NHK、ネット視聴の受信料徴収検討。TV契約の追加負担無し
-「同時ネット配信」と「受信機の対象拡大」で答申
NHK受信料制度等専門調査会は、8日に行なった第12回会合でまとめた報告書をNHKに提出。NHKは12日にこれを受け取ったと発表した。
同調査会は2010年9月にNHK会長の諮問機関として設置。計12回の会合を通じて、諮問事項である「フルデジタル時代における受信料制度及びその運用のあり方」について、委員とともに検討してきた。
報告書では、インターネットでの動画サイトの普及などに触れ「インターネットは、情報源として『伝統的な放送』(旧放送法2条が定めた「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」)を補完するのみならず、代替する機能をも果たしつつあるといえる。据え置き型のテレビ受像機の範疇を超える受信機の普及や、放送は受信できないものの高画質コンテンツを通信経由で受信できる端末の普及も進んでいる。すなわち、複数プラットフォーム、複数端末が競合する時代が到来した」とメディア環境の変化を指摘している。
特に、審議中に起きた東日本大震災を受けて、特例としてNHK総合のライブストリーミング配信を行ない、一定の評価を得たことや、Twitterを通じてテレビでの誤報訂正を行なったことも視聴者の高い満足度を得たことなどを挙げ「インターネットが、もはや一部の若者層のみが二次的に用いるメディア等ではなく、一般的なメディアになりつつある。NHKは、インターネットという媒体においても、『伝統的な放送』においてはたしてきた役割・機能を提供しうる」とし、インターネットによる放送の同時配信の重要性を訴えている。
インターネットへの取り組みについては、「伝統的な放送にとらわれない、伝送路中立的な規律の検討が必要」とし、これまでの公共放送の在り方を理念モデルとしながらも、現実環境の中で取り得る政策の選択肢についても検討。
その中で、ネット上で新たに実施するサービスが、インターネットにおいて同時同報送信するなど、公共放送の“コア的公共性”を代替するものである場合、「受信料的な負担を想定するのが相当。新たな受信料体系に組み入れることが考えられる」としている。
ただし、テレビ受信機の設置に対応して、受信料を支払っているものには追加負担は発生せず、「もっぱら通信端末によってNHKの『放送』を受信しうる者のみが、受信料の支払い対象となる」としている。
NHKは答申を受けて、「伝送路やプラットフォームが増加し、メディア環境が変化するなか、NHKが引き続き社会全体に対して公共放送としての役割・機能を果たしていく観点から、公共放送としての役割・機能に立ち返り、受信契約をめぐる当面の諸課題や、衛星放送やインターネットに関する中期的な課題について、多角的にまとめていただいたものと受け止めている」とし、この提言を次期の経営計画や受信料制度などに活かすとしている。
(2011年 7月 12日)
[AV Watch編集部 中林暁]