「東京モーターショー」3日開幕。クルマの最新AV技術

-“走るスマホ”や“フルデジタルスピーカー”など


会場は東京ビッグサイトに戻ってきた。幕張メッセではないので注意したい

 第42回東京モーターショーが12月3日~12月11日に東京ビッグサイトで開催される。12月2日までは報道関係者や招待者向けのプレビューを行なっている。

 各社がハイブリッドや電気自動車などのエコカーを数多く展示。また、通信機能を活用して、エンターテインメントや快適なドライブをサポートするといった機能/サービスについても紹介。未来のカーエンタテインメントを体感できる展示も多い。



■ “タイヤの付いたスマートフォン”などの先進技術

トヨタのFun-Vii

 トヨタは、車のボディとインテリアが全てディスプレイという“タイヤの付いたスマートフォン”こと「Fun-Vii(ファン・ヴィー)」を出展。「ヒトとクルマと社会が“つながる”20XX年の未来を具現化したコンセプトカー」としており、ネットワーク経由で様々な情報をやり取りして、車の内外に表示できることが特徴。

 今回のコンセプトカーでは、全長4,020mmのうち約3mの幅をディスプレイに使用。写真や動画などをスマートフォンから転送して表示できるほか、情報端末としてメッセージなども表示可能。将来の製品化の際には、ディスプレイに有機ELの採用を検討。今後の有機ELパネルの大型化に期待しているという。

 外側のディスプレイを、デジタルサイネージとして使うことも想定。例えば「駐車時に企業の広告を表示しておけば、駐車料金が無料になる」という用途があるという。また、クラブイベントにおいて、複数台のFun-Viiの映像を同期して会場を盛り上げるといった使われ方もあるとのこと。

側面ディスプレイの表示例情報端末としても使える車室内もディスプレイとなっている
iPadを使って、友人に「今日のデートで彼女が気に入りそうなデザイン」を募り、寄せられた画像をそのままFun-Viiに表示

 さらに、将来のインフラ整備などに応じて、非接触充電や、生体キー認証といった先進技術も搭載予定。車室内で足元に表示されるディスプレイは、流れるような映像を表示すると一般道でも快適なスピード感が得られる一方で、実際の速度と違う映像を見せるのは危険とも受けとられかねないが、これは将来的に自動走行技術が発達し、人の操作がいらなくなった場合を見越したもの。安全性を保ちつつも快適なドライブを実現するという。ハンズフリーで運転できるような時代が到来したときの“次の一手”が既に検討され始めている。

 そのほかにも、ナビ画面でAR(Augmented Reality/拡張現実)技術を使って、ドライバーの死角で見えない歩行者の姿を映して警告するといった安全性の向上も追求。また、ソフトウェアは通信経由で常に最新状態に保たれるという。なお、仕様の詳細は僚誌Car Watchのレポートしている。

動画メッセージを表示するという使い方も車内の表示で、実際の速度以上のスピード感を味わえるというFun-Viiを後部から見たところ

 同じくトヨタがモーターショーで披露した新技術「オンデマンド車載ディスプレイ」は、インパネとスマートフォンの画面を同期させるというもの。ナビや音楽再生などスマートフォンの機能をそのまま車に使えるほか、スマートフォンの画面を省エネモードにして、非接触充電も行なう。

 今回のデモではインパネとスマートフォンの同期にIEEE 802.11nの無線LANを使用。音楽再生時はBluetoothで伝送している。実現の時期については明らかにしていないが、説明員によれば「今回の出展で得られた反応も良く、形になる可能性が高い」とのことだ。

オンデマンド車載ディスプレイのデモ設置したスマートフォンを非接触充電スマートフォンと様々な情報やエンタメコンテンツを共有


三菱の「背面投射(リアプロジェクション)方式ディスプレイ」を使ったインパネ展示

 三菱電機は、インパネなどへの搭載を想定した「背面投射(リアプロジェクション)方式ディスプレイ」や、「タッチパネル付き湾曲液晶ディスプレイ」をデモ。運転席を模したコーナーで映像を体験できる。

 「背面投射方式ディスプレイ」は、自由曲面で表示が可能なことにより、運転席のデザインに合わせたインパネを実現できるというもの。運転状況に応じて様々な情報を簡単に切り替えて表示できる。タッチパネル付き湾曲液晶ディスプレイは、同乗者が手元で簡単にカーオーディオなどを操作できる後部アームレストと一体化した操作画面を実現するという。

 デモカーでは、スマートフォンを専用台に置いてカメラで顔認証することにより本人確認を行ない、ドライバーの体温や心拍数を元に健康状態をチェック。運転席横のアームレストに備えたタッチパネル付きディスプレイで、手書き文字により行きたい場所や食べたいものを入力すると2文字目で予測変換し、ルートを案内するという機能を体験できた。

 車載Blu-ray DiscプレーヤーやDIATONEサブウーファなどの新製品も展示。BDプレーヤーは出力そのものは480pだが、BDを使うことで高ビットレートな映像でもブロックノイズが出にくいことなどが特徴だという

スマートフォンをかざして認証座席から見た画面カメラを通して、サーモグラフィで運転者の体温が分かる
脇のタッチパネルディスプレイで文字入力行き先が表示され、ルート案内可能にピンチイン/アウトといった操作も可能
車載BDプレーヤーの再生画面。波紋が多い水面も精細に描写していた前面パネルオープン時DIATONE車載スピーカーも出展


