ミニレビュー

“自宅でもイヤフォン派”が本格Bluetoothスピーカーを導入すると、どう変わる?EDIFIER「S300」試した

突然だが、家で音楽や音声コンテンツを聴く時も、イヤフォン/ヘッドフォンが当たり前になっていないだろうか。私は完全にそうで、外出時はもちろん、家の中でもiPhoneにAirPods Pro(第3世代)。音楽もラジオも、基本はイヤフォンで完結させてきた。

今までこの環境に不満はなかった。しかし、インターンとしてAV Watch編集部に潜入してから、音に対する関心は止まることを知らない。記事を書くようになって約5カ月。「家の中でまでイヤフォンというのはダメなのでは」「少しでも音をより楽しめる環境を作りたい」と思うようになった。

だが、その関心がスピーカーまで飛び火したかといえば、実はそうでもない。私は都内に一人暮らし。生活環境は約7畳のワンルーム。壁の向こうには他人の生活がある。そんな場所でスピーカーを鳴らすなんて、現実味がなさすぎる。スピーカーに興味がないわけではない。長時間イヤフォンを装着し続ける生活に、健康面での不安がよぎる瞬間も増えた。でも、狭い生活空間と集合住宅という制約の中で、どこまで音を楽しめるのか。買ったはいいが、結局使わなくなる未来が見える。そう思って、ずっと手が出せずにいた。

「それなら、編集部にある本格的なBluetoothスピーカーを使ってみたら?」と編集長。お借りしたのが、EDIFIERのワイヤレススピーカー「S300」(45,980円)。BluetoothだけでなくAirPlayやPC有線(USB入力)でも使える。バッテリーは非搭載で、ポータブルではない、いわば“据え置き型”ワイヤレススピーカーである。

今回のテーマはシンプルだ。私の住環境で、スピーカーは選択肢に入れてよいのか。7畳ワンルームで、集合住宅で、イヤフォン派の人間が、S300を使ったらどうなるのか。大音量でドカンと鳴らして気持ちよくなる話ではなく、「この条件でも成立するのか」を確かめてみる。

自宅と釣り合わない。見た目の高級感

正面

S300は、見た目がいい。天面と左右の面は木目調で、触った感触も安っぽさを感じない。正面のスピーカー部分は布というか、縫物のような表情で、触り心地も良い。そこから下部にかけて金属の光沢が入り、価格以上に“締まって”見えるのがうまい。つまみやレバーも金属感があり、触ると「カチッ」という気持ちいい感触と音がする。こういう細部の作り込みは、所有欲に直結する。

棚の上に置いた瞬間、「ワイヤレススピーカー」というより、ちょっとした家具のように見えるのが面白い。正直、私の部屋には高級感が過ぎる。自宅といい意味で釣り合わない。スピーカーが部屋の格を上げてくるタイプだ。

背面。電源以外にUSBとAUX入力のポートがある。

背面も手を抜いていない。天面とは違う木目調のデザインで、見えないところまで“雰囲気”を作っている。サイズは351×231×204mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約6.23kg。高さは500mlのペットボトルと同じくらいで、横は14インチのノートPCと同じくらいの感覚だ。6kgあるので移動は可能だが、移動させながら使う製品ではない。置いたらそこが定位置になる。

電源オフ時
電源オン時

電源を入れるときの演出もいい。つまみの周りをオレンジの光がゆっくり囲むように点灯する。派手すぎないのに洒落ていて、スイッチを入れるだけでちょっと気分が上がる。イヤフォンにはない“儀式感”がある。

リモコン、音量の調整などやスキップが可能。

ひとつだけ惜しいのはリモコンだ。操作性は悪くないし、安っぽいわけでもない。ただ、本体の木目調と金属感が強いぶん、並べるとリモコンのプラスチック感がどうしても見えてしまう。使わなければ気にならないが、本体と比べると少し見劣りするのは正直なところだった。

接続は色々。Bluetoothがいちばん“しっくりくる”

S300は接続手段がいくつかある。Bluetooth、AirPlay、PC有線(USB)を一通り試してみた。

PCと有線接続した様子。

AirPlayは、iPhone側の操作だけで“家のスピーカー”として扱えるのが快適で、特にラジオ用途だと相性が良かった。再生先を切り替えるだけで部屋に音が広がるので、習慣化しやすい。PC有線(USB)は、机作業中に挿しっぱなしにできるのが良く、「作業BGMを安定して流す」という目的にはかなり向いている。気づくと“結局これがラク”になりやすいタイプだ。

ただ、結局いちばんしっくり来たのはBluetoothだった。理由は単純で、私の生活が「iPhone+AirPods Pro」のBluetooth接続に最適化されているからだ。S300は本体の電源を入れれば自動的に接続されるので、やっていることはイヤフォンのときとほとんど変わらない。いつもの延長線上で使える。この“なじみやすさ”が、スピーカーを置物にしない一番の条件だと思う。

イヤフォン感覚で操作すると、音量は大きい

音を出して最初に面食らったのが音量だ。いつものイヤフォン感覚でボリュームを上げると、驚くほど大きい音が出る。スマホの音量メモリは3~5くらいで十分。この音量でも、音がこちらにパワフルに押し寄せる音圧を感じ、部屋全体にしっかり響く。イヤフォンの「音量」と、スピーカーの「音量」は同じ言葉でも別物だと痛感する。7畳ワンルームでも、空気がちゃんと動くのが感じられる。

