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【CES】ソニーのクラウド型音楽配信「Music Unlimited」

−PS3でもテレビでもモバイルでも同じ音楽体験を提供


プレスカンファレンスでも大々的に紹介された「Qriocity」

 近年ソニーの戦略発表会などで、度々他社との差別化ポイントとして挙げられるのが、「ネットワークサービス」。テレビにおいては「BRAVIAネットチャンネル」、音楽配信でも「Mora」などが提供されているものの、いまのところ“差別化”できているという印象はない。

 しかし、ソニーグループのSCEではPlayStation Network(PSN)という大規模サービスを抱えており、PSNとの連携した新サービスが欧米ではスタートしている。それが「Qriocity(キュリオシティ)」と呼ばれるサービスプラットフォーム上に展開されるコンテンツ配信サービスだ。

 2010年4月に米国で、2010年11月に欧州5カ国でこのブランドを採用したビデオオンデマンドサービスを開始したほか、2010年末にはイギリスとアイルランドで、新音楽配信サービス「Music Unlimited powered by Qriocity」をスタート。さらにこのMuisic Unlimitedは、2011年第1四半期中に米国でも展開される予定だ。

 Qriocityの日本での展開は「未定」だが、2011 International CES会場で「Muisc Unlimited」のデモが行なわれていた。ソニーの最新ネットワークサービス「Music Unlimited powered by Qriocity」の特徴をレポートする。



■ “クラウド型”で複数のデバイスで同一の体験を創出

PS3版のMusic Unlimited powered by Qriocity

 Music Unlimited powered by Qriocityは、ソニーミュージックやユニバーサルユージック、ワーナーミュージック、EMIミュージックなどの音楽レーベルや多数のインディペンデントレーベル、音楽出版社などが参加する「クラウドベース」のデジタル音楽配信サービスだ。

 なにが「クラウド」なのかというと、基本的に楽曲データを機器側に蓄積せず、すべてQriocityのサーバーからストリーム再生するところだ。オーディオ形式はHE-AAC 48kbps。有料のサービスで、英国での利用料金は「ベーシック」が月額3.99ポンド、「プレミアム」が月額9.99ポンド。

 サービス開始時点で約600万曲を用意し、音楽レーベルを始めとした提携により、順次ライブラリを拡充していく。同サービスには、ソニーの最新ネットワーク対応BRAVIAやBlu-rayプレーヤー、Blu-rayホームシアターシステム、PlayStation 3、VAIOなどが対応し、これらの機器でクラウド上のライブラリから自動再生される楽曲をストリーミングで楽しめる。

 PCの場合はWebブラウザから再生できるため、VAIOだけでなく、Macなどでも再生可能。BRAVIAでは、最新モデルのネットワーク機能として「Music Unlimited powered by Qriocity」へのアクセスが用意される。PlayStation 3では、サービス対象地域においてアプリが提供されており、これをダウンロードすることでMusic Unlimited対応となる。

PS3では、アプリとして提供される 再生画面 PCではWebブラウザから再生できる
PSPでもMusic Unlimited powered by Qriocityに対応

 また、Androidベースのソニーのポータブル機器にも対応していく予定で、英国やアイルランドではまもなくPSPでもサービスを開始する予定。同地域でPSPの最新ファームウェアを適用すると、Music Unlimitedのアイコンが表示されるようになっているとのこと。

 Music Unlimitedでは、12音解析技術をベースにしたSensMe機能により、ジャンルや年代、ムード別に解析。カスタマイズされた音楽チャンネルをストリームで楽しめる。Qriocityで取得したIDを用いて、各デバイスからアクセスすると、どんな機器でも共通の音楽体験ができる点が最大の特徴。つまり、データをデバイスのローカル側に保存していないため、同一のIDを登録した複数の機器で、ネットさえあれば機器を問わずにいつでも同じ楽曲を楽しめるのだ。

 ベーシックとプレミアムの違いは、任意の楽曲やプレイリストの再生機能にアクセスできるか否かなど。「プレミアム」では、Qriocity上の楽曲をオンデマンドでフル視聴できるほか、プレイリスト作成や、各音楽ジャンルのトップ100を集めた最新ヒットチャンネルへのアクセスなどが可能となる。一方、ベーシックの場合は、オンデマンド楽曲再生が30秒までに制限される。

