三菱、2重/チラツキ低減3D DLPプロジェクタ「HC8000D」

ブラック液晶メガネとアイリスでコントラストUP。約25万円


LVP-HC8000D。なお、写真は製品版と若干異なり、製品版では上部のスリーダイヤマークが無い

 三菱電機は、DLPのホームシアタープロジェクタの新モデル「LVP-HC8000D」を12月1日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は248,000円前後。カラーはブラック。

 3D視聴に必要な3Dエミッタ「EY-3D-EMT2H」と3Dメガネは別売。3Dメガネは汎用のアクティブシャッタータイプ(無線方式には非対応)が利用できるほか、ブラック液晶を採用し、より高画質な3D映像が楽しめる高速シャッタータイプ「EY-3DGS-80U」も新発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は12,800円前後。

 1,920×1,080ドット、0.65型のDMDを採用したDLPプロジェクタ。10月から発売している「LVP-HC7900DW」(実売208,000円)の上位モデルにあたり、輝度はわずかに落ちるが、アイリスを強化してコントラスト性能を大幅に向上。さらに、昨年発売された「LVP-HC7800D」(実売328,000円)と同様に、DLPの高速応答性能を活かして、クロストークが少なく、輝度落ちが少なく、ジャダーも抑えた見やすい3D表示も実現しているのが特徴。




■3D表示機能

 最大の特徴は、DLPの高速応答性能を活かし、高画質で見やすい3D表示を実現している事。フレームシーケンシャル方式の3D映像では、左右の目に、異なる目用の映像が知覚されるしまう事で、映像が2重に見えるクロストーク現象や、ブランキング(黒信号)によりチラツキ(フリッカー)を感じ、疲労を感じるといった問題がある。

正面から見たところ上部の操作パネル。製品版にはスリーダイヤマークは無い側面

 DLPで3D表示を行なう場合、アクティブシャッターメガネの液晶シャッター開閉を合わせ、回転しているカラーホイールでブランキングを行なう必要がある。この際、6セグメントのカラーホイールの半分(RGBRGBの内、180度のRGB)が回転する時間を使い、液晶シャッターの切り替えを行なっているプロジェクタが多い。

 これはTN液晶を使っているアクティブシャッターメガネの開閉スピード(応答速度)が遅いため。実際には6セグメントホイールが1回転半した後で、2回転目に行く瞬間の180度RGB部分がブランキングに使われる。これにより、3D映像の輝度低下や、チラツキなどが発生する。

 三菱電機では、1msec以下の、非常に応答速度が高速な液晶シャッターの3Dメガネを使用。同じ6セグメントのカラーホイールを使いながら、ホイールの色の境目(スポーク)1箇所が回転する僅かな時間で、3Dメガネ側のシャター開閉が切り替えられる。

 この結果、黒が表示される時間が極めて短くなり、左右映像のクロストークを低減。チラツキによる眼への負担も低減した、クリアな3D表示を可能にしている。同時に、ホイールの半分を表示に使わない従来方式と比べ、投写側映像の輝度落ちを防ぎ、明るい3D表示を実現。3Dメガネの透過率による輝度低下だけにとどめている。

 既発売の「LVP-HC7800D」からこの技術が使われているが、「LVP-HC7800D」用の3Dメガネには、強誘電性液晶が使われている。応答速度が高速だが、TN液晶と比べて衝撃に弱いなどの問題があり、メガネに衝撃吸収機構などを取り入れて対策していた。

 「LVP-HC8000D」用の新3Dメガネ「EY-3DGS-80U」は、高速ブラック液晶を採用。TN液晶のノーマリーブラック方式と、ノーマリーホワイト方式を重ね合わせたもので、通常のTN液晶よりも10倍近い、強誘電性液晶に匹敵する高速応答を実現したという。

 この結果、3Dメガネは約30g軽量化。また、液晶を閉じて黒くした際の“黒さ”もアップしており、3D映像のコントラストも向上したという。

ブラック液晶を採用した、高速シャッタータイプの新3Dメガネ「EY-3DGS-80U」。写真は電源OFFでシャッターが閉じているところだが、サングラスのように黒い電源をONにしたところ。なお、メガネはメガネ産業が盛んな福井県鯖江市で作られている
メガネにサイズの種類は無いが、写真のようなリングが付属このリングをメガネのヒンジ(蝶番)部分にはさむことで、つるの部分の開き具合を調整できるという電源はボタン電池

