Inter BEE 2010開幕。ソニーは'11年内に2眼3Dカメラ発売

-SHVカメラ、19型FEDマスモニ、1080/60pキャプチャなど


幕張メッセで開幕したInter BEE。今年は過去最多となる824社が出展している

 映像と音響、通信に関する国内最大の放送機器展「Inter BEE 2010」が17日、幕張メッセで開幕した。放送業界向けの展示会となっており、最新ビデオカメラやモニタ、映像配信システムなどが出展されている。会期は11月19日まで。



■ ソニーはEマウント「NXCAM」や、2眼3Dカムコーダなど展示

中央で、280型LEDディスプレイによる3D上映を行なっていたソニーブース

 ソニーは開幕の17日に、スーパー35mm相当の大型CMOSセンサーを搭載したEマウント採用の業務用AVCHDビデオカメラの開発を発表。「NXCAM」シリーズの新製品として2011年上期の商品化を目指しており、想定売価は60万円前後。ブースに試作機が展示されていた。

 デジタル一眼「NEX-5/3」やハンディカム「NEX-VG10」で採用されている「Eマウント」を採用。マウントアダプタ「LA-EA1」を介して、一眼レフデジタルカメラ「α」のAマウントレンズも装着できる。

 撮像素子は、8日に発表したデジタルシネマ用ビデオカメラ「PMW-F3」と同じ1.7型対角27.1mmの大型単板CMOSセンサーを採用。高画質/高感度で、映画フィルムと同様のボケ味を実現するという。記録フォーマットはAVCHDのほか、1080 60p/30p/24pなどのAVC/H.264記録モードを用意。ビットレートは未定。


Eマウント対応の「NXCAM」試作機スーパー35mm相当の大型CMOSを搭載主な仕様

 3D映像制作では、2011年中に2眼式の3Dカムコーダを発売予定であることを明らかにし、参考展示を行なった。同社はこれまで“マルチパーパスカメラ”「HDC-P1」を2台用いた3D撮影を提案してきたが、1台に2つのレンズを備えた3Dカムコーダにより、コンテンツ制作の機動性を高めるとしている。

 また、“マルチイメージプロセッサー”「MPE-200」用の2D/3D変換ソフトのバージョンアップを発表。12月末に提供予定としている。この変換ソフトは「MPE-200」にバンドルされており、撮影中だけでなく撮影後にも3D映像の左右のズレなどを補正できることが特徴。最新のVer.1.2では、新たに光軸や色の補正モードを採用している。

2011年中に発売予定の2眼3Dカメラを参考出展レンズ部インターフェイス部
マルチイメージプロセッサー「MPE-200」2D→3D変換ソフトがバージョンアップ変換前の2D映像(左)と変換後の3D映像(右)

 モニタでは、液晶「LUMA」シリーズにおいて、スリムベゼル採用の23型「LMD-2341W」を展示。近日発売としており、価格は41万7,900円。15型「LMD-1541W」(26万400円)と合わせて41Wシリーズとして展開する。

 HD-SDIやHDMIなど入力を備え、スタジオや中継車などでの利用を想定。IPSパネル搭載で、23型は1,920×1,080ドット、15型は1,280×720ドット。アルミニウムボディを採用し、約19㎜幅のスリムベゼルを採用。複数台並べる際にムダのない設置ができるという。

 そのほか、既発売の製品として、7.4型/960×540ドットの有機ELパネルを搭載したモニター「PVM-740」や、7.4型有機ELビューファインダ「HDVF-EL75」などを展示した。

スリムベゼルが特徴の液晶モニタ「LUMA」の41Wシリーズ7.4型有機ELビューファインダ「HDVF-EL75」7.4型/960×540ドットの有機ELパネルを搭載したモニター「PVM-740」(中央)を液晶(右)やCRT(左)と比較


■ パナソニックの4/3型ビデオカメラ「AG-AF105」、日立のスーパーハイビジョンカメラなど

 パナソニックは、2日に発表したマイクロフォーサーズマウントの業務用AVCHDビデオカメラ「AG-AF105」を出展。レンズシフトアダプタなどを装着したモデルなどで撮影できるコーナーを設けていた。

 「AG-AF105」は世界で初めて4/3型(フォーサーズ)MOSイメージセンサーを搭載した業務用のHDビデオカメラ。対応のデジタル一眼用レンズや、交換アダプタを介してプライムレンズなどのシネマ用レンズが利用できる。撮像素子は、デジタル一眼カメラ「DMC-GH2」と同世代の4/3型MOSで、総画素数は1,831万画素。12月発売で、価格は837,900円。

ステージ上で、152型プラズマ「TH-152UX1」や「103VX200」、「85VX200」での3D上映を行なっていたパナソニック「AG-AF105」に様々なレンズやアダプタを取り付けて撮影

 3D関連では、8月より発売した業務用のフルHD 3Dビデオカメラ「AG-3DA1」や、3Dカメラ映像のスイッチングにも対応したデジタルAVミキサー「AG-HMX100」などを出展。また、グループ会社のパナソニック映像が提供する、撮影や編集、オーサリングまでのサービスなどが紹介されていた。

