小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1213回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

プロジェクター観戦に最適! お手元スピーカーの新しいカタチ、Carry by MIRAI SPEAKER

あの大ヒットスピーカーの次の一手

2024年に発売されたサウンドファンの「ミライスピーカー・ミニ」をご記憶だろうか。曲面の振動板を使った独特の音響効果で、音量を上げずにテレビ音声が聞き取りやすいという、テレビ専用お手元スピーカーだ。

これが「BCNランキング」のスピーカー部門で、24年機種別販売金額年間1位を獲得する、大ヒット商品となった。19,800円のテレビ専用モノラルスピーカーが、全スピーカーを対象とした金額のランキングの1位なのだから、どんだけ売れたんだよという話である。

これに続く新製品が、Carry by MIRAI SPEAKER 「SF-MIRAIS9」(以下Carry)である。独自の曲面スピーカーではないが、今度はステレオ仕様となり、さらにはワイヤレスで使えるようになったモデルで、直販サイト価格24,750円となっている。

以前はアナログ接続のみのテレビ専用スピーカーだったが、今回は多くの入力に対応し、汎用的な使い方ができるようになっている。どんなサウンドなのか、早速聴いてみよう。

本体とベースで分離合体

Carryはバッテリー内蔵のワイヤレススピーカー本体と、充電器を兼ねるベースユニットの2つで構成される。

製品はスピーカー本体とベースユニットで構成される

まずはベースユニットから見てみよう。スピーカーよりもやや小さめに設計されたベースユニットだが、よく見るとスピーカーの脚部がベースをまたぐ格好でドッキングする。スピーカー底部とベース上部には独自の4端子の接続部があり、ここで充電と音声伝送を行なう。

ベースユニットと本体は専用端子で接続する

背面にはUSB-Cの電力用端子があり、音声入力としては同軸アナログステレオ、光デジタル、HDMI ARCとなっている。以前のミライスピーカー・ミニがアナログ入力のみのわかりやすさを徹底した製品だったのに対し、今回はテレビやプロジェクタとデジタル接続が可能な上に、複数のソースに対応できるようになっている。

ベースユニット背面

スピーカー本体は、上下に黒、スピーカー中央部はアンバーホワイトの布張りという、落ち着いたトーンとなっている。本体重量は800gなので、本体を掴んで移動もできるが、ストラップもつけられるようになっている。

スピーカー本体は落ち着いた配色

背面に同軸アナログステレオ入力があるほか、ヘッドフォン出力やUAB-C充電端子がある。Bluetoothにも対応するので、スマホなどと直接接続できる。Bluetoothのコーデックは特に公開されていないが、Androidの開発者向けオプションでもコーデック名が表示されないので、おそらくSBCだろう。

スピーカー背面にも入力がある

ポイントは、ベースユニットとスピーカー本体の間も2.4GHz帯でワイヤレス接続していることだ。つまりベースに接続していなくても、スピーカー部だけ持って行ってベースユニットに接続されているソースが聴けるということである。伝送距離は屋内でおよそ40m。40mも離れたらもうテレビは見えないので、伝送距離としては十分だろう。

バッテリー持続時間は約18時間で、起きている間中は充電なしで使える。ベースユニットはテレビの近くに置いておき、使い終わったらベースに戻して充電、というサイクルだ。

スピーカーとしての仕様は、5W×2のステレオスピーカーと、背面に楕円形のパッシブラジエータを備える。スピーカー径は公開されていないが、本体サイズから推測するとおそらく30mm程度だろう。若干外向きに開くように、上から見てハの字型に設置されており、ステレオ感が出るよう設計されている。

内部のユニット配置

上部には電源ボタンを兼ねた大きめのボリュームダイヤルがある。中央部にある3本のバーは上下がそれぞれスイッチになっており、左からBluetoothとベース側入力の切り替え、真ん中が「言語くっきり」機能の切り替え、右がLR反転と3Dサウンドの切り替えとなっている。

全体的に大きめの操作ボタン類

特徴的な音質

では実際に音を聴いてみよう。まずはテレビ系のソースとして、現在Netflixで配信中のWBC 2026を視聴してみた。プロジェクタのDangbei「Mars Pro 2」でスクリーンに投影する。オーディオソースはプロジェクタのHDMI ARC出力とベースユニットを接続し、ベースと本体間はワイヤレス接続だ。

スピーカー自体は紐付きではないので、設置場所は自由である。頭のすぐ後ろにスピーカーを設置した。このままだと左右が逆になるが、LR反転スイッチがあるので、後ろに置いても問題ない。

「言語くっきり」がOFFの状態だと、解説の声は少し埋もれがちである。「言語くっきり」は弱と強があるが、弱でも十分音声の聞き取りは向上する。通常はこれぐらいで十分だろう。

