ソニー、2010年度第3四半期決算は営業利益1,375億円
-液晶テレビ苦戦も、PS3などゲーム事業が収益貢献
第3四半期連結業績 |
ソニーは3日、2010年度第3四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比1.4%減の2兆2,062億円。営業利益は5.9%減の1,375億円、税引前利益は1,315億円、純利益は723億円となった。
連結営業利益は、為替の悪影響を大きく受けたものの前年同期比若干の減益にとどまった。ネットワークプロダクツ&サービス分野 (NPS)はゲーム事業が貢献し、大幅増益となったが、主に液晶テレビの影響によりコンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野(CPD)は減益となった。
同社執行役EVP兼CFOの加藤優氏は、「結果的には減収減益となったが、ドルで昨年同期比7円、ユーロは20円という円高環境の中で、このレベルにとどまった。今までやってきてきた施策がそれなりに功を奏し、円高対応力がついてきているのかなと感じている」とした。
■ テレビは販売増も損益悪化。130億円の赤字に
執行役 EVP CFOの加藤優氏 |
CPDの売上高は、前年同期比4.2%増の1兆909億円。液晶テレビが販売台数増により増収となったほか、中小型液晶パネルの売上が増加した半導体、レンズ交換式一眼カメラの増収などが寄与した。営業利益は前年同期比で240億円減の268億円。販売費や一般管理費の増加、為替の悪影響、売上原価率の悪化などが減益要因。
損益変動にマイナスの影響を与えたカテゴリは、販売台数が増加したものの価格下落の影響を受けた液晶テレビ、価格下落や為替の影響を受けたコンパクトデジタルカメラ。プラスの影響を与えたのは、BDレコーダなどのホームビデオ。
液晶テレビの同四半期販売台数は前年比46%増の790万台で、売上高は同19%増の4,070億円となった。継続的なコスト削減や構造改革に取り組んだものの、価格下落の影響は大きく、損益は前年同期比で200億円悪化し、130億円の赤字になった。
セグメント別売上高、営業利益 | CPDの営業利益増減要因 |
液晶テレビの2010年度通期見通しは、200万台減の2,300万台に下方修正された。加藤CFOは、「今年度はシェア獲得を狙って、目標2,500万台を掲げていたが、今の見通しでは届かない。届かない理由は、第4四半期に用意している新機種の立ち上げが遅れたこと。テレビ事業で利益が出ていないのは、韓国メーカーなども同じで、一部の部材メーカー以外は厳しい環境になっている。価格の下落幅は想定の範囲内だが、誤算はパネルコスト。ソニーは、サムスン(S-LCD)やシャープ、オープンマーケットから調達しているが、期初は安かったもののかなり高くなった。商品はいいものが出ていて、固定費も下がっている」と現状を説明した。
来年度は「事業計画を組んでいる段階」としているが、「ソニーとしては基幹カテゴリであり、家庭の真ん中に居座り、様々なサービスもつながる外せない製品。儲からないからといって引き上げるわけにはいかない。一層の努力をしていく」とした。
なお、2010年の年末商戦の薄型テレビの状況は、前年比で14%の伸びで、日本は約4割増、北米は前年割れ。その他地域は前年比プラスで堅調で、特に新興市場は好調だったという。
業務執行役員 SVP 広報センター長 神戸氏 |
また、日本のエコポイント商戦については「市場の盛り上がりをうまく取り込めた。シェアのデータを見ても、若干ではあるが伸びている。供給体制でも、市場の盛り上がりにあわせてパネルの地域配分を最適化して、タイムリーに出せた。収益面でも、国内は他の地域に比べると良い傾向だ。ただし、需要の先食いでもあるので、今後どうやって盛り上げるかは課題」と説明。業務執行役員 SVPの神戸司郎広報センター長も「第3四半期の日本のテレビ市場は前年比約2倍になったが、われわれは2.5倍ぐらいに伸びた。市場の伸長以上に台数を出せた」とした。