3D対応のAG-3DA1(中段右)などカメラ製品群AVミキサー「AG-HMX100」パナソニック映像の3D映像制作ソリューション

 日立国際電気のブースでは、スーパーハイビジョン(SHV)カメラを参考出展。3,300万画素の撮像素子3枚を使い、R/G/Bの3原色すべてにおいてSHVのフル解像度で撮影できる点が特徴。NHK技研公開で展示されたものとほぼ同じだが、今回のモデルは、ケーブル1本で伝送する「光波長多重伝送装置」は備えておらず、HD-SDI(1.5Gbps)×72chで伝送している。

日立国際電気ブースで展示されたスーパーハイビジョンカメラ主な仕様4Kモニタに、映像の一部を表示していた

 KDDI研究所では、最大8Kの映像を高圧縮してネットワーク配信するための符号化技術をデモ。MPEG-4 AVC/H.264をベースとした独自の圧縮符号化により、60Gbpsという8K(7,680×4,320ドット/60fps)の映像を、70Mbpsへと大幅に圧縮。解像度に合わせて符号化処理の単位ブロックサイズを拡張しているほか、圧縮による画質劣化を復元するフィルタを導入している。

 会場では、8K映像をリアルタイムデコードして4Kプロジェクタ2台(画素ずらし)で投写。132型画面で表示していた。今回はソフトウェアのみでエンコード/デコードしているが、将来的にはハードウェアエンコードなども活用して50Mbps程度になるまで圧縮率を高め、コンシューマ向けの高画質動画配信サービスへの採用を目指しており、その過程としてパブリックビューイングなどでの利用も想定している。

8K映像のデコーダ部分。将来的にSTBサイズへの小型化を目指す4Kプロジェクタ2台をスタックして132型スクリーンに投写していた
そのほか、KDDI研究所では16日に発表した、映像の一部を拡大して再生するビデオストリーミング技術を発表。スポーツ中継などで、観たい部分を拡大して表示することが可能だというテレビ番組に対するツイートから、書き込んだユーザーの性別や属性、居住地などを類推して集計し、番組の評価などをデータベース化する技術も紹介している

 富士通のブースでは、販売中のMPEG-4 AVC/H.264リアルタイム映像伝送装置「IP-9500」をベースに、世界初という1080/60p対応の符号化装置を開発したことを紹介。この装置は、NHKと富士通研究所の共同研究により試作したスーパーハイビジョンの高効率符号化システムに用いられているという。

1080p対応のMPEG-4 AVC/H.264コーデックLSIスーパーハイビジョン映像の1/4を切り出して表示


■ FED搭載の19型マスモニ、60p対応キャプチャ「Monster XX」など

右が参考出品のFEDマスターモニター。左は既存のCRT

 池上通信機は、19.2型/FED(Field Emission Display/電界放出ディスプレイ)方式のマスターモニターを参考出展。2012年春の発表を予定しており、価格は100万円前後を想定する。

 解像度は1,280×720ドット。自発光による優れた応答速度を特徴とし、視野角に影響されない安定した黒や高いコントラストを実現する。CRTマスターモニターからの置き換えを想定しており、同社のCRT「HTM-1990R」(84万円)と並べて展示していた。


Monster XX

 エスケイネットは、1080/60p対応キャプチャカード「Monster XX」(ダブルエックス)をデモ。1080/60p対応AVCHDビデオカメラ「HDC-TM700」で撮影した映像を、Monster XXに60pで入力した画面と、従来モデルに60i入力した画面で比較。インターレースに見られるジャギーやボケが、Monster XXでは見られないことをアピールしている。

 Monster XXは12月下旬~1月の発売を目指しており、実売価格は7万円前後を想定する。1080/60p映像のエンコード形式については、マシン負荷などの面からMPEG-4 AVC/H.264ではなくMotion JPEGの採用が検討されている。ブースには、1080/30p対応モデル「Monster X3」も出展。この製品はHDMI専用のビデオキャプチャで、12月発売を予定。実売25,000円を想定している。

 いずれもコンシューマ向けの製品と位置付けられるが、Inter BEEで出展されているのは業務向けシステムとしても期待されているため。主な法人用途としては、内視鏡などの医療分野、顕微鏡などの研究開発分野、監視カメラなどセキュリティ分野といった様々な活用を提案。60pの滑らかな動画を活かして、スポーツを高速撮影するという利用も想定している。同社はSDKを提供することにより、Windows Embeddedを使った安価な映像システムを構築可能だという。

 両製品ともUSTREAM配信対応プラグインソフトを同梱。なお、現在のUSTREAMの仕様上、フルHD映像は配信時に解像度がダウンコンバートされる。エスケイネットは今回の製品を含め「USTREAM配信対応」モデルを多くの製品で展開しているが、これはユーザーからのUSTREAM配信対応の要望だけでなく、Ustream Asiaの親会社であるTVBankからの要望を受けてのものだという。

右下が60p映像、左上が60i映像Monster XX(右)とMonster X3(右)パッケージのデザイン


(2010年 11月 17日)

[AV Watch編集部 中林暁]