂井直樹氏がゲストとして登場。日産「Be-1」や、au design projectなど数多くの製品を手掛けた坂井氏は、フォトフレーム「NF-300i」の3D表示を見て、「これまでの3Dのように“飛び出す”のではなく、奥行きが感じられる」と評価。

 以前から3Dに関心があったという坂井氏は、「3Dなら、指で画面を汚さない“空中のUI”が実現できる。画面に触れずにチェスもできる。Eコマースの分野でも、3Dなら買うモチベーションが高まる」と将来性に高い期待を寄せている。3Dカメラを必要としない今回のサービスについては「使う側にとってはハードが少ない方がいい。多くのメーカーが採用しているAndroidなら、今後も新しいアプリが開発されていくだろう。SNSでは、Twitterだと140文字のテキストでしか伝えられないが、写真ならもっと多くを伝えられる。ニコンにはこれまでの技術があるので、今後、競争が起きても優位なプロダクツは生き残る」と述べた。



(2010年 10月 26日)

[AV Watch編集部 中林暁]