パイオニア、「ARスカウター」対応のAVナビ4モデル
-前方車両や信号を認識して映像/情報を重ねて表示
AVIC-VH09CS |
パイオニアは、カーナビゲーションシステム「カロッツェリア サイバーナビ」の2011年夏モデル4機種を発表。5月下旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は下表の通り。なお、同じく5月下旬よりポータブルナビの「エアーナビ」3機種も発売する。エアーナビの詳細は別記事で紹介する。
仕様 | 型番 | クルーズスカウターユニット 通信モジュール | 価格(店頭予想価格) | |
1DIN + 1DIN | 7型ワイドディスプレイ (インダッシュ) 地デジチューナ (12セグ/ワンセグ) DVD/CD/USB/SD/5.1ch DSP | AVIC-VH09CS | ○ | 30万円前後 |
AVIC-VH09 | - | 25万円前後 | ||
2DIN | 7型ワイドディスプレイ 地デジチューナ (12セグ/ワンセグ) DVD/CD/USB/SD/5.1ch DSP | AVIC-ZH09CS | ○ | 28万円前後 |
AVIC-ZH09 | - | 23万円前後 |
■ 実写映像に車間距離などの情報を重ねる「ARスカウターモード」を採用
AVIC-VH09 | AVIC-ZH09CS | AVIC-ZH09 |
ナビ機能の最大の特徴は、車載カメラからの映像に、ルート案内や前方の車両位置などの情報を重ねて表示できる「ARスカウターモード」を採用したこと。自動で前方の車両を捕捉して車間距離を計算/表示するほか、右左折時の交差点の距離も表示。さらに、目安となるコンビニやガソリンスタンドなどの建物を3DCGで実写映像に重ねて表示することが可能。また、赤信号で止まった後に、信号が青に変わったことや、前方車両が発進したことを知らせることでスムーズに発進できる。
ARスカウターモードの画面 | 目印となる建物(写真はコンビニ)を3DCGで表示 | 車間距離を表示し、適正でない(40m以内)ではアイコンで知らせる |
レーンをまたがって走行している間は、写真のようにレーン表示をピンク色で表示(通常は緑色)。ふらつき走行を防げるという。 | 信号で止まっているときは、青に変わったときに知らせるほか、前方車両が発進したことも教えてくれる | 40mを適正車間距離としているのは、高速で渋滞が発生し始める“臨界車間距離”とされる時速70kmで40mというデータ(東京大学 西成活裕教授の実験結果)に基づいている |
クルーズスカウターユニットのカメラ |
「ARスカウターモード」の利用には、専用の「クルーズスカウターユニット」(ND-CS1)が必要。クルーズスカウターユニットは本体とカメラ部で構成し、100時間分の走行映像の記録も可能となっている。AVIC-VH09CSとAVIC-ZH09CSは同ユニットと、NTTドコモ製の「データ通信専用通信モジュール」(ND-DC1)をセットとして同梱し、最大3年間(利用開始月+35カ月)の無料通信も可能。AVIC-VH09とAVIC-ZH09にはこれらが付属しない。なお、ND-CS1は52,500円、ND-DC1は26,250円で後から購入することも可能。データ通信の料金(AVIC-VH09CSとAVIC-ZH09CSの購入者は3年間の無料通信終了後の料金)は、年間1万円前後。なお、従来モデルのようにCG映像のみのルート案内も可能。
クルーズスカウターユニットの本体 | 車への装着例 | データ通信用モジュール |
本体の主な仕様は共通で、AV機能では地デジ12セグ/ワンセグチューナを搭載。受信状況に応じた12セグ/ワンセグの自動切り替えや、中継局のエリアをまたぐ際に自動で同じチャンネルへ切り替えるオート放送局サーチも搭載する。ディスプレイは7型/800×480ドットのLEDバックライト液晶で、黒つぶれや白とびなどを防ぐ「アドバンスド・アクティブコントラスト」なども搭載。DVD部はDVDビデオのほか、デジタル放送をVRモードで録画したディスクなども再生できる。
