ソニーとオリンパスがカメラ/医療事業提携で会見

カメラ事業は「お互いの強みを持ち合う」


ソニー平井CEO(左)、オリンパス笹社長(右)

 オリンパスとソニーは1日、医療事業やカメラ事業においる協業について会見し、オリンパス笹宏行社長と、ソニー平井一夫CEOらが今後の両社の事業展開について説明した。

 9月28日に発表した業務提携契約とソニーを割当先とするオリンパス株式の第三者割当増資に関する資本提携契約により、ソニーはオリンパス発行済株式に対する11.28%を取得、筆頭株主となる。事業面では、医療事業において、オリンパスのレンズや光学技術、ブランド力、技術開発力と、ソニーのデジタルイメージング技術を組み合わせ、外科用内視鏡などの医療機器分野での強化を狙う。そのため医療事業に関わる合弁会社をソニー51%、オリンパス49%出資で2012年12月中に立ち上げる。


デジタルカメラ事業でも協業

 また、カメラ事業においても協力、主にコンパクトデジタルカメラ領域において、基幹部品の取引やその他協業について協議、検討。オリンパスからレンズや鏡枠などのソニー向けに供給、ソニーはイメージセンサーをオリンパス向けに供給する。部品の共同調達などによる、損益分岐点の引き下げなどに取り組む方針。

 なお、ラインナップの整理や両社のカメラ用ブランド、レンズ交換式カメラへの展開については、「サイバーショットやαと、ペンなどのブランドが一緒になるか? といわれれば、それぞれにブランドの価値がある(ので統合しない)。また、マウントついては文化の一つ。それをお客様の利益に反する形で統合するということは難しい。いかにソニーとオリンパスの強いところを持ち合って、お互いに強化していくか、ということを中心に考えている」(ソニー平井CEO)と回答。オリンパスの笹社長も、「いろいろ案があると思うので、それを出し合って事業を強化していきたい」とした。

 レンズ交換式へのイメージセンサー供給については、「いろいろ話し合って議論していくが、一番すぐ刈り取り可能で効果が出る部分は共通部品。それ以上は議論しながら作業していく」(ソニー平井CEO)とした。



■ 医療事業強化に取り組むソニー、経営資源を最適化を図るオリンパス

 オリンパスの笹宏行社長は、「医療事業、カメラ事業の2つの領域で、両社のさらなる企業価値向上を図る。医療では単独ではできなかった革新的な製品を手がけたい。両社対等の精神のもとさらなる向上を図る」と述べ、今回の提携の大枠を説明した。

ソニー平井CEO

 ソニー平井一夫CEOは、「4月の経営方針説明で示した、『コア事業の強化』と『新規事業の送出』の一環。デジタルイメージングの強みを生かし、メディカルを成長事業にという方針。一日も早くメディカル事業をソニーの柱の一つにしたい」と説明した。

 これまでも、カメラやプリンタなどの医療周辺機器、医療用デバイス、ライフサイエンスの3事業をメディカル事業として展開していたが、オリンパスとの新合弁会社は医療機器事業として外科用内視鏡機器や関連事業を中心に展開予定という。

 平井CEOは、「これまでもプリンタや内視鏡カメラなどの周辺機器では、オリンパスなどと関係を築いてきた。成長見込み領域に積極的に取り組むためには、周辺だけでなく医療機器本体にはいることが不可欠」とし、オリンパスとの提携の理由を説明。イメージセンサーなどの技術や3D、4Kなどこれから外科用内視鏡を中心に求められる技術を有していることから、「もっとも適した組み合わせ」とし、「しっかりと手を組み、必要とする多くの人々に届けていきたい」と語った。


ソニーのメディカル事業展開医療合弁会社を設立4Kや3D技術を活用
2020年にシェア20%を目指す

 また2020年までに外科医療機器市場は7,500億円規模超となると見込んでおり、ソニーでは、外科用内視鏡機器や関連事業の市場は3,300億円と予想。新会社ではこの市場でマーケットシェア20%超を目指す。合弁会社は、「ソニーの連結子会社として、収益貢献することを期待している」とし、2012年のソニーグループ医療事業売上2,000億円以上を目指す。なお、新会社による、内視鏡発売時期については、「なるべく早く。ただし、さまざまな認可等があるので、通常のエレクトロニクス商品と比べると市場導入のサイクルが長い」とした。

 カメラ事業についてはコンパクトカメラを中心とし、オリンパスからレンズや鏡枠などのソニー向けに供給。ソニーはイメージセンサーをオリンパス向けに供給する。また、部品の共同調達などによる、損益分岐点の引き下げなどに取り組む方針。


オリンパス笹社長

 オリンパスの笹宏行社長は、「中期ビジョンOne Olympusで示した事業ポートフォリオの再構築、経営資源の最適配分の一環」と今回の提携の意義を説明。映像事業においては、製造原価や販管費などの収益構造改善を図り、医療事業については外科事業の飛躍的成長の実現に向けて取り組むとする。

 カメラ事業については、「ソニーの世界最高のイメージセンサーが安定して供給されることは魅力的。また、レンズや鏡枠などをソニーに供給することで、生産量の向上により収益改善を図る」とした。


外科イメージング事業の拡大

 また、今回のソニーからの出資により、「自己資本比率の安定化が実現でき、ひとまず一定の水準まで改善できる。株式は希薄化することになるが、今回の提携は事業の強化で、株主利益の拡大につながると考えている」と語った

 なお、多くの会社からの提携のオファーがあったオリンパスだが、ソニーを選んだ理由については、「ソニーとは具体的に、突っ込んだ話をさせていただいた。時間を要したが、医療分野やデジタルカメラなどの広い分野で具体的な技術に支えられた提携ができると判断した」と説明した。


(2012年 10月 1日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]