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オンキヨー、シーメンスと共同開発のスポーツイヤフォンを来春発売。カスタムも検討

 オンキヨーは11日、シーメンス ヒアリング インスツルメンツ(シーメンス)との共同開発によるスポーツ向けイヤフォン「IE-S100シリーズ」を'15年春に発売することを発表した。11日に行なわれたシーメンスの補聴器新製品発表会で明らかにした。

IE-S100シリーズ

 共同開発のイヤフォン「IE-S100シリーズ」は、シーメンスの補聴器「SIEMENS COOL」のデザインをベースにしており、音質をオーディオ向けにブラッシュアップしたもの。オンキヨーとしては初のスポーツ向けイヤフォンとなる。なお、耳型を採る必要の無いユニバーサル型のイヤフォンとなる。リモコンマイク付きの「IE-S100CTI」と、リモコン無しの「IE-S100」を用意し、両モデルにホワイト(W)とブラック(B)の2色をラインナップする。価格は未定。

 ランニングなどのスポーツを長時間楽しめるように、装着性を重視。カナル型(耳栓型)のように耳穴だけでなく、耳の上部にもフィットする「C」のような形をしたハウジングを採用。他社製のスポーツイヤフォンで、上部にツノのようなシリコン製のサポート機構を備えたものは存在するが、IE-S100はホールド性を高めるためにシリコンではなくハウジングと同じハードな素材で上部まで成形。多くの人の耳に合うようにするため、シーメンスの持つ膨大な耳型でテストした結果、この形になったという。汗に強いウォータープルーフ仕様となっている。

装着例。カスタムイヤフォンのように耳の上部までフィットするのが特徴
ケーブルは耳に掛ける

 一般的な補聴器の場合、人の声を聴き取るため低音まではカバーしないことが多いが、オーディオ用とするための構造「COOL Fitting」も採用。フィットさせるためのイヤーピースはリング型で、カナル型イヤフォンで密閉する場合よりも外側の、耳珠(トラガス)付近に緩やかな密閉空間を作るように装着。これにより低音が損なわれずに聴くことができ、周りの音を完全に遮断しないという安全面にも配慮した機構となっている。

 ドライバは超小型の6mm径ダイナミック型で、耳穴に近い先端部分にマウント。ハウジング内部には、発泡素材を用いたアコースティック・レゾネーター(共振体)を装備。発泡素材の採用により高域部分を効果的に共振させ、低域にマスクされない高域特性を実現したという。バスレフポートも備えている。

左がシーメンスの補聴器「COOL EZ」のハウジング。右がオンキヨーの新開発イヤフォン
先端近くにバスレフポートとして3つの穴を備える
イヤーピースを外したところ
リモコン付きとリモコン無しの2モデルで各2色
内部構造
主な特徴

「真のスポーツイヤフォン」実現へ。カスタムも「前向きに検討」

オンキヨーの中野宏副社長

 オンキヨーの中野宏副社長は、シーメンスとの協業をオンキヨー側から打診したことを説明。オンキヨーはイヤフォン/ヘッドフォン事業も手掛けているが、他社製品を含めフィット感に関しては課題があったとの認識を示し、一日中装着する補聴器を手掛けるシーメンスに協力を依頼。シーメンスが持つ4万個もの耳型を使用し、製品のフィット感をテスト。それが今回の製品化に至ったという。今回のスポーツイヤフォンを製品化した後、来年末~再来年をめどに次の製品化を検討。協業製品による来年度の売り上げ目標は数億円規模を目指している。

 今回の製品開発を担当した商品企画本部 商品企画課の浜田直樹マネージャーは、「6月に提携を発表して以来、2社で混成チームを作り、どんなものが作れるか、どんなものが2社らしいものか議論を重ねた。どちらも音にまつわるものを提供していることから議論は盛り上がり、無数のアイディアが出たが、その中で第1弾としたのがスポーツ向けのイヤフォン。ランニング人口が増えているが『本当にアスリートやランナーが満足するイヤフォンは無いのでは? 』という結論に至った。音質はもちろん、高い保持力、1時間運動しても快適な装用感の維持を満たすものが真のスポーツイヤフォン」として、今回の製品に自信を見せた。

 補聴器は、耳型を採取して作成する製品も数多く存在することから、両社が協力したということは、自然な流れとしてカスタムイヤフォン製品化への期待も高まるところ。実現の可能性について浜田氏に尋ねたところ「カスタムイヤフォンの市場が盛り上がっていることは認識している。一つのアイディアとして前向きに検討していく」との回答が得られた。

商品企画本部 商品企画課の浜田直樹マネージャー
シーメンスとの共同開発を開始

指向性を高めたシーメンス補聴器「binax」。Bluetoothでスマホ連携も

 シーメンスから発表された補聴器の新製品「binax(バイナックス)」は、両耳装着の耳かけ型モデル。片耳分に4マイクを内蔵し、両耳の補聴器間で音声信号をやり取りすることで合わせて8つのマイクを持つのと同じ音響効果を実現。周囲の雑音が多い場所などでも、聴きたい方向だけに集中して聴けるようにした。運転中など左右や後ろの音を聴きたい場合にも、音の来る方向へ自動フォーカスする「スピーチフォーカス360°」機能なども備える。

超小型のAce binax

 「Ace binax」と「Pure binax」、「Carat binax」の3モデルを用意し、本体サイズや機能、電池持続時間などが異なる。11月11日より発売し、参考価格は7bxモデルが片耳47万円、両耳84万6,000円。5bxモデルが片耳33万円、両耳59万4,000円。7bxは、5bxに比べてプロセッサやゲインなどの性能がより高いモデル。

 iOS/Android用の「touchControl」アプリを使ってスマートフォンをリモコンとしても利用可能。音量調整や低音/高音調節、プログラム切り替えなどが行なえる。

 別売で、首掛け型のBluetoothリモコン「イージーテック」(54,000円)も11月10日から発売。テレビやスマートフォンとBluetoothでペアリングしておけば、テレビ音声を補聴器で聴いているときに着信があると、自動で通話に切り替えるといったことが可能。

Ace binaxの装着例
左から、Ace binax、Carat binax、Pure binax
カラーバリエーション
スマホアプリで音量調整などが可能
Bluetoothリモコンの「イージーテック」
イメージキャラクターを務めるプロスキーヤー・登山家の三浦雄一郎氏も来場。82歳の現在も精力的に活動していることに、補聴器も貢献しているという
左から、米国で補聴器について講義するオーディオロジー学の教授であるH.グスタフ・ガス・ミューラー博士、三浦雄一郎氏、シーメンス ヒヤリング インスツルメンツのベルント・ウェーバー社長、オンキヨーの中野宏副社長

(中林暁)