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デジタル専用録画機の補償金問題でSARVHが東芝を提訴

−3,265万円支払いを求める。権利者団体も会見


11月10日発表


 社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)は10日、デジタル放送専用DVD録画機器に関わる私的録画補償金相当額の支払いを東芝に求める訴訟を東京地方裁判所に提起した。SARVHでは未納付相当額3,264万5,550円の支払いを求めている。

 この問題は、地上アナログチューナ非搭載のデジタル録画機器が私的録画補償金の対象となるか、という点において、権利者団体と機器メーカーの考えの違いが争点となっている。日本における私的録画補償金は、補償金の支払者を消費者に設定し、メーカーがデジタル録画機器に補償金を上乗せして販売、消費者の製品購入価格に補償金を含むという形で徴収する。徴収された補償金は機器については社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が取りまとめ、録画補償金はSARVHに支払われる。

 東芝では、2月に発売した地上アナログチューナを内蔵しないデジタル放送専用録画機について、「補償金の課金対象(著作権法上の特定機器)になるか明確になっておらず、現時点で徴収できない」という立場をとり、販売時に補償金を上乗せしなかった。一方、SARVHはデジタル専用録画機も特定機器に当たると考え、4月以降半年以上に渡り補償金を納付するように要請。SARVHが文化庁に照会した際にもデジタル専用録画機器が特定機器に当たるとの回答を得たという。

 こうした経緯から、SARVHは9月30日の補償金支払い期限に補償金の納付が無かったとし、2月の発売開始から3月末日までに出荷された当該機器の補償金相当額として3,264万5,550円を請求する訴訟を提起。「東芝は文化庁の見解に従う意思が無く、現状では当事者間の話し合いによる解決は困難であることから、本件機器が『特定機器』に該当するかにつき、司法の判断を仰ぐこととした」としている。


■ 権利者団体は補償金制度全般の見直しを求める

左からJASRAC菅原氏、実演家著作隣接権センター椎名氏、日本映画製作者連盟 華頂氏

 また、この訴訟提起を受けて、デジタル私的録画問題に関する権利者会議団体などで構成される、Culture First推進91団体は10日、私的録音録画補償金制度に関する記者会見を開催した。あらためて補償金制度の「適正な見直し」を求めるとともに、権利者団体のスタンスを紹介した。

 実演家著作隣接権センター 運営委員の椎名和夫氏は、「SARVHが提訴することを受けて、これまでの流れと進め方をわれわれの視点で説明する」とし、権利者団体が求める補償金制度の見直し方針などについて説明した。


実演家著作隣接権センター椎名氏

 椎名氏は「私的録音録画補償金制度は廃止すべきであるという一部メーカー、役所、消費者団体の主張とは裏腹に、世の中は合法、非合法問わず、“複製”されたコンテンツであふれている。コンテンツの作り手の被害は決して小さくなく複製の規模も増え、インターネットも普及して制度の見直しも必要になっている。しかし、文化庁における4年越しの見直し議論は決着しないままで、一向に事態が改善しない。いまや私的録音録画の実態は制度の対象外の領域に拡張している」と現状を分析。さらに、私的録画補償金は2009年で約18億円と数年横ばいであること、録音補償金は2001年のピーク(約40億円)から2009年には約5億円、2010年には3億円台までに減少することを報告。EU諸国の補償金徴収額の例(フランス244億円、ドイツ231億円)を挙げ、日本の約36億円が少ないこと、国民一人当たりの年間補償金負担ではフランスの405円に対し、日本では28円などの事例を紹介。「日本とは違う、手厚い補償がされている」と訴えた。

 こうした状況下でのメーカーの対応について、「4月に東芝とパナソニックの2社は、SARVHに対して、『アナログチューナ非搭載のDVD録画機器はデジタル放送しか録画できず補償金制度の対象とはならないので、補償金徴収に関する協力を今後行なわない』と通告してきた。しかし、通告を容認した場合、2011年に地上デジタル放送に完全移行する時点で、補償金制度見直しの議論が決着しなくても、事実上私的録画補償金制度が機能停止する。当然容認できない」と説明。「そもそもダビング10導入を決めた総務省情報通信審議会第4次中間答申において、緩和に当たって『クリエータへの対価の還元』が前提になると明言されており、その話し合いの席にはこれら2社も参加して答申に合意したはず」とした。

 加えて、「私的に行なわれる録画を補償するのが録画補償金制度。ダビング10の10回の複製が補償金制度対象にならないというメーカーの主張は到底理解できない。仮にそのような主張があっても制度の見直しの議論の中で述べられるべきで、かつ関係者の合意が必要。議論が決着していない段階で変更できるものではない。それを協力しないことで、半ば強引に既成事実化している2社の姿勢は法の遵守という観点からも大きな問題があると考えている」と強く2社を非難した。

