DNP、違法音楽コピー再生時に妨害雑音を発生させる技術
大日本印刷(DNP)は、違法コピーの音楽コンテンツ再生時に雑音を発生させる電子透かし技術「ゲンコーダMark for COPY PROTECT」を開発した。今後の実用化をめざして評価実験を行ない、音楽コンテンツ制作/配信事業者に提案していく。
音楽コンテンツのクオリティーを損なうことなく、低コストで容易に雑音データを埋め込るという電子透かし技術。違法にコピーされた音楽コンテンツを既存のAV機器で再生すると雑音が生じるため、抑止効果が見込め、音楽著作権の保護に利用できる。
人間の可聴帯域は20Hz~20kHzとされており、音楽用CDや多くのAV機器ではこの帯域をカバーしている。一方で、配信用などの圧縮した音楽コンテンツでは、200Hz~12kHz前後の音波帯域を利用する場合が多く、ネット配信用などに音楽録音/圧縮を行なう場合は、この音波帯域を利用するという。今回開発したゲンコーダMark for COPY PROTECTは、この人間の聴覚/AV機器とコンテンツの両者の感度範囲の差を利用し、特定の帯域に雑音を埋め込むことで、違法コピーした音源を再生すると雑音を発生させる。
妨害雑音発生の仕組みは「聴覚マスキングを利用した妨害雑音:X」と、「音脈分凝を利用した「妨害雑音:Y」の2種類を用意する。
妨害雑音の動作イメージ |
妨害雑音:Xでは、20Hz~20kHzの音源のうち、下限部の20Hz~400Hzの帯域を20Hz~200HzのA帯域と200Hz~400HzのB帯域に分ける。そして、レコーダなどの音響入力機器が対応する音波の下限付近のB帯域に、A帯域よりも音が高く、音量が小さい妨害雑音Xを、本来のB帯域の音成分に重ねて埋め込む。A帯域よりも周波数が高いB帯域に妨害雑音Xを埋め込むと、妨害雑音Xが聞こえにくくなる聴覚マスキング現象が起き、「通常の再生では妨害雑音の影響はない」という。一方、この音源を音響入力機器でコピーすると音波帯域が200Hz~12kHzに狭められてA帯域の音が消失するため、聴覚マスキングが作用せず、妨害雑音Xが明確に聞こえるようになるという。
妨害雑音:Yでは、聴域上限部の6kHz~18kHzを、6~12kHzのC帯域と12~18kHzのD帯域に分ける。そして、音響入力機器が対応する上限付近のC帯域に、本来のC帯域の音成分に強弱を加えた妨害雑音:Y1を、D帯域には、C帯域と正反対の関係になる強弱を加えた妨害雑音:Y2を埋め込む。通常再生時には、人間の脳がC/D帯域双方の強弱変化を平準化しようとする補完作用(音脈分凝)の影響により、「Y1、Y2」は聞こえない。しかし、音響入力機器でコピーするとD帯域の音が消失するため音脈分凝が作用せず、妨害雑音Y1を含んだC帯域の音が再生され、違和感を与えるという。
この妨害雑音のいずれか、あるいは両方式を組み合わせて利用できるとする。
(2011年 11月 10日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]