ちなみに置き場所は部屋の角、棚の上で、正直セッティングを追求したわけではない。音がどうこうを語れるほど詳しくもないのだが、1台のスピーカーで音がしっかりと広がるし、迫力のある音が得られる。“部屋の空気が動く感じ”は、はっきり分かった。

ラジオを聞いてみる

Bluetooth接続、YouTubeにて再生

最初に流したのは音楽ではなくラジオだった。NHKラジオニュースと匿名ラジオ。日常で一番再生時間が長いのはこういう“ながら聴き”コンテンツなので、ここが快適になるならスピーカー導入の価値は大きい。

NHKラジオニュースは、声がはっきり聞こえる。イヤフォンでも声は聞き取れるのだが、S300で聴くと声が部屋全体に広がる。耳の中に直接入ってくる情報ではなく、空間に置かれた声になる。その結果、耳が疲れないのに、言葉は追える。ニュースが“浴びる情報”から“部屋に流れる情報”へ変わる感じがあった。

匿名ラジオでは、今まで聴こえていなかったBGMの低音がハッキリ聴き取れ、“こんなBGMだったんだ”と気がついて面白い。イヤフォンだと会話が主役になって、BGMは背景に溶けるだけのことが多い。しかしS300だと、背景の低音が部屋の空気を動かすので、「あ、こんな鳴り方してたんだ」と気づく瞬間がある。

そして何より、ながら聴きの価値が上がる。声が部屋に広がることで、作業しながらでも自然に聴ける。イヤフォンほど“聴くぞ”にならないのに、ちゃんと聴こえる。このバランスが良かった。今回の試用で一番「スピーカーってアリだな」と思ったのは、たぶんここだ。

音楽は“空間で聴く”体験に

AirPlayでApple Musicにて再生

AirPlayでApple Musicも聴いてみた。

音楽では、イヤフォンと方向性が違う良さが出る。S300で一番分かりやすいのは低音だ。低音がしっかり響く。部屋の空気が揺れているのがわかる。耳だけでなく、体でも聴いているような、イヤフォンでは得にくい感覚で、スピーカーの魅力が一番分かりやすい部分だと思う。

Vaundy「踊り子」では、出だしのベースがただ“聴こえる”ではなく、“部屋に広がる”。耳元で鳴っていたベースが、空間の土台として立ち上がる感じがある。スピーカーってこういうことか、と納得する瞬間だった。空間全体で楽曲に没入できる。イヤフォンは音が近い。でもS300は音が前に展開する。距離感が変わるだけで、同じ曲でも別の楽しさが出てくる。

ジョン・ウィリアムズ「ジュラシック・パークのテーマ」は、スピーカーで聴く理由がはっきりするタイプだった。映画音楽は、やはり“空間全体で感じられた方が好み”だと再確認した。メロディが前に広がって、部屋に奥行きが生まれる。正直、これを聴いていると「テレビで映画を観る時も、テレビスピーカーではなく、本格的なスピーカーと組み合わせてみたい」と思ってしまう。サウンドバーの購入に興味が湧いてくる。危険である。

良い面ばかりではない。やはり大きさは不便に

もちろん“現実”もある。まず場所を取る。これはS300に限った話ではなく、スピーカー全般の宿命だ。7畳ワンルームだと「置ける場所があるか」が最初の関門になる。私は棚の上の空いているスペースに置いたが、それでも「ここはスピーカーの席」という覚悟は必要だった。

逆に言えば、左右で2台のステレオスピーカーを置く場所は無いので、その環境にも1台で設置できるS300のサイズ感はありがたい。

次に音量。これは当たり前だが、スピーカーは大きな音が出せてしまう。スマホの音量メモリ3~5で十分というのは、裏を返すと「簡単に持て余す」ということでもある。深夜に関しては、音量を絞っても“隣の部屋に響いているかも”という不安が先に立って、結局イヤフォンに戻った。これも製品の良し悪しというより、住環境の問題だと思う。

S300単体で見れば、初めてのスピーカーとしてかなり“アリ”だ。見た目も良く、操作感も良く、Bluetooth接続の延長線上で気軽に使える。それでも私の住環境だと、「もっと音量を上げれば、本領を発揮できるのだろうな」とも思う。これを機に実家に帰りたくなったのは、たぶん気のせいではない。

終わりに——イヤフォン派でも、スピーカーは選択肢に入れていい

結論として、イヤフォン派でもスピーカーは十分に楽しめる。もちろんイヤフォンのすべてを代替するものではない。深夜や外出はイヤフォンが強いし、集中して聴き込みたい日もイヤフォンが便利だ。ただ、スピーカーがあると「自宅での楽しみ」が増える。ラジオが快適になる。音楽が空間に広がる。映画音楽が“それっぽく”なる。純粋に、音で感動する機会が手に入る。

7畳という空間ゆえの制約はあるし、S300の持つポテンシャルを全部引き出せるとは言いづらい。結局は「どこまで妥協できるか」になるだろう。決して安い投資ではないが、今回の体験は“楽しみが増える投資”として確かに意味があった。

45,980円という価格は、音だけで回収するというより、「ラジオと音楽を部屋で聴く習慣」を買う感覚に近い。イヤフォン派でも、在宅時間が長くて“ながら聴き”が多い人、イヤフォンで耳が疲れがちな人には、かなり刺さると思う。私もこれを機に、サウンドバーなども調べてみようと思った。あと、広い部屋に住みたいと切実に思う。スピーカーというのは、こうやって住環境への欲まで刺激してくるらしい。

大須賀光輝