音楽再生では、PC内の楽曲を、SDカードを介してカーナビのHDDにWMA/MP3/AAC/WAV形式で転送可能。CDからのリッピングは、ATRAC Advanced Lossles(最大4倍速/最大約2,000曲分)またはATRAC 3(最大18倍速/最大約1万曲分)で保存できる。HDD容量は80GB(ナビ用の領域を含む)。
HDD内の楽曲再生機能として、新たに「グルーヴモード」を採用。これは楽曲のうち、ボーカルがある部分(1番のみ)をつないで再生するもので、前奏や後奏を一部スキップしてフェードイン/アウトにより連続再生するという機能。「短い時間で多くの楽曲を楽しめる」としている。そのほか、従来モデルと同様に、「明るい」、「ノリがいい」、「癒される」など曲調が似たものをまとめて再生する「フィーリングプレイ」や、再生中の曲と同じアーティスト/ジャンルといった関連する曲を探して再生する「リンクゲートプレイ」なども利用可能。
AVIC-VH09CSの側面 | AVIC-VH09CSのディスプレイを収納したところ | 主なハードウェア仕様 |
AVメニュー表示。接続したiPodなどの曲名まで確認できる |
iPod/iPhoneのデジタル再生にも、同社カーナビで初めて対応(カーオーディオ製品では「carrozzeria χ」シリーズのCD-7χで既に対応)。別売ケーブル「CD-IUV51M」(5月下旬発売/3,675円)を介してデジタル接続が可能となる。USB端子を備え、USBメモリ内の楽曲も再生可能。Bluetooth(A2DP/AVRCP対応)もサポートする。
「ARスカウターモード」以外のナビ新機能としては、地図上に無い道を走行した場合に、新たにその道を地図に書き加え、次回からのルート検索にも利用できる「ロードクリエイター」機能を搭載した。
インターフェイスも一新。全機能に迷わずアクセスできるという「セントラルメニュー」と、画面にタッチすることで周辺情報を取得する「アクティブインフォ」などを採用。また、AVメニューのトップ画面において、CDやiPodなどのソースだけでなく、そのソースを選んだ時に再生する曲名も合わせて表示できるようになった。
■ 新規ビジネスの構築に意欲。地デジ移行需要にも期待
常務執行役員の黒崎正謙氏 |
発表会では、ポータブルナビ「エアーナビ」(詳細は別記事)も発表。シリーズ初の7型モデルもラインナップ。サイバーナビ/エアーナビ合わせて、年度内で約17万台の販売を目標としている。今年度はエコカー補助金や減税により市場全体が拡大したが、来年度は地デジ完全移行に伴う需要にも期待を寄せている。
新製品発表会で登壇した常務執行役員の黒崎正謙氏は、4月21日より開始したドコモ ドライブネットへのスマートフォン向けサービスや、CEATECで紹介したヘッドアップディスプレイ、非接触充電といった先進機能を挙げ、「新規ビジネスの構築」を強調。既存市場でもネットワーク機能を活かした新コンセプトの製品を導入していくという。一方で新興国市場においては「中国・上海汽車との合弁会社で、ブラジル、インド、ロシアのニーズに適した製品を開発・投入していく」述べ、同社の売上で6割以上を占めるというカーエレクトロニクス事業へ今後も注力していく姿勢を見せた。
また、三菱電機との開発協業を強化する方針も明らかにした。既にCPUは同じ製品を使い、OS(Windows系)も共同でカスタマイズしているという。インターフェイスなどで差別化しているが、「開発費は大きく削減した」としている。
東日本大震災による生産への影響については「ルネサスのCPUを使っていることなどから、影響はある」としたが、詳細については11日に開催予定の同社決算説明会にて明らかにするという。
カーナビ市場の予測。地デジ移行の需要に期待している | 各市場に応じた製品投入を計画し、販売台数の伸長を図る |
(2011年 5月 9日)
[AV Watch編集部 中林暁]