強にするとさらに中高域が持ち上がってくる。聞き取りやすさは向上するが、耳がいい人だと耳障りに聞こえるかもしれない。このあたりは、実際に聞く人が選ぶ方がいいだろう。

今回は日韓戦を追っかけ再生で視聴したため、試合終了は深夜過ぎとなってしまった。だがスピーカーを頭のすぐ近くに設置して小音量で聞いていたので、家族に迷惑がかかることもなかった。

音声モードの違いを聞いていただくために、スピーカーでの再生音をダミーヘッドで集音してみた。音源は「フリーBGM DOVA-SYNDROME」から、Flehmann氏による「With You」を使わせていただいた。

ダミーヘッドとスピーカーとの距離はだいたい20cmである。3DサウンドをONにすると、若干ではあるが音に広がりが出るのがわかる。

「言語くっきり」を弱・強と上げていくと、ボーカルの輪郭がどんどんくっきりしてくるのがわかる。手元に「ミライスピーカー・ミニ」があったので、これも同じ音源で鳴らしてみた。

音声モードの違い

ミライスピーカー・ミニと比べると、「言語くっきり」モードの弱と似たような特性であることがわかる。ただミライスピーカー・ミニの方が低域もよく出ており、周波数特性的には全域を聞かせようという意図が感じられる。

「言語くっきり」強はミライスピーカー・ミニよりもさらに中高域がくっきりしており、ニュースやドラマなど音声の内容が重要なソースでは有効だろう。

アニメコンテンツとして「葬送のフリーレン」第34話を視聴してみた。微妙なニュアンスの台詞回しの多い回だが、小音量でも「言語くっきり」は弱で十分聞き取れる。

音楽再生を試す

スピーカー本体にはBluetooth機能があるので、スマートフォンを接続して音楽再生も試してみた。

コーデック的にはSBCなのでなんでもつながるが、オーディオ的にはいくらパッシブラジエータ搭載でも、やはり低域不足は否めない。特にニアフィールドではそれほど音量を出さないわけで、そうなるとパッシブラジエータもあまり効果が出てこない。

一方3Dモードの効果は、音楽ソースではかなり大きく効果がある。全長が20cmぐらいしかないので、なかなかステレオ感を得るのが難しいところだが、そのあたりをちょうどカバーするようだ。

ただスピーカーと耳との距離が近い場合は有効だが、1m程度離れてしまうとあまり効果の差がなくなってしまう。概ね50cm未満で聞く場合に有効だと考えた方がいいだろう。

スリープタイマー機能も、一般的なイメージとはちょっと違う機能だ。多くのスリープタイマーは指定した時間でバスッと切れるが、本機の機能は、1時間かけて気が付かないように徐々に音量をフェードアウトしていき、最終的には電源をOFFにするという機能だ。

試しにどれぐらいで小さくなるかテストしてみたが、だいたい50分まではそのままの音量で、そこから徐々に小さくなるようだ。説明書には1時間後に電源が切れると書いてあるが、実際に電源が切れるまで1時間半ぐらいかかるようだ。

Bluetoothもしくはベースステーションの入力切り替えスイッチを長押しすると、スリープタイマーになる。LEDが点滅するので、確認できる。

総論

ミライスピーカーシリーズは、騒がしい中でアナウンスの音声を明瞭に聞かせるという業務用からスタートした。そこから発展してコンシューマ用途では、聴力が落ちてきた高齢者のテレビの音がデカいという問題を解けするソリューションへ発展した。音声が聞き取りやすい周波数を持ち上げることで、音量を上げなくても聞き取り効果が高いというコンセプトだ。

Carryはそのコンセプトは残しつつも、設置場所の自由度を上げたモデルとなっている。個人的には、プロジェクタの音声を聞くのに最適だと感じた。

多くのプロジェクタは本体にスピーカーを内蔵しているが、視聴者の位置とプロジェクタの位置が離れていた場合、音量を上げざるを得なくなる。だがCarryであれば、ベースユニットだけプロジェクタの近くに置いて、スピーカー本体は視聴者の位置まで持ってこれる。大画面だが音まで大音量でなくてもいいという格好の視聴にちょうどいい。

サウンドバーではものが長すぎて、近くには置きづらい。またBluetoothスピーカーでは遅延が大きい。そういう隙間をうまく埋めることができる。

高齢者に喜ばれたミライスピーカーシリーズだが、Carryはさらに置き場所が自由なテレビスピーカーという付加価値を付けてきた。ステレオ仕様なので、映画やアニメソースも楽しめる。スリープタイマー機能もあり、音楽を聴きながら寝る人にも便利だろう。

意外にありそうでなかったスピーカー製品である。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。