 また、SARVHの問い合わせに対し、9月8日に地上アナログチューナ無しのデジタル録画機が現行制度の対象機器である旨の見解が文化庁の著作権課長名で出された点についても言及。主婦連やインターネットユーザー協会(MIAU)から撤回すべきとの声明が出たことについては、「文化庁の施行通知の記述は、意見の隔たりが顕在化した時点での『さらなる制度の見直しの議論の必要性』に言及したもので、アナログチューナ非搭載機器を現行制度対象としないことを述べたものではない」と主張。さらに、「(文化庁の)見解を撤回すべきだとの主張がメーカーだけでなく主婦連やインターネットユーザー協会(MIAU)からも行なわれたことに驚きと失望を覚えている。主要メンバーはそれぞれ(文化庁)私的録音録画小委員会に委員として参加しており、2011年で補償金制度の機能停止という合意は存在しないと理解している。ところが省庁間のパワーゲームに乗るような形で、2011年における録画補償金制度機能停止が規定方針のように、メーカーとさほど違わぬ主張をなぞっているのは消費者の代表としていかがのものか」と疑問を呈した。

 また、消費者の動向を示すデータとして、2008年12月にニコニコ動画の「ニコ割アンケート」で実施した意識調査の例を挙げ、「パソコンやオーディオプレーヤーに補償金を支払うべき」という回答が63.7%(額にもよる、を含む)に上がったことを紹介。主婦連とMIAUについて「消費者のニーズを反映していないのではないかという心象をもっている」と語った。

 椎名氏は、「長い目で見て、なにが国民や国にとって最善かは、得をした損をしたというレベルの話だけでなく、高い視点からの検討が必要。インターネット環境下のコンテンツ保護と利便性の確保は、国際的にも重要なテーマで、将来に禍根を残すようなことがあってはならない。根幹の部分を今一度確認する必要がある」と語り、「ユーザー視点での『コンテンツを自由にコピーしたい』というニーズと、『度が過ぎるとコンテンツビジネスが痛手を被る』という課題の解決策として、今採用されているのが補償金。これがうまく機能していない」と現状を整理した。

 今後の論点として私的録画については、「録画補償金の機能停止を主張するのであれば、それに代わりその趣旨を実現しうる実効的な手段を提案すべき」、「ダビング10のコピーから映像の権利者がこうむる不利益が存在しないことを証明しうる、客観的なデータを示すべき」の2点を挙げた。

 私的録音については、「CDからのコピーにこそ『補償の必要性』が存在する。崩壊寸前の私的録音補償金制度見直しに応じないのは何故か」、「見直しに応じないまま時間が経過すれば権利者に不利益が拡大するが、それをどう考えるのか」の2点を掲げる。

 椎名氏は、これらの課題について関係各位に解決を呼びかけていくと説明。「補償金制度で訴訟が提起されたのはこれが初めて。ある意味で節目になる出来事だ。この問題が解決しないとは思っておらず、解決しなければあらゆる意味で日本のコンテンツが立ち行かなくなる。今後も関係者と話し合いを継続していきたい」と語った。

日本映画製作者連盟 事華頂氏

 また、日本映画製作者連盟 事務局長の華頂尚隆氏は、「文化庁からも、録画機器については見解が示されており、それをもってしても支払いを拒むメーカーサイドの不当な行為は看過できない。SARVHの提訴は当然である。制度についての意見、見解は自由だが、法を無視するような行為は日本は本当に法治国家なのだろうかという危機感を覚える」とメーカーを批判。

 続けて、「義務を果たさず権利のみ主張する子供じみた行為。親がいってあげないといけないのかな、と思います。最近は“モンスターなんとか”みたいな、自分の意見だけを正当化するような人がいるようだが、このような不当な行為を叱ってください」と訴えた。「映画製作者としては話し合いのテーブルに着く準備がある。議論はダビング10だけでない。補償金問題のメインテーマはHDDの録音/録画機器やパソコン。お互い納得できるところを探っていきたい」と語った。


JASRAC菅原常務理事

 JASRACの菅原瑞夫常務理事は、SARVHの提訴について「権利者から見て納得できること。マスコミのみなさんに注目してほしいのは、現行制度がどうなのかということ。DVDは指定機種で、ソースについて決めているわけではない」とし、メーカーの主張に反論。さらに、「高速道路無料化で無料を主張する人が、“私の主張は無料、だから払わない”といっているような状態。法人のコンプライアンス上いかがなものかと」と批判し、「SARVHを全面的にバックアップしたい」と語った。

 また。「文化というのは受け手だけでも、作り手だけでできるものでもない。双方が尊重しあうもの。関わる相手を無視して、進めると文化は無くなってしまう。家電メーカーはエコといっているが、今の対応は環境破壊。そうならないようにしていただきたい」と語った。補償金制度については、「利便性と権利者への補償という点では、最高というわけではないがモアベターな制度だと考えている。ほかにどのようなことができるのかというのを提案いただきながら、議論したい」と語った。


(2009年 11月 10日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]



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