 なお、汎用タイプの3Dメガネも利用できるが、その場合は前述の高速シャッター3Dメガネ向け表示から標準モードへと切り替わるため、輝度の低下やチラツキなどが増える。1台のプロジェクタで、高速/標準3D表示の違いが体験できるのも新しい特徴となっている。

 3D表示のジャダー(残像によるぼやけ感)も低減。前後の映像から新しいコマを生成し、フィルム特有のカタカタ感じを残しながらも、動画のボヤけを抑えた表示を行なう「フレーム・レート・コンバータ」(FRC)を搭載。効果は0(OFF)から5まで、ユーザーの好みで調節できる。

 また、従来の右左96Hz表示に加え、120Hz変換処理を行なうことで、白色表示時のチラツキを低減する「フリッカーCUT」機能も用意。ただし、前述のジャダーCUTとフリッカーCUTを同時に使う事はできない。この他にも、2D映像の3D変換機能も備えている。

 DMD部分には、フル10bitパネルドライバーを2基(DDP3021)搭載するほか、前述のFRC用には「PNX5130」チップを搭載する。

 3Dエミッタは別売。エミッタ接続用のケーブルが、従来の1.5mから、3mに長くなっている。

3Dエミッタ「EY-3D-EMT2H」エミッタ接続用ケーブルが3mになった


■アイリス強化でコントラスト向上

 アイリスも強化。HC7800Dでは可変アイリスを、HC7900DWでは可変アイリスに加え、DMDへの不要な光を遮光するアイリスも追加している。新モデルのHC8000Dではさらに、可変アイリスの周囲に、エリア外への光漏れを低減する固定アイリスパーツを追加。また、レンズ内にも固定アイリスを加え、合計4つのアイリスで黒を沈め、高コントラストを実現。輝度は若干低下した。アイリスを使った場合のコントラストは33万:1、輝度は1200ルーメン。

 従来モデルとの比較は下表の通り。

 HC8000DHC7900DWHC7800D
アイリス利用時の
コントラスト
33万:115万:110万:1
輝度(ルーメン)120014001500
アイリス421
実売248,000円前後208,000円前後328,000円前後

 

 前述の通り、カラーホイールは6セグメント。新たに、グリーンの部分を10度ずつ、赤に割り当てる事で、赤色の鮮やかな発色を実現している。

 また、ホイールの倍速駆動は、2Dの24p映像が入力された場合専用で6倍速駆動が可能。カラーブレーキングノイズを極力低減した表示が行なえる。一方、階調豊かな表示を行ないたい場合は4倍速を選ぶなど、ユーザーが切り替え可能。なお、6倍速に設定していても、24p以外の映像が入ってくると自動的に4倍速に切り替わる。

 他にも、RGBCMYの色調を、独立して色相、彩度、明度で調整できるカラーマネージメント機能も搭載。

 レンズは1.5倍のマニュアルズーム、マニュアルフォーカスタイプ。50~300型の投写が可能で、100インチを最短で3.1mから投写できる。EDレンズを含む、4群13枚構成。

 入力端子はHDMI×2、コンポーネント×1、D-sub 15ピン(アナログRGB/コンポーネント対応)×1。シリアル端子も備えている。

 消費電力は380W(待機時0.5W)。外形寸法は396×328×142mm(幅×奥行き×高さ)、重量は5.7kg。

レンズ部分背面の入力端子部分
リモコン受光部は前面だけでなく、天面にも搭載。これは、天吊りした場合に下を向く位置になり、3D表示時で赤外線通信が難しい場合でも、リモコン(赤外線式)の指令を確実に受取るための工夫それでもリモコン操作がうまくいかない時や、AVアンプなど、他の製品が操作できない時のために、付属リモコンの右上に「3D SYNC PAUSE」ボタンを追加。3D同期用の信号を一端停止し、AVアンプなどを操作した後で戻す事ができる

(2012年 11月 14日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]