デジタル専用録画機の補償金問題でCulture First会見

-「録音からの解決に向け、協議の用意」


 デジタル私的録画問題に関する権利者会議団体などで構成される、Culture First推進89団体は24日、記者懇親会を開催した。27日に第一審判決が言渡される、SARVH(私的録画補償金管理協会)と東芝との私的録画補償金に関する訴訟について、同団体らの意見を改めて表明した。

 この問題は、地上アナログチューナ非搭載のデジタル録画機器が私的録画補償金の対象となるか、という点において、権利者団体と機器メーカーの考えの違いが発端。日本における私的録画補償金は、補償金の支払者を消費者に設定し、メーカーがデジタル録画機器に補償金を上乗せして販売、消費者の製品購入価格に補償金を含むという形で徴収している。

 東芝は、地上アナログチューナを内蔵しないデジタル放送専用録画機について、「補償金の課金対象(著作権法上の特定機器)になるか明確になっておらず、現時点で徴収できない」という立場をとり、販売時に補償金を上乗せした代行徴収を行なっていない。一方、SARVHはデジタル専用録画機も特定機器に当たると考え、補償金を納付するように要請していたが、両者での歩み寄りはできず、2009年11月にSARVHが訴訟を提起していた。

 これまで5回にわたり行なわれてきた口頭弁論の争点は、大きく分けて2点あったという。1点目は、デジタル専用機器が、補償金の対象となる「特定機器」に該当するか。

 一点目についてSARVHは、特定機器に該当すると主張し、「地上アナログチューナの搭載の有無」が特定機器の要件とする法的根拠は存在しない、とする。一方の東芝は、政令の用件のみが「特定機器」の要件ではなく、アナログチューナの有無やダビング10の有無、関係者の合意が、特定機器の該当性の判断に影響を及ぼし、特定機器には該当しないと主張する。

 もう一点は、著作権法第104条の5の「製造者等の協力義務」は、法的義務を有する効力規定か、それとも法的義務を有しない訓示規定か。また、協力の具体的な内容は何か、というもの。SARVHは、「協力しなければならない」という著作権法第104条の5の文言について訓示規定ではないという立場をとる。一方の東芝は、「この文言は訓示規定を意味する法律用語」とし、「これが訓示規定であることから補償金制度が実質的に機能しないとしても、補償金制度の宿命からやむを得ない」、と主張している。

 なお、2010年の録画補償金の徴収額自体は、BDレコーダが政令指定の対象となったこと、およびレコーダの販売が大幅に増加したため、徴収額も増える見込み。ただし、東芝だけでなくパナソニックもデジタルチューナのみの録画機器は、販売価格に補償金を上乗せしていない。ソニーも販売価格に上乗せはしていないが、対象と認められれば払う意向を示しているという。また、「もう一社」も徴収をやめているとのこと。

 実演家著作隣接権センター 運営委員の椎名和夫氏は、私見と断りながらも、「(27日に一審判決が出るが)いずれにしろ、どちらも控訴するだろう」との見通しを示す。裁判の長期化も予想されるが、一方で、「補償金制度は特に『録音』においてすでに破綻している。メーカーの主張からしても、コピーフリーといえる音楽CDには補償の必要性は残る。録画は裁判中ということで難しいが、もう一度録音の話から、問題解決ができるのではないかと考えている」と述べ、関係者との協議に臨む意向を示した。



(2010年 12月 24日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]