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ソニー平井社長のCES基調講演。感動や好奇心を製品へ
失敗を怖れない製品作り。PS4活用クラウドTVサービス
(2014/1/9 09:20)
2014年のInternational CESは、ソニーの平井一夫社長兼CEOによる基調講演で開幕した。SCEAやSNEを率いる立場として、これまでも何度となくソニーの講演には登壇してはいたものの、自らがホストを務めるCESの基調講演はこれが初めてとなる。平井体制となって、再び大きな変化を見せる“ソニーの今”を伝えるメッセージとなった。
冒頭、平井氏は自分の子供時代を振り返った。子供向け番組のロンパールームを見ていて、テレビ画面は他の世界と触れあえるものであることを体験。自らはリビングにいてもテレビ画面の中の子供達と同じように楽しんでいるが、おやつのクッキーが画面の中の子供達に提供される時に、自分には届かないギャップにふと気がついたという。
この「なぜだろう?」という好奇心(curiosity)こそが、ソニーにおける製品開発の原動力と共通であると位置づけた。好奇心を持ち続けることこそがイノベーションを生み出し続けられる。製品にはEmotional Valueが必要で、それを日本語でKando(=感動)と表現した。製品価値や機能だけにはとどまらない、情緒的な満足感が必要だとしている。
失敗を怖れない製品作り
平井氏の体験をもとに、ソニーの製品開発の歴史が振り返られる。1979年のウォークマン登場、1982年にはコンパクトディスク、そして1994年PlayStationの登場など、いまもなおソニーを支える技術や製品の根幹が登場する一方で、ベータマックスなど規格競争に敗れた製品も存在する。
ベータマックスはコンシューマ市場では最終的に終息しまった製品ではあるが、結果として業務用のベータカムとして技術や思想はいまも引き継がれている。このベータマックスが1975年に登場した時のコピー「WATCH WHATEVER WHENEVER」をスライドに映し出し「このコピーは40年前のソニーの思いだが、今後もこの思いを実現させていく」という失敗を怖れない製品作りをしていく決意を語った。
ゲストには、北米のTVドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」のプロデューサーであるヴィンス・ギリガン氏も登壇。技術や視聴環境の変化で、ドラマ制作の過程や考え方を制作者側でも大きく転換する必要があると現状を振り返った。
古くは連続テレビドラマは、毎週見続けるものだった(※米国のケーブルTVでは時間帯をシフトしながら何度も再放送がある)。しかし、前述したような家庭用ビデオの普及にはじまり、DVDなどコマーシャルパッケージが販売されるようになり、現在ではオンデマンドで過去のシリーズ等に容易にアクセスできるようになった。消費者側が得られる情報のスタイルが継続的に変化しているため、そうした前提に立った作品作りが常に求められていくようになるという。
PlayStation Now
続いて、ソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCEOのアンドリュー・ハウス氏が登壇。昨年北米エリアから販売を開始し、ホリデーシーズンまでには欧州、オセアニア、ラテンアメリカへも販売地域を拡大したPlayStation 4が、2013年12月28日時点で420万台の実売を達成したことを紹介した。PlayStation史上では、最速ペースのローンチとなる。
アンドリュー・ハウス氏は、買収したGaikaiのストリーミング技術を用いたPlayStationプラットホームにおけるゲームライブラリをクラウドベースで提供するサービスの名称を「PlayStation Now」と発表した。1月下旬からクローズドなβテストを開始して、今夏の正式提供を目指す。サービス開始当初は、PlayStation 3に対応するゲームをPlayStation 4、PlayStation 3、そしてPS Vitaでプレイできるようにする。将来的にはすべてのPlayStationプラットフォームライブラリの提供を目指す。
北米では2014年に発売されるBRAVIAでも利用可能で、いずれはタブレットやスマートフォンにもプレイ可能な機器を拡大する。クラウドベースのゲームストリーミングプレイとなるため、同じアカウントであれば外出先でPS Vitaを使って遊んでいたゲームの続きが、リビングのテレビでそのまま出来るという仕組みだ。CESのソニーブースでは、実際にBRAVIAとPS Vitaをクライアントとして体験が可能だ。
さらに、クラウドベースのテレビサービス「Cloud-based TV Service」を発表。これはテレビ番組をSony Entertainment NetworkとPlayStation 4をハブとして、PlayStation Vita、スマートフォン、タブレット、テレビで視聴できるもので、ライブ放送、オンデマンド配信、クラウドDVR機能(録画機能)も提供する。北米エリアでは年内開始を予定している。
再びステージに戻った平井氏は「Life Space UX」という新しいコンセプトを提唱した。「自分の子供」と同氏が表現する肝いりの製品となる。超短焦点の4Kプロジェクタをラックに搭載し、その背後にある壁やスクリーンに、近距離から最大147型の4K映像を投影する。映画やドラマのような映像コンテンツにとどまらず、世界の風景や街角などを映し出すことで、“新しく開いた世界への壁サイズの窓”と平井氏は表現した。製品は今夏に北米エリアで出荷予定。
Life Space UXではもうひとつの製品も紹介された。こちらは、天井からライトのように吊り下げるタイプのプロジェクタで、カメラを合わせて搭載していることから、テーブルなどの投写面がそのままタッチ操作できるインターフェースになる。ダイニングテーブルで機器を意識することなく、ニュースの閲覧やエンターテインメントが楽しめる製品を目指している。
講演の締めくくりでも平井氏は、失敗を怖れない、好奇心をもってリスクをとる製品作りがソニーの製品作りあることをアピールした。