Local Top 100 Danceなどのジャンル再生もできる SenseMe機能により解析されたムードごとのチャンネルも用意。Relaxなどが選択できる
曲に対して、好き/嫌いを選択して、好みを学習させることができる

 また、曲に対して、好き/嫌いを選択することで、ユーザーの好みを学習。より好みに沿ったチャンネルを構成できる。

 パソコンで管理している楽曲やプレイリストを同期することも可能となっており、PC用に「Music Sync」と呼ばれる同期用アプリケーションを提供。このMusic Syncで同期した楽曲は、Qriocityのサーバー上で照合され、Qriocityのサーバー上に同一の楽曲があれば、PC上のローカルライブラリと共通の楽曲をクラウド上で楽しむことができる。

 なお、Music Unlimitedに曲が登録されていない場合は、自分が楽曲を持っていても、サーバーにアップロードされることはない。同期ソフトMusic Syncの対応OSはWindowsのみで、Mac版は現時点では用意されていないとのことだ。


自分のパソコンのライブラリの楽曲はMy Libraryからアクセスできる キーワード検索も可能 ユーザーが好きそうな曲をレコメンド

 PlayStation 3やWebブラウザでのデモを見る限り、動作も軽快で、リモコンやPS3コントローラを使った操作系もシンプル。自分のライブラリを積極的に楽しむというだけでなく、今の人気楽曲がわかる「トップ100」やジャンル、ムードにあわせたチャンネルなどを、積極的に活用したネットラジオ的な使い方も楽しめそうだ。ただし、ネットワーク接続が必須という点は、モバイル用途としては不安に感じる面もある。

 音質面でもHE-AAC 48kbpsと、スペック的には日本の携帯電話の「着うたフル」程度だ。デモ機でテレビのサウンドバーなどで聞く分には十分と感じたが、本格的なオーディオシステムで楽しむには物足りないかもしれない。「モバイル機器の対応を重視しているため」現在のスペックが選択されているとのことだが、家庭内であればもう少し、高音質なストリームを流すなどの配慮もほしい。

 テレビやBDプレーヤー、PSPなど、デバイスを跨いで同じ環境を再現できるという点は、確かにユニークで目を惹く。また、製品の買い替えや買い増しといった時でも、操作の迷いがなく、シームレスに移行できるというのも魅力的だ。なお、Qriocityのアカウント情報はPSNと共通化されているため、基本的にPSNのアカウント登録をしていれば、QriocityとPSNの双方で異なるIDを持つ必要はないという。

 ただし、クラウドサービス上にコンテンツが無ければ、「聞くことができない」ので、ある程度の音楽ファンであれば、自分のライブラリを完全にこのサービス上で再現というのは難しいかもしれない。とはいえ、新しい音楽配信の姿として、これからの展開には大いに期待したいところだ。

 残念なのは日本においては、まだMusic Unlimited powered by Qriocityのサービス開始が見えていないこと。Moraなどの音楽配信サービスとの兼ね合いもあるのだろうが、海外では先行してスタートしているビデオ配信の「Qriocity」もまだ日本ではスタートしていないことを考えると、先は長いかもしれない。

 ただし、ソニーでは「ネットワークサービスは、中長期的にはPSNとQriocityに統合していきたい」(ソニー業務執行役員 SVP 広報 CSR担当 神戸司郎氏)という方針で、例えば電子書籍のReader用のストアなどもQriocityに統合することを検討しているという。「各国の事情があるので、その辺を勘案しながら、入れていきたい」とのことで、国内においても、そうしたサービスの集合体としてQriocityを推進する方向は期待できそうだ。

 また、ウォークマンの米国における戦略として、米Sony Electronics社長兼COOのPhil Molyneux氏も、「Music Unlimitedのようなバリューチェーンを打ち出してポジティブなポジションをとっていきたい」と述べているように、サービスの魅力をハードウェアに乗せてアピールしていく方針はソニーグループ共通のものだ。ソニーのお膝元の日本でも同様の体験が、早期に提供されることを期待したい。


(2011年 1月 14日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]