パナソニック、尼崎と姫路のパネル生産はフル稼働

株主総会でテレビのインチ別棲み分け撤廃を再度強調


パナソニックの大坪文雄社長

 パナソニックは、2011年6月24日午前10時から、大阪の大阪城ホールで、第104回定時株主総会を開催した。

 関東地区の株主のために、東京・有明のパナソニックセンター東京にその様子を中継。さらに東海地区の株主のために名古屋にも中継を行なった。

 冒頭、報告事項として、2010年度の業績などについてビデオで紹介。創業100周年ビジョン「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」の実現への第1歩として、3カ年の中期経営計画「GT12(Green Transformation 2012)」をスタートし、成長へのパラダイム転換と環境革新企業の基盤づくりの2つのテーマに取り組んでいることなどを示し、デジタルAVCネットワーク分野では、2010年度においては、プルーレイディスクレコーダなどの売上げが前年を上回ったものの、デジタルカメラや携帯電話が伸びなかったこと、VIERAでは、国内のエコポイント制度が追い風となり、新興国でも需要が拡大したものの、価格下落や円高の影響を受けて売上高は前年並みになったことを示した。

 また、Let's noteが国内ビジネスモバイル分野でシェアナンバーワンとなったこと、TOUGHBOOKが堅牢ノートPC分野で世界ナンバーワンシェアとなったことについても紹介した。

大阪城ホールで行われた第104回定時株主総会の様子中継会場となったパナソニックセンター東京

 一方で、議長を務めたパナソニックの大坪文雄社長は、「2011年度は完全子会社化したパナソニック電工、三洋電機を含めたグループ全体の事業再編に取り組む。2012年1月に新事業体制をスタートさせ、成長戦略を一気に加速する」としたほか、事業再編の基本的な考え方を「お客様接点の強化による価値創出の最大化」、「スピーディで筋肉質な経営の実現」、「大胆なリソースシフトによる成長事業の加速」であることを改めて強調。「3つのビジネスモデル別事業分野に再編し、9ドメイン1部門により、個別ドメインの自主責任経営と、ドメインを越えた連携により、成長戦略を遂行する」とした。

 売上高で9兆4,000億円、営業利益率で5%以上(5,000億円)とする2012年度の中期経営目標については、「2012年度には、目標以上の成果をあげたいと考えている。そのためには、2011年度には、なんとしてでも他社以上のスピードで復興からの回復を果たさなくてはならない」と語った。

 また、東日本大震災に影響についても言及しながら、「震災後の新たな社会基盤を作りあげるために、パナソニックは、その先頭に立っていきたい。復興を実のあるものにしていきたい」と語った。

 一方で、テレビ事業については、構造改革に取り組むとし、パネルについては、新規投資の凍結、国内設備の中国への移管、外部調達および提携を拡大するとともに優位なパネルサイズに集中化することをあげたほか、セットでは海外生産体制の強化、3DやフルHD、新興国といった成長分野に向けたメリハリの利いた機種展開、ネットにつながるテレビであるIPTVへの強化に取り組むとした。

 午前10時50分過ぎから受け付けた株主からの質問では、「尼崎のプラズマパネル工場や、姫路や茂原の液晶パネル工場は過剰投資ではないか。また、8.5世代の液晶パネル工場は遅いのではないか」との指摘があり、これに対して、AVCネットワークス社社長の津賀一宏専務役員が回答。「現在、尼崎も、姫路もフル稼働中である。茂原は3月11日の震災の影響がまだ残っており、フル生産は夏になる。テレビが大型へシフトすると同時に、タブレットPCへの採用でも、IPSαパネルの特徴を生かすことができる。トータルでは稼働に余剰感はない」としたほか、「もともと大型テレビはプラズマが適しており、小型テレビは液晶が適しているという棲み分けを行なってきた。この棲み分けが最適であるという信念でやってきた。だが、液晶パネルはLEDバックライトとの組み合わせにより、制御がしやすくなった。それを受けて、37型で行なっていた棲み分けを42型にまで引き上げ、今後は、もう少し上のサイズでも取れるのではないかと考えている。パナソニックの液晶パネルは、IPSαパネルという省エネ性能が高いものであり、エコなくらしにもマッチする製品となる。その点で、今後はプラズマと液晶のどちらも選択していだたけるものになる」と答えた。また、大坪社長も、「従来の枠組みに左右されないものづくりを進める」と語った。

 大規模な人員削減を発表したことについては、「パナソニック電工、三洋電機の完全子会社化では重複する事業分野もある。経営視点から合理化を図らなくてはならないのは当然である。パナソニックは、事業を成長させることを主眼において経営を進めている。人員削減を前提にしたことはない。最適な事業体制を作る上で、人員削減もあるということである」と語った。

 三洋電機の完全子会社化に伴う、SANYOブランドの存続については、「消費者向け製品、大規模な家まるごとといった提案はすべて、2012年4月1日からパナソニックに統一するのが基本であり、三洋ブランドが強い地域、製品については、当面、三洋ブランドを継続する。GOPANやゴリラ、エネループといった商品(ペット)ネームについては、グループ全体での整合性を図りながら、必要なものを残していく」と大坪社長が回答した。

 一方、関西電力からの15%の節電要請については、森田研専務取締役が回答。「東京電力、東北電力では経済産業省からの指示であるのに対して、関西電力からの節電要望である。当社は、省エネ対策を強化するが、事業に影響を与えない範囲で協力していく考えである。その都度、関西電力と相談しながら進める」とした。

 ソニーにおいて大規模な個人情報の流出があったことに対して、パナソニックの個人情報管理体制に関しても質問が飛び、「今回のケースを参考にして、パナソニックのデータベースの再点検を行ない、情報セキュリティ部門では、個人情報を扱うウェブサイトにおいては外部からの脅威に対しての脆弱性の検査を行なった。日々進化しているハッキング技術に対しては、継続的な対策が必要だと考えており、万全を期していく」(鹿島幾三郎専務取締役)とした。

 中国市場に向けたブラックボックス技術の開示に関しては、「差別化技術に移転は細心のタイミングで、細心の検討の上で移転する。日本で保持するものは日本で保持し、さらに発展させていく。中国は大切な市場であり、これを基本において検討していく」(宮田賀生専務役員)と回答した。

 なお、第1号議案の取締役20名選任の件、第2号議案の監査役2名選任の件については、いずれも可決され、午前11時29分に閉会した。


(2011年 6月 24日)

[Reported by 大河原克行]