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株式会社ニコンは、ヘッドフォン一体型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「UP」(ユー・ピー)2モデルを10月15日に発売する。価格は8GBメモリを内蔵する「UP300x」が69,800円、4GBモデル「UP300」が59,800円。販売は専用サイト「UPSTORE」でのみ行なう。初回出荷は両モデル合わせて5,000台(UP300xが3,500台、UP300が1,500台)となっており、出荷時期は12月中旬を予定。
ステレオヘッドフォンと、片目で見る小型ディスプレイが一体となった製品で、動画/音楽再生プレーヤー機能とフラッシュメモリも内蔵。さらに無線LAN機能も搭載する。 両機種の主な違いはメモリ容量のほか、300xのみモーションセンサーを搭載する点。センサーをONにすると、頭を上下左右に動かすことで、再生/一時停止など基本操作がハンズフリーで行なえる。また、300xは別売リモコンにも対応する。さらに、別売ケーブル(1,890円)を追加することで外部AV入力が可能になる。 ディスプレイ部のアームは可動式で、映像を観るための「オーバーラップ・ポジション」、音楽のみを聴くためにアームを上部にセットする「ミュージック・ポジション」、音楽を中心に映像もサブで楽しむために、ディスプレイを目の位置よりもやや下にセットする「アシストビュー・ポジション」の3通りで視聴できる。 ヘッドフォンに前後は無く、アームを後ろに倒すことにより、左右どちらの目で視聴することも可能。なお、メガネをかけた状態でも視聴できるよう、ディスプレイ部がレンズに触れても傷つきにくい弾性素材を採用している。また、片目で視聴していると、反対の目で見ている外景に焦点が合うことがあるため、画面内で白線が動いて注意を向けやすくするするという「ワイパーボタン」も搭載。
ディスプレイは0.44型/640×480ドットの透過型LCOSを搭載。3m先で51型、1m先で17型相当という画面サイズで見える。新開発の密着複層型DOE(Differentive Optical Element:回折光学素子)レンズを採用。微小なノコギリ歯状の断面構造を持つという格子型の回折光学素子により色収差を抑えたほか、レンズ重量を約1/7に軽量化したという。表示画面は縦横サイズを1/2に変更することも可能で、アシストビュー・ポジションでも映像が欠けにくできるという。外光センサーにより、周囲の明るさに合わせた輝度で表示できる。 再生対応ファイルは動画がMPEG-1/2/4、WMV、SWF(Flash Player 7相当対応)で、音楽がMP3/WMA/AAC。静止画がJPEG。WM DRM10もサポートするが、WM以外のDRMには対応しない。
IEEE 802.11b/gの無線LAN機能を内蔵し、ウェブブラウザとしても利用可能。HTML 4.01をサポート、フレームやJavaScript、Flash Ver.7もサポートする。今後サービス開始予定の配信サイトから、PCを介さずにUPのみでストリーミング視聴することも可能となっている。同サービスでは、ユーザーが作った動画を投稿/視聴できるサイト「UPLAB@my Picturetown」も予定。なお、アップロードは事前にチェックが行なわれ、承認されたコンテンツのみ掲載されるという。 動画/音楽などの管理には付属ソフトの「UPLINK」を使用。専用に音楽/動画の配信サービスも開始する予定で、サイトから同ソフトにダウンロードしてUPで再生できるほか、手持ちのコンテンツをUPに転送する際にも利用できる。なお、動画などの変換機能は備えていない。配信サイトのコンテンツ提供元、コンテンツ数などは検討中としている。
ヘッドフォン部は密閉型で、ネオジウムマグネットの40mm径ユニットを搭載。再生周波数帯域は3Hz~25kHz。イヤーパッドには低反発ウレタンクッションを使用する。開発には「ヘッドフォンも作っているオーディオメーカーと協力した」としている。 電源は単3電池2本で、三洋のエネループを同梱。充電器も付属する。連続再生時間は動画が約120分、音楽が約270分(バックライト非点灯時)。電池を含む重量は約385g。ディスプレイ部のアームを固定する「アングルリミッター」(AL-UP1)や、エネループの充電器(NC-MDR02)などが付属する。 ■ “i”から“U”の時代へ
UPのネーミングの由来は、Universal Port、Ultimate Player、U(your) Partner、U(your) Pleasure、U(your) Powerなどの意味が込められており、「これまでに存在しなかった新ジャンル」として披露。 プレーヤー機能を備えたHMD製品自体はこれまで他社から発売されているが、従来製品との違いについて同社は「オールインワンで視聴が簡単、高画質/高音質で楽しめる、ネットワークサービスとリンクする」ことがブレークスルーであるとアピール。特に光学系に関しては「独自に培ってきた技術の粋を集めた」としている。
取締役兼専務執行役員 映像カンパニープレジデントの木村眞琴氏は、「これまでカメラで高品質、信頼が高いというイメージを維持してきたが、カメラがフィルムからデジタルに変わってきた中で、映像や写真を“どう仕上げ、人に見ていただくか、伝えるか”という役割が期待されている」とし、「ハードウェアだけでなく、撮影した後の楽しみを提供したい」と語る。「デジタルに変わっても、写真の持つ意味は人にとって変わりないもの。ネットを使ったサービスも進めながら、写真や映像をいかに楽しんでいただくか、ということが基本」とした。 同製品を「ニコン初の出力機器」と紹介した執行役員 映像カンパニー開発本部長の風見一之氏は、コアターゲットを“先進高感度層”の25~35歳男性とし「自己実現意欲や情報発信力が高い、協調性に優れる、努力家」といったキーワードを挙げる。従来製品の“自分だけで楽しむ”視聴スタイルから、動画投稿などネットワークサービスとの連携を実現することを指して「“i”の時代から“U”(you)の時代へ変化させていこうという想いがある」と述べた。 当初は国内で直販のみだが、ビジネスモデルを確立させた上で海外へも展開し、2013年度までにワールドワイドで300万台の売上を見込む。風見氏は「300万台は、はっきりした目標というよりは、こういった市場を形成したいという考え」とした。今後はコンテンツ配信についても利益を上げる事業に成長させるとしている。
( 2008年10月7日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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