ビデオカメラの第3四半期販売台数は160万台、コンパクトデジタルカメラは750万台。デジタル一眼レフカメラの「α」のビジネスの現状についての質問には、「(ミラーレス一眼の)NEXは日本市場中心に好調だが、αも悪くない。それなりに収益が上がる価格、コスト構造になっており、ミラーレスは新しいマーケットと考えている。Aマウント(α)とEマウント(NEX)をあわせてシェア15%を狙うという規模感」とした。
■ PS3ハードは利益貢献。タブレットも年内発売
NPSの営業利益増減要因 |
ゲーム事業やポータブルオーディオなどを含むNPSの売上高は、前年同期比6.4%減の5,666億円。営業利益は263億円増加の457億円となった。為替の悪影響があったものの、PlayStation 3において、ハードウェアのコストが大幅に改善。さらに、ソフトウェアの売上増により、プラスの影響を与えたという。
ゲーム事業は4半期ベースで5期連続の黒字。ゲームハードウェアの同四半期販売台数は、PS3が630万台、PSPが360万台、PS2が210万台。
VAIO(PC)は270万台。NECとレノボの合弁などの再編が進むPC事業については、「パソコンもテレビと同様に厳しいマーケット。VAIOでは、付加価値のハイエンドと、お手頃高品質の2重構造となっている。低価格向けについては、OEM、ODMパートナーなどと協力体制を取っている。ネットワークで我々のいろいろなサービスにつながるという点も強化していく」と説明した。
また、年内にはタブレット端末なども計画しているほか、ソニー・エリクソンのスマートフォンなど、同社のネットワークサービスにつながる端末を増やしていく方針。「サービスは、ゲームだけ、タブレットだけといったものでなく、様々な機器をつなげていき差別化ができる。多面的にネットワーク分野を攻めていく」とした。
映画分野は、売上高が前年比26.7%減の1,490億円、営業利益が66.7%減の47億円。映画「ソーシャル・ネットワーク」がヒットしたものの、「2012」や「THIS IS IT」などの作品が含まれた前年同期と比べると大幅な減少となった。音楽分野は、売上高が前年比14.5%減の1,398億円、営業利益は15.7%減の195億円。金融分野は、前年比1.7%増の売上高2,091億円、営業利益は6.6%減の327億円。
持分法適用子会社のソニー・エリクソンは、売上高が前年比12.7%減の15億2,800万ユーロ、営業利益は2,900万ユーロとなった。高価格帯のスマートフォンに集約したこともあり、販売台数は減少したものの、損益は改善。持分法による投資損益は前年同期の102億円の損失に対し、4億円の利益となった。
■ アセットライトと垂直統合の2面展開
通期の見通しは、売上高および営業収入を2,000億円減の7兆2,000億円に下方修正。その他は変更なく、営業利益と税引前利益は2,000億円、純利益は700億円。想定為替レートについては、ドルが10月時点の1ドル83円前後から、82円前後に変更。ユーロは1ユーロ110円前後で変更なし。
2009年度と2010年度の第3四半期業績比較 | 2010年度通期業績見通し |
加藤CFOは、2008年のリーマンショック以降の構造改革やマネジメントの刷新などにより、大幅な円高環境でも収益が出せる体制になったことを強調。ソニー・エリクソンや、ゲーム、液晶テレビの主要事業で、改革により収益改善している点を説明した。「テレビはまだ黒字化していないが、この3つの事業だけでも、前年比で年間2,000億円ぐらいの収益押し上げ要因になっている」とした。
また、今後の投資戦略についても、「アセットライト(保有資産の圧縮)だけでなく、垂直統合を選択的に事業ごとに精査してやっていく。イメージセンサーのように、投資が製品につながり、内販、外販で収益を生むものについては積極的に取り組む。投資の方針は、技術的な差異化が基本。特徴あるデバイスとセットにつながるものを重視する」と説明。ネットワークサービスについても「Qriocityを始めとし、ソニー・エリクソンのスマートフォンや新しいゲーム機NGPも発表している。効率よく資金を回していきたい」とした。
(2011年 2月 3日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]