■ “アンプ/DAC不要”のフルデジタルスピーカーなど

クラリオンの「フルデジタルスピーカー」

 日立ブースでは、グループ企業であるクラリオンが「フルデジタルスピーカー」のデモ再生を行なっている。

 このスピーカーは、法政大学発のベンチャー・Trigence Semiconductorが開発したデジタル信号処理技術「Dnote」をベースとし、クラリオンの車載音響技術を組み合わせて開発したもの。CDなどのデジタル信号を直接スピーカーに入力して再生することで、信号そのままの高音質な状態で再生できるという。

 スピーカーは複数の信号を入力可能なマルチボイスコイル構造で、駆動ユニットから出力される信号を6つに分けてスピーカーに入力。パルス信号そのものを動力としてスピーカーに直接入力するという。DA変換が不要で信号のロスを防ぎ、高速で応答。車のセンターユニットから各スピーカーにデジタル伝送し、DACやアンプを不要としている。

 音質だけではなく、駆動電圧を従来の半分以下に、消費電力を約1/8に抑えることができることも特徴。今回のデモではiPodの電源のみで再生しているとのことだが、電源不要のスピーカーとは思えない高能率で再生を実現していた。ホームオーディオ用のエンクロージャを使っていたが、まずは2012年内をメドに車載向けに製品化予定。ホーム用についても検討しているという。

スピーカーユニットを斜め上から見たところ信号をデジタルのままスピーカーに伝えるという内部にマルチ入力対応のボイスコイルを備える
センターユニットから4つのスピーカーに出力1/8という省電力化もクラリオンが展開している「ダウンロードボイス」によるナビ音声入れかえ機能も説明。声優などの音声データを販売している


ビーウィズのブースに展示されたオーディオ製品

 ビーウィズは、マグネシウム合金筐体のモノラルパワーアンプ「Accurate A-110S II」や、電圧を安定化させるレギュレータ「Accurate A-50A」などを披露。試聴用デモカーとして「プジョー 308CC」を、装備参考車両として「メルセデス・ベンツ SLR マクラーレン ロードスター」を使用している。

 「Accurate A-110S II」は、電磁波シールドやリサイクル性に優れたマグネシウムを筐体すべてに採用。従来比で体積を72%減、重さ82%減まで小型/軽量化。金属筐体とは思えない軽さを実現している。

 新日本無線と共同開発したシリコンカーバイド・ダイオード(SiC-SBD)を搭載し、電源の安定化や高速な応答性を特徴としている。オペアンプ「BS04」も新日本無線と新開発したもので、小型化と高音質化を両立させたという。

 家庭用とは異なり不安定になりやすい車の電源からの電圧を安定化させるというレギュレータ「Accurate A-50A」は、新回路設計と新開発のコイルにより、90%以上という高効率や低発熱などが特徴。A-110Sと同じくオールマグネシウム合金筐体としている。

 その他にも、9月にイタリア・ミラノでワールドプレミアされた、偏心コーン採用のスピーカーシステム「Confidence II」や、「Confidence II Sunrise」などの製品を出展している。

モノラルパワーアンプ「Accurate A-110S II」手前が「Accurate A-110S II」、奥がレギュレータ「Accurate A-50A」車内設置例
スピーカーシステム「Confidence II」と「Confidence II Sunrise」車内装着例メルセデス・ベンツ SLR マクラーレン ロードスターを装備参考車として展示


■ V-Low帯の新放送向け試作機も展示

V-LOW車載端末の試作機(左)

 エフエム東京(TOKYO FM)のブースでは、2013年9月のサービス開始を目指す「V-LOWマルチメディア放送」に関するデモを行なっている。

 「V-LOWマルチメディア放送」は、アナログ放送終了後の帯域を使った新放送として進められているもので、2012年4月に始まる「モバキャス」とは異なる周波数帯域を使用する。

 大きな特徴は、ラジオなどの番組を放送するだけでなく、蓄積型コンテンツとして放送波に乗せたデータを端末にダウンロードして、あとから何度も再利用できること。NECとの協力で、車載用1DIN端末の試作機をブース内に出展している。

 試作機のデモでは、蓄積型放送を利用して車載端末に地図などのデータをダウンロードし、スマートフォンと無線LANで連携。周辺の観光データと共に放送を楽しめるという用途を案内している。蓄積型データの具体例としては、動画データなどのエンタメ用途や、クーポンなども想定している。また、緊急放送を放送に割り込ませることも可能。

 車載機器以外に、家庭用の「防災デジタル端末」も参考出展。これはラジオのような使い勝手で災害情報などを入手できるもので、居住地に応じた災害情報などをすぐに得られることや、蓄積型データで何度でも聞き返せることなどが特徴。電池でも動作する。

家庭用の端末試作機V-LOWマルチメディア放送の概要会場では「マルチメディア放送を使って世界征服をたくらむ悪の組織」という“マシュマロ団”のアニメでV-LOWのサービスについて説明されている
三菱自動車は、商用車としての利用が見込まれる電気自動車「MINICAB-MiEV」(ミニキャブ・ミーブ)のバッテリから電源供給装置の試作機(1500W)で100V電源として取り出し、楽器のアンプなどに使うというイメージ。荷室が大きいため、路上ライブなどにも使えるとのこと
会場ではトヨタとスバルが共同開発した「86」なども注目されているヤマハ発動機のブースでは、平面スピーカーの「INFOSOUND」を使ってデモディズニー/ピクサーは、12月2日の「カーズ2」BD/DVD発売を記念したスタンプラリーを実施中。モーターショーに「ライフサイズマックィーン」が展示


(2011年 12月 2日)

[AV Watch編